第3話 異世界からのプレイヤーエルフのエレン
俺はエルフのプレイヤーさんを探すため、ケリーというゴリラ男には会わずにバーを出た。
しかし……。
「ちょっと君、バーに入らないのか?」
町人Aと言うべきか、突然俺に話しかけてきた。
「いや、もう出るんで」
「一緒に入らないか?」
「いや、いいです」
「そう言わず」
「結構です!!」
俺は走って逃げた。とても嫌な予感がする。
「ちょっとそこの人!」
今度は町人Bだ。
「今、バーでイベントやっているらしいよ。一緒に行かないか?」
「行くか!!」
駄目だ。これはバーに行くまで強引に来るぞ。しかも、町ぐるみだ。
ここはこの町を出た方が良さそうだ。どうせなら、さっき入った所じゃない方から出よう。
本当、こいつらゾンビみたいに付きまとってくるな。でも、町の出口に着いたぞ。
ここを出れば次のステージに行けるはずだ。
ん? あれ? おかしいな、町を出る道はあるのに何故か前に進めない。
まるで、ここに透明の壁でもあるようだ。
しかし、他の町人は普通に通れているのに、何故か俺だけ通れない。
くそー、早く出たいのに、このクソゲーがっ!
すると、突然ウィンドウ画面が表示された。
(シャーレックを出ますか? YES or NO)
何だ、ちゃんと選択肢があるじゃないか。
もちろん、YESだ。
「町を出る前にバーに行かないと」
ん? 今俺が言ったのか? もう一回YESを押してみよう。
「バーに戻って、ケリーに会わないと」
やっぱりクソゲーだ!! わざわざ選択肢を出しといて、望まない方を選ぶと何か理由付けて実行してくれない。
どうやら、あのゴリラ男に会わないと先に進めないみたいだ。
だがしかし、これで諦める俺ではない!
予想も付かない行動を起こせば、いやでも展開は変わるだろう。
ここにいるのは町人は、どうせNPCだから暴れても問題無いだろう。流石にここで問題を起こせば、バーに行く流れにはならないはず。
よし。
「ねぇ、君。奢るから俺とバーに行かないか?」
「いきなりですまんが殴らせてもらう」
バシッ
「ひでぶ」
そんなに強く殴ったつもりはないが、町人Cは倒れた。すると、その様子を見ていた通行人が騒ぎ始めた。
「キャー!! あの人殴ったわよ!!」
「おい誰か! 自警団を呼べ!」
なんか大騒ぎになってきたが、これで流れが変わったかもしれないぞ。このままここにいたら自警団に連行されるかもしれない。
でも、それで展開が変わるならありだな。もしかすると、連行中に美少女が助けてくれるかもしれないし。
「おい!! 貴様か!? 暴力沙汰を起こしたのは!?」
「はい、そうです」
「大人しくしろー!」
「大人しくしてるがな」
よし、これで展開変わった!
「貴様を連行する!」
「はい、行きましょう!」
「よし、じゃあ、バーで事情聴取する!」
「なんでバーやねん!!!」
酒飲みながら事情聴取って可笑しいだろ!
どうあっても、俺をバーに連れて行く気だな。ここは逃げた方が良さそうだ。
「おい!! 待て!! 逃げるな!! バー以外の場所に逃げるのは許さんぞ!!」
「どんな掛け声だよ!」
「あいつを捕えて、バーに連れて行くんだー!! みんな!!」
これは不味いな。捕まったら強制的にあのゴリラと仲間になってしまうぞ。
とにかく、走れー!
くそー、何でリアルに疲れるんだよ!! もう走る体力が……。
「こっちよ」
「え? 誰?」
俺が女性の声のする方に振り返ると、もの凄く美人の……エルフ!?
「ここで立ち止まって!」
「はい」
俺はエルフさんの言う通りに従った。
前からも町人達がやって来て、囲まれた状態になった。
「観念しろー! 2人まとめてバーに送ってやるぜ!」
「2人!? エルフさんも!?」
「大丈夫。私に任せて。エアーダスト!」
エルフさんは魔法でも使ったのか、突然風が吹き荒れ、砂埃が舞って視界が悪くなった。
「さぁ、今のうちに」
「お、おう」
このエルフさんって、ニャルが言ってた異世界からのプレイヤーだよな?
まさか、こんなに早く会えるとは思ってなかったぞ。
「ここまで来たら、一先ず安心よ」
「助けてくれてありがとう。えーと、ここは……げっ! バー!? もしかして」
「誤解しないで。私はプレイヤーよ。あなたもそうでしょう?」
よっしゃー! やっぱりプレイヤーのエルフさんだー!
「はい! そうです!! っということは……エルフさっ、いや、えーと」
「私はエレンよ」
「エレンさん。俺は龍二。よろしく」
「そこの君たち、俺と一緒にバーに行かないか?」
げっ、またこのパターンかよ。
「ええ、いいわよ。先に行って席を取っておいてもらってもいいかしら?」
「いいよ。じゃあ中で待ってるね」
なるほど、そうやって対処するのか。
「龍二さんも、バーの中にいる人とパーティーを組むのが嫌だったの?」
「うん。ということはエレンさんもですよね? やっぱりゴリラは嫌ですよね」
「ははは、私もなんか……ああいうタイプは苦手というか……」
本当に苦手なタイプだったんだろうね。
でも、一緒にパーティーを組むなら、NPCじゃなくてプレイヤーの方がいいし。
エレンさんのような、エメラルドのような瞳に、綺麗な黄金色のロングヘアーで、整った顔の美人だったら最高なんだけど。ならば……。
「「あのっ」」
エレンさんとタイミングが被ってしまった。もしかしてこれは?
「あ、エレンさん先にどうぞ」
「あ、うん、えーと……」
「俺と一緒にパーティーを組みませんか?」
「は、はい」
よっしゃー!
なんか言いにくそうだったから、思わずこっちから誘ってみたけど、同じ考えで良かった。
「あ、あの龍二さん。私と一緒にこの町を出ませんか?」
「もちろん、喜んで」
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