第9話:強化ガチャと、手にした新たな装備
森の中での戦いを終え、悠斗はゆっくりと村へと戻っていた。
肩で息をしながらも、手の中には小さな虹色の結晶――**《レアロットの結晶》**がしっかりと握られている。
「これで……ガチャを強くできるんだよな」
彼は村の広場に向かった。
そこには、誰にでも見えないはずの“ガチャ画面”が、彼にはしっかりと浮かんでいた。
異世界に来てから、毎日1回だけ引けるこの不思議な力。
けれど今回は特別だ。
なぜなら――ガチャを強化できるから。
「よし、やってみよう」
悠斗は深呼吸し、そっと《レアロットの結晶》を掲げた。
すると画面が虹色に光り始め、いつもより大きな音と共に“ガチャの台”が現れた。
《ガチャ強化モード:有効》
高ランクアイテムの出現率が上昇します。
「うお……なんか、すごい演出になった……!」
カランカランカラン――!
ガチャの音が大きく鳴り、ひときわまばゆい光を放つカプセルが宙から落ちてきた。
パカッ!
中から現れたのは、黒と青を基調にした、装飾の美しい短剣だった。
その刃は、まるで夜の空のように深く光り、中央には不思議な青い宝石がはめ込まれている。
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【装備名】:月影の短剣
【ランク】:R
【攻撃力】:+40
【追加効果】:夜間の戦闘で回避力上昇、素早さ+10
【特性】:静かな刃音。魔物に気づかれにくくなる。
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「これは……すごい!」
悠斗はうっとりと短剣を手に取った。
重すぎず、しかし確かな鋭さと重厚感を感じる。
「鬼剣」は強かったが、この短剣はまた別の性能――静かに、素早く敵を仕留めるのに向いている。
「森の夜戦とか、ダンジョンの潜入に向いてそうだな」
そのとき、またステータス画面が開いた。
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《新装備「月影の短剣」を装備しました》
・素早さが上昇しました。
・夜間行動時に、隠密行動がしやすくなります。
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悠斗はガチャの力の大きさを、改めて感じていた。
たった1個の結晶で、戦いの幅がぐっと広がる。
ガチャは「運」だけど、ミッションをクリアすれば確実に強化できる手段がある。
「これからも、ただ待つだけじゃなくて、自分で動いて、ガチャの力を育てていこう」
手に入れた短剣を腰に収めながら、悠斗は次の目標を考え始めた。
次はどんな魔物がいるのか、どんなミッションが待っているのか。
少しの不安と、それ以上の期待が胸に膨らんでいた。
「……よし。次は、ダンジョンだな」
その瞬間、村の放送塔の鐘が鳴った。
知らせは、こうだった――
「村の東に、ダンジョンが発見されました。冒険者は調査を開始してください」
悠斗の冒険は、またひとつ、階段を登ろうとしていた。