第53話 食欲の鬼とオークジェネラル
寮を出て、俺たちは街にある冒険者ギルドへと向かう。
道中、俺は気になっていたことをサフィアに聞く。
「それでサフィア。どうしてこんなに急いでいるんですの?ただのオーク狩りでしょう?」
「甘い」
キリッとサフィアが言う。
「今回狙うのはただのオークじゃない。『オークジェネラル』」
「じぇ、ジェネラル!?なんか強そうですわね……」
俺は思わず声を上げる。
ジェネラルってことはオークの王様的な?
オークの上位種かな?
「うん。オークよりも断然強い。そしておいしいらしい。筋肉が引き締まっていて、脂の乗りも最高だとか。まさに肉の王様」
「食べる前提なんですのね……」
「うん、当たり前。そうじゃなきゃこんな急いでいない。早いもの勝ちだから」
食べるかどうかはともかく、上位種だというのなら報酬も高いんだろう。
だから争奪戦になるのかもしれない。
「早く食べてみたい……じゅるり」
「よだれ出てますわよ」
「サフィア様……ハンカチです……」
リリィがハンカチでサフィアの口元を拭いている。
これじゃあまるでお母さんみたいだな、リリィは。
「でもサフィアさん、オークジェネラルなんて私たちだけで勝てるんでしょうか……?推奨ランクも高いはずじゃ……」
リリィが当然の疑問を投げかける。
「うん。だからセレスティアを呼んだ。私とセレスティアがいれば瞬殺」
「えぇ……?」
「その自信はどっから湧いてきますの……?」
自信満々なのはいいけど、リリィを危険な目に遭わせるわけにはいかないぞ。
まあ、いざとなったら俺がリリィを連れて逃げればいいか。
「着いた」
ギルドに着くといつも以上に盛り上がっていた。
「あら、今日は騒がしいですわね」
「うん。みんな目当ては一緒」
ギルドのクエスト掲示板を見てみると、デカデカとオークジェネラル討伐クエストの張り紙があった。
「おっ、ありましたわね。えっと……推奨ランクは……ランクD!?」
俺がよく一緒にクエストに行くクレアは確かランクEとかじゃなかったか!?
これ受けられるの……?
「あぅ……やっぱり推奨ランクは高いですね……これではクエストは受けられないんじゃ……」
リリィが不安そうに言う。
俺と同じことを思っていたようだ。
「うん。問題ない。私は冒険者ランクDだから」
「は?」
さらっとサフィアがとんでもないことを言った。
「あなた、そんな凄かったんですの!?」
「うん。いつの間にかなってた」
いつの間にかって……
そういうもんなのか?
「最初はキノコ採取とか、簡単なクエストを受けてた」
なんか急に語りだした!?
しかし、あのサフィアも地味なこともしてたんだな。
「あら、意外と地道ですのね」
「うん。キノコが食べたかったから」
「結局食欲ですのね」
結局それかい。
地道にランクを上げていこうとか微塵も考えてないじゃないか。
「でもキノコだけじゃ学園に来る前とあまり変わらない。肉が欲しくなった」
「はぁ……」
「だからクエストを受けて、森にいる美味しそうな魔物を片っ端から狩ってたら、いつの間にかギルドに評価されてランクが上がってた」
「食べるために討伐してたら評価されたんですの!?」
討伐実績というより、ただの食い意地じゃないか……
こいつの食欲の犠牲になった魔物はどれだけいるのだろうか……
適当なこと言ってるだけかもしれないしよくわからんが、サフィアの実力は確かなようだ。
「さすがサフィア様です……それに比べて私は……最低ランクのGですから……」
リリィがうつむきながら自信なさげにそう言った。
「あら、ならわたくしとお揃いですわね。わたくしもリリィと同じランクGですから」
「えっ……そうなんですか……?セレスティア様ほどの方がランクGなんて……」
「いえ、事実ですわ。なのでそんなに悲しそうな顔しないでリリィ」
「ありがとうございます……!」
落ち込んでいるリリィを励ますと、少し元気を取り戻したようだった。
すると「受注してきたよ」と、いつの間にか受付に行っていたサフィアが戻ってきて報告してきた。
行動が早いな!
「セレスティア、ランクGなんだ。クエストを受注するときに言われた。もしかして弱い?人選間違えたかな」
「あなたは黙ってなさい」
「冗談。セレスティアの強さはよく知ってる」
「分かってるではないですか。受注できたのならさっさと行きますわよ!早いもの勝ちなのでしょう?」
「うん。行こう」
「はい……!頑張ります……!」
こうして俺とリリィとサフィアの三人パーティーで、オークジェネラルの討伐クエストに向かうのだった。




