第5話 設定ミス?強過ぎる序盤の敵
ニャルの運営者権限? なのか分からないが、シャーレックから出ることが出来た。
町を出ると、森の中の林道みたいに整備されている道が続いていて、アルテス村に向かうみたいだが……。
「こんな夜中の森の中を通って、大丈夫か?」
「その為にニャルが同行しているんじゃ。安心せい」
確かにニャルは、このゲームを作った言わば、この世界の神様みたいなものだから、安心してもいいかもしれない。
ガサガサッ
「おい、もしかして、この森に魔物とかいるのか?」
「もちろん、いるぞ。確かルビエルに作ってもらったモンスターが居たはずじゃ」
「ルビエル?」
「天使の一人じゃ。とても研究熱心にゃんじゃが、バランス取るのが下手くそでのう、いつもにゃるが教えてやってるのじゃ」
ニャルが教えるって、ヤバいなぁ。
ガサガサッ!
「うわっ! って、なんだゴブリンか。でも、よく見るとアニメ的なゴブリンでなく、リアルの方のゴブリンだ。ちょっと怖いぞ」
「ルビエルは無駄に凝っているからのう」
「そこは無駄では無いから」
「よし、龍二! アイテムボックスから魔道具を取って、あのゴブリンを倒すのじゃ!」
「よしキター」
ウィンドウを出して、アイテムボックスをクリック!
(何も入っていません)
「こらーー! ニャルー!! 何も入って無いぞ!!」
「初期アイテムを入れるの忘れておったわい! にゃーはっはっはー!」
「バカ者!! じゃあ、素手で……ん?」
ゴォーーー!!
「おい、ニャル! あのゴブリン凄い魔力を溜めてるんだけど、大丈夫なのか?」
「言ったじゃろ、ルビエルはバランス取るのが下手くそじゃと」
「つまりそれって……」
「逃げるんじゃー!!」
ボッカーーン!!
「うわああー!!! こんなの喰らったら、灰も残らんぞ!!」
「心配するでにゃい。HPを3に修正しておいたから、一発当てれば簡単に倒せるわい」
「どうやって一発当てるんだよ!!」
ドカーーン!!
「あぶねー!! あれはファイヤーボールか!? 威力半端ないぞ!!」
ゴォーーー!!
「もう無理だー!!」
「落ち着くんじゃ」
「そ、そうだ!! ニャル! 一旦ゲームを止めよう!!」
「にゃるほどにゃ。よし、任せておくのじゃ」
ニャルのウィンドウを操作すると、透明の壁に挟まれてニャルが登場した時みたいに、ゴブリンは停止した。
「ふぅー、助かったー」
「相変わらず悪知恵が働くのう。でも、ずっとは止めておれんからのう」
「よし、今のうちに俺に魔道具をくれ」
「今は、ニャルもプレイヤーみたいなものじゃ、そんなことは出来にゃい」
この天使役に立たないぞ!
ていうか、序盤の出てくるようなゴブリンなのに、ラスボス級に強いぞ。
どうやって、一撃を与える!? いや、考えるまでもない、今やればいいんじゃね?
俺はゴブリンに向かってダッシュで走った。
「ニャル、あとどれくらい止められる?」
「止める時の周りの影響にもよるからのうー。あと5秒ぐらいじゃ」
「5秒!? でも3秒あれば着くし、2秒あれば殴れる!」
「龍二!? にゃにをするんじゃ!?」
よし! 着いた! あとはこいつをタコ殴りにすれば、HP3ぐらいは削れるだろう。
「オラオラオラー!! 時は動き出す」
「にゃにを格好つけとるんじゃ!」
バァーーン!!
「うわーー!!」
「にゃにがしたいんじゃ、龍二!?」
おかしいなぁ、ゴブリンは何事も無かったようにバンバン魔法を打って来る。
俺のパンチはHP3も削れないのか?
「おい、ニャル! 本当にHP3か? 殴っても全然効かないぞ」
「当たり前じゃ。ゲームを止めている時は無効じゃ。決して時が止まったわけじゃにゃいぞ」
「なにーー!?」
じゃあ、こいつどうやって倒すんだよ!!
こいつの魔法のせいで、ちょっとした森林火災みたいになっているし。
「おい! ニャル!! 何かいい方法はないのか!?」
「数分待つがよい。ニャルが一旦ログアウトして、龍二に魔道具を装備出来るようにしてやろう」
「その数分でやられるわ!!」
ニャルに任せていたら、本当にやられてしまう。ここは俺が何とかしないと。
ゴブリンに少しでもダメージを当てるには……この森林火災を利用してみるか。
「ニャル! 作戦がある! 止める準備をしてくれー!」
「にゃにをするんじゃ」
俺はゴブリンから近い、メラメラと燃えている大木の前まで走った。
俺の作戦は、あいつが俺を狙って攻撃しようとする。そこでニャルにゲームを止めてもらって、俺は反対側へ移動する。
そうすれば、ファイヤーボールが大木に当たって倒木し、ゴブリンに直撃するというわけだ。尚、俺が反対側に来たことであいつの注意も逸れる。
でも、どうせやるなら格好良くやりたい。
俺は大木とゴブリンの間に入った。すると、ゴブリンはまた魔力を溜めてファイヤーボールを打つ用意に入った。
よし、そろそろいいかなぁ。
「止まれー! 時を!!」
…………。
「って、言ったら止めてもらえます?」
「普通に言わんかい!」
ゴォーーー!!
「ふぅぉわぁーー! 早くっぅ」
「止めたぞ」
あぶねー!! もうちょっと遅かったらゲームオーバーだったぞ。おかげで変な声出してしまったじゃないか! せっかく、格好良くいきたかったのに。
でも、これで確実に大木に直撃するぞ。
俺はゴブリンの反対側に回り込んだ。
「そして、時は動き出す」
「さっきも言ったが、時を止めているわけじゃにゃいぞ」
「あのー、ごちゃごちゃ言わないで解除してもらっていいですか!」
「我が儘じゃのう」
時が動き出すと、ゴブリンのファイヤーボールは大木に直撃した。今にも倒れそうな勢いだ。しかも、ゴブリンは、突然消えた俺に対して、動揺しているように見える。
「俺はこっちだ!!」
ゴブリンは、慌てた様子で俺の方に振り返った。すると、また魔力を溜めファイヤーボールを打つ準備に入った。
「貴様の負けだ!! ふっふっふー、うん?」
バターン!!!
大木はゴブリンとは全然違う方向に倒れてしまった。
「クソゲーってホント嫌ですよねー」
「クソゲー関係ないじゃろ!」
「ということで、助けてもらってもっ」
バサッ
何か飛んで来た、燃えている枝がゴブリンの頭上に落ちて、ゴブリンは死んでしまった。
「…………」
「やったではにゃいか、龍二」
まぁ、クソゲーだから仕方ないさ。ゲームオーバーにならなかっただけでもヨシとしよう。
「あー、なんか急に疲れて来たわ」
「アルテス村着けば温泉に入れるぞ。もう少し頑張れー」
「おお! それはいいなぁ」
「しかも、混浴じゃぞ」
「えっ!?」
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