第8話:森の奥の魔物と、ガチャ強化の報酬
悠斗は「鬼剣」を背中に背負いながら、村の北に広がる森へと足を踏み入れた。
ミッション内容は、「森に現れた魔物を調査し、村を守ること」。
言葉にすれば簡単だったが、魔物と戦うのは命がけだ。
「でも……レベルも上がったし、ガチャもある。僕ならやれる」
そう自分に言い聞かせながら、森の中を進んでいく。
木々の間から差し込む光はまだ明るいが、奥に進むにつれて空気が変わっていく。
――ぴたり、と音が止んだ。
鳥のさえずりも、風のささやきも、森の静けさに吸い込まれるように消えていた。
悠斗は足を止める。
前方に、何かがいる気配を感じた。
「……来る!」
次の瞬間、茂みの中から現れたのは――
頭に角のようなコブをもつ、牙の鋭い魔物だった。
灰色の毛に覆われ、目だけが異様に赤い。
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【魔物名】:ツノゴブリン
【分類】:変種ゴブリン
【特徴】:小型ながら、通常のゴブリンより凶暴。
【特性】:突進による連続攻撃。火に弱い。
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《鑑定 Lv.2》で見えた情報を、悠斗はすばやく頭に叩き込んだ。
「火に弱い……けど、今は“鬼剣”しかない。でも、やるしかない!」
ツノゴブリンは地を蹴り、信じられない速さで突進してきた。
悠斗はとっさに横に飛び、すれ違いざまに鬼剣を一閃!
ガキンッ!!
硬い音と共に、剣がツノに弾かれた。だが――
「……防御、下がってる!」
鬼剣の特殊効果「防御弱体化」が働いていたのだ。
次の瞬間、悠斗は反撃に転じる。
切っ先がツノゴブリンの脇腹をとらえ、深く斬り裂く!
魔物は叫び声を上げて倒れた。
息を切らしながらも、悠斗はしっかりと剣を握って立っていた。
「……ふう、やった……!」
そのとき、地面にぽたりと落ちた光の結晶が、ふわりと浮かび上がる。
画面が開き、メッセージが表示された。
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【ミッション達成!】
・村の森の魔物を討伐しました。
・報酬:ガチャ強化石《レアロットの結晶》 ×1を入手しました。
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「ガチャ……強化……?」
光の粒が、悠斗の手元にゆっくりと収まり、小さな宝石のような結晶へと変わる。
それは、まるで虹色に光る氷のようだった。
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【アイテム】:レアロットの結晶
→ ガチャの当選確率を一時的に強化するアイテム。使用後の1回だけ、高ランクの出現率が上がる。
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悠斗の胸が高鳴る。
「これを使えば……もっと強い武器や防具、スキルが引けるかもしれない!」
初めてのミッションを終え、初めての強化アイテムを手に入れた。
少しずつ、この世界で生きていく実感がわいてきた。
「僕は――ここで生きる。強くなる。そして、いつか元の世界にも帰れる方法を見つけてみせる」
森の風が、悠斗の背中をそっと押すように吹き抜けていった。