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第23話 スライム討伐クエスト

「こんにちは!まずは冒険者登録してください」


受付嬢がそう言った。

クエストを受けるためには冒険者登録をしないといけないらしい。

初心者はGランクから始まり一番高いのがSランクだとか。わかりやすくていいな。


「ちなみにあたしはEランクよ」

「だから魔法を使い慣れていましたのね」


属性魔法のときや治癒魔法のときにすごい魔法を使うと思っていたがそういうことだったのか。


「はい、これで登録は終わりです。Gランクの方でもEランクの方と一緒ならクエストを受けることができますよ。今回はスライム討伐のクエストですね。行ってらっしゃい」

「ほら、いくわよ」


冒険者登録とクエスト受注をし、早速スライム討伐に向かう。


「いい? セレスティア。スライム相手には物理攻撃はあまり効かないわ。核を潰すか、魔法で倒すのがセオリーよ」


薄暗い森の中、クレアが手慣れた様子で先導しながら説明してくれる。

こういう実戦には慣れているようだ。

対する俺は、初めての実戦なのでヒヤヒヤしながらついていくのが精一杯だ。


「わ、わかってますわ。魔法でドカンとやればいいんですのよね?」

「ドカンじゃなくて、核を狙って最小限の魔力で倒すの。無駄撃ちは厳禁よ。魔力がもったいないから。」


クレアが呆れたように言う。

うーん、うまく魔法を制御できるだろうか。


「あとこれ、一応ひとつ渡しておくわ」


クレアがポイっと小瓶を渡してくる。


「なんですの、これ?」

「ポーションよ。昼間みたいになったら困るでしょ?あたしがいつでも治してあげられるわけじゃないんだから保険よ保険。結構高いんだから無駄遣いしないでよね」


これがポーションかぁ。話には聞いていたが実物を見るのは初めてだ。

冒険してる感じがしてわくわくするなぁ!

そんなことを考えながら森を進んでいく。


「あ、いたわよ」


クレアが足を止め、茂みの陰を指差す。

そこには、プルプルと震える青いゼリー状の物体がいた。


「あれが……スライム……!」


初めて見る生のスライム。

想像通りの見た目だ。

結構可愛いな。ペットにしたいくらいだ。


「まずは私がお手本を見せるわ。よく見てなさい」


クレアが構え、鋭い視線をスライムに向ける。


「『火球ファイアボール』!」


彼女の手のひらから、ソフトボール大の炎の球が放たれた。

火球は一直線にスライムへ向かい、着弾と同時にボワッと燃え上がる。


「ピギーッ!」


スライムは一瞬で蒸発し、あとには小さな石みたいなものが残った。

鮮やかだ。

無駄のない動き、適切な魔力量。

こんなにもあっさりと倒すなんて。

慣れているなぁ。


「すごいですわクレア! 一撃ですのね!ところであの石はなんですの?」

「あれはスライムを倒したときに出てくる魔石よ。スライムの場合、これが討伐の証になるわ」


そう説明しながらクレアは魔石を拾う。

へぇ~、そういうシステムなのか。

回収するの忘れないようにしないと。

そしてクレアとともに次の獲物を探す。

すぐに二匹目のスライムが見つかった。


「ほら、またいた。今度はあんたがやってみなさい。授業のときみたいなショボいのじゃ倒せないからね?」

「ええ、任せてくださいな」


俺は前に出ると、スライムに向かって右手をかざした。

クレアにお手本を見せてもらったし同じ火属性魔法でやってみよう。


(イメージ……燃やすイメージ……)


クレアの魔法は小さかった。

あれくらいなら俺にもできるはずだ。

小さな炎の球を出すイメージをして……。


(出力は最小限……チョロ火でいい……)


俺は体内の魔力回路を開き、ほんの少しだけ魔力を指先に送った――つもりだった。


「いきますわよ……『火球ファイアボール』!」


ドオオオオオオオオオオオッ!!!!


「えっ」


俺の掌から放たれたのは、小さな火球ではなかった。

火炎放射のように噴き出した、紅蓮の爆炎。

それがスライムに向かってとんでもない勢いで噴射された。


「ピギィイヤアアアアアアアッ!?」


スライムの断末魔など、轟音にかき消されて聞こえない。

視界が真っ赤に染まる。

熱い。とにかく熱い。

俺の目の前の空間が、一瞬にして灼熱地獄へと変わった。

まずい、早く止めないと!


「わ、わわっ! 止まれ! 止まれですわーッ!」


慌てて魔力の供給を断つ。

炎はフッと消えたが、目の前には信じられない光景が広がっていた。

スライムがいた場所を中心に、扇状に広がる焦土。

地面は黒く焼け焦げ、数本の木が炭になって煙を上げている。

スライムなんて影も形もない。魔石すら焼き尽くしてしまったかもしれない。


「…………」


森に静寂が戻る。

パチパチと木が爆ぜる音だけが響いている。

俺は恐る恐る振り返った。


「おーほっほっ!さすがわたくしですわ!スライム程度簡単に焼き払えますわ!……やりすぎちゃいましたかしら?」


クレアがものすごい形相で睨んでくる。


「あ、あんた……!バカなの……!?」

「失礼な! ちょっと手元が狂っただけですわ!」

「あれのどこが『ちょっと』よ!? 森を焼き払う気!? スライム一匹にこんな派手な魔法撃ってどうすんのよ!!最小限って言ったでしょ!!」


クレアが顔を真っ赤にして怒鳴り込んできた。


「ご、ごめんなさい……でも、倒せましたわよ?ほら、魔石もちゃんと残ってますわ!」

「スライム以外も燃やしてるじゃない! 見なさいよ、近くの木がまだ燃えてるわ!このままだと火事になってとんでもないことになるわよ!」

「へ……?」


クレアが指差した方を見るとまだ燃えている木があった。

このまま燃え広がるとまずいんじゃないか……?


「あんた全属性使えるんでしょ!?水魔法でなんとかしなさいよ!」

「水魔法の使い方、まだ習っていませんわ……」

「はぁ!?」


そう、俺が属性魔法で学んだのは火、風、土、光であり水属性だけピンポイントで学んでいなかった。


「ったく、仕方ない!」


そう言ってクレアは何か青い玉を取り出した。

そしてそれを燃えている木に向かって投げる。

すると――


パァン!!!


と、玉が破裂し大量の水が噴き出した。

そうして火は消えていった。


「なんなんですの、いまのは?」

「水魔法が込められたマジックアイテム『ウォーターカプセル』よ。あたし火属性だから、もしもの時の消火用に保険で持ってるの。あくまで保険だし、高いしであんま使いたくなかったんだけど……」

「なんにせよ助かりましたわ……ありがとうございます……」

「これ、貸しにしとくから」


もしかしてまた借金が増えるのか!?

しかし、クレアのおかげで助かった。

これではただの環境破壊だ。

次はもっとうまくやってみせる!


「はぁ……はぁ……あんたの魔法デタラメすぎるわよ……次からは魔法禁止! あたしの後ろで見てなさい!」

「えぇーっ! せっかく張り切ってたのに!」

「うるさい! これ以上被害が出たら賠償金で破産するわよ!」


結局、俺はその後一回も魔法を使わせてもらえず、クレアが倒したスライムの魔石を拾う係に任命されたのだった。

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