第47話 初めてのポーション
「大変な目に遭いましたわ……」
俺はクレアに治癒魔法をかけてもらいながら、深くため息をつく。
「でも楽しかったでしょう?」
「あなたは楽しかったでしょうね!」
「こらっ暴れないでよ……魔法かけづらいでしょ!」
ニコニコと話しかけてくるエリスに言い返そうとして、治療中のクレアに怒られる。
「大体あなた、ついてきた割になにもしてないではありませんか!なにしにきましたの?」
「ちゃんと指笛吹いたじゃないですか♪『気分転換』に♪」
「覚えておきなさいよ……」
俺はエリスを睨みつける。
クレアも相当参ったようで、呆れ果てた顔をしていた。
「エリス、あんたなんにもしてないから取り分はなしね」
「そんなぁ〜」
セリフと顔が合ってないぞ。
普通、報酬なしと言われたら残念そうな顔をするだろう。
なんでそんなに楽しそうなんだ。
「ま、いいですけどね♪あなたたちのあの姿が見られたことが報酬みたいなものですから♪」
「はぁ……」
クレアも段々とこいつのことが分かってきたようで、諦めたようにため息をついていた。
「あ、でも今回起こったことはギルドや学園には内緒ですよ♪」
「言わないわよ。なにしたか知らないけど、深く関わると面倒くさそうだし」
「クレアさんは物分かりがいいですね〜♪」
クレア、かわいそうに……
今回は完全に女神の暇つぶしに巻き込まれてしまった。
せめて謝っておこう……
「ごめんなさいクレア、あなたを巻き込んでしまって」
「なんであんたが謝るのよ……」
「『あれ』が謝ると思います?」
「……思わないわね」
俺が親指でエリスを指差して言うと、クレアは即答した。
エリスは「人を指さしたらいけないんですよー♪」とか言っていたが、人じゃないしいいだろ。
そんな会話をしながら治癒魔法をかけてもらったが、さすがに無理をしすぎたのか、身体のダルさは完全には抜けなかった。
「ごめん、あたしは治癒魔法の専門家じゃないし、応急処置くらいしかできなくてさ」
「いいえ、ありがとうございます。十分ですわ」
応急処置してくれるだけでもありがたい。
あとは自分でなんとかしよう。
あっそうだ!
そういえば前回のクエストのとき、クレアに保険としてポーションを一つ貰っていたんだった!
せっかくだし飲んでみよう!
俺はずっと懐に入れたままにしていたポーションを取り出し、蓋を開けて一気に飲み干す。
――ごくごく
「……美味しくないですわ……」
「そりゃそうでしょ……ポーションなんだから……」
なんか草と泥を混ぜたような変な味がする……
だがしかし!
飲んだ瞬間、身体の奥から力が湧いてきて、みるみるうちに元気になった!
効果は確かだ!
「うおーすごいですわ!これがポーションの力ですのね!」
「あんたってほんと些細なことではしゃぐわね……」
復活してはしゃぐ俺を見て、クレアは呆れていた。
そして俺たちはギルドへと戻り、報告を済ませる。
手続きは慣れているクレアが色々とやってくれた。
「はい、これがあんたの分の報酬ね」
ジャラジャラとお金が入った袋が渡される。
中身を確認して、俺は目を丸くした。
「えぇ〜っと銀貨が1枚、2枚……15枚!?こんなに貰えますの!?」
「まあエリスへの分け前はないしね。スライムより危険な魔物だし、数も倒したし、これくらい普通じゃない?」
「そ、そうなんですのね……」
フォレストウルフの群れ討伐、侮れないな。
これだけあれば……
「よかったですね、セレスティアさん♪」
そう言いつつ、エリスが満面の笑みで手を差し出してきた。
「はぁ……分かってますわよ。はい、これが今日のランチの分ですわ」
「ありがとうございます♪」
エリスへの報酬はないと言っても、結局俺の借金は返さなきゃいけないわけだから、当然こうなる。
まあ借金を返しても手元にたくさん残ったからよかった。
「おーほっほ!これでしばらくは安泰ですわ!」
「……前から思ってたけど、あんた令嬢じゃないの?なんでそんなギリギリの生活してるのよ……」
「それについてはノーコメントですわ!」
「あっそう……まあどうでもいいけど。面倒なことには巻き込まないでよ?」
じっと見つめて念を押してくるクレア。
まあ今回は大変な目に遭ったからな。
ていうか、これでもう一緒にクエスト行ってくれなくなったらどうしよう!?
「あ、あの!また一緒に行ってくれますわよね!?」
「……そんな目で見ないでよ。別にいいって」
クレアは少し困ったように視線を逸らした。
「今回はちゃんと魔法の制御できてたし。あんたの実力も分かったしね。こっちとしても、一緒に来てもらったら心強いわ」
「!!ありがとうございます!」
よかった。
クレアに愛想を尽かされていなかったようだ。
「エリスにはわたくしからもよーく言っておきますから!これからもよろしくお願いしますね?」
「それは本当によく言っておいて。それじゃまたね」
クレアは念を押したあと、手を振って去っていった。
その後ろ姿を見送った後、俺は隣の女神のほうに振り向く。
するとニッコリと微笑んできた。
「今回も楽しかったですね、セレスティアさん♪」
「お、お前なぁ!いきなりドラゴンはないだろ!」
クレアがいなくなったことで、俺はいつもの口調に戻って文句を言う。
しかしエリスは悪びれる様子もなくニコニコとしている。
「派手なほうがいいじゃないですか♪ほら、クレアさんだって今日いきなり爆発魔法ぶちかましてたでしょう?」
「それは魔物を倒すためであってお前は魔物を呼んでるんだよ!全然違うだろ!」
「あれぇ?私は指笛を吹いただけで、たまたまそのタイミングでドラゴンが来ただけじゃないですかぁ?」
「このタイミングですっとぼけるのかよ!無理があるだろ!自白してるようなもんだぞ!はぁ……なんかアホらしくなってきた……早く帰るぞ」
これ以上相手しても無駄だと呆れ、俺は先に歩きだす。
「あっ待ってくださいよ〜♪」
そんな俺の後ろをエリスはトテトテとついてくる。
結局二人で夕暮れの帰り道を歩くのだった。




