第一章5話 『人に非ず』
『超人』
魔物と対極の人間の進化形であり、2000年前の隕石災害の正の遺産とも呼ばれる存在。
大幅に数を減らした人類がこの世界で生存できているのは超人たちの恩寵ありきのこと。
力ある超人のテリトリーは魔物にとって不可侵領域である。だからこそ人間たちはそこに集まって街、あるいは国を為すのだ。
◇◇◇
「レイナが…超人?」
急にそんなことを言われても実感が掴めない。
超人とは未知そのものだ。
人類を守護している超人がいることは有名だが、それ以外の全てが謎に包まれている。
正直、レイナが味方かどうかも分からない。
「全く、何を他人事みたいに驚いているんだ?私は超人だが、君だって超人だぞ。」
「え、いやだって、俺は人間ですよ。」
「元、人間だ。悪いけど瀕死の君を助けるために、君を超人に変えさせてもらった。」
「ハ、ハアアア!?」
意味が、分からない。
そもそも超人って、なれるものなのか?
「その件も含めて色々話そうか、マイヤ。」
◇◇◇
それからしばらく時間をかけて、レイナに現状を教えてもらった。
一瞬聞き間違いかと思ったが、俺は間違いなく超人になっているということ。
俺の傷は超人の卓越した再生能力て完治したこと。
ここはあの事件のあった場所から少し離れた場所で、人は寄り付かないこと。
そして
「君の仲間たちは全員無事に山を下ったよ。それに、君が寝ている2週間の間に人間たちが何度もあの場所へと来ていたよ。」
人間…多分、俺を探しに来てくれたんだろう。
その人たちには悪いことしたな。
「マイヤは私を恨むかい?私は了承を得ずに君を超人へと変えてしまったから。」
「恨んでなんて…あなたは命の恩人です。そりゃ頭は混乱してますけど。それに、何と言っていいのか分からないけど…嬉しいんです。」
俺はクズだった。コオリ先生にいつも怒られて、みんなの足を引っ張って。
だから、超人になれたって聞いた時、自分が特別になった気がして嬉しかった。
「貰った力で喜ぶなんて…心は卑しいままだな、俺は。」
「私は君のそういう素直なところ、結構好きだよ。兎にも角にも受け入れてもらえたようで良かった!」
「レイナ、改めて…ありがとうございました。」
◇◇◇
「それにしても、あの時の君は中々にカッコよかったぞ」
「アハハ…。俺、いつもみんなの足を引っ張って申し訳なかったから。あれしか思いつかなかったんです。」
その後、俺たちは食事をしながら話に花を咲かせていた。軽い食べ物ではあるけど、レイナは料理が本当に上手い。
俺が粗方食べ終わったところでレイナが話し始める。
「さて!今後のことについて話そうか。」