『旧世界と新世界』
およそ2000年前、地球に隕石が飛来した。
サイズの小ささから大気圏で消失すると言う予想に反し、不可解なほどに無傷で地球と衝突した。
隕石はその質量に不釣り合いなエネルギーを生み出し、変動した気候は都市を荒廃させ多くの命を奪い去っていった。
その隕石最大の特質性は、衝突と同時に地球全体へと散った未知の物質だった。
未知の物質は、この地球で生き残った生命の一部を変容させた。
変容した生物は皆一様に異常な身体性能、死なない肉体、そして奇跡としか言いようのない特殊な能力を備えている。
新しい生命のうち、人の進化形は「超人」、人以外の進化形は「魔物」と呼ばれる。
◇◇◇
空を見上げると、雲一つない青い海が広がっている。
昔の人類はこの海を自由に渡ったというんだから恐ろしいものだ。
「おい、マイヤ!おサボりとはいい度胸だ…。」
来やがった、鬼教師のコオリ。こいつはいかにもな武術の教師で、不真面目生徒を更生させることに生きがいを見出す俺の敵だ。
「コオリ…先生。俺、一応素振り100回終わったんですけど。」
嘘である。しかし、コイツにそれを確かめる手段はない。しかも終わらせるタイミングを周りと合わせたので状況的にも怪しい点はない!
「ほう、なら数え間違いだな。まだ82回しか出来てないからさっさと終わらせなさい。」
コイツ!一人一人に手解きしながら俺の素振りの回数を数えてたのか!?有り得ないだろ…。
「教えていただきたありがとう御座います!すぐに終わらせます!」
そう言って剣を振りまくる。気持ちいつもの1.2倍の速度で。
こういう時は素直に従う。俺は賢いからそのあたりは弁えているのだ。
「全くお前は…。根は悪くないし、やれば出来るのに、何でいつも真剣に打ち込まないのか…」
◇◇◇
授業が終わるとコオリ先生に呼び止められた。さっきの件だろうが、今までこんなことはなかったから妙に緊張する。
「マイヤ、今日もサボってたね。何度も言っているけど君が嫌いで怒ってるんじゃないんだよ。」
それは分かっている。俺だって先生が嫌いなわけじゃない。でも本気になれない。結果が出ないから。
「俺には才能が…」
「才能という言葉に逃げるんじゃない。それは怠惰な人間の口癖だ。」
くっ…!この人は常に正論で攻めてくる。だから苦手なんだ。俺だってそれくらいは分かってる!
「俺だって!俺だって…。」
「強さとは誠実さだ。その点では君には才能があると私は思うんだけどね。」
「…」
何も言えない。今までの行いを振り返って口が動かせない。悔しい、こんな自分が悔しい。
「まだ時間はある、これから変われるよう頑張りなさい。今日呼び止めたのは別件だ。」
別件?俺、他にも何かしたのだろうか?
「前回の試験、一定の成績以下の人には罰があると言ったでしょう。」
あ。