第一章6話 『剣の』
レイナに連れられて洞窟近くの川へとやってきた。
なんでも
『超人になったからにはやって置かなければならないことがある。』
とのことで、これから何があるのか内心ワクワクが止まらない。
「さてと、お疲れなのに申し訳ないけど、もう少し頑張ってもらうよ?」
と、同時にレイナの体からオーラのような光が溢れる。
「これはマナ。超人なら誰もが持ってる力の源のようなものだ。まずはこれをある程度操れるようになってもらおうか。」
マナ…一度見せてもらったからか、体の中に似たような力を感じる。試しに外に出してみる。…出た。
「お、筋がいいね。それじゃあ続きだ。超人というのは皆、特異な能力を持ってる。私なら」
すると、レイナの掌の上に花が生まれる。
「作る力。マイヤにマナを認識させたのは、この能力を身につけてもらうためだ。善は急げ。さ、能力を生み出そう!どんな能力にするかは、ある程度好きに出来るからね。」
さ、と言われてましても…。
能力か、そうだな…。
とは思いつつも自然とアイデアが浮かんだ。
マイヤが手を、何かを握るように構えると、マナがその手に集中していく。
そして、集まったマナがマイヤの魂を形作る。
一瞬のようでしばらくの時間が経った頃、ついに光が空中に溶けるように散っていき、中のものを明らかにする。
それは
「剣…」
マイヤが望んだのは力だった。無力で死にかけた自分へのトラウマ、男して心の奥底に持っていた強さへの渇望。マイヤにとって強さの象徴は剣だった。
その造形は美を追求した奇特な彫刻のようであり、空にかざして傾けてみると太陽光をガラスのように反射する。そして、内から鼓動のような力を感じる。
「やはり…美しい剣だね。」
レイナに褒められ少し照れる。だが、これだけではない。呼吸の仕方が自然に分かるように、剣の、力の使い方が分かる。
川の方へと向き徐に剣を振りかぶる。鳥のさえずりも、川のせせらぎも聞こえなくなり世界に自分しかいなくなったように感じる。側にレイナがいるので、縦にゆっくりと振り下ろす。
音が戻ってきた。川と河原に一直線の線が走っている。
「いい能力だ。マイヤ、能力は成長する。君の力も今後、更に強くなる。」
レイナは続ける。
「これから君は『創造神』レイノスティーナ・ヴェルモニカの子として、『剣の』マイヤスティーナ・ヴェルモニカと名乗りなさい。」