第1話 あっ、これクソゲーだ
「おお!!」
思わず声を出してしまったが、ゲームの世界にしてはリアル過ぎて驚いた。
流石、神様が作った、いや、天使が作っただけのことはある。
俺が最後に覚えている記憶は、大学を通うために一人暮らしを初め、そのアパートの階段から転落してしまって、気付いたら目の前に神様が現れた。
あー、これ転生するやつだ!
っと思ったら、まだ死んではいないみたいで、病院で意識不明らしい。
神様は、天界にも娯楽が欲しいと考えていたところ、日本のエンタメに興味を持ったらしく、天使達にその要素を取り入れたゲームを作らせたみたいだ。
それで俺はそのゲームのテストプレイヤーに選ばれたようだ。
魂からこのゲームの世界にリンクしてるから、身体は病院にあるらしく、転移しているわけではないらしい。
そして、見返りはゲームが終了すれば完治しているということだ。
だから結構気は楽なんだよなぁ。
でも、ゲームの中で死ぬのは、どんな影響が出るか分からないから、お控えくださいの事だ。
控えるって、どういう事なんだよ!?
まぁ、何かあったら神様が何とかしてくれるだろう。
とりあえず、ゲームを進めていくか!
でも、今は夜みたいで月明かり程度の明るさしかない。しかも周りは草原で、道が一本あるだけ……一体、これからどうすればいいのか?
確か神様は、行動次第でこれからの展開が変わるから、自由度は高いと言っていたな。だから、どこに向かうかで展開が変わるかもしれない。
うーん、でも最初は町の中からにしてくれよ。
誰も居ないし、何も無いし、何をしていいのか分からないぞ!
「おーい! 何かチュートリアル的なものはないのか!?」
ゲーム開始でいきなり真っ暗な草原に放置で、目的も分からないし……。
「あっ、もしかしてクソゲー?」
「クソゲーって言うにゃー!!」
「えっ!? 誰!?」
今、幼女みたいな声がしたけど、誰? どこ?
「後ろじゃ」
「えっ!? いつ現れた!? さっきは誰も居なかったぞ!」
「にゃーはっはっはー! あまりのゲームの出来栄えに、驚いておるようじゃのう」
「突然、現れたことに驚いたんだが……」
この幼女は、銀髪の綺麗な髪で可愛いが、背中に羽が生えている。これはまさか……。
「もしかして、ここのゲームを作った天使なのか?」
「そうじゃよ。ニャルのにゃまえはニャルエルじゃ」
「えーと……ニャルと呼んだらいいのか?」
「それでも構わにゃい」
天使と言えば、このゲームを作った、言わば運営者みたいなものだよな。それがゲームに登場するって、どういう状況だ?
まさか、クソゲーって言ったから、BANってことはないだろうな?
「それで、わざわざ天使のニャルさんが、またどうしてここに?」
「それがじゃ、龍二のウィンドウ画面にあるニャビが壊れていてのう。どうしてもにゃおらにゃいから、直接ニャルがニャビをしてあげるわけじゃ」
「VRMMOみたいにゲームのウィンドウがあるのか!? どうやって出すんだ?」
「人差し指でダブルクリックすればいいんじゃ」
「おお! こうやるのか」
俺は人差し指でダブルクリックすると、立体的にウィンドウ画面が目の前に現れた。
「おー、スゲー! こういうのをやってみたかったんだよなぁ……ん?」
■プレイヤー名 高田龍二
■レベル1 HP100/100 MP20/20
■魔法 只今ご利用出来ません スキル 準備中
■魔道具 開発中
■予備用
◆ナビ ◆現在のクエスト ◆アイテムボックス
■備考欄
まだ完成していないからと言っても、利用出来ないとか、準備中とかおかしくないか?
「おい! これは一体何だ? 色々と可笑しいぞ!」
「まだ、未完成にゃんじゃから、仕方にゃいじゃろう」
「いや、そういうレベルではないと思うが……あっ、ここにナビってあるのが、壊れているのか?」
「そうじゃよ。クリックしてみるがよい」
「ああ、これか」
(エラー発生)
クリックするとエラー発生の文字が表示されたぞ。
「本当だ。エラーになっているな」
「本来にゃら、ニャルのアバターが出て来て、質問出来るのじゃが、龍二の場合はどうやっても、無理にゃんじゃ」
「それで直接言いに来たのか?」
「そうじゃ。これからニャルがサポートしてやるから安心するがよい」
何故か安心出来ないのは、気のせいか……。
「まずはじゃ、『現在のクエスト』をクリックするのじゃ。にゃにをしていいのか分からにゃい時に使うんじゃ」
「これか」
(シャーレックに向かえ)
「大雑把な指示だな。ここが何処かも分からないし」
「龍二は分かっておらぬのう。ここでニャビを使うのじゃ」
「そうしたら、色々教えてくれるのか」
「とりあえず、この道を進むのじゃ」
そう言うと、ニャルは歩き出し、俺はついて行くことにした。
しばらく歩いていると、一軒の建物の灯が見えて来た。
そして、近くまでやって来たが、どうやら駅みたいだ。
駅は終着駅で、誰もいない。田舎の駅みたいだ。
うーん、ちょっと世界観が分からんなぁ。
「おい、ニャル。あれは駅だよな? SLでも走っているのか?」
「にゃーはっはっはー! よく見るがよい。架線があるじゃろう」
「えっ!? もしかして電車が走るのか?」
「そうじゃ。まだ乗れにゃいが、もうすぐ完成するから期待しておるんじゃ」
俺が思っていたファンタジーじゃない! この世界は現代設定なのか?
「このゲームの世界観って、現代日本なのか?」
「にゃにを言っておるんじゃ。よくある異世界の設定じゃよ」
「じゃあ、何で電車なんか登場させたんだよ!」
「格好いいからじゃよ! こういう斬新にゃ要素もあってもいいじゃろ」
「もしかして、そんな感じで日本の要素を取り入れているのか?」
「気に入ったものは積極的に取り入れているぞ。ニャルは既成概念にとらわれんからにゃ! にゃーはっはっはー!」
「クソゲー確定だな」
「クソゲー言うにゃ!!」
うーん、先が思いやられるぞ。
「立ち話もにゃんだし、ニャルが用意した乗り物があるから、そこで話をしようじゃにゃいか」
「それでシャーレックに向かうのか?」
「そうじゃ」
電車の次は自動車が出てくるんだろうな。とんだファンタジーだ。
「これに乗るのじゃ」
「馬車かよ!! 車じゃないのかよ!!」
「ファンタジーの世界に車は変じゃろ」
「今、言うかっ!」
駅の外に待機していたのは、2頭の白い馬と、中世に出てきそうな車両の馬車だ。
俺が望んでいたのはこういうやつだけど、電車の後に見せられたら、何処に気持ちを着地させていいのか分からない。
「うん……。それで、シャーレックには何があるんだ?」
「町がある。そこでケリーという名前の人間がバーにいる。赤い服を着ておる。その者とパーティーを組むのじゃ」
「おお!! なんか俺の求めているのになって来たぞ」
パーティーを組むということは、冒険したりすることだよな? っということはケリーという子は、きっと美少女だろう。不安はあるがいい展開になって来た。
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