第4話 バグ?透明の壁に挟まれる!?
俺はエレンさんの先導で、町の中を走った。そして、到着するとそこは、俺がさっきこの町から出ようとした場所だった。
でも、ここは透明の壁があって、外には出るのは無理だろう。
「エレンさん、ここはさっき試したけど、透明の壁みたいなものがあって、プレイヤーは通れないと思う」
「うん、私もそうだった。けど、一つ発見したのよ。ちょっと手伝ってくれるかしら?」
「攻略法があるなら、協力するよ。どうすればいい?」
改めて思うが、どれだけゴリラ男と仲間になるのが嫌なんだろう。
「外に出てもらってもいいかしら?」
「分かった」
「ウィンドウ画面が出たら、YESを押して」
「ほい」
俺は『シャーレックを出ますか?』の選択肢をYESをクリックすると……。
「エレンさん、町を出る前に一緒にバーに行きませんか?」
「……」
「今、俺が言ったんだよな? なんか強制セリフが進化しているぞ」
「私もちょっとびっくりした」
このゲーム、本当無駄に凄いんだよな。無駄に。
「次はどうしたらいい?」
「実はこれで数ミリ先に進んでいるのよ。だから、これを何回もやればいずれ出られると思うの」
「そうなの!? よく気付いたね。よしやろう!」
「でも、気を付けて。町人に話しかけられたら、一歩戻されるから。その時は私が対応するわ」
何か下らないことを、一生懸命やっているな……でも、クソゲーだから仕方ない。
俺は凄く下らない動作を10回ぐらい繰り返した。なのに、一向に町から出られる気配が無い。
それに段々と町人達が増えて来て、エレンさんも大変そうだ。
そして、何回もやっている内に俺は気付いたことがある。
「エレンさん、もしかしたら俺、もう動けないかもしれない」
「ど、どうしたの?」
「いや、さっきまでは前だけに透明な壁があった感じだけど、今は周囲全部にある感じで動けない。どうしよう……」
「私が引っ張ってみるわ」
「お願いします」
エレンさんは一生懸命、手を伸ばして俺を掴もうとするが、透明の壁に阻まれて触ることも出来なかった。
「ごめんなさい。触れることも出来ないみたい」
「エレンさんは悪くないよ。このゲームがクソゲー過ぎるんだよ。これはもしかしてバグか?」
おいおい、俺はこのまま何かに挟まれてゲームオーバーか? それは勘弁して欲しい。
「役に立たないかもしれないけど、ナビで対処方法を聞いてみるわ」
「ナビってそんなことが出来るんだ」
俺のはエラーで使えない。
確か、ニャルのアバターが出て来て、AIみたいに教えてくれるのかな?
エレンさんがウィンドウ画面を操作しているみたいだけど、俺には画面の内容が全く見えない。自分しか見えない仕様なのか?
そして、エレンさんの目の前に、ニャルのアバターが登場した。ちょっと透けている感じはするが、見た目は本物と変わらず、良く出来ている。
(エレン様、分からないことは、私に質問して下さい)
「えぇーーーー!!! 全然キャラ違うじゃあーねーかー!」
「どうしたの? 龍二さん」
「いや、本物はもっと口悪いぞ。詐欺だ! 天使詐欺!」
「こらーー!! にゃにが天使詐欺じゃー!!」
「こ、この声は!?」
今回は前に現れた時と違って、時間停止したように周囲の人間も、エレンさんも止まっていた。
そして、俺の前にニャルが、どこからともなく現れた。
「龍二! こんな所でにゃにをしとるんじゃい! 早よバーに行かんかーい!」
「いやー、あんなゴリラ男とパーティーを組みたくないので」
「にゃーぜじゃ? 強い方が頼りがいがあるじゃろ」
「うーん、命に関わる現実世界ならその方がいいんですけど……ゲームの世界なら……美少女の方がねっ」
「龍二の女たらしめ。それより、にゃんでそんなに敬語にゃんじゃ?」
それは透明の壁のせいでお手上げだから、不本意ながらニャルに助けてもらう必要があるからだよ。機嫌を損ねると放置されそうだからね。
「いやー、やっぱり天界の天使様ですからね。敬語で話さないと失礼かと思いまして」
「にゃーはっはっはー! そうかそうか。いい心がけじゃぞ。ニャルは心が広いから、敬語でにゃくてもよいぞ」
狭そうだから、敬語で喋ってるんだよ!
「流石、ニャル! そこで相談がありまして、というか、テストプレイヤーとして、報告したいことがありまして……」
「にゃんじゃ?」
「多分、バグだと思うんだけど、何か透明の壁みたいなものに阻まれて、動けないのですわ。とりあえず、助けてもらえますか?」
「にゃにをしたら、そんなことににゃるんじゃい」
すると、ニャルは俺の目の前までやって来た。これで何とか脱出出来そうだ。
「そうか、龍二は動けにゃいのかー、にゃーはっはっはー!」
「おい、何を企んでいる!?」
「コショコショコショコショー」
「うひゃひゃあ、や、やめー」
何でくすぐりプレイする!?
「やめろ!! 俺のくすぐりなんて需要無いからやめろ!」
「にゃあーはっはっはー! しょうがにゃいのう」
「疲れるわ!」
ようやく俺はニャルのおかげで、透明の壁から脱出出来た。
「それよりニャル、ケリーよりも、エレンさんとパーティーを組みたいんだが」
「それは困ったのうー。色々と設定変更しにゃいといけにゃいからのう」
「頼むよ。ニャルなら、きっと凄い天使のはずだから、これぐらい余裕なんじゃない?」
「にゃーはっはっはー! 分かるか? ニャルは優秀にゃ天使じゃからのう。任せておくんじゃ」
単純そうな天使で良かった。
「でも、エレンは後で合流出来るようにしておくから、少し待つのじゃ。まずは龍二から先に町を出てもらう」
「それは願ったりだが、エレンさんはどうする? 急に俺が消えたみたいになったら焦ると思うぞ」
「それは大丈夫じゃ。ナビで指示を出しておく。エレンはこの町の宿で休んでもらう」
まぁ、ニャルにも都合があるみたいだから、しょうがないだろう。でも、これで展開変わったな。
「それで、俺はどうしたらいい?」
「龍二は今から、森を抜けて『アルテス村』に行くのじゃ。そんなに時間はかからにゃい。そこで『迷宮のダンジョン』の攻略の準備をするがいい」
「おおー! ダンジョン攻略かー!! いいね!」
「でも、そこまでニャビが必要じゃから、これからニャルが付いて行ってやろう」
「ニャルも一緒なの!?」
お読み頂き、ありがとうございます。
気に入って頂ければ、ブックマークや↓の☆をクリックしてくれますと、モチベーションが上がります!






