第52話 早朝の来訪者
翌朝――
「朝ですよー!起きてくださーい♪」
「んん……やだ……寝る……」
ゆさゆさ……
「セレスティアさーん!朝!朝ですよー!」
ゆさゆさ……ゆさゆさ……
ええい、しつこい!
昨日の帰省やドラゴンジェットコースターの疲れもあって、泥のように眠っていたのに!
「おいエリス!今日休みなんだろ!?なんで起こすんだよ!」
「私だって何もないのに起こすほど鬼じゃないですよ?」
「じゃあなんで……」
「お客さんですよ、お客さん」
「へ?お客さん?こんな朝早くに?一体誰が……」
俺は眠い目を擦りながら、パジャマのまま部屋の扉を開ける。
するとそこには、深い青髪の少女が立っていた。
「やっほー」
「げっ、サフィア」
「なにその反応」
そしてその隣には、もう一人。
栗色の髪の少女が申し訳なさそうに立っていた。
「おはようございます……セレスティア様……朝早くからすみません……」
「あらリリィ、ごきげんよう」
「私を見たときと反応全然違う」
「それはそうでしょう。自分の普段の行いを考えなさいよ。それより、こんな朝早くに何の用ですの?」
俺はサフィアに対しては冷たくしつつ、リリィには優雅に微笑む。
態度の差が激しいのは自覚しているが、サフィア相手ならこれくらいでちょうどいい。
本人も気にしてないだろう。
すると、サフィアが藪から棒に言った。
「狩りに行こう」
「狩りとは?」
「ハンティング」
「いえそういうことではなく」
「うん。オーク狩りのクエストに行こう。倒せば肉が食べられる」
「本当ですの!?……って、そんなこと言ってなにか企んでるのでは?」
俺はサフィアに疑いの目を向ける。
なんか変な実験とかに付き合わされることになったら嫌だぞ。
「セレスティアさんはまたそうやって疑って〜。たまには素直に聞いたらいいじゃないですか♪」
後ろからエリスが茶々を入れてくる。
なんかこいつに言われるとムカつくな。
「うん。何もやましいことはない。ただ肉が食べたいだけ」
「本当ですの……?」
「うん。セレスティアも肉、食べたいでしょ」
「うーん……しかし……」
「肉だよ、肉」
「肉……」
「リリィもいるよ」
「リリィ……そういえばなんでリリィも?」
俺は改めてリリィの方を見る。
サフィアとリリィ、珍しい組み合わせだ。
リリィとサフィアはルームメイトだが、以前あまり会話がないと言っていたはず……
「まさか、リリィを人質にとってわたくしを連れ出そうと……」
「そんなことはしない。私をなんだと思ってるの」
「マッドエルフ」
「直球」
するとリリィが慌ててサフィアをフォローする。
「セレスティア様、それは違います……!私がサフィア様についていきたいと志願したんです……!」
「うん。ルームメイトとして親睦を深めたいって。私も断る理由がない」
なるほど。
リリィなりに、同室のサフィアと仲良くしようと頑張っているのか。
なんて健気なんだ……!
それならぜひ手伝ってあげたい。
「そういうことでしたらいいでしょう。わたくしも同行しますわ」
「やったー」
「あくまでリリィと肉のためですから。変なことしたら許しませんわよ!」
「うん。分かってる。誓って変なことはしない、多分」
「多分ってつけちゃだめでしょう!言い切りなさいよ!」
サフィアのこういうところが信用できないんだよな……
まあいいや、オーク肉は魅力的だし。
「じゃあセレスティアさん、いってらっしゃ~い♪」
「あれ?エリスは来ないんですの?」
エリスが満面の笑みで手を振っている。
こいつのことだから、てっきりついてくるものだと思っていたが。
「私だっていつでも暇してるわけじゃないんですよ?」
「あなたがこの世界で一番暇してるでしょう」
「なんてこと言うんですか!せっかく私が気を利かせてあげてるのにぃ〜」
「あなたにそういう気遣いができるとは思いませんでしたので」
「むぅ〜なんですかその言い草はぁ〜」
エリスがぷくぅ〜っと頬を膨らませ拗ねてしまった。
しかしエリスが気を遣うなんて、珍しいこともあるもんだな。
まあ、エリスがいない方が平和に終わるかもしれないし良しとしよう。
なんて考えていると、拗ねていたはずのエリスが小声で話しかけてきた。
切り替え早いな。
(セレスティアさん、これはチャンスですよ!サフィアさんがいるとはいえ、リリィさんともっと仲良くなれるかもしれないじゃないですか!)
(確かに……!それでお前は来ないのか)
(はい、頑張ってくださいねぇ〜♪)
(わかった。サンキューエリス)
俺たちはこそこそと内緒話をする。
エリスなりに俺やリリィの交友関係を応援してくれているらしい。
「二人とも何話してるの。先に外で待ってる」
「あの……セレスティア様……そこまで急がなくてもいいですから……」
「だめ。急いで。肉は待ってくれない」
「あぅ……」
「わかりましたわ。すぐ行きますから」
せっかくリリィが気を遣ってくれたのに、サフィアは肉で頭がいっぱいみたいだ。
俺は急いで着替えを済ませる。
着替えは今回もエリスに手伝って貰ったが……
急いでるから仕方ない!
そして、寮の入口で待っていた二人と合流し、肉を求め、共に出発するのだった。




