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23話:魔王軍特別執権官セカンド、『時雨悠桜』 5章:夕影騒動編

23話:魔王軍特別執権官セカンド、『時雨悠桜』

5章:夕影騒動編



静羅「……あれは今から丁度1ヶ月前の事でした……」



「静羅将軍! こんにちは!」

静羅「こんにちは」

街を歩いていると、お店の前にいた住民達が私に気が付き私の元へと寄ってくる。

「毎日お疲れ様です静羅将軍! 本日はどのようなご要件で街へ?」

静羅「いえ…特に要件はないのですが最近モンスターが増えているので見回りをしていたんです」

「あっ、そうだったんですか。 これは失礼しました。 おいみんな! 静羅将軍の邪魔になるから道をあけろ!」

私を囲んでいた住民達は私が街の見回りをしていることを知ると、気を使って道を空けてくれた。

静羅「すみませんね。 また時間がある時にでも話しかけてください」

私はそう言い、少し早足で歩く。

街の見回りをしていると住民には言ったが、アレは建前だ。

本当はやるべき事があって街へと来たのだ。

やるべき事と言うのは……

静羅「着いた……。 ここにお姉ちゃんいるかな?」

伝える事があったので夕影守護隊本部にいるはずのお姉ちゃんに会いに来たのだ。

早速扉を開けて中へと入ると、とてつもない程の人が溢れかえっていた。

この中でお姉ちゃんを探すのは流石に無理があると思い、私は受付に聞いてみる事にした。

「ようこそ夕影守護隊本部へ。 本日はどのようなご要件で……って、せ、静羅将軍!?」

受付の人が私を見てそう驚きの声をあげると周りもその声で気が付いたのか私の事をみんながジロジロと見てくる。

あんまり目立ちたくなかったんだけど……まぁそんなのほぼ不可能だし仕方がない。

静羅「すみません、こちらに私の姉である夕凪愉蘭ゆうなぎ ゆらはいらしてませんか? いつも通りここにいると聞いたのですが……」

「ゆ、愉蘭様をお探しでしたか! 確かいらしていたはずですけど……すみません、調べるので少々お待ち下さい」

私が受付の人にそう言うと調べて始めてくれた。

リオ『ちょ、ちょっとストップストップ!』


静羅「どうかしましたかリオ?」

リオ「いや、静羅将軍にお姉ちゃんがいるって初耳なんですけど……有名なんですか?」

アリス「いや、そんな事ないと思う。 私も今知ったし」

ゲン「あぁ。 夕凪愉羅なんて人初めて聞いたぞ」

静羅「夕影に住むものであれば知ってるとは思いますが、他国の人となれば知らないのも無理は無いですよ。 お姉ちゃんは昨年ディストピア・クインテットのセカンド、時雨悠桜との戦闘で私達の両親が亡くなった後に、夕影守護隊で仇を打つ同士を集めて『魔王軍特別執権官殲滅隊』っていう隊を作って戦ってるんです。 なので私はお姉ちゃんがやるべきだった執政官を代わりに任されているって訳です」

ゲン「ちょ、ちょっと待ってください。 両親が無くなったって……」

アリス「せ、先代将軍はもう亡くなられてたんですか……!?」

静羅「……えぇ。 昨年夕影に攻めてきたディストピア・クインテットのセカンドとフォースに……」

ゲンとアリスが突然の訃報に驚くと、静羅将軍は唇を噛み締めそう説明してくれる。

そうか……だからさっき時雨悠桜の情報を教えてくれる前に根に持ってるだの生きてるだの言ってたのか。

リオ「なんか……ごめん。 思い出したくないこと思い出させちゃたですね」

静羅「気にしないで下さい、もう過ぎたことですから。 それにその仇を打つ為に私はここにいる訳ですから」

アリス「……そうですね。 絶対に仇打ちましょうね静羅将軍! 私全力で協力しますから!」

みんなも同じ気持ちなのかアリスの言葉の後に静羅将軍の顔を見て頷く。

静羅「ありがとうございます、皆さん。 それじゃあ話を続けますね」


「静羅将軍、お待たせしました。 夕凪愉蘭様は現在『魔王軍特別執権官殲滅隊』と共にディストピア・クインテットがいるかもしれない場所へ出かけているらしく……恐らく戻ってくるのはまだまだ先かと……」

静羅「そうでしたか……わざわざありがとうございます」

「いえいえ! また私たちに何か出来ることがあれば言って下さい!」

そういい深々と頭を下げる受付の人に礼を言いながら私は椅子へと腰掛ける。

うーん……お姉ちゃんしばらく帰ってこないのか……どうしようか。

というのも私がお姉ちゃんに伝えたかったことと言うのは、昨日影から聞いた『魔王軍特別執権官のフォースとセカンドが昨日からこのセキエイタウンに向かってきているかもしれない』という情報だ。

本当なのか嘘なのかはまだ分からないらしい。

でもお姉ちゃんはディストピア・クインテットのセカンドとフォースを討つ事が大の目的だからこの情報を聞けば、喜んでセキエイタウンをセカンドとフォースから護ってくれると思ったのだけど……いないなら仕方が無い。

うーん……この情報が本当なのであればこの国にいる最高戦力は私だけということになるし尚更下手に動けなくなってしまった。

静羅「1度城へ戻って皆にこの事を知らせて……いやでもそうすると騒ぎになってしまうだろうし……」

「なーに悩んでるの?」

私が椅子に座って頭を抱え悩んでいるとそう声をかけられ顔を上げてみると……

静羅「っ! 影! 何でここに?」

影「ちょっと大事なことを伝えにね」

すると影は私の隣の椅子へ腰掛け、周りに聞こえない位の声量で……

影「昨日伝えたディストピア・クインテットのセカンドとフォースがセキエイタウンに向かってきてるかもって情報あったでしょ?」

静羅「えぇ。 丁度それについて考えてて……」

影「実はさっき連絡があって……どうやら本当にディストピア・クインテットがセキエイタウンに来てるらしい」

静羅「!? ほ、本当なんですか!? 」

だとするとまずい……お姉ちゃんがいない今私がディストピア・クインテットの魔の手から住民を守りつつ相手をしなければならない。

影「ただセキエイタウンに来てるのはセカンドだけらしい。 フォースは静羅の姉ちゃんの愉蘭を引き付けてる為来てないらしいよ」

静羅「お姉ちゃんをこの街から遠ざけて行動しやすくしたって訳ですね……分かりました。 となれば今から準備をしなければ……影、セカンドはいつ頃セキエイタウンに着くか分かりますか?」

影「いや、その、それが……」

私がそう聞くと影は何か言いずらそうに口篭りする。

静羅「どうしたんですか影。 まさかもう程なく来るとかですか? それなら今から急げば問題ありま…」

影「いや、もうセキエイタウンに到着してるらしいんだよね」

静羅「…………えっ? と、到着してる……!?」

影「うん。 それに今はもう街中にいるとか……」

衝撃の事実に私は言葉を失う。

静羅「ど、どうしましょう……今から避難と言う訳にもいきませんし…かと言って街中で戦う訳には……」

いずれにしても住民を避難させなきゃ被害が……

被害…が…………

静羅「…………ん? ちょっと待って下さい。 もう街中にいるのに今何も騒ぎ起きてないですよね? 一体どういうことですか?」

影「それがどうやらセカンドがここに来た理由は街を襲いに来た訳じゃないらしいんだ。 どういう理由で街の中に隠れてるのかは分からないけど……」

静羅「なるほど……でもいるのが分かっているのに放ってはおけませんね」

それにアイツは私の両親を……

影「まぁセカンドの実力は未知数だから戦闘は避けるべきだね。 ここは私のスキルを使って探し出して観察を…………ってあれ? せ、静羅……?」


静羅「ディストピア・クインテットのセカンドがこの街に……」

影から街のどこかにセカンドが隠れているという情報を聞き、この街を襲うのが目的じゃないとしても放ってはおけない為私は辺りを注意深く見渡しながら歩く。

見た目も何も知らないけど……まぁとてつもない強者となれば大体雰囲気でわかるものだ。

静羅「とは言ってもたった1人を見つけ出すなんて厳しいですかね……」

ここはセキエイタウンでも特に人気な場所である『桜並木通り』という場所だ。

城へと続いている大通りで、圧巻な桜の並木が魅力的と大人気の場所だ。

この桜という木は春しか花を咲かせないらしいのだけど、品種改良されたこの桜は四六時中花が咲いているらしい。

ちなみにどういう技術なのかは私も知らない。

とまぁそんな事はさておきセカンドを探さないと……

静羅「歩いてればいつか見つけられますかね……やっぱり影と一緒に行動した方が……」

「あの、すみません」

影「!?」

突如後ろから声をかけられ驚いて振り返ると、そこには黒いコート?隊服?のようなものに身を包んだ黒髪の少年?青年?がいた。

フードを被っていて顔がよく見えないけど声的に恐らく男の人だろう。

静羅「えっと…何でしょうか? 何か困り事でも?」

「ちょっと道を聞きたくてですね……夕影守護隊本部ってどこにあるか分かりますかね?」

静羅「あぁ、それならこの道を真っ直ぐ行って左に曲がればありますよ」

「ありがとうございます! 帰ってくるの久しぶりなもので、魔王軍を探してる最中に失礼しました」

静羅「いえいえ……そんな」

そういうと私に話しかけてきた男の人は満足気に歩いていく。

静羅「……なんだったんだろうあの人」

考え事をしていたとはいっても話しかけられるまで全く気配を感じなかった。

単純に気が付かなかったんじゃなく話しかけられるまでそこにいること自体が分からなかったような…そんな不思議な感じ。

そう考えると凄くあの人が怪しく思えてきた。

でもあんな子がセカンドな事ってあるのだろうか? 殺意も感じないし言葉遣いも丁寧で、最後に人探し中失礼しましたと言う謙虚さも……

静羅「…………何で私が魔王軍を探してるって分かったの……!?」

そう疑問に思いさっきの男の人が歩いていった方を振り返ると、ちょうど左に曲がっていってしまった。

静羅「まずい…急いで追いかけないと見失って……!」

男の人が曲がって言った所まで全力で走ってきたはいいものの、先程までいたはずなのにもう既にそこにはさっきの男の姿はなかった。

静羅「彼は一体……。 まさかあの人がセカンド……!? だとすると夕影守護隊本部が狙いって事でしょうか……」

普通に歩いていただけなのに私が人探しをしていたと読み取る勘の良さ、話しかけるまで相手に位置を悟らせない動き。

滅多に見ないほどの手練だ。

あの人がセカンドなのだろうか? どう見ても市民にしか見えなかったが……。 フードも被っていたしもしかしたら……いや、しかし見た目で判断してはいけない。

静羅「私で勝てる相手なの……?」

影「あ、いたいた!」

呆然と立ち尽くしていると影が私の元へと駆け寄ってくる。

影「私が喋ってる途中にいなくならないでよね。 大事な話してたんだからさ」

静羅「ごめんなさい……。 でも急いでたもので……」

影「はぁ、まぁいいよ。 いつもの事だしね。 それより新しい情報だよ」

静羅「新しい情報……? この短時間で?」

影「うん、ちょうど今入った情報だよ。 どうやら黒いフードを被った怪しい人が夕影城前で色んな人に話しかけているらしいんだ」

静羅「っ!」

黒いフード……! やっぱりさっきの男の人がセカンドだったんだ!

でもここを曲がって行ったはずなのに城の前にいるって……一体どうやって……?

影「とりあえず偵察をしてみよう。 いざとなれば私のスキルで逃げられるし」

静羅「そうですね。 急ぎましょう」

また逃げられてら困る為、私と影は急いで夕影城へと向かった。


静羅「手分けして探しましょう。 影はそっちを、私は反対側を探します」

影「分かったよ」

夕影城前へと到着した私達は早速セカンドを探し始める。

黒いフードを被っているはずだからいればすぐに分かるはずなのだけど……見た感じそれらしき人は見当たらない。

静羅「色んな人に話しかけてるって影は言ってましたしまだ近くにいるはず……」

「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」

「はい? 何ですか?」

静羅「……?」

辺りを見渡しているとそんな話し声が酒場の方から聞こえてくる。

「探し物をしてるのですが、ここに書かれているようなのを見た記憶はありませんか?」

「なんだいこりゃ? おもちゃかい?」

「どうやら知らないようですね……すみません、失礼しました」

「あぁいや、別にいいんだが……お前さん随分と変な格好してるね。 黒いフードなんて被ってたら怪しまれちまうよ?」

静羅「!?」

聞き耳を立てていると黒いフードという単語が聞こえ私は勢いよく酒場の中へとはいる。

静羅「……! ど、どういう事です……!?」

「……? 何ですか?」

中へと入るとそこには黒いフードを被った女の人がいた。

セカンドは私が桜並木通りであった人じゃないの……!?

「いらっしゃいま……って、しょ、将軍様!? どうしてこちらに……」

静羅「皆さん、離れていて下さい。 この人は魔王軍の者です!」

「ま、魔王軍ですって!? い、一体なんでそんな人がここに……」

「ちょ、ちょっと待って下さい。 私が魔王軍ですって?」

私が戦闘態勢に入ると黒いフードを被った女の人は困惑気味にそう言い後ずさる。

服装も声も性別もさっき会った人とは違うけど似たような黒いフードを被っているということは仲間の可能性が高い。

静羅「堂々と我が国へと侵入するとはいい度胸ですね、魔王軍特別執権官のセカンド。 ここで切り捨ててあげましょう」

「何故もう私が魔王軍の前提で話が進んでるんですか!?」

黒いフードを被った女は私が斬りかかろうとしても自分は魔王軍の者じゃないと否定をしている。

「あの……失礼ですが将軍様、本当にこの方が魔王軍の方なんですか? もしそうなら私達はもう無事でないはずなのですが……」

「そうですよ。 確かに見た目が怪しいのは認めますがだからといって勝手に決め付けられちゃ困りますよ」

本当に私の人違い……?

確かに桜並木通りであった人とはまた別人っぽいですが……でも怪しい事に変わりは無い。

そうだ! とりあえず1度本当に素人なのか調べる為に首元で剣を寸止めして確かめてみればいい。

これで何もしてこなければ本当に関係の無い人だったとわかるはず。

静羅「『夕ぐ……』」

「はぁ…これだから血気盛んな娘は……」

パチンッ

静羅「!?」

黒いフードを被った女が指を鳴らしたと思った瞬間、酒場にいたはずなのに突然景色が変わった。

静羅「ここは……夕影城の上……!?」

「えぇ、その通りよ。 私が移動させたの」

静羅「やはり貴方が魔王軍特別執権官でしたか……一体どうやって一瞬でこんな所に」

私が戦闘態勢を崩さず警戒しながら聞くと、黒いフードを被った女はやれやれと言った様子で、

「ちょっと落ち着きなさいよ。 貴方私がここに転送しなければあそこで剣を振るうつもりだったのでしょ?」

静羅「何か問題でも?」

「全く……あそこにどれだけの住民がいたと思ってるの? あんな所で剣を振るえば騒ぎになるって誰でも考えればすぐ分かる事よ? それに貴方はこの国のトップなんだしその位考えなきゃ」

……何故か魔王軍の幹部に説教されている。

まぁ……確かに影も偵察って言ってたし手は出すべきじゃないんだろうけど……

静羅「そんなの……関係ありません。 目の前に親の仇がいるかもしれないのに黙って見てろという方が無理です」

「親の仇……? ちょっと待って、貴方何か勘違いしてない? 私は人殺しなんてした事……」

静羅「問答無用! 魔王軍関係者ならここで切捨てます! 『夕暮』!」

言い訳をし始めたので私は躊躇なく攻撃をする。

しかし……

「っと、流石は夕影の将軍。 素晴らしい剣の速さね。 剣を振るだけでここまで風が吹き荒れるとは。 ただ喧嘩っ早いのはどうにかして欲しいものね。 話し合いがしたいのに」

また一瞬で移動した……スキルか何か? しかしスキル名を言っているようには見えなかった…

静羅「人殺しと喋る必要などない」

「だからそれが誤解だって話なんだけど……はぁ、まぁ会話をする気がないなら剣で対話するしかないわね」

静羅「!」

黒いフードを被った女はそう言うとどこからとも無く特殊な形をした剣を取り出す。

「戦うというのに貴方……といつまでも呼ぶのも失礼よね。 名前は何?」

静羅「……夕凪静羅。 貴方を殺す者の名だ」

「全く言葉遣いも悪くなっちゃって……私にも名前があるの。 名前は時雨悠桜しぐれゆはる。 一応ディストピア・クインテットのセカンドよ」

時雨…悠桜……名前的にこの国出身のようだ。

静羅「手加減はしない。 全力で貴方を殺す」

悠桜「だから私の名前は悠桜だって……まぁいいわ。 私も剣には自信があるの。 来なさい」

静羅「『夕暮弍式』!」

来なさいと言われてから間髪入れず私は斬りかかるが、

悠桜「さっきの技の改良版よね? 速さは充分だけど丁寧さが足りないんじゃないかしら?」

また避けられた……!

やはり何かのスキルを使って回避しているのか?

でもさっきと同様スキルを使った様子なんて……

影「静羅!」

静羅「! え、影!」

振り返るとそこには慌てた様子の影がいた。

影「なんで戦ってるの静羅! 偵察をしようって言ったでしょ?」

静羅「ご、ごめんなさい……でも目の前に親の仇がいると思うといてもたってもいられず……!」

影「全く……で、貴方がディストピア・クインテットのセカンドなの?」

悠桜「そうよ、私は時雨悠桜。 影…といったかしら? お友達?」

影「まぁそんなところね。 静羅、ひとまず私も協力するから隙を見て撤退を……」

静羅「いや、申し訳ないけど私一人で戦わせて貰いたいの」

影「……はい? ちょ、静羅何言ってるの? 相手はセカンドなんだよ?そんなの危険……」

静羅「それは分かってます。 それでも……アイツは私の手で倒したいんです」

影「……はぁ、分かった。 どうせこれ以上言っても意思は揺るがなさそうだしね。 でも危なくなったら私も入るからね」

静羅「えぇ。 影はアイツの観察をお願いします」

私がそう頼むと影は頷き、いつでも私をサポート出来るくらいの距離まで離れる。

悠桜「随分と恨まれたものね。 静羅を不快にするような事私はした記憶が無いのだけど」

静羅「……! 『夕暮』!」

悠桜「また同じ技……余程自信があるのか知らないけどそんな無鉄砲に正面から来ても攻撃は当たらな……」

静羅「じゃあ…これはどうかな」

悠桜「!? 消えた……!?」

剣を交えていた最中に、私は姿をくらます。

静羅「油断したね、『彼誰斬り(かわたれきり)』!」

油断しきっていた悠桜の背中めがけ私は全力で斬りかかり……

悠桜「残念でした」

静羅「ッッッ!!」

絶対に当たると思った私の攻撃は綺麗に空を斬った。

肝心の悠桜はまたしても私の後ろにいる。

影「消えた……!? 目視できる速さじゃない……何かのスキルか何かなの……?」

アリス『ごめん、1回待ってもらっていいですか?』


静羅「はい、何でしょうか?」

アリス「ちょっと気になる事が出てきちゃいまして。 悠桜に斬りかかったら毎回目の前から消えて更に目視できないんですよね?」

静羅「えぇ。 目の前にいたはずなのに突然として目の前から消える……何かのスキルかと思ったのですがスキルを使っているようにも見えませんでしたね」

アリス「それって……静羅将軍が桜並木通りって所で会った男の人と似てませんか?」

影「!」

ゲン「確かに……すぐ追いかけたのに忽然と姿を消してたしシチュエーションとしては似てるな」

リオ「となるとその最初にあった男の人も悠桜と同じ能力を使ってるって事か?」

紅莉「話を聞いた感じ可能性はありそうですね」

静羅「あの男の人とはあの後結局合わなかったですね。 未だに誰なのかは不明です」

結局不明なのか……

カイ「セカンドと似た能力を使っていた謎の男……気になるね」

アリス「それとあともう1個気になっちゃいまして、静羅将軍が戦っている間影は何してたんですか? 何か有益な情報とかあったり……」

影「あー……まぁちょっとそれっぽい情報なら」

アリス「それなら是非教えて欲しいんだけど……いいかな?」

影「構わないけど…今は静羅の話が続きだし終わってからでも……」

静羅「いえ、この後話すことは私と悠桜との戦闘だけですし後は観察してくれてた影が喋ってくれた方が良いかと。 その方が気づくことも多いと思いますし」

影「そ、そう? じゃあ選手交代だね」

影はそう言うと静羅将軍と場所を代わり、話を始める。


影「黒いフード…黒いフード……うーん、見当たらないけど……」

静羅と別れて少し経ったけど今の所黒いフードの人なんて一切見当たらない。

もしかして室内にいるのだろうか? そうなると捜索が倍かかる事になるからとてもやめて欲しい。

影「もしかしたらもう移動しちゃったのかな? とりあえず静羅と一旦合流して……ッッッ!!!」

そう思って振り返った途端、一瞬風が吹き荒れる。

「なんだなんだ? 突然突風が吹いたと思ったら止んだぞ?」

「一体なんだったんだ今の風は?」

影「この風は……」

自然の風ではない。 人工的な風だった。 一体どこから? なんで?

影「確か城の方から風が……!?」

風の吹いてきた方向である夕影城へと目をやると、城の屋根の上で誰かが向かい合っているのがちっちゃく見える。

影「……ん? あの服ってもしかして……」

見覚えのある服を着ているように見えたので、目を凝らしてよーく見てみると……

影「せ、静羅……!? 何であんな所に……それにもしかしてもう1人はディストピア・クインテット……!?」

もしそうだとすればまずい……急いで向かわないと……

「あいたっ!!!」

影「?」

夕影城へと向かおうとしたところ、後ろからそんな声が聞こえたので振り返って見ると私と同年代位の少女が転んでいた。

「あっ……桃が……!」

影「っと、はいどうぞ。 今度は転ばないようにね」

「あっ、すみません、ありがとうございます!」

紙袋から転げ落ちてしまった桃を拾い上げ少女

に返してあげる。

「…………」

桃を受け取った少女は何故か私の顔を見つめてくる。

影「……ど、どうかした? 私の顔なんか見つめて……」

「あっ、いえ、すみません。 あの……どこかでお会いしませんでしたかね……?」

影「えっ?」

「い、いえっ! やっぱりなんでもありません! 失礼しましたっ!!!」

そう言うと少女は慌てた様子で去っていく。

どこかで…お会いしませんでした?

あんな少女と会ったことなんてあっただろうか? ……いや、ないはず。

影「……って、こんなこと考えてる場合じゃないんだった。 早く向かわないと……!」

さっきの少女の謎の発言も気になるが、ひとまず私は静羅のいる夕影城へと向かうことにした。


影「で、さっき静羅の話してた私と合流する所に繋がるって訳ね」

静羅「そんな少女と会ってたんですか。 身に覚えはないんですか?」

影「うん、さっぱり。 あんな子と会った記憶なんてないんだけど」

リオ「なんかさっきから謎の人出てき過ぎだな」

影「そうだね。 まぁこの話は置いといて、静羅の話してたところの続きだったね……」

アリス「うん。 頼むよ影」


静羅「油断したね、『彼誰斬り(かわたれきり)』!」

静羅が目の前から消えて困惑している悠桜目掛けて静羅が斬りかかり……

悠桜「残念でした」

静羅「ッッッ!!」

絶対に当たったと思った静羅の攻撃は空中を斬っていた。

肝心の悠桜はまたしても静羅の後ろにいる。

影「消えた……!? 目視できる速さじゃない……何かのスキルか何かなの……?」

間違いなく今のは避けられる距離ではなかった。 なのに静羅の剣が当たりそうになると突然として悠桜がその場からいなくなっている。

悠桜「驚いたよ。 突然目の前から消えるなんて、一体どうやったのかしら」

静羅「それはこっちのセリフなんだけどね……はぁっ!」

静羅が斬りかかるが悠桜はいとも容易くいなしてしまう。

悠桜「申し訳ないけど手の内は教えないよ。 こういうのは自分で気づかなきゃ意味が無いから」

静羅「じゃあ私の技も見切れるものなら見切ってみれば! 『夕立・乱』!」

静羅が剣から魔力を飛ばすと、その魔力が四散して剣の雨となり悠桜へと降り注ぐ。

悠桜「こんな器用な技が使えるなんて……やるわね静羅将軍」

静羅「喋ってる余裕があるの? 『夕暮・改』」

悠桜へと剣の雨が降り注ぐ中、静羅は更に剣に橙色の魔力を帯びさせ悠桜を斬りつける。

悠桜「はい、残念。 何度やっても同じ……」

静羅「かかったね」

悠桜「っ!」

悠桜がまた静羅の後ろへと移動した所を静羅が捕まえる。

静羅「何度も私の技を避けたあとは必ず私の後ろにいた。 何度も繰り返したら捕まえるのなんて簡単」

静羅は左手で悠桜を捕まえたまま、剣に精神を集中させる。

影「大気中の魔力が静羅に集まってる……もしかしてあの技を……!」

悠桜「くっ…はな……」

静羅「喰らえ! 『神・夕影斬』!」

静羅がそう叫び刀を振るうと、辺りが夕日のような光に包まれる。

影「眩しっ……! せ、静羅! 大丈夫!?」

静羅「えぇ……大丈夫。 流石のセカンドもこれをまともに喰らえば無事では……」

悠桜「確かにまともに喰らえば無事じゃなかったね」

影・静羅「「!?!?」」

確かに静羅が捕まえていた悠桜は、気がつくと私の後ろへと佇んでいた。

静羅「どうやって……! 確かに攻撃が当たった感触はあったのというのに……」

悠桜「そうね、確かに当たったわ。 全力で避けたつもりが少し肩に当たってしまったわね」

よく見てみると悠桜の肩には焼け焦げたような傷があった。

静羅「でも当たったのは大きな進捗……! このまま攻める!」

悠桜「私に攻撃を当てれて嬉しいのはわかるけど私も忙しい身でね。 これ以上お遊びに付き合ってる時間はどうやらなくなってしまったわ」

影「……つまり逃げるって言ってるの? この状況で大人しく逃がすとでも?」

私がそう聞くと悠桜はクスクスと笑い、

悠桜「私なら逃げられるわ。 ただこの騒動に気がついて駆けつけてきてる夕影守護隊の人達が来ちゃうと厳しいかもしれないわね」

静羅「それなら尚更逃がす訳にはいかない。 『夕暮』…………っ!」

今まで避けるだけだった悠桜が静羅の攻撃を剣で受け止める。

悠桜「まだ夕影守護隊が来るまで時間がありそうだし、少しレクチャーをしてあげるわ」

静羅「うあっ!」

影「静羅!」

悠桜に蹴りを入れられ静羅は吹き飛ばされる。

影「助けに……っ!」

悠桜「ごめんなさい、今貴方を相手にしたくはないの。 そこで大人しくしててちょうだい」

静羅を助けに行こうとした所、拘束魔法を喰らってしまい動けなくなってしまった。

影「こんな拘束……っ! くそっ、解けない!」

悠桜「私の魔法を常人が使うものと同じにされちゃ困るわ。 あ、見学はいいわよ。 だから大人しくしててね」

影「ぐっ……」

悠桜は私にそう言い残して静羅の前へと降り立つ。

静羅「っ……ただの蹴りでこの威力……身体強化魔法?」

悠桜「ん〜少し違うけどまぁそんなものよ。 さぁ立ちなさい。 時間は限られているのだから」

静羅「ぐ……『夕暮・改』『夕影斬』!!!」

静羅は全力でスキルを放つが悠桜は容易く全ての攻撃を受け流す。

悠桜「全然ダメね。 そのスキル、きっと貴方にしか使えない特別なスキルよね? 確かに強力だけどそんな無鉄砲にスキルを使っても当たらないわ。 まずは距離を縮めなきゃ、はっ!」

静羅「くっ…重……っ!」

悠桜「意識が剣に行きすぎ」

静羅「うわッッッ!!!」

悠桜からの攻撃を受け止めていた所、がら空きになった胴体に蹴りを入れられ静羅は再び吹き飛ばされる。

というか……

影「静羅があんなに苦戦するところ初めて見た……普段はスキルを使えば一瞬で決着がつくのに」

いつもであれば敵の攻撃も見切り、相手を上回る剣さばきで圧倒してる所なんだけど……それが出来ないってことは悠桜の強さは静羅以上という事になる。

静羅「ゴホッゴホッ……2発喰らっただけでこんな……」

悠桜「いや、逆に私の全力蹴りをモロに喰らってその程度で済んでるのが凄いわ。 流石は将軍をやってるだけのことはあるわね。 常人ならもう意識ないわよ」

静羅「私だってこの国の中では1、2を争う実力者……ここで倒れてちゃ恥……!」

静羅はそう言うとふらつきながらも立ち上がる。

悠桜「すごい執念ね。 全く…誤解だってのに凄い頑張るんだから……。 それなら私もちょっとだけ見せてあげちゃおうかしら」

静羅「ッッッ!!! 何…その剣は……!?」

影「剣の鍔が……!」

悠桜は持っている剣を天に掲げると、刀身が紫色へと変化し剣の鍔にとてつもない魔力が集まっていく。

悠桜「海の如く全てを飲み込む雨を……『海時雨あましぐれ』」

静羅「避けられな……!」

影「静羅!!!」

悠桜がスキルを使うと、刃となった魔力の塊が静羅へと降り注ぐ。

影「煙でよく見えない……静羅! 大丈夫!?」

そう聞くが返事はかえってこない。

影「まさか…静羅……!」

悠桜「心配しなくて大丈夫よ。 無事だから」

影「えっ?」

煙が晴れると傷1つ負っていない静羅が出てくる。

よく見てみると静羅のいる周りがボロボロになっている。

静羅「ど、どういう事……?」

悠桜「どうも何も当ててないからね。 私は別に戦う理由も無いもの」

悠桜はそう言うと剣をしまう。

すると静羅は歯を食いしばりながら起き上がり、

静羅「私を……バカにしてるの……!」

悠桜「バカに……? そんな訳ないでしょ。 ただ私はこれ以上静羅、貴方と戦う必要は無いと思っただけよ」

静羅「ふざけるな! 私にこんな恥をかかせておいてそんな……! 殺すなら殺せ! 」

悠桜「だから言ったでしょ? 私は人殺しなんてしないって。 それにもう時間切れのようだし」

静羅「待て! 逃がす訳……ぐっ……!」

影「静羅!」

逃げようとする悠桜を追うため走ろうとした静羅は先程蹴りを入れられた腹部を抑えて倒れる。

悠桜「まだ目的は果たせてないしまた来るわ。 その時にでもまた会いましょう」

静羅「待て…悠桜……っ!」

静羅の言葉は届かず、悠桜は再び一瞬にして目の前から消えてしまった。

影「っ! 拘束魔法が解けた……! 静羅!」

悠桜が消えると同時に拘束魔法が解けた私は静羅の元へと駆け寄る。

影「大丈夫?」

静羅「……えぇ、大丈夫です。 ちょっとよろけただけです」

私が手を差し伸べると静羅はか弱く笑って私の手を取り立ち上がる。

静羅「……全く、戦いにすらならなかった。 私鍛錬は怠ったつもりは無いのに……」

影「静羅……」

確かに静羅の言う通り戦いにすらなっていなかった。

最初から最後まで悠桜は静羅の攻撃を全て見切っていて、楽しんでいるようだった。

静羅「……ふぅ。 うじうじしてても仕方が無いですね。 この経験を活かして次に備えましょう。 次会った時は必ず……!」

影「……そうだね」


影「……で、その後は騒動を見て駆けつけた夕影守護隊の人達に事情を話して、帰ってきた愉蘭にもセカンドの情報を説明して一件落着ってとこかな」

ゲン「時雨悠桜……まさか静羅将軍すら凌ぐ力を持つとは……」

静羅「あの時は手も足も出ませんでしたが……今は違います。 今度会った時には一泡吹かせて見せます」

アリス「もし会った時には私も助力致します。 やられっぱなしというのは嫌ですからね!」

静羅「アリス王女……えぇ、御気持ち感謝致します。 その時がきたらお願いしますね」

カイ「勿論私も協力しますよ!」

紅莉「元々そう言う取引ですからね。 当然です」

セカンドと静羅将軍との戦闘話を聞き士気が上がったのか皆がやる気を見せている。

そして肝心な俺はと言うと……

影「……ん? どうしたのリオ? そんな所でうずくまって」

リオ「すぅ……なぁ、やっぱりこの取引無かったことにって出来ないかな?」

「「「「…………は?」」」」

俺がそう言うと皆がおまえは何を言っているんだと言わんばかりの視線が送られる。

リオ「だって聞いてただろ!? このセキエイタウンでトップクラスの強さを誇る静羅将軍ですら軽くあしらわれてたんだぞ!? 俺達でかなうわけがないだろ!」

影「まぁそうかもしれないけど……リオは魔王を倒す為に旅をしてるんでしょ? だったらこんな相手にビビってちゃダメだよ」

ゲン「影の言う通りだ。 魔王を倒すならいずれにしろ倒さなければならない相手なんだぞ? 今更そんなこと言ったって仕方が無いだろう」

リオ「わかってるよ! わかってるけどさぁ…」

みんなは強いからいいとして俺なんかまともな戦力にすらならない。

というか道端の石ころ同然だ。

きっとディストピア・クインテットなんかと出会ってしまった暁には俺は生きては帰れないだろう。

リオ「うん、やっぱり俺は足でまといだと思うんだ。 だから俺はこれにて……」

アリス「ちょ、ちょっと待ってリオ! どこ行く気!?」

カイ「何勝手に外行こうとしてるの!」

リオ「帰るんだよ! そんな化け物と俺がやりあえるわけねぇだろ! うぉらぁぁぁあ! 離せぇぇぇぇっっっ!!!」

ゲン「お前らリオを抑えろ! いつもの発作だ!」

紅莉「全くまたですか……大人しくしてくださいリオ様!」

リオ「嫌だァァァッッッ!!! 死にたくないっ!」

逃げようと扉に手をかけたところを総出で止められる。

ゲン「まったく…こんな調子じゃやってけないぞ……」


悠桜「は……はっくしゅんッッッ!!! 」

洞窟で雨宿りをしていると突然くしゃみが出る。

「大丈夫ですか時雨様? 風邪ですか?」

悠桜「いや、そんな事ないと思うけど……誰かが私の噂でもしてるのかな?」

「そんな事ありますかね? 時雨様の事を知ってるのなんて以前戦った静羅将軍ぐらいでしょう」

静羅…夕凪静羅……。 1か月前に戦った時は大したこと無かったけどどうやら今は更に力をつけたと聞く。

悠桜「ふっ……それもそうね」

「そんな事ないさ」

悠桜「っ!? 誰!?」

「何者だ……ぐあっ!」

洞窟の入口から突然声がしたので目をやると、隣にいた手下が突如気を失い倒れる。

「こんにちは、ディストピア・クインテットのセカンド、時雨悠桜さん」

私の名前を知っている……!

声的に性別は男……それに服装からして夕影の者ね。

悠桜「何か用かしら? 私達忙しいのだけど……というか、貴方は誰なの?」

「誰……そういえば貴方達に我らの名を言ったことはなかったな」

そう言うと謎の男はフードを脱ぎ、顔を見せる。

ナイト「我が名はナイト。 貴様らディストピア・クインテットを壊滅するべく暗躍する組織、『セーブ・ザ・ライフ』の1人だ」

悠桜「セーブ・ザ・ライフ……?」

名乗りを終えると髪にメッシュの入った糸目の男は岩に腰かけ、

ナイト「まぁ座れ。 少し、話をしよう」




To Be Continued→5章:24話

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