第56話 サフィアとの共闘
「では探しますわ。『生命共鳴』!」
――スゥゥゥゥゥゥ……
俺はオークジェネラルを見つけるために再び光魔法を発動させる。
「今度は間違えないで」
「うるさいですわ。集中できないでしょう」
サフィアだって勘を外したくせによく言うわ。
言われなくても今度は間違えないぞ。
オークの生命反応はさっきのでなんとなくわかった。
あの感じに似てて、なおかつさらに大きい生命反応を探せば見つかるだろう。
――ドクンッ!ドクンッ!
「……!見つけましたわ!二人とも、ついてきなさい!こっちですわ!」
「うん」
「はい……!」
俺が先導し、俺たちパーティーはオークジェネラルのいる場所へと走って向かう。
走りながらサフィアが聞いてくる。
「今度はほんとにオークジェネラル?」
「ええ、間違いないですわ。さらに、周りにもいくつかの生命エネルギーを感じましたわ。おそらく他のパーティーの方たちでしょう」
「他のパーティー……!?先に倒されてしまうんじゃ……」
リリィが心配そうに言う。
「いえ、その心配はないですわ。生命反応が弱まっているのは周りの人たちですから。おそらくかなり苦戦しているのでしょう」
「グォォォォォ!!」
「うわぁぁぁ!」
物凄い雄叫びや悲鳴が聞こえてくる。
「いた、あいつがオークジェネラル」
「でっかいですわ〜!さっきのオークの三倍くらいのサイズはありますわよ!?」
既に巨大な棍棒のようなものを振り回すオークジェネラルと戦っている人たちがいた。
「あっ……人が倒れています……!」
そう言ってリリィは倒れている人に向かう。
「大丈夫ですか!?」
「うぐぅ……あんたたち学生か……?逃げたほうがいいぞ……」
さらに悲鳴が聞こえてくる。
「ぐあああ!!」
先ほど戦っていた人たちがぶっ飛ばされていた。
どうやら相当強力な魔物のようだ。
あんなの喰らったらひとたまりもないぞ。
「ひっ……私たちで倒せるんでしょうか……?」
リリィは怯えているがサフィアに恐怖心はないようだった。
「大丈夫。私たちならいける」
「リリィ、この方たちの治療をお願いしますわ。オークジェネラルは、わたくしたちでやります」
「うん。それがいい」
「セレスティア様……サフィア様……大丈夫……ですよね……?」
「ええ。わたくしたちに任せてください」
「うん。大丈夫」
俺とサフィアはリリィへ微笑む。
それを見てリリィは安心したようだった。
「わかりました……!ご武運を……!」
トテトテと怪我人の治療に向かうリリィ。
「大丈夫ですか……!?今治療します……!『治癒』!」
「うぐぅ……ありがとう……だけどあの子たち大丈夫なのかい?」
「大丈夫です……あの二人なら……大丈夫です!」
リリィが治療に向かったあと、俺とサフィアはオークジェネラルと対峙していた。
「……」
「グゥゥ……」
オークジェネラルと俺たちはお互いに睨みあっている。
まさに一触即発状態といった感じだ。
「とは言ったものの、どうしましょうか」
「うん。オークと同じように胸あたりにコアがあるはず。それを破壊すれば倒せる」
コアを破壊か……
前にドラゴンと戦ったときのように『時間停止』を使えば倒せるだろうか。
しかし、あのときドラゴンだったからその場に倒れ込んだが……
いくら巨大とはいえ、ドラゴンと比べたら小さいし、殴りすぎたらどこかに吹っ飛んでしまうかもしれない。
そうなってしまうと、倒せたとしてもどこ行ったか分からなくて倒した証明ができないし、なにより肉を逃したサフィアに真顔でブチギレられるかもしれない。
他に方法はないだろうか。
そんなことを考えていると、オークジェネラルが攻撃を仕掛けてきた!
「グォォォォォ!」
俺の身体の何倍もの大きさの棍棒のようなものを振り下ろしてくる!
やべっ!かわさないとっ!
「『水壁』」
――バシャアアアアアアアン!
しかし、サフィアが水魔法で壁を作り、防御する。
棍棒のようなものが弾き返され、あたり一面に水が飛び散った。
さすがサフィア!
水魔法を完璧に使いこなしている!
詳しくはないが、攻撃を跳ね返すレベルの水の壁を作るのは相当な実力者なんじゃないか!?
しかし、このままじゃ防戦一方だ。
俺たちはオークジェネラルの攻撃をかわし、一旦距離をとりながら作戦会議をする。
「すごいパワーですわね……」
「うん。どう倒そうか」
「さっきの水の弓はどうですの?」
「うーん。あれは奇襲攻撃には向いているけど、戦いながらだと狙いが定まらない」
「そうなんですのね……」
困ったな。
確かに動きながら弱点をピンポイントで狙って矢を放つなんて、なかなか難しいだろうな。
せめて動きを止めることができればコアを撃ち抜けるんだろうが。
俺は魔法で時間を止めることができるが、止まった時の中で動けるのは俺だけだ。
それではサフィアは矢が撃てない。
……なら俺がやればいいのでは?
俺に『水弓』を正確に操る技術はないが、せめてオークが吹っ飛ばないように固定することができればやりようはある。
「サフィア、あいつの動きを止められる魔法はありますの?ほんの少しの時間だけでいいんですわ。足元を固定できたりしません?」
「固定?ほんの数秒だけならできるかもしれないけど。なにするつもり?」
「できるんですのね?ならぶっ飛ばせますわ!」
「……うん。わかった。やってみる」
サフィアの判断は早かった。
「『水球』」
こちらに向かってくるオークジェネラルにすぐに魔法を放つ。
俺はそれと同時に、できるだけオークジェネラルに近づく。
時間が止められるといっても限界はある。
できるだけ近づいてから停止したい。
――バシャバシャバシャン!
「グォォォォォ!!!」
サフィアが放った水の球はオークジェネラルの足元に命中し、びしょ濡れになった。
しかし威力はあまりなく、オークジェネラルの動きは止まらない。
だが俺に焦りはなかった。
サフィアならなんとかしてくれるだろうという信頼があったからだ。
そしてサフィアはさらに魔法を放つ。
「『水凍』」
――パリパリパリッ!
「グォッ!?」
オークジェネラルの足元が一瞬で凍り、動きが止まった。
サフィアが珍しく大声で呼びかける。
「セレスティア!長く維持できないから何かやるなら早くして!」
「ええ!ただし全力で固定しておいてくださいね!」
もう十分近づけたし、オークジェネラルも固定できた。
これならいける!
「『時間停止』」
――カチッ
世界から音が消え、時間が停止する。
まずはコアの位置を特定しなくては。
「『生命共鳴』」
――スゥゥゥゥゥゥ……
「見つけましたわ」
魔法を発動すると、オークジェネラルの胸の中心あたりが強く光って見える。
そこから強い生命エネルギーを感じた。
あれがコアだ!
あとはコアを破壊するだけだ!
「『身体強化』!」
魔法で脚力と腕力を強化する。
強化した脚力でコアに向かって数メートルジャンプし、パンチを叩き込む!
「はぁっ!!!」
――ドゴン!
重い一撃がオークジェネラルに入る。
「まだまだいきますわよ!」
――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴォ!!!!!!!!!
俺は勢いそのままに連続で強化した拳を叩き込んだ。
そして、「スタンッ」と着地する。
――ヒュゥゥゥゥ……
『時間停止』の限界が来て、時間が動き出した。
――ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッ!
「グォ!?」
「!?すごい勢い……!」
時間が動き出すのと同時に、停止中に叩き込んだダメージがオークジェネラルに一気に入る。
凍って固定しているオークジェネラルの足元が「ピキピキ……」と悲鳴を上げている。
「サフィア!なんとか吹っ飛ばないように固定してください!肉のためですわ!」
「うん。頑張る……!」
そして、サフィアがなんとか固定していると「バリンッ!」という音が聞こえた。
おそらくコアが破壊された音だろう。
「もう無理」
サフィアも限界を迎え、足元の凍結が解除される。
すると、支えを失ったオークジェネラルは「バタァァァンッ!」と前に倒れ動かなくなる。
「ごきげんよう、オークジェネラルさん」
どうやら倒せたらしい。
よかったぁ〜どこかに吹っ飛ばなくて。
サフィアが必死に固定してくれたおかげだな。
「疲れましたわぁ〜……」
俺もその場にへたり込む。
すると、サフィアが俺のもとまで歩いてきた。
表情こそあまり変わってないが、彼女も相当疲れたらしい。
「お見事、セレスティア。いきなりオークジェネラルが吹き飛びそうな勢いになって大変だった。なにをどうやったの?」
「えっと、まずは――」
「いや待って、まだ答えを聞きたくない。この謎は自分で解く」
「あっ、そうですの……」
「うん。今はそれよりも肉」
結局肉かい。
サフィアは相変わらずだな……
「セレスティア様ー!サフィア様ー!」
リリィが叫びながら、トテトテと心配そうに駆け寄ってきた。
「二人とも……ヘトヘトじゃないですか……早く回復しないと……!」
「お願いしますわ……」
「うん。お願い」
「はい……!『治癒』……!」
リリィに治癒魔法をかけてもらうと少しだけ身体が軽くなり、動けるくらいにはなった。
「ありがとうございます、リリィ」
「いえ……応急処置ですが……」
「ふう、助かった」
サフィアも治癒魔法で回復したようだ。
そしてすぐに、倒れているオークジェネラルの方に向く。
「肉。早く持って帰ろう」
「そうですわね。きっと報酬もたくさん貰えますわ」
サフィアがマジックバッグで「するする〜」っとオークジェネラルを回収する。
これであとはギルドに報告すれば、討伐クエストは完了だな。




