27話:夕影の勇者の噂 5章:夕影騒動編
27話:夕影の勇者の噂
5章:夕影騒動編
「お姉さ〜ん! こっちにポテト追加で!」
「こっちには肉3つ頼む!」
「は、はい! ただいま!」
「いや〜流石はソルベとかいう魔王軍の特別執権官を倒した勇者御一行様だ! あの誰も手をつけられなかった凶暴化してしまったアイシクルドラゴンをいとも容易く倒してしまうとは!」
リオ「い、いやぁ……は、ははは……」
「アリス王女の凄さは聞いてはいましたがまさかここまでとは……! ささ、料金は気にせず食べて下さい!」
アリス「え、えぇ。 ありがとうございます皆さん……」
アイシクルドラゴンが何者かによって倒され、目の前から忽然とアイシクルドラゴンが消えた。
だが他の冒険者達はその現場には居合わせていなかった為、アイシクルドラゴンを俺達が討伐したと思い込んでいるらしい。
本当に俺らが倒していたなら楽しい楽しい祝勝会だったのだが……俺らは何もしていなくて誰かが倒したのに俺らが称えられ祝勝会を開かれるのはとてもではないが素直に楽しめない。
というか心が傷んでくる。 みんなが尊敬した目で見てくるが俺はそんなすごい人間じゃねぇから!
「流石は勇者御一行のプリースト様! あの怪我を一瞬で治されてしまうとは!」
カイ「これが私の得意技だから当たり前だよ!」
「それにそちらは多種多様な強い魔法を使えるダークウィザード様! 一体どんな技でアイシクルドラゴンを追い詰めたのか教えて下さい!」
ゲン「え? あ、あ〜……そうだな……」
2人もどうやら俺らと同様に絡まれているようだ。
ちなみに紅莉は影に事情を説明する為先に戻ってもらった。
というか俺もそろそろ帰りたいんだが……祝勝会とか言ってるけど結局みんなが飲み食いしたいだけだろこれ。
「でも勇者様が2人しかいないのは意外だったな」
「だな。 やっぱり夕影の勇者の伝説は嘘だったんだな」
リオ・アリス「「!!!」」
夕影の勇者の伝説……!?
「でも神器はあるらしいぜ? おかしい話だよな、勇者がいないのに神器だけ残ってるなんて」
アリス「ちょ、ちょっといい? その夕影の勇者と神器について詳しく教えてくれない?」
「え? あぁ2人は知らないんでしたか。 全然良いですよ」
「お、夕影の勇者のおとぎ話か? いいね、俺らも混ぜてくれよ」
アリスが夕影の勇者と神器について教えてくれと言うと、それを聞いた人達がぞろぞろと集まってくる。
「まずこの世界には100年前に魔王を倒して世界を救った3人の勇者がいるってのは知ってますよね?」
アリス「うん、それは知ってるよ」
まぁ正確には魔王を倒したんじゃなく封印したんだけどな。 それも勇者じゃなくて当時賢者だったヨルマが。
「そしてその3人はそれぞれ神器と呼ばれるとても強い武具を持っていて夕影の勇者は天聖の盾っていういかなる攻撃をも防ぐ最強の盾の使い手だったらしいんだ」
ふむ、ここまでは聞いていた情報通りだ。
アリス「それでその夕影の勇者の伝説ってなんなの?」
「それが夕影の勇者に関する伝説や噂話は色んなのがありまして……『夕影の勇者の血族は既に途絶えている』とか『夕影の勇者は生き延びて今もどこかで隠居生活をしている』とかこれ以外にも沢山あるんですよ」
リオ「なんだそりゃ、死んでんのか生きてんのかどっちなんだよ」
「それが色々と理由があってですね」
アリス「理由?」
アリスがそう聞くと皆は少し言いずらそうに、
「実は今から約10年前、夕影に100年前の魔王軍幹部の生き残りが攻めてきて大規模な戦争になったんです。 そして攻めてきた魔王軍幹部の生き残りはアンデット最強格の『ヴァンパイア』だったんです」
アリス「ヴァンパイア……! それでどうなったんですか?」
「深夜の襲来だった為戦いは苦戦を強いられて他国へ援軍の要請も出来なかったそうです。 腕利きの冒険者も疲弊し兵も次々に倒れてしまい絶体絶命。 僕達は全員死を覚悟しました。 ですがそこへやってきてくれたのが夕影の勇者の血を引く夕影の勇者様でした」
リオ「もうダメだと思った時に颯爽と駆けつけて来るなんてまさにヒーローだな」
「えぇ、比喩や例えではなく本当に夕影の勇者様は私たちのヒーローでした」
アリス「それでその後はどうなったの? 夕影の勇者がヴァンパイアを倒したの?」
「いえ、それが……」
アリスがそう聞くと今まで丁寧に説明してくれていた人が俯いてしまう。
「……夕影の勇者様は神器である『天聖の盾』を自分に使うんじゃなく、俺達を守る為に使いヴァンパイアへ戦いを挑んだんだ。 そして勇者様は神器が無いのにも関わらずヴァンパイアを追い詰めることに成功したんだけどヴァンパイアは自爆する事を選んで勇者様はそれに巻き込まれて…………」
アリス「そう…だったんだ……」
まさかそんな事があったとは……
リオ「じゃあもう神器の使い手がいなくなっちゃったのか」
「いえ、神器は輝きを失っていないので使い手はいるかと」
リオ「……ん? どういう事だ? 夕影の勇者はヴァンパイアとの戦いで命を落としたんだよな?」
「そうなのですが神器は輝きを失っていなくてですね。 だから色々な噂があるんですよ」
つまり死んだと思っていたけど夕影の勇者は生きてるってことか?
静羅「夜分遅くに失礼します。 こちらに勇者御一行がいるとお伺いしたのですが……」
「せ、静羅将軍!」
話の途中だったが夕影守護隊本部の扉が開き静羅将軍がお迎えに来る。
静羅「すみませんが勇者御一行に用があるので連れて行ってもいいですか?」
「あ、そうだったんですか。 それじゃあ勇者様祝勝会はまた改めてという事で」
リオ「え? あ、あぁ全然に気にしないでいいよ。 それよりまたその夕影の勇者の話聞かせてくれよ」
「こんなので良ければいくらでも喜んで話しますよ!」
ゲン「リオ、もう行かないとダメらしいから行くぞ」
リオ「おう。 それじゃまた来ますわ」
アリス「それじゃあ失礼します」
「本日は本当にありがとうございました! またのお越しをお待ちしております!」
「勇者様また来てくださいね! 何か困った事があれば協力しますから!」
受付のお姉さんや冒険者達の感謝を受け取り、俺達は夕影守護隊本部の外へ出る。
静羅「紅莉さんから聞きました。 アイシクルドラゴンが凶暴化しそれを何者かが止め、アイシクルドラゴンが忽然と消えたと」
カイ「そうなんですよ。 誰が止めてくれたのかもアイシクルドラゴンがどこへ言ったのかも分からないんですよ」
静羅「こちらの方でも調べてみたのですが詳しいことは分からずでしてね……リオさん? アリス王女? 大丈夫ですか?」
アリス「え? あ、あぁ大丈夫です!」
俯いて考え事をしていると静羅将軍が心配して声をかけてくれる。
リオ「実はさっきまで夕影の勇者と神器について話を聞いてたんですよ。 それで夕影の勇者は街を守るためヴァンパイアとの死闘の末自爆に巻き込まれ死亡したって所まで聞いたんです」
静羅「その話でしたか。 私も実際に見てた訳ではないので……両親や他の人達から聞いた情報だとそれで合ってますね」
リオ「なのに神器は輝きを失ってないから生きてるかもしれないって言っててそこからもうよく分からなくて」
静羅「そこまで聞いてたんですね。 分かりました、その後は私から話しましょうか。 まず神器というのは勇者しか扱えないというのはご存知ですよね?」
アリス「勿論です。 私であればこの陽光の剣、リオであれば星のペンダントは勇者じゃないとその力を発揮出来ないですよね」
静羅「そうですね。 ただあまり知られていないのですが神器は別に勇者じゃなくても使う事自体は可能なのは知ってますか?」
アリス「そ、そうなんですか……!? だったらお父様を助ける為に神代の器を探す必要は無かったの……」
静羅「いえ、そういう訳ではありません。 勿論神器の力を勇者ではない人へ使うには神代の器が必要です。 ですが一応神器自体は誰でも使えるという話です。 例えばアリス王女がお持ちの陽光の剣を私が持ったら太陽の加護を得た力は使えなくても炎と光の剣技は多少なりとも使えるようになります。 リオさんの星のペンダントを私が持てば常時状態異常や呪いが無効になる訳ではありませんが一応微々たる程度の耐性はつきます。 このようにかなり力は落ちますが使うことは出来るんです」
ゲン「そうだったんですか……」
リオ「全然知らなかったっす」
静羅「ただここからが大事で神器は本来の持ち主が消えると輝きを失うんです。 アリス王女の陽光の剣は使う時も輝いていませんか?」
アリス「そうですね。 確かに光ってます。 てっきりこの光は炎と光の力によるものかと」
確かに言われて見りゃ俺の持ってる星のペンダントも微かに輝いてたな。
本当に微かにだけど。
静羅「その輝きは神器の持ち主、つまり勇者が生きている事の証明と言われています。 例えばアリス王女がもし亡くなってしまったら陽光の剣は輝きを失い神器本来の力は失ってしまいます」
……ん? 待てよ?
リオ「じゃあ夕影の勇者は死んだのに天聖の盾は輝きを失ってないって事は実は夕影の勇者は生きてるってことか?」
アリス・ゲン・カイ「「「!!!」」」
静羅「私もそう思っていました。 ですが夕影の勇者が亡くなったと言われてから約もう10数年、今まで1度も夕影の勇者らしき人を見たという報告はありません。 ですが今も変わらず天聖の盾は輝きを放っています」
アリス「輝きを失ってないなら生きてるはずなのに10年も見た報告がないって……もう軽く都市伝説ですね」
ゲン「どこかで静かに暮らしてるとかじゃないんですか?」
静羅「それは無いですね。 当時の戦争に居合わせた人達は全員夕影の勇者の顔を知っています。 それに結構ボロボロになりながら闘っていたと言ってましたし、自爆に巻き込まれてもし生きていたとしてもそこから一瞬で姿を消すのは不可能なはずです」
カイ「ですよね……自爆の瞬間にテレポートで逃げたとか? いや、だからと言って逃げた後わざわざ1人でみんなに知られず暮らす必要なんて無いですよね……」
みんなが色々な可能性の話をするが、有力そうなのはなくみんなが頭を抱える。
アリス「そもそも本当に生きてるのかな……? 10年も見つからないとかもう既に亡くなってるとしか……いやでもだったら神器は輝きを失ってるはずなんだもんね……」
リオ「……なぁ、その10数年前に闘った夕影の勇者は亡くなってるんじゃないか?」
カイ「いや、でもそうだったら神器は輝きを失ってるって……」
リオ「いや、きっとそうじゃないんじゃないかな?」
ゲン「……? どういう事だ?」
みんなもゲンと同様どういう事だと俺を見てくる。
リオ「俺の予想も混じるんだけど……まず夕影の勇者はきっと10数年前に闘ったヴァンパイアの自爆に巻き込まれて死んだんだよ。 もし生きてるんだとしたらどこかで見つかるはずだしさ」
ゲン「だが神器は輝きを失ってないから勇者はいるということになるはずなんだぞ?」
リオ「そう、ここからが俺の予想なんだけど勇者が亡くなったのに神器は輝いている。 つまり神器の使い手がいるってことになる。 そして神器を使えるのは勇者だけ、そして肝心の夕影の勇者は10数年前に死んだ……となると残された答えは1つ」
カイ「その答えって?」
リオ「……きっと夕影の勇者には子供がいたんだよ」
アリス・ゲン・カイ「「「!!!」」」
静羅「た、確かにその可能性は考えた事がありませんでした……というか何故今まで思いつかなかったんでしょう……」
おや、もしかして俺結構な名推理しちゃった感じかこれ。 まぁ誰でも思いつきそうだけどね。
アリス「で、でも子供なんて本当にいるの?」
静羅「少なくとも私は聞いたことが無いですね。 そもそも夕影の勇者は人前にあまり顔を出してなかったようなので夕影の勇者に関する情報は0と言っていいほどないんですよね」
ゲン「となるとリオの予想が正しかったとしても捜索は困難か……」
アリス「せめて何か手がかりがあればいいんだけどね……」
静羅「……コホン、ひとまずこの件に関してはまた後で考えましょう。 とりあえず本題に戻させて下さい」
咳払いをすると静羅将軍は話を戻す。
静羅「アイシクルドラゴンを倒した人とアイシクルドラゴンの行方ですが私には分かりませんでした。 ですが影は知っているようなのでこれから寮に戻って影に会いに行きます」
そういや影の奴言うことだけ言って通信切りやがったんだったな。
ゲン「……ん? 噂をすれば……あの寮の前にいるの影じゃないか?」
カイ「え? あ、本当だ! 何やってるんだろ?」
ゲンの言う通り寮の前に何故か影が立ち尽くしていた。
リオ「おーい影! 何やってんだ?」
影「! 全く毎度毎度絶妙なタイミングで来るね君達は。 別になんでもないから気にしないで」
静羅「……? その紙はなんですか影? 何かの資料ですか?」
影「え? あぁこれ? これは……えーっと、まぁ資料だよ」
影は手元の紙を見られたくないのか後ろへと隠す。
何なんだ? バレたらまずいような事でも書いてあるのか?
静羅「なんで隠したんですか、見せて下さい影」
影「そ、それは……ほ、ほら! 外は少し肌寒いし中に入ろうよ! 」
静羅「あ、影! 待ちなさい!」
影「ちょ、離してよ静羅!」
中へ逃げようとした影を静羅が咄嗟に捕まえる。
静羅「最初に約束しましたよね? 協力する以上隠し事は禁止と」
影「そ、それは知ってるけど……今は静羅以外に人がいるから!」
リオ「……あっ、俺達がいるから話せない感じ?」
何か言いづらい事なのだろうか。
アリス「私達が聞いたらまずいなら席外すけど……」
静羅「いえ、大丈夫です。 私以外の人に聞かれたらまずいという事はあの話ですよね?」
あの話……?
影「うん、そうだね」
静羅「だったら尚更話しておくべきじゃないですか? もう皆さんの強さは分かった訳ですし」
影「えっ? まぁそうかもだけど……」
強さ……って事は何か戦闘と関係があるのか?
カイ「もしかして魔王軍に関する事? それだったら私達は全然話して欲しいんだけど」
リオ「そうだぞ影。 アイシクルドラゴンを退けた俺達に怖いものなんてない……遠慮は不要さ」
影「いや、魔王軍は絡んでるんだけど……コレを話すとみんなが危ないというか命を狙われるというか……」
リオ「よし、それなら大丈夫だ。 そのまま胸の内に秘めておいてくれ」
アリス「あんだけカッコつけといてビビらないでよ……リオはこんな事言ってるけど私達は構わないから話してよ」
リオ「やめろ! また面倒事の匂いがする! 俺は聞かないからな!」
ゲン「何言ってんだリオ、散々影にお世話になったんだから話はちゃんと聞くべきだぞ」
影「まぁリオはさておき他のみんなが良いのであれば話すよ」
アリス「頼むよ影」
すると俺が耳を塞いでいても聞こえるくらいの距離に来て影は話し始める。
影「まず最初に私は『詳しくは話せないんだけど私達はディストピア・クインテットを全員討つことを目的として活動しているんだ』って説明したはずなんだ」
カイ「そういえばそんなこと言ってたね。 もしかしなくても今話そうとしてくれてるのってその詳しい事?」
影「そう。 まぁいずれバレるだろうしいつかは話そうと思ってたから言っちゃうけど……実は私達は色々事情があって陰で暗躍する『セーブ・ザ・ライフ』って言う組織で活動をしているんだ」
リオ「セーブ・ザ・ライフ……? んだそれ?」
ゲン「セーブ・ザ・ライフ……!? 聞いた事あるぞ! 確か黒い衣装に身を包み悪徳貴族や凶悪な犯罪者達を中心に粛清を行っている謎の義賊だとか」
アリス「私もあるよ! なんだったら少し前にフィーニスタウンが魔物達の軍勢の奇襲を受けてピンチだった時に三日月のマークがついた黒い衣装を着た男の人が魔物を一蹴してくれたんだよ。 その人達が確かセーブ・ザ・ライフって聞いたんだ」
カイ「それ何なら数ヶ月前にチラッと見た事あるよ! 確かフィーニスに出かけてて帰りが遅くなった夜に月夜に空を駆ける2人組を見たんだ。 貴族の兵士たちに追いかけられてたしアレがセーブ・ザ・ライフだったんなんて……」
全く俺は見たことも聞いたこともないんだが……そんな有名なのか?
影「知らないうちにそんなに有名になってたんだね。 アリスの言ってた通り私達は人々がどうしようもなくて困っていること、例えばディストピア・クインテットだったり悪徳貴族による不当な権力の行使、凶暴化したモンスターによる罪のない人達が襲われるとかそういうのを私達は陰ながら阻止してるんだ」
リオ「へぇ〜。 え、めっちゃいい組織じゃないか。 それの何が俺らに知られちゃまずいんだ? バラされたらとかそういう心配ならしなくても俺らはしないぞ?」
影「いや、そうじゃなくてね……」
すると影は再び言いずらそうに俯く。
静羅「今更言い渋らなくていいじゃないですか。 もうここまで話したんですし今更無かったことにって言うのは無理ですよ」
影「そうだよね……分かった話すよ。 さっき言った通り私達は魔王軍や悪徳貴族や犯罪者等色々な脅威を日々相手にしているわけだからその分恨まれてもいてね、善良な人からしたら正義のヒーローに見えるかもしれないけど逆に私達に狙われるような事をしている人からしたらセーブ・ザ・ライフは邪魔以外の何者でもないからね」
カイ「まぁそうだよね」
影「だからつまり悪い人達は私達の事を探して見つけだして処分しようとしてる訳だからセーブ・ザ・ライフの情報を知ってるってバレたら命を狙われる危険があるよって事だったんだけど」
リオ「ほーらやっぱり面倒事だったよ! やっぱ聞くんじゃなかった!」
やはり予想通りの展開で俺はやっぱり聞かなきゃ良かったと後悔し頭を抱える。
ゲン「だがバレなんてするか? 普通に過ごしてたらバレるなんて瞬間ないと思うんだが」
影「いやいや、魔王軍や貴族を舐めない方がいいよ。 いつどこで誰が見てるかは分からないからね」
アリス「確かにそうかもだけど……でも今ここには誰もいないし問題ないんじゃ……」
アリスがそういうと影はやっぱりかと言ったような顔で、
影「う〜ん……やっぱり気が付かないか。 みんなは気づいてないけど今1人私達の事を陰から盗み見してる人がいるよ」
ゲン「な、何!?」
カイ「全然気が付かなかった……! どこにいるの?」
慌てた様子で辺りを見渡すがどこにも人のいる気配は感じない。
敵サーチスキルに反応……もないか。
リオ「となると隠密スキルかな……? いや、だとしたら俺は分かるはずだし一体どうやって……?」
「ん〜惜しいね。 でも隠密スキルに近しいスキルだしあながち間違っちゃいないんやけどな」
リオ「そうなのか……でも近しいスキルって言ったって一体どんな………………!?!?!?」
突如気配なく俺の隣に現れた男に俺は驚き距離をとる。
一体どうやって……!? コイツが今影が言ってた盗み見してるやつ……!?
ゲン「ん? どうしたリオ……って誰だそいつ!」
アリス「え? うわっ! ど、どちら様!?」
他のみんなも気がついたのか糸目の謎の男を警戒する。
「あ〜そんな警戒しなくて大丈夫や。 別にあんたらの命を狙ってる悪党じゃないからな」
両手を上げてヒラヒラさせながら糸目の男はこっちへ歩み寄ってくる。
影「全く……まずは自己紹介でしょ新夜。 あんたが暗闇からスっと出てきたらもうそれ敵にしか見えないから」
新夜「おっと失礼、ちょっとからかいたくなっちゃってな。 僕の名前は隠岐 新夜。 気軽に新夜って呼んでくれ。 いつもは偽名を使ってるんだけどこれは本名だから安心してな」
何なんだこの男は……さっきから胡散臭さがプンプンなんだが……
リオ「お、おう……? 俺はフィア・リオって言います。 そしてコッチが……」
新夜「あー説明はいらんで。 全部知ってるから」
リオ「……えっ?」
新夜「そこのフード被ってるのがクウギ・ゲン、そっちの青髪の子がイズミ・カイ、んでそっちの金髪碧眼の貴族様がかの有名なフィーニスの勇者のサンディアス・フォード・アリスよな?」
カイ・アリス「「!?!?」」
ゲン「な、なぜ俺達のことを……!? 一体お前は何者だ……!」
間違いなく初対面なはずなのに新夜と名乗った糸目の男は何故か俺らの事を知り尽くしている。
影「頼むからこれ以上混乱させないでくれないかな新夜。 みんなびっくりしちゃってるから」
新夜「分かってるって影。 改めて僕はセーブ・ザ・ライフの一員で主に情報収集や隠密任務を主体に行ってるんだ。 そしてあんたらの事を知ってるのはちょっと前から調べてたからやんな」
ゲン「調べていただと……?」
新夜「そ。 あんたら自覚ないかもしれんが長年倒されていなかったディストピア・クインテットを1人倒したんやで? そりゃ有名人よ」
なんか影にも似たような事言われてたな。
新夜「それにあんたらには悪いんやけど身の回りの事調べさせてもらってたんや。 あんたらがフィーニスの夕影守護隊に行った時は影とルミがアンタらの情報収集。 その後はリオの影へと潜り込み潜伏調査。 船内では邪魔者の排除と神器の調査。 そして夕影に着いた時は静羅将軍が偶然居合わせたように見せる為の演出……全部心当たりあるやろ?」
ゲン「た、確かに影が前言ってた事と辻褄が合う……となると最初から俺達がここへ来て協力することもお見通しだったのか……?」
影「別にお見通しって訳でもなかったけどね。 私達はヨルマのアドバイスを参考にして動いた迄だし」
リオ「ヨルマ……? 影と新夜もヨルマを知ってるのか?」
突如として出てきたヨルマの名に俺が質問すると新夜は先程までのチャラチャラとした雰囲気が消え真剣な顔付きで、
新夜「まぁな。 ヨルマとは一応契約関係でリーダーが仲良くて交流あるんや」
アリス「そうだったんだ……なんか本当にヨルマは色んな所に関与し過ぎてて驚きよりまたかって感情の方が大きいよ」
リオ「だな。 ヨルマは何を考えてるのかも分からないし何企んでるのか分からないからな」
影「それに関しては私も同意見だね。 今回だって突然みんなの事を見てって言われたし……ま、とは言ってもヨルマと直接連絡を取り合ってるのは基本リーダーだから理由については詳しく知らないんだけどね」
新夜「せやな。 それにディストピア・クインテットについてはヨルマからの頼みだけどそれ以外の人助けは俺達の意思だしな。 リーダーも良いって言ってたし」
アリス「なるほどね。 とりあえず大体の事は分かったよ。 あと最後にこれだけ気になったんだけどリーダーって誰なの?」
影「……ひとまず中に入ってよ。 アイシクルドラゴンの件について話すからさ」
新夜「だな。 そもそも僕はそれを話に来たわけやし、ほら、中入って」
アリスがリーダーの事について聞くとあからさまにその話題を避けるように話を逸らして2人は中へ入ってく。
ゲン「……なんか夕影に来てからというもの情報量が多すぎてついていけないな。 俺達の知らない所で色んなことが行わられてて頭がこんがらがってくるな」
カイ「だね。 色んな勢力があり過ぎてもう整理出来てないよ」
リオ「同じく」
とりあえずセーブ・ザ・ライフがヨルマの頼みによって出来た組織で、活動内容はヨルマの頼みとディストピア・クインテットの調査とあとはボランティアの人助けって事は分かった。
それにさりげなくスっと入ってきた新夜とか言う人も恐らく影や静羅将軍同様めっちゃ強い。
静羅「すみませんね皆さん。 我々は色々と他言出来ないようなことが沢山ありまして……」
カイ「いえいえ! 別にいいんですよ!」
アリス「そうですよ静羅将軍。 誰にだって言いずらい事くらいありますから。 ま、とにかく中に入って話を聞こうよ。 他の事もいずれ話してくれるって」
リオ「まぁそうだね」
そう言われ俺達は扉を開け中へと入ると、先に戻っていた紅莉と影と新夜の3人が椅子に腰かけテーブルの上に資料を広げて待っていた。
紅莉「お帰りなさいませ皆様。 思ってたよりは早かったですね」
アリス「うん。 静羅将軍が迎えに来てくれたからね」
影「ほら、みんなも座った座った。 これから大事な話をするからね」
影に言われた通り俺達は大人しく椅子に座ると影は改めて説明を始めてくれる。
影「改めてアイシクルドラゴンについてだったね。 まずみんなが出撃する前に私リオに連絡したでしょ?」
リオ「あーしてきてたな」
影「その時私本当にピンチになったら助っ人が来るみたいなこと言ったでしょ?」
ゲン「あぁ……そういえばそんな事言って通信機をぶつ切りしたんだったな」
リオ「そうだったな。 で、それがなんかあんのか?」
影「うん。 その私の言ってた助っ人こそがアイシクルドラゴンを倒してくれた人なんだ」
アリス「アイシクルドラゴンを倒したあの青い光波は影の助っ人だったんだ! で、その助っ人って誰なの?」
新夜「その助っ人こそがさっき話した僕らの頼れるリーダーさ」
カイ「リーダー……ねぇ、そのリーダーについては詳しい事教えてくれないの? 後々話してくれる感じ?」
さっきから話題に出てくるリーダーについてカイが触れると、2人は悩んだような様子で、
影「教えられないっていうか……リーダーから詳しい事は喋らないで欲しいって言われててね……」
新夜「ん〜……まぁ知らない奴にはベラベラ喋るなって言ってただけやし仲間には話してええんちゃう? 」
影「まぁそうだね……みんな、この事も他言無用で頼みたいんだけどいいかな?」
アリス「もちろん」
ゲン「もう秘密が多すぎて他言する気にもならないぞ」
新夜「まぁそれもそうやな。 じゃ話すけど……我らがリーダーの名前は『光月優雅』、ヨルマと1番仲の深い人で僕の知る限りこの世で1番強い人や」
カイ「光月…優雅……」
リオ「この世で1番強いだって……? 」
影「お世辞なんかじゃないよ? 現に凶暴化したアイシクルドラゴンをワンパンで片付ける所をみんなは見てたでしょ?」
カイ「……」
確かに俺ら5人で対峙しても勝つビジョンが浮かばなかったあのアイシクルドラゴンを一撃だもんな。
アリス「一体どんな技を使うの? 私の太陽の加護を受けた攻撃ですら溜めがないとダメージを与えられなかったのに一撃なんて一体どんなスキルを……」
アリスが興味津々にそう聞くも、影と新夜は困ったように、
影「いやぁ……流石にそれは言えないかなぁ…」
新夜「そうやな。 悪いがリーダーのスキルは特殊でな。 あんま誰彼構わず手の内を明かすと面倒くさいことになるから勘弁してくれへんか?」
紅莉「そうなんですか。 であれば無理して教えて頂かなくて大丈夫ですよ」
ゲン「あぁ。 誰にでも隠し事の1つや2つはあるからな。 気にしないでくれ」
影「悪いねみんな、じゃ話を戻してアイシクルドラゴンの事なんだけど……」
……光月…優雅…………
何故だろうか。 絶対に会ったこともないし聞いた事も無かったはずなのに何故だか俺は知っている気がする。
それも何故か懐かしいような……
カイ「…………」
リオ「……? カイ? ぼーっとしてどうした?」
ずっと黙り込んでいるカイに話しかけるとカイは驚いた様子で、
カイ「い、いや……そんな大したことじゃないんだけどさ……さっき言ってた光月優雅って人……今初めて聞いたはずなんだけどなんか聞き覚えがあるって言うか……」
リオ「えっ」
カイも同じだったのか。
リオ「実は俺も……」
影「リオにカイ? 2人共聞いてる?」
リオ・カイ「「えっ?」」
アリス「2人共大丈夫? なんか上の空だけど」
影が話していた事に気が付かなかった俺たちはみんなに心配される。
リオ「あぁ、大丈夫だよ。 ちょっと考え事しててさ、な? カイ?」
カイ「そうそう! ごめんね影、もう1回話してくれる?」
影「別に構わないよ。 じゃあ改めて話すけどアイシクルドラゴンは私達が安全に元の場所へ帰すから安心して大丈夫。 それでこっちが本題なんだけど……新夜? 頼める?」
新夜「あぁ。 立て続けに色々な事起こって疲れてるのは承知なんやが……実はアンタらには明日夕影の勇者の末裔探しを頼みたくてな」
リオ・カイ・アリス「「「!!!」」」
静羅「夕影の勇者の末裔……! という事は夕影の勇者には子供がいたって事ですか!?」
新夜「まぁそういう事になるな。 と言っても僕は聞いただけやから詳しい事はわからんで」
衝撃の事実を伝えられ、みんなは驚きを隠せず黙り込む。
いや、てか俺が1番驚いてるわ。 なんで予想が的中してるんだよ。
アリス「リオの考えはあってたってことになるね……でも探すってことは場所が分からないってこと?」
新夜「いや、夕影の勇者には末裔がいるっていう情報だけ貰ったからどこにいるとか見た目とかの情報は0やな」
ゲン「情報0か……となると闇雲に探すしか無くなるわけだな……聞き込みなんてしても無意味だろうしな」
紅莉「ですね。 まぁ気長に探してればいつかは見つけられるでしょう」
新夜「いや、悪いんやけど1週間以内に見つけてくれ」
リオ「……えっ?」
地道に探そうと思っていると新夜が思い詰めた顔でそう告げる。
静羅「1週間…ですか……。 それは私が手伝ったとしてもかなり難しいですよ? 何故1週間以内でなければダメなのですか?」
新夜「……みんなには言ってなかったんやがどうやら今フォースである幻想のシルヴァが1週間留守という情報を受けててな。 更にそこに新しく情報が入ってな……その内容が…………」
リオ「その内容が?」
俺がそう聞くと新夜は黙り込み、代わりに影が口を開き……
影「………伝えられた情報はこう。 『今から一週間後、ディストピア・クインテット総出でセキエイタウンへと攻め入り戦争となる』」
一同「「「「「!?!?!?」」」」」
静羅「せ、戦争……!?」
その頃、新月影探偵事務所付近の通路にて……
「…………ふ〜、全く…なんで俺はこうも毎度毎度面倒事に巻き込まれるかな。 ほら、コソコソしてないで出てこいよ」
「……ほう、気がついていたのか、セーブ・ザ・ライフのリーダーさんよぉ。 お前ら、出てこい」
「3人…4人か? 良くもまぁそんな人数で俺の事を尾行してたもんだな」
「へっ、まぁなぁ! お前を殺せば数千万の報酬をやると言われて情報を貰ってなぁ……義賊をやるのはいいがァ人に恨まれたのが運の尽きだな!」
「流石のリーダーとは言えどキツいぜ? 何せ俺達は元夕影守護隊の階級が2級だからなぁ」
「まぁ人殺ししちまって隊からは追い出されたけどね〜。 まぁ殺しの方が金稼げるしいいけど」
「とまぁそういうことだ。 諦めろ義賊、俺達はお前一人で勝てる実力じゃ……」
「あ〜はいはいすごいすごい。 2級だか何だか知らねぇけど俺急いでるから、早く来いよ」
いつまでもベラベラと喋っているので俺は煽り気味にそう言うと相手はイラついた様子で、
「ふっ、舐めてかかると後悔するぞ義賊のリーダーよ。 とにかくお前の首をとって依頼主に叩きつけてやるさ」
「義賊だのリーダーだのややこしいな……いいか、よく聞いとけよテメェら」
「あ?」
「俺の名前は『光月優雅』、日本人だ」
「みつき……ゆうが? はっ、 おいおい義賊さんよぉ……本名なんて言って良かったのか? 名前なんてバレちまえば即刻指名手配して逃げ場なんて…」
優雅「お前は……何故俺の情報が世にでまわってないか知ってるか?」
「あ? 知らねぇよそんなの」
優雅「なら教えてやるよ。 答えはシンプルだ……答えは、『俺の正体を知った人間を生かして帰した事が無いから』……さ」
「「「「ッッッ!!!!!」」」」
To Be Continued→5章:28話




