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第34話 初めての部活動

嵐のような生徒会の襲来が去り、部室に平和(?)が戻った。

ベアトリス部長は、腕まくりをしながら宣言する。


「じゃあ、今日はこの爆発の片付けがあるから解散!」

「えっ、今日は何もしませんの?」


せっかく入部したのに活動なしか。

俺が拍子抜けしていると、部長は真顔で答えた。


「しょうがないじゃん。私は『爆発は一日一回』って決めてるんだ」


なんだその謎ルール。

一回まではセーフだと思っているのか? アウトだぞ。


「それに、入部したての新入部員にこんな汚れ仕事をさせるわけにはいかないでしょ?」


おっ。

意外とそういう倫理観はあるんだ、この人。

少し見直したかも……と思った次の瞬間。


「あっ、でもリリィくんは手伝ってね」

「あぅ……はい……」


……いや、やっぱダメだこの人。

リリィの返事が慣れきっている。

もしかして、毎回こうなのか?

部長が爆発させるたびに、リリィが尻拭いをさせられているのか?

これじゃあリリィがかわいそうだ。

恋人として守ってあげないと。

そうだ!ここは一つ、ガツンと言ってやろう!

俺は咳払いをして、ベアトリス部長の前に立ちはだかった。


「あの、ベアトリス!わたくし、リリィの恋人なのですが!」


俺は胸を張り、高らかに宣言する。


「わたくしの恋人をあまりいじめないでくださる?」


どうだ。

これでさすがの変人でも躊躇するはず――


「ふーんそうなんだ。リリィくん、まずはそっちの棚の片付けを――」


……え?


「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!?」

「ん? なに? もう帰っていいんだよ?」

「い、今、聞いていましたの!? 恋人ですのよ!? わたくしたち!」

「うん、聞いたよ。それよりこの容器洗わなきゃ」


そんな……

まるで人の話を聞いていない。

というか、俺たちの関係に1ミリも興味を示さないじゃないか!

魔法以外の情報は脳内で自動的に削除される仕組みなのか?

俺はガックリと肩を落とした。

こうなったら仕方ない。


「……仕方ありませんわね。わたくしも手伝いますわ」

「えっ、いいの~?」


部長がキョトンとして俺を見る。


「汚れるよ? 君、いかにも『お嬢様』って感じじゃん。こういうの嫌なんじゃないの?」

「わたくしも入部してしまった以上は部員としてきちんとやりますわ。それに……リリィを助けたいですし」

「セ、セレスティア様……」


リリィが雑巾を持ったまま、うるうるとした瞳で俺を見つめてくる。

不謹慎ではあるが、かわいいな。

すすで少し汚れた顔が、小動物っぽさを加速させている。


「……ま、君がやるって言うなら止めないけどさ」

「ええ、やらせていただきます」

「じゃあ早速そっちの床のほうを頼むよ~」


こうして、俺の記念すべき部活動初日は爆発現場の清掃作業となったのだった。


「……よいしょ、よいしょ」


俺は床に散らばったガラス片や謎のすすを片付けていく。

まさか異世界で雑巾がけをすることになるとは。


「ねえセレスティアくん。君、全属性使えるんだよね?」


棚の整理をしていたベアトリスが、ふと思い出したように声をかけてきた。


「ええ、まあ」

「だったらさ、水魔法とか風魔法でさ、この汚れを一気に掃除できない?リリィくんも風魔法を使ってよく掃除してるし」

「あ」


言われてみればそうだ。

ここは魔法学園。掃除も魔法でやればいいじゃないか。

なんで俺は物理でゴシゴシやっていたんだ?


「盲点でしたわ。やってみます」


俺は立ち上がり、水魔法を使う準備をする。

イメージするのは、高圧洗浄機。

汚れを根こそぎ吹き飛ばすイメージで……。


「はっ!」


ドォォォォォン!!


「うわぁっ!?」

「ひえっ……!」


俺から放たれた魔力は、掃除するための魔法にしては強すぎた。

凄まじい水圧が床を直撃し、汚れごと床板を削り取る。

さらに勢い余って、反対側の壁に積まれていた色々な器具の山をなぎ倒した。


ガシャーン! バリーン!


「あ……」


水煙が晴れた後には、ピカピカになった床と新たに散乱した器具や本の山があった。

俺は冷や汗を流しながらゆっくりと部長を見る。


「き、きれいになりましたわね……?」

「仕事増やしてどうすんのさ!!」


ベアトリスが頭を抱えて叫んだ。


「君、魔力制御ガバガバじゃないか! 掃除係はクビだよクビ!」

「うぅ……申し訳ありません……」


俺が小さくなっていると、本日二度目の衝撃音が響いた。

バァァァァン!!


「ベアトリス! いい加減にしなさい! また破壊音がしましたよ!」


扉が再び悲鳴を上げ、鬼の形相のカノンが飛び込んでくる。


「いや私じゃないって! 今回はセレスティアくんだよ! 濡れ衣だ! 私は悪くない!」


ベアトリスが必死に俺を指差して叫ぶ。

しかし、カノンの目は冷ややかだ。


「またそんなことを……自分より立場の弱い新入部員に罪をなすりつけるなんて最低です!」

「本当なんだってばぁ!」

「……すみません、わたくしですわ」


俺がおずおずと手を挙げると、カノンは石のように固まった。

「お、お姉様!?」


そして次の瞬間、その表情がパァァァッと輝く。


「な、なるほど! お姉様がやったのなら……きっとこれは『前衛的な掃除』、あるいは『床の耐久テスト』だったのですね! さすがですお姉様! 破壊の仕方が芸術的です!」

「理不尽!!態度が私の時と違いすぎない!?」

「うるさいですね!あなたと違ってお姉様がやることには全て意味があるんです!」

「私の爆発にも意味はあるよ!」


ベアトリスが叫ぶが、カノンは聞く耳を持たない。

意味のある爆発ってなんだよ。

とはいえ、壊してしまった事実は変わらないし、カノンにこれ以上迷惑もかけられない。

俺はカノンをなんとかなだめて帰した。

結局俺はその後、部屋の隅で大人しくゴミの分別係をすることになったのだった。

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