第12話 リリィの初めての友達
「ほら、着きましたよ♪」
エリスに案内され、俺たちは元の場所へと戻ってきた。
そこには、授業の締めくくりに入っているアルノート先生と、疲れ果てた生徒たちの姿があった。
「どこに行ってたのですか?心配しましたよ?」
先生が柔和な笑みを向けてくる。
怒鳴られるかと思った。
この先生が穏やかな人で助かった。
「すみません先生!私が迷子になってしまって、セレスティアちゃんが探してくれてたんです!」
ミーナが勢いよく頭を下げた。
ナイスフォローだミーナ。
迷子になったのは俺のほうだけどな!
「そうでしたか。無事で何よりです。ちょうど授業も終わるところだったんですよ」
先生はニコニコと頷いた。
やはりいい人だ。
「では、本日の授業はここまでとします。
各自お昼休みに入ってください」
先生の言葉と同時に、張り詰めていた空気が緩んだ。
そうか、もう昼休みなのか。
周りの生徒たちからも「疲れた~」「お腹空いた~」という声が聞こえてくる。
「あの……セレスティア様……」
振り返ると、リリィが涙目になっていた。
「セレスティア様がどこかに行ってしまったと聞いて、心配で心臓が止まるかと……!」
リリィは俺に抱きついてきた。
「よしよし、泣かないでリリィ。少し道に迷っただけですわ」
「無事でよかったです……!あれ、そちらの人は確か……」
リリィが隣にいるミーナに気づく。
「ミーナです!セレスティアちゃんと友達になりました!」
「ちゃん!?と、友達……!?」
リリィが驚いている。
そらそうだ。この子、距離近すぎるんだよ。
「ええ、まあ……わたくしが道に迷っているときに偶然会いまして、その……成り行きで……?」
「えぇ……?」
リリィが不思議そうな顔をしている。
そんなリリィに、ミーナが声をかけた。
「あの!あなたお名前はなんて言うんですか?セレスティアちゃんの友達なら私とも友達になりませんか!」
「ひ、ひぇぇ……」
あまりの勢いにリリィが怯えている。
フォローしてあげなければ
「ミーナ、落ち着きなさい。リリィが怯えてますわ。それに友達ではなく『恋人』ですわ」
「へぇ~恋人なんだぁ~……恋人!?本当なのエリスちゃん!?」
ミーナが後ろでニヤニヤしながら見ていたエリスに聞く。
「えぇ、本当ですよ♪ラブラブです♪」
「そうなんだぁ~ラブラブなんだぁ~」
ミーナが俺とリリィを交互に見比べている。
余計なこというなエリス。
リリィはうつむきながら頬を赤らめている。
「ごめん!私何も知らなくて!ああ、でも別にふたりの交際を邪魔するとかしないから!」
「そんな心配だれもしていませんわ……」
俺は呆れながら言う。
するとリリィが声を絞り出すように発言する。
「あ、あの……友達……なりたい……です!」
すると、ミーナはパァッと表情が明るくなった。
「ほんと!?やったー!えっと名前は……」
「リリィ……です!」
「リリィちゃん!よろしくね!」
「……はい!」
ミーナもだがリリィも嬉しそうだ。
「よかったですわね、リリィ」
「はい……初めての友達です!」
「そうなんですの?」
「セレスティア様は……こ、恋人なので」
「リリィ……」
ああそうか。
俺の場合、友達を通り越していきなり恋人になったからな。
そう考えると、俺の初めての友達もミーナかもしれない。
エリスは……まあ……友達なのかよくわからんし。
なんにせよリリィが幸せそうでよかった。
「お友達ができてよかったですわね、リリィ」
「……はい!その……お昼なんですけど……一緒に食べませんか……?」
リリィが提案してくる。
そういえばさっき先生が昼休みって言ってたな。
言われてみればお腹が空いた。
するとミーナが食い気味に
「はいはい私も!私も一緒にいい!?」
と、割り込んできた。
リリィは驚いていたがすぐ嬉しそうな顔になった。
「もちろんです……!一緒に食べましょう……!セレスティア様もいいですよね……?」
「ええ、もちろんですわ」
「やったー!エリスちゃんも行くよね?」
「えっ私もですか?」
エリスが困惑している。
どうにもミーナ相手だとこいつは調子が狂うらしい。
「えっ、来ないんですか?」
「エリス様……ダメですか……?」
ミーナとリリィふたりの寂しそうな顔を見てさすがのエリスも観念したらしい。
「わかりましたよ!行きます!行きますからそんな寂しそうな顔しないでください!」
その言葉を聞き、ふたりはパァッと明るくなった。
このふたり、わかりやすいな。
しかし食事はどこでするんだ?
そもそも、この世界はどういうものを食べるのかも知らないぞ。
「どこで食事しましょうか?」
俺はそれとなく聞いてみる。
「もちろん食堂ですよ!ね、リリィちゃん」
「はい……!」
なるほど、この学園には食堂があるのか。
安心した。いきなり知らない世界で料理しろと言われたらたまったもんじゃないからな。
「では参りましょうか。わたくし、道に迷いやすいので案内してくださる?」
本当は学園の地理を知らないだけだが……
それを聞いてさっきまであたふたしていたエリスがいつもみたいにクスクスと笑っていた。




