表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/27

★書籍化記念SS 第六弾 レシュマとドレスとダンス・パーティ

【 前向き令嬢と二度目の恋 ~『醜い嫉妬はするな』と言ったクズ婚約者とさよならして、ハイスペ魔法使いとしあわせになります!~ 】

 

 発売となりました‼

 本屋さんに並んでいます! 

 超嬉しいです!


 今回のSSは、ドレスとダンスです。


 悩む……。

 悩むの……。

 ううううう……。

 どうしよう。

 わたしが何を悩んでいるのかというと……お引越し。そのための荷物の整理。

 冬が過ぎ、春になって、ようやくのことで、わたしはランディア王国のミラー子爵家の領地から、エルミス王国の魔法学校へと向かうことができる季節となった。

 で、今は、その準備中。

 お気に入りの絵本、魔法書。日用品。下着類、それから寝間着やワンピース……などなどを、どんどん梱包していく。

 要らないモノは捨てていくし、必要ないけれど、取っておきたいモノは、領地の屋敷のわたしの部屋に置いておけばいいんだけど。

 問題は……、問題なのは……、ウォルター先生に贈ってもらったすんごい量のドレスなのよ‼

 出来得ることなら全部持っていきたいいいいい!

 領地に置いたままにしておきたくないいいいい‼

 全部素敵なの。

 まだ着ていないドレスもたくさんあるの。

 着なくても、見ているだけでもしあわせになれるの。

 カスミソウみたいに可憐な白いドレス。

 ミモザ色のふんわりしたドレス。

 薔薇のモチーフがあしらわれたコーラルピンクのドレス。

 透かしレースが上品な七分袖のドレス。

 夜空の星が散りばめられているみたいな、紺色の夜会用のドレス。

 ほかにもまだまだたくさん、ウォルター先生がマダムのお店で買ってくれたドレスがいっぱいある。それから、ドレスに合わせた靴とかバッグ、アクセサリーも。

 これ、全部運ぶのって……無理だよね……。どう頑張って梱包してみても、馬車に乗り切らない……。

「レシュマ、あなた、このドレス全部持ってくつもりなの? 魔法学校の職員寮の部屋はそんなに広いの⁉ ちゃんと保管しておいてあげるから、諦めて必要最低限だけ持っていきなさい!」

 お母様は、呆れて果てて、怒鳴るけど……。

 う、ううう……。

 運ぶのが大変というだけでなく、運び込む先の部屋のスペースの問題もあるのよね……。

 えっと、教えてもらったというか、魔法学校の簡易的な見取り図とか、そういうのをもらっているんだけど……。その見取り図によると、魔法学校の女性職員用の部屋は、二間続きになっている……らしい。

 片方の部屋は居間兼書斎的な感じなのかな。テーブルとソファ、書棚なんかがある。

 もう片方が寝室。その寝室には服を収納するためのかなり大きな衣装スペースもあるらしい。

 ひとりで暮らすには十分だし、子爵家のわたしの部屋よりも広いんと思うんだけど……。

 なんだけど……。

 その十分なはずの衣装スペースに、日常用の服と認定魔法使いのローヴを仕舞って、それからドレスも……っていうと、どう考えても、ウォルター先生に贈っていただいたドレス、全部は入りきらないのよね……。

 半分も、無理かな。

 三着……。

 ううう、二着がせいぜいかな……。

 でも、全部持っていきたいっ!

 だって、素敵なんだもの!

 まだ着ていないドレスもあるんだもの!

 ……と、延々と悩み続ける今日この頃。

 うん。わたしもちゃんと分かってはいるのよ。

 持って行っても着る機会なんて、多分すぐには来ない。

 ヴィクトリア様のお茶会みたいに、きちんとした社交をすることなんて、エルミス王国に行ったらしばらくはない。

 そりゃあねえ、向こうでの生活に慣れた頃には、社交的なお仕事もあるかもしれないけど……。多分、すぐにはない。

 ということは、この素敵なドレスたちを持っていったところで、当面出番はない。

 寧ろ、ランディア王国に帰って来ることがあったら、そのときに着ることのほうが多いんじゃないかな。例えば、ヴィクトリア様にご挨拶に行くとかね……。

 とすれば、うちの領地のわたしの部屋で、この素敵なドレスたちを保管して、たまには陰干しとかもしてもらって、手入れをして……というほうがいいに決まっている。

 そうしたほうがいいと理性ではわかっているの。

 でも!

 大好きな人から贈ってもらった素敵なドレスなんだから、全部持っていきたいというこの乙女心……! お母様ならわかるってくださるわよね……!

「理解はできるけど、物理的に可能かどうかっていう点も、考えなさいね。もう一台、馬車を借りて、荷物を運びこむ? その費用、どうするの?」

 うううううう……。

 ……葛藤の末、諦めました。

 そして、どうせ着る機会がないのなら、夜会用のドレスを持っていくことにした。

 だって、このドレス、ウォルター先生が、すっごく褒めてくれたから。

 お姫様とか、夜空の一番星とか、キラキラでピカピカだな……って。

 思い出すと、わたし、照れてしまうというか、口元がニヨニヨしてしまう。

 このドレスを着て、ウォルター先生とダンスをした。

 すごく楽しかった。

 今、こうしてドレスを見ているだけでもしあわせな気分になる。

 ニヨニヨしちゃう。

 えへへ。


 ***


 ……なんてね、最初は思っていたのよ、わたしも。

 だけど、せっかくのドレス。わたしの部屋に飾っているだけなんて……。

 ううう、着る機会が欲しい! という欲が出る。

 部屋で、こっそりとひとりでドレスを着てみて、ひとりでこっそりとニヨニヨして、こっそりとマダムのお店でのダンスを思い出し、ああ素敵だったなあ……って、うっとりして。

 そんなことを、十回以上も繰り返せば、また、このドレスを着て、ウォルター先生と踊ってみたいという欲望が、湧き出てくるのよ!

 踊りたいなー。

 ウォルター先生と踊りたいなーなんて気持ちは日に日に高まる。

 声には出してはいなかったんだけど、心では何度も唱えてしまっていて。

 だから、うっかり。 

 ふとした折に、クライヴ様に言ってしまったのだ。

「着る機会もないのに、わざわざ夜会用のドレスを、持ってきてしまったんですよー」って。

 それだけなんだけど。

 ウォルター先生とまた踊りたいんですなんて、そんなことまでは言わなかったんだけど。

 さすがのクライヴ様には、お見通しだったのかもしれない。

 にっこりとお笑いになって、

「それではせっかくですから、レシュマさんが素敵なドレスを着ることができる機会をお作りいたしましょう」って言って下さって。魔法学校職員有志による合同ダンス・パーティ……なんてものを企画してくださった。

 お酒の入る飲み会は、魔法学校の皆さん、機会があればしょっちゅう開いているけど。

 正装してダンスなんて、どうなんだろう……。参加者、皆無では?  あ、でも、クライヴ様とウォルター先生とわたしの三人だけでも、それはそれで楽しそう……と、思ったのに。

 なんと! 職員のほとんどの人が参加して、盛大なダンス・パーティとなったの!

 わあ、びっくり!

「魔法学校は男性のほうが多いですからね。せっかくですから、エルミス王国の下級貴族の知り合いに声を掛けまして。まだ婚約者のいない未婚の女性にも多数来ていただきました」

 そ、それって、あの、集団お見合いのセッティング? ですか?

「ふっふっふ。こうでもしないと男性陣は社交の練習もしませんからねえ。最低限の教養、社交、ダンスにエスコート……。さあ、しごきますよ!」

 ……クライヴ様による、集団お見合い開催でお嫁さんゲットの機会ではなく。

 普段社交とは縁のない男性陣のしごきでしたか……。

 あはははは。さすがクライヴ様。脱帽です!

 男性職員の皆さん、ヒイヒイ言いながらも、すごーく一生懸命に、クライヴ様によるダンスレッスンなどを受けて……。筋肉痛で、ソファや床に転がっておりました……。あはははは。

 パーティ当日も、筋肉痛継続で、ギクシャクして……。それで皆さん「次回! 次回こそは、嫁ゲット!」とか、叫んでおりました。あはははは。

 わたしはと言えば、ウォルター先生やクライヴ様と、すごーく楽しくダンスをさせていただいて、しあわせなひと時をすごしました。えへへへへ。

 ありがとうございます、クライヴ様。このご恩は一生忘れません!





挿絵(By みてみん)

web版から加筆修正し、2025年8月、双葉社様より『前向き令嬢と二度目の恋 ~『醜い嫉妬はするな』と言ったクズ婚約者とさよならして、ハイスペ魔法使いとしあわせになります!~』発売です!

表紙も素晴らしいですが、挿絵、カラーピンナップ、すごく素敵ですよー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ