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第22話 初めての放課後クエスト

「……これからどうしようかしら?」


ベッドの上で足をぶらつかせながら呟くと、エリスがさらりと言った。


「そうですねぇ。では『借金』を返していただきましょうか」

「……へ?」


俺は動きを止めた。

借金? 何の話だ?


「まったく、お昼のこともうお忘れですか?

リリィさんにみっともない姿を見せないために、私が立て替えてあげたんじゃないですか♪ 」


そうだった……!

完全に忘れていた……!

そもそもお金持ってないじゃん!


「女神パワーでなんとかしてくれない……?」

「ダメで~す♪早く返してくださ~い♪」


エリスがニッコリと笑う。

俺は実家からの仕送りなんてない。

体は令嬢でも、中身は身一つで放り出された転生者なのだ。


「そ、そんなこと言われても……お金なんて持ってないし……そもそも転生させたのお前じゃんか!」

「あらあら♪口調が素に戻ってますよ?」

「いいだろ二人きりなんだから」


ここには俺とエリスしかいない。

素で喋っても問題ないだろう。


「ふふっ♪いいんですかぁ?リリィさんは風属性なんですよ?風魔法を使って盗聴してるかも……」

「な、なにぃ!?」


風魔法はそんなこともできるのか!?

しまった!完全に油断していた!

俺がキョロキョロと周りを見渡しているとエリスがくすくすと笑う。


「なんて、冗談ですよ♪初心者がそんな高度な魔法使えるわけないじゃないですか♪」

「お、お前~!」


こいつ、隙あらばからかってくる。

なんて性格が悪いんだ。


「それで?いつ返してくれるんです?」

「ケチくさい女神だな。お金なんて持ってないしそもそもこの世界のお金のこともわからんぞ」

「でしょうね♪ですから、稼ぎに行きましょう」

「稼ぐ?」

「この世界には、依頼を受けて報酬を得る『クエスト』があります♪まあ要はアルバイトみたいなものですね♪」


アルバイト?めんどくさそうだなぁ……


「やだ!悪役令嬢はバイトなんてしない!」

「いや悪役令嬢は借金しませんよ。それにお金がないと今後も大変でしょう?」


確かにお金がないと、この先の学園生活も詰みかねない。

ずっと女神にお金を借り続けるわけにもいかないだろう。

いちいちからかってくるし。


「わかったよ!そのクエストとやらをやってやろうじゃないか!」

「では早速参りましょうか♪」


善は急げと、俺たちは寮を出る。

クエストを受けるため、エリスの案内で学園近くの町に出た。

そういえば学園の外に出るのも初めてだ。

近くに町もあるんだなぁ。

今度ぜひ探索したい。


「はい、ここです♪では入りましょうか♪」

「おお……!」


そして、クエストが受けられるというギルドに辿り着いた。

中に入ると掲示板があり、大小様々な紙が貼られている。


「えーっと……『迷い猫の捜索』、『薬草の採取』、『下水道の掃除』……」


どれも地味だな……

もっとこう、ドラゴン退治とかないのか?

せっかく魔法が使える世界なのにこんなんじゃ魔法関係ないじゃん……


「初心者はGランクか、高くてもFランクの依頼くらいしか受けられませんよ?おすすめはこの『食堂の皿洗い』ですね♪」

「やだ。せっかく魔法がある世界に来たのにこんなつまらないこと……もっとこう魔物倒すとかさぁ……」

「そういうのはもっと上のランクじゃないと受けられないみたいですけど?」


俺が選り好みして掲示板を睨んでいると、横から呆れたような声が聞こえた。


「……何してんのよ、あんたたち」


振り返ると、そこには腕を組んだクレアが立っていた。

しまった!令嬢モードに戻らなくては!


「あら、クレア。ごきげんよう」

「はいはいごきげんよう。……で、お嬢様のセレスティア様がこんな庶民じみた掲示板の前で何を? まさかクエストを受けるつもり?」


クレアが怪訝な顔をする。

確かに、令嬢が小銭稼ぎなんて変に見えるかもしれない。

しかも、借金しててそれを返すためなんて言えない……


「え、ええ……社会勉強ですわ!お金のありがたみを知るのも貴族の嗜み……ですわよね?」

「……ふーん。まあ、心がけは立派ね」


苦しい言い訳だったが、クレアは意外と素直に納得してくれた。

興味ないだけかもしれないが。


「クレアこそ、こんなところで何をしていますの?」

「私は訓練も兼ねてクエストを受けるところよ。誰しもがあんたみたいにお金持ちなわけじゃないしね。自分で稼がないと」

「へぇ~庶民は大変ですのね」


まあ俺もお金がないんだけど。

悪役令嬢らしく振る舞ってみる。


「ふーんそういうこと言うんだ。せっかく討伐クエストでも紹介してやろうと思ったのに」

「討伐……!」


その響きに俺は反応した。

皿洗いより断然そっちの方がいい。


「どうせ低ランクのクエストしか受けられないんでしょ?あたしと一緒のパーティーってことにすれば一緒に受けれるんだけど。そしたらあたしも助かるし」

「……!クレア! そのクエスト、ぜひわたくしも連れて行ってくださる!?」

「おぉ……そこまで必死になる……?」

「お願いですわ! 初めてのクエストですしぜひ一緒に!先ほどの授業で助けていただいたお礼もしたいですし!」

「ちょ、ちょっと、くっつかないでよ!」


俺が必死で迫ると、クレアはすぐに俺の身体を引き剥がす。


「パーティに入れてあげるから落ち着きなさいって!お嬢様はこういうの好きじゃないと思ってたんだけど……」

「ありがとうございます!」


よっしゃ!

俺は心の中でガッツポーズをした。


「よかったですね、セレスティアさん♪では頑張ってくださいね~」

「へ?あなたは行かないんですの?」

「なんで私も行かなきゃいけないんですか。そもそもこれはあなたが借金したから――」

「あー!あー!さあ、行きましょうクレア!」

「え?ああ、うん。てかいま借金って……ちょっ、痛っ、引っ張らないでよ!」


エリスが余計なこと言う前にクレアの手を強引に引っ張り、受付っぽいところに向かう。

こうして俺は、初めてのクエストに挑むことになった。


ターゲットは――『森のスライム討伐』だ。

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