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第38話 闇魔法使いの血統

「見つけたわよ、あんたがセレスティアね!」


名前を呼ばれて、俺は思わず声のする方を向く。

そこには、見知らぬ黒髪の少女が立っていた。

誰だ?

こんな知り合いはいなかったはずだが。


「誰ですの?あなた」


俺は即座に令嬢モードに戻り、問いかける。


「あなたが全属性のめちゃくちゃやってる令嬢ね!今だってなんかしてたでしょ!?」


質問の答えになってないんだが……

いきなりなんなんだ?

というか、もしかしてこの子も止まった時の中を動けるのか?


「あなた、何者ですの?」


俺は再び問いかける。


「私はオフィーリア!誇り高きナイトレイ家の血を受け継いだ、闇属性の魔法使いよ!めちゃくちゃなことをするあんたを正しに来たわ!」


闇属性……?

そうか、光属性のミーナがいるなら、闇属性の子もこの学園にいても不思議じゃない。

しかし、「正しに来た」とはいったい……。


「分かってるのよ!あんたがさっき『なんかした』ってことは!全属性使えるって聞いたからどんな人かと思えば、こんな危険なやつだなんて……」


「なんかした」って、ふわふわしたこと言ってるな。

どうやら時間停止そのものを認知したわけではないらしい。

ただ、「世界に干渉した違和感」みたいなものを感知できているだけ凄いのかもしれない。

しかし、なんとなく闇属性ってもっと悪いやつのイメージがあったが、えらく正義感が強そうな子だな……

だが怯むわけにはいかない!俺にも正義はある!


「わたくしだって好きでこんなことしてるわけじゃありませんわ! 魔力がまだうまくコントロールできてないだけです!」

「問答無用!この学園、いやこの世界の平和のために私が裁いてやる!」


めちゃくちゃだ!まるで話を聞いてくれない!


「さあ喰らえ!私の誇り高き闇魔法を!」


やばい、なんかされる!

俺が身構えていると――。


「あれ……急に眠く……あんた……私に何を……?」


急にオフィーリアが眠そうな声を出し、ふらりと目を閉じる。

な、なんだ?俺は何もしてないぞ?

すると次の瞬間、オフィーリアの目がカッ! と開いた。


「すまんのぅ……オフィーリアはとりあえず突っ走る子じゃからなぁ……」


なんだ?さっきと全然雰囲気が違うぞ?

それに口調も。

まるで別人みたいだ。

俺が問いかけようとすると――


「みなまで言うな。お主の聞きたいことは分かっておる。妾が何者なのか知りたいんじゃろう?」

「えぇ……さっきオフィーリアと名乗っていましたが、あなたは一体……」

「聞いて驚け!妾は……」

「ヘカーティですよ♪」


さっきまで黙って見ていたエリスが、急に割り込んでくる。


「あぁっ!エリス!せっかく妾がかっこよく名乗ろうとしたのに!」

「ふふっ、もったいぶるからですよ♪なにかっこつけてるんですか♪」

「えぇ……あなたたちお知り合いですの?」


なんか凄く仲良さそうに喋ってるじゃないか。

ヘカーティと言っていたが、もしかして人間じゃなかったり?

一応『女神』であるエリスとこんなに親しく話すなんて。

それにさっきオフィーリアと名乗っていた少女は?


「妾とエリスはまあ、旧知の仲じゃな。妾の肉体はとっくに朽ちてしまったが、こうして闇魔法を使い、魂だけ子孫の肉体に取り憑いておるんじゃ」

「まったく、いつまでいるんですか。さっさと成仏すればいいのに」


エリスが呆れたように肩をすくめた。

どうやら、本当に長い付き合いらしい。


「つまり、オフィーリアに取り憑いている幽霊ってことですの……?」


俺が恐る恐る確認すると、ヘカーティは自慢げに胸を張った。


「まあ、そういうことじゃな!妾はすごいんじゃぞ!初代ナイトレイ家の当主!闇魔法を極めし賢者!ヘカーティ・ナイトレイとは妾のことじゃ!」

「いや、そんな風に名乗られても何も知りませんわよ……」


急にドヤ顔をされても反応に困る。

俺が正直に答えると、彼女はポカンとして、すぐに何かを納得したように頷いた。


「おおそうか……お主、この世界の住人ではないのであったな。エリスの力でこの世界に来たのであろう?」


げっ、そんなことも知ってるのか。


「お主もかわいそうじゃなぁ……エリスのおもちゃに選ばれてしまって……」

「そんなこと言って、あなたも楽しんでるでしょう?ヘカーティ」


おもちゃって……

それにしても凄い仲良さそうだなこの二人。

てか、この女神にも友達いたんだな。


「そもそもその肉体はオフィーリアのものなんでしょう?子孫とはいえ勝手にこんなことしていいんですの?」

「普段はあまり表に出ないようにしているんじゃがのぉ。お主を問答無用で襲おうとしてたから、さすがに可哀想だと思ってこうして出てきたんじゃ。妾に感謝せい」


確かに、あのままだったらよくわからないまま闇魔法を喰らうところだったな。


「えぇ、感謝いたしますわ」

「それじゃ、またの。あまり長い時間表に出られないんじゃ。話せて楽しかったぞ、エリスのおもちゃ……ではなくセレスティアよ」

「誰がおもちゃですか!まったくあなたもエリスと似たような性格してますわね……」

「どういう意味です?それ」


隣でエリスが突っ込んでくるが無視しよう。


「それではごきげんよう、ヘカーティ」

「うむ」


ヘカーティが目を閉じると、すぅ~っと雰囲気が変わっていく。


「ハッ!私……なにをして……」

「目を覚ましたみたいですわね、オフィーリア」

「セレスティア……!そうだ、魔法で裁いてやろうとしたところでいきなり眠気が……きっとご先祖様ね!」


ああ、一応自覚はあるのか。自分の身体に、『もうひとつ魂』があることを。


「しかし、このタイミングで来たってことは裁くべきではないということ……?ご先祖様が間違ってるとは思えないし……」


何か一人でぶつぶつと話し始めるオフィーリア。


「仕方ない!今回は見逃してやるわ、セレスティア!だけど、またなんかしたら今度こそ容赦しないんだから!」


そう言って彼女は去っていった。

嵐のような子だ。


「なんかすごかったですわね……」

「ふふっ♪面白いでしょう?」

「はぁ……そうですわね……」


俺はそんなエリスにため息をつく。

また変な奴に絡まれてないか?


「いい加減お腹すいた!食堂に行きますわよ!」

「はいはい♪」


そして今度こそ、俺たちは食堂に向かうことにした。

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