第一章7話 『これから』
洞窟に戻ってきた。
レイナは晩御飯を準備している。当たり前のように食べていた絶品料理もレイナの能力で作られていたんだろう。
そういえば
「レイナ。少しいいですか?」
「なんだい?」
「レイナはこの数日、ずっと付き添ってくれているけど何か予定とかはないんですか?」
「うーん…、特にないな。元々暇な身だったし。それを言うなら君にはないのかい?したいこととか。」
ある。ずっと気になっていることが。
先輩たちに会っておきたい。生きてるって伝えたい。
「お友達たちのことが気になっているのかい?」
レイナは…心を読む能力でもあるのだろうか?
「顔を見れば分かるよ。それで、私は付いていってもいいのかな?」
「いいんですか?」
「もちろん。子の望みを叶えてあげたいのも、子から離れたくないのも親として当然の心理だよ。」
「レイナ…ありがとう。」
◇◇◇
翌日、俺たちは町に行く準備をしていた。
俺はレイナがくれた服に着替える。
「久し振りに友達に会うのにその格好じゃ品性にかけるでしょ?」
確かに前の服は血塗れでとても人に会える格好じゃなかったから、とても助かる。
着替え終わるとすぐに出発した。
レイナが道を把握しているというので俺は後を付いていく。
しばらく歩くとどこか見慣れた景色が現れる。
木や葉に付着した血痕。雨風で自然に戻りかけてはいるが、目を閉じれば鮮明に思い出せる。
ここで俺の人生が変わったんだよな…。
「行こうか。」
俺は頷いてレイナの後を続く。
レイナは何も言わずに待っていてくれたが、あまり待たせるわけにもいかない。
あの日は野営地まで半日掛かったが、俺たちが町えるところまで辿り着くのにニ時間も要しなかった。
◇◇◇
町の入口には衛兵がいる。
説明は俺の役目。ひとまず素性を簡単に説明する。
衛兵は俺が行方不明、というより死亡したという情報を知っていたのかしばらく狼狽した様子を見せたが、俺たちにここで待つように言ってどこかへ連絡を行った。
そこからすぐに、こちらに向かってくる人影が現れた。
その人には見覚えがあったが、ここまで真剣で緊張感のある姿は見たことがない。
「コオリ先生、帰ってきました。」
「マイ、ヤ?本物か?本当に生きて!ウ、ウゥゥ…大、バカが!!」
「先生、心配かけてすみませんでした。」
コオリ先生は色々聞きたいことがあるだろうに、この場でそれ以上問い質してくることはしなかった。
ただ、しばらくの間俺を抱きしめていた。コレくらいは許せと言わんばかりに強く。俺は、何も言葉を出せず、不思議な心の暖かさを感じることしか出来なかった。