22話:『幻想のシルヴァ』 5章:夕影騒動編
22話:『幻想のシルヴァ』
5章:夕影騒動編
影「取引といこうか、リオ?」
リオ「!? いつの間に後ろに……!」
さっきまで目の前にいたはずの影が、一瞬のうちに俺の後ろへと佇んでいた。
それに影が最初にスキルを教えてくれた時同様に辺りが暗い……
影「詳しくは話せないんだけど私達はディストピア・クインテットを全員討つことを目的として活動しているんだ。 君達にはその協力をして欲しいの」
リオ「ディストピア・クインテットを……」
アリス「全員…倒す……?」
影「そう。 君達は知らないかもしれなけど夕影は魔王軍にこの広大な土地と豊かな資源を狙われててね。 今ではどの国よりも発展した技術と一応神器もある訳だしディストピア・クインテットはセキエイタウンを乗っ取るためここを中心に攻撃を仕掛けてきてるんだよ」
リオ「へぇ〜」
まずディストピア・クインテットなんてフィーニスタウンに行って初めて聞いたしな。
まぁ俺達の住んでたイェワンタウンなんて何にもない田舎だったしそりゃ魔王軍なんて攻めてこないか。
静羅「私はそのディストピア・クインテットの魔の手から国民と夕影を守るべく設立された夕影守護隊の最高責任者……皆からは静羅将軍と言われています。 先日もディストピア・クインテットと思わしき軍隊から攻撃を受けました……街への攻撃が日に日に攻撃が激しくなってきているんです」
紅莉「私が離れてから随分と夕影の様子は変わったようですね……」
影「君達は神器を集めて魔王城の結界を解き、魔王を倒したい……私達はディストピア・クインテットを全員倒し魔王を倒したい……手順こそ違えど辿り着くゴールは同じなはずさ」
リオ「た、確かにそうだけど……」
でも元はと言えばディストピア・クインテットを全員倒して結界を解くなんて無理だから神器を集めようって話になったわけで……結局全員倒す事になるなら神器集めが要らなくなるんじゃ……
静羅「……もしかして私達と協力してディストピア・クインテットを全員倒すなら神器集めは要らなくなると思って悩んでるのですか?」
リオ「は、はい。 そう思ってましたけど……」
カイ「そもそも結界を維持してる人を全員倒すのなんて無理だと思ってたから神器を集める事になってたんだ」
ゲン「あぁ、カイの言う通りだ」
影「う〜ん……一応言っておくけどその3神器を揃えたら魔王城の結界を破れるって話、多分確実じゃないよ」
リオ「…………えっ? どういうこと? 出来ないの?」
影「いや、出来ないってわけじゃないと思うけど……結界を破るって言っちゃえばその結界よりもさらに強力な力をぶつけて無理やりこじ開けるって訳だから3神器があってもあの結界を超える魔力をぶつけられるかどうか……」
リオ「ま、待て待て待て。 3神器を集めりゃなんかこう…聖なる力が出てきてパーッと結界を破ってくれるとかそんなんじゃないの……?」
静羅「そんなわけないでしょう? 神器とは勇者の血を引く者が使える特別な『武器』。 神器がどれだけ凄くても扱う者の力量がなければ神器も本気を出せませんよ?」
な、なんてこった……!
俺はてっきり神器は集めたら勝手になんか結界を破ってくれると思ってたんだが!?
アリスは陽光の剣を使いこなせてるだろうけど俺の持ってる星のペンダントとか詳しい使い方知らねぇし……てかコレって持ってる以外に使い道とかあるん!?
アリス「私は問題ないけどリオ……は無理そうだね」
リオ「うん。 無理。 星のペンダントの使い道なんて持ってることくらいしか知らないもん」
影「一応言っといて良かったみたいだね。 3神器を集めても確実に結界を破れるわけじゃ無いって事。 そんな賭けをする位なら結界の維持を任されているディストピア・クインテットを倒した方が手っ取り早いって訳」
アリス「でも本当にディストピア・クインテットを倒せば結界が解けるの?」
影「そこは心配しなくて大丈夫だよ。 私達の情報は正確だからね。 前に手下を拉致って情報を聞き出した時にその手下が『ディストピア・クインテットが結界の維持を任されていますぅぅぅっっっ!!!!』って泣きながら言ってたし間違いないよ」
ゲン「そうなのか……そういう事なら信じるとしよう」
影「それはどうも。 それで、結局どうするんだい? 私達と手を組むの? それともやめとく?」
リオ「う〜ん……」
さて、どうしようか……
正直3神器を集めりゃ勝手に結界が解けて魔王城へ行けると思っていたから、いきなりディストピア・クインテットを全員倒すのに協力してくれと言われても正直気が進まない。
だってソルベを倒せたのもまぐれに近いしな。
アリスが覚醒しなきゃ負けてたし。
でも……
アリス「どうするのリオ? 私的には影と手を組んでおいた方がいいと思うんだけど」
カイ「私も同意見。 3神器を集めても結界が解け無いかもしれないなんて嫌だし……」
ゲン「あぁ。 それに影と静羅将軍の実力は本物だ。 味方になってくれるならこれ程心強いことは無いさ」
紅莉「私も皆さんと同意見なのでこれ以上は何も言いません」
皆もう乗り気なんだよなぁ……
こんなん断れる空気じゃないじゃん。
うぅむ……俺としては戦いは好きじゃないし出来れば断りたいんだけど……そんな俺だけの私情でみんなが乗り気な取引を断るってのもあれだしな。
ゲン「というか取引と言ったな。 条件はなんだ?」
俺が聞き忘れていた取引の条件をゲンが聞いてくれる。
影「条件は最初に言ったディストピア・クインテットを倒すのに協力すること。 それとリオとアリスの持っている神器の提供だね」
アリス「神器の提供……? え、この剣を渡せって事?」
リオ「そうなん? さすがにそれは……」
影「あぁいや、言い方が悪かったね。 正確には神器の調査だよ。 神器は未だ未解明な部分が多いから色々と調べておきたいんだ。 だからその調査にちょっと協力して欲しいって感じかな」
紅莉「確かに私達としても神器には未だ分からないことがある訳ですし調査はいいかもしれませんね」
カイ「条件は分かったけど逆にそっちは何をしてくれるの?」
影「私達は君達が戦う時のサポート、情報の提供、皆の特訓等をしてあげる。 あと勿論セキエイタウンで活動をする事になる訳だから衣食住の提供も無償でするよ」
リオ「えっ、神じゃん! いちいち宿屋探しをして金を払わなくてよくなるってことだろ? そんなん断る理由ないじゃん!」
ゲン「まぁ確かにそうだな……宿泊場所の提供は個人的にはとても助かるな」
カイ「だね。 私は文句ないよ」
静羅「では取引成立…って事でいいですか?」
リオ「おう! よろしく頼む!」
影「こちらこそよろしく」
取引は成立し、俺は影と握手をした。
リオ「でも一応言っとくけど俺別に特別強いって訳じゃないからね? あんま役に立たないと思うけど」
影「別にそんなの気にしてないよ。 大事なのは気持ちだから」
静羅「えぇ、それに私が見る限りリオ、貴方はどちらかと言うと強者の部類に入ると思いますし」
リオ「え? そ、そう? いやぁ……そんな褒めてもなんも出ませんよ?」
ゲン「気持ち悪いぞリオ……鼻の下を伸ばすな」
静羅将軍に褒められて俺が照れているとゲンに冷めた目で見られる。
静羅「単純な強さで言ったらアリス王女が1番かもしれませんが状況によってはその強さなんて変わりますからね」
リオ「まぁそうなのか……? でも本当にそんな期待しないで下さいよ? 俺なんか色んなスキルを使えるくらいで急に襲われたら殺されちゃうし」
影「ふぅん。 じゃあ本当にそうか試してみる?」
リオ「え? 何言っー」
ッッッ!? 敵サーチスキルに反応が……
リオ「うっ!!!」
敵サーチスキルに反応がありビックリして後ろによろけた瞬間、気がついた頃には影が振るった剣が喉元を掠めていた。
影「ほら、避けられるんじゃん」
カイ「ちょっ、何やってんの影!? り、リオ大丈夫!?」
ゲン「おい危ないだろ!」
影「ごめんね。 でも当てる気はなかったから。 避けられなかったら寸前で止めてたし」
カイ「そういう問題じゃ……」
リオ「いや、気にしないでくれゲン、カイ。 ディストピア・クインテットと戦うって話だったわけだからちょっと強さを調べたんだろ?」
影「まぁね。 ちょっと乱暴だったかもしれないけどこれが一番楽だから」
静羅将軍ばかりに気を取られていたけど影もとんでもない実力の持ち主だ。
それに影の今の攻撃……
リオ「スキルを……使ってないよな?」
ゲン「何!? 今の速さの斬撃が素の攻撃だって事か!?」
カイ「そ、そんな事ある? ただスキルを使ってないように見えただけとか……」
影「流石リオ。 その通りだよ。 今のはなんにも使ってない素の攻撃だよ」
紅莉「あの速さの攻撃を素で……! そんな事が……」
ゲン「目視不可能だぞあの速さは。 一体どうなってんだ……」
静羅「でも……どうやら今の攻撃を見切れた人もいるみたいですね」
リオ「えっ?」
静羅「そうですよね? アリス王女」
カイ「えぇっ!? アリスあれ見切れたの!?」
アリス「まぁ……」
嘘だろ? 俺ですら敵サーチスキルに反応があった位しか攻撃されるまで分からなかったのに。
アリス「でも見えただけだよ。 アレを避けるなんて私には無理だ……」
影「いや、初見で見切れるなんて充分過ぎるくらい凄いことだよ。 流石はフィーニス勇者の血を引く者だね」
影はそう言うと静羅将軍と共に歩き始める。
影「じゃ、そろそろ行こうか」
リオ「行くって……どこに?」
影「とりあえず荷物は置きたいでしょ? これから君達が寝泊まりする事になる私達の拠点に案内するよ。だからまず最初に拠点となる新月影探偵事務所に行こう」
リオ「おぉぉぉぉ!!! すげぇぞゲン! なんか機械が走ってるぞ!」
影「あれは車だね。 危ないから車の走ってる方には行かないでね」
カイ「なんかあそこにいる人雲みたいなの食べてるよ!? あれは何!?」
影「あれはわたあめっていうお菓子。 屋台で売ってるから買えば食べれるよ」
ゲン「おい2人とも……道行く人にジロジロ見られるからそれ以上大きな声で騒ぐのはやめてくれ……」
影が拠点に連れてってくれると言ったのでついて行ってる最中なのだが、セキエイタウンには俺が見た事も無いものが沢山あり目を惹かれる。
というか屋台が沢山あるけど今お祭りでもやってるのだろうか?
アリス「まぁまぁいいじゃんゲン。 私もびっくりするもの沢山だし」
静羅「アリス王女が夕影に来るのは5年ぶりですか。 大分雰囲気が変わったでしょう?」
アリス「そうですね。 以前私が来た時はこんな機械はありませんでしたし」
静羅「セキエイタウンの文明がここまで発展したのも2年前突如として現れた遊木智幸と沢村葵という人達が作り、販売した発明品がきっかけですからね」
リオ「紅莉もそんな事言ってたな。 やっぱ凄い人なん?」
紅莉「勿論ですよ。 ですが1番謎なのがこの2人は様々な便利かつ高性能な機械を発明し販売したはいいものの、なんの前触れもなく突如として姿をくらましたんです。 正体も未だに分かってませんし……」
静羅「紅莉の言う通りです。 しかし一切目撃情報が無いわけではなくたまにその二人を見たと言う報告を聞くんです。 なので尚更奇妙という訳ですね」
こんな凄い物を発明しといて大っぴらに威張るんじゃなくて姿をくらますって何考えてるか分からないな。
俺だったら間違いなく威張るのに。
影「そんな話をしてたら着いたね。 ここだよ」
リオ「な、なんだこの建物? タワー?」
影が着いたと言うので目の前の建物を見てみるとそこには『新月影探偵事務所』という看板が置いてあるタワーのような建物があった。
影「ここが私達新月影探偵事務所の拠点。 まぁ拠点って言っても5階建てマンションを寮として使ってて1階をロビーにしてるだけなんだけどね。 しょぼくてごめんね」
ゲン「いやいや……充分すぎる位だろ」
俺もちょっと大きい家みたいな感じかと思っていたので驚きを隠せない。
影「さ、中に入って」
リオ「あ、おう」
影が扉を開けてくれてるので俺達は中へとはいる。
カイ「お邪魔しま〜す……」
中へはいると電気はついておらず静まり返っていた。
ゲン「誰もいないな……ここには影以外誰も住んでないのか?」
影「いや、全然そんな事ないよ。 結構住んでる人いるけどみんな仕事や依頼があって出かけてたり自宅に帰ってたりしてあんまみんなが集まるって事は少ないけど。 現に私も1週間ぶりに帰ってきたし。 でも確か今って1人いるはずなんだけど……」
アリス「そうなの? でも誰もいる気配なんて……ん?」
アリスがそこまで言いかけると階段を下りる音が聞こえてくる。
静羅「噂をすればですね」
「ふわぁ……一体誰ですかこんな朝に。 私そろそろ出ないとダメですし開店時間迄まだ時間があ……って影じゃないですか! それに……えっと、そちらの人達は?」
寝癖のついたカイと同年代そうな女の子が階段から降りてきてそう問いかけてくる。
影「前話した勇者一行だよ。 連れてくるって言ってたでしょ?」
「あー! あのソルベを倒したという勇者一行でしたか! ってこんな姿ではあれですね。 ちょっと身支度してきますので入って下さい」
そう言うと寝癖のついた少女は再び上へと上がってく。
アリス「あの子は?」
影「彼女は不知火朧。 この新月影探偵事務所の助手をしてくれてる子だよ。 基本的に彼女は家にいるからあまりここにいることは無いんだけど……たまたま今日は泊まってたみたいだね」
カイ「へぇ〜。 あの子以外にもここに住んでる人はどのくらいいるの?」
影「う〜ん……日によっているいないは変わるけど一応住んでるのは私含めて9人かな」
リオ「9人!? そんないるのか……せいぜい5人程度かなって思ってたわ」
静羅「ちなみに言っておきますが私はここに住んでませんから」
ゲン「そ、そうなんですか……確かにそうなると凄い人数だな」
9人って……一体どんな人が住んでるんだ?
「すみません。 おまたせしましたね」
そんな事を考えてると身支度を終えたさっきの女の子がカバンを持って見たことの無い服を着て降りてくる。
朧「私は不知火朧って言います。 一応ここに住んでいますがあんまここにいることは無いですね。 そこまで会うことは無いかもしれませんがよろしくお願いします」
ゲン「あぁ、よろしく頼むよ」
リオ「よろしく! てか聞きたかったんだけどその格好は何?」
静羅「それは私も気になってました。 何なのですかその服?」
静羅将軍も俺と同じく朧の着ている服が気になったようだ。
朧「これですか? これはうちの天翔学園高校の制服で……ってそんなこと言っても分かりませんよね。 簡単に言えば同じ所に所属する人達が着る服ですね」
静羅「隊服……みたいなものですか?」
朧「まぁそういう感じです。 っと、私そろそろ戻らないといけないんでした。 すみません影、私会長と葵先輩に呼ばれてるので1度帰りますね」
影「わかったよ。 真冬と優雅はまだ帰ってきてない感じ?」
朧「真冬は連絡が会ったのでそろそろ戻ってくるはずです。 優雅はちょっと分かんないですね。 全く……ちょっと位顔見せてくれてもいいのに……」
朧は寂しそうにそう小声で言うとカバンを持って玄関へ歩いていく。
朧「それでは失礼しますね。 すみませんね入れ違いになってしまって」
アリス「あぁいや、全然気にしないでください!」
アリスの言葉を受け取り朧は軽く一礼をすると、朧はそのまま出ていく。
リオ「行っちゃったな」
カイ「ちゃんと挨拶出来なかったけど大丈夫だったかな?」
影「あぁ本当に気にしないで。 ここに9人住んでるって言ったけどみんなあんな感じで基本的にはここにいないから。 だから本当にここは君達5人の貸切だね」
紅莉「何かここまで接待されると申し訳なく感じますね……別にまだ何もしてないのにこんな良くしてもらって良いんですかね?」
アリス「私も同じこと思ったよ。 なんか申し訳なくなってくるよね」
影「そんな気にしなくていいのに。 これも取引のうちなんだからね。 まぁとりあえず今後の動きについて早速話すから荷物を置いてきてよ。 男子は2階、女子は3階で各々好きな部屋に荷物を置いてきてね」
今後の動きについて話すとのことなので俺達は申し訳なさを感じながらも各自部屋へ荷物を置きに行った。
静羅「夕影についてばっかりなのに休憩なしで色々と申し訳ありませんが……時間もあまりないので今後の動きについて話させてもらいます」
荷物を置き終わった俺達がロビーに集合すると、テーブルの前にある椅子に腰掛けて影と静羅将軍が待機していた。
リオ「時間があまりない? なんか時間制限でもあるんですか?」
静羅「時間制限と言いますか……その、私この国の執政官ですのであまりずっと城を離れる訳にもいかなくてですね……」
リオ「あ、あぁそうでしたね……失礼な事聞いてすんませんでした」
当たり前のように一緒に行動してたせいで静羅将軍がこの国の執政官出あることを忘れていたな。
影「まぁそういう訳だから早速始めるよ。 じゃあまずは取引通り私達の知りうる情報を共有するよ」
ゲン「あれだけ俺達に色々と情報を共有してくれたのにまだ情報があるってのか?」
影「もちろん。 なんせこれでも探偵だからね、私達を舐められちゃ困るよ。 それにこれから教える情報は1番大事な討伐すべきディストピア・クインテットの情報だからね」
アリス「ディストピア・クインテットの情報……! 私達は戦ったソルベの事しか知らないからその情報は欲しいね」
ゲン「あぁ。 是非教えてくれ」
影「まず魔王軍特別執権官ことディストピア・クインテットは全員で5人構成だ。 ファーストからフィフスまで順位付けをされているらしくファーストとセカンドはとてつもない実力の持ち主と聞いてる」
ふむふむ……ここまではソルベが言ってた事と大体同じだな。
影「私達がディストピア・クインテットについて調べられたのは3人。 1人目は君達が倒した魔王軍特別執権官フィフス『腐剣のソルベ』。 アンデッドで不死身の肉体を持っており腐敗と呼ばれる当たった箇所が腐り使い物にならなくなるという強力な呪詛系統の攻撃を得意としている。 現在は意識を失っておりフィーニス城の地下牢に拘束中……で合ってるよね?」
アリス「うん。 その通りだよ」
紅莉「氷の魔法も使ってましたね。 本当に手強かったですね……」
当たったら1発で終わりな腐敗にアンデッドで不死身で魔王軍特別執権官って……改めて何で俺ら勝てたんだろうな。
影「2人目は魔王軍特別執権官フォース『幻想のシルヴァ』。 見たことは無いから見た目までは分からないけど能力は相手に存在しない幻…つまり幻想を見せ惑わせる『夢幻』またの名をドリームファントムと言われるスキルを使い、更に様々な属性の魔法を使用して戦うらしい」
紅莉「ッッッ!!!!!」
むげん……幻って事は混乱みたいな感じなのか?
アリス「幻想の…シルヴァ……」
紅莉「…………」
リオ「なぁなぁ、その幻想を見せるってどういう事なん? 混乱みたいな感じ?」
静羅「いえ、私もそう言う状態異常的なものかと思っていたのですが……シルヴァの使う夢幻は実体を持っている幻を生み出してそれを使用し攻撃する事が可能らしいです」
リオ「……ん? 待て待て、幻なんだよな? なんで幻が実体持ってる訳?」
影「実際に能力をこの目で見たことがないから私も詳しくは分からないけど……言うなれば幻を見せる夢幻と無から物を生成する創造魔法が合体したみたいな感じだね」
幻を見せる夢幻に無から物体を生成する創造魔法の合体したものだって……!?
ゲン「創造魔法ってあれだよな……習得条件が創造したい物についてめっちゃ詳しく理解しているのと莫大な魔力量が必要な超高度な魔法だよな?」
静羅「そうですね。 まぁまず創造魔法は魔力消費が激しくて、それでいて作りたい物の知識がなければ創造が出来ないと言う手間の割にはリターンが少ない魔法なので実際に習得してる人は見た事がありませんね」
ゲン「俺も見た事がないな」
リオ「じゃあそのシルヴァってやつも夢幻の能力は使用回数が限られてるんじゃないのか? 数回使ったら魔力切れを起こすとか」
影「いや、その逆だね。 どうやらシルヴァは創造魔法と夢幻の力を上手く使いこなしていてね。 まず夢幻で好きな幻を生み出してあとはその幻に創造魔法で実体を与えてるらしいんだ。
つまり本来創造魔法のデメリットである物を生み出すための魔力の莫大な消費と生み出したい物体の知識が要らなくなるんだよ」
紅莉「…………」
リオ「うぅ……ん……難しくて頭がこんがらがってきたな」
カイ「つまり言い換えるとシルヴァの使う夢幻で材料を生み出してあとは創造魔法でその材料を物にするって事だよね」
静羅「えぇ。 そういう解釈で間違いないかと」
なるほど……夢幻とかいうスキルで作りたい物の幻を作ってあとはその幻に創造魔法で実体を与えるって訳か。
うん……ずるくね? そんなこと出来るん?
影「私は戦った事ないけど私の仲間が戦った事があるらしくてね。 話を聞くにどうやら槍を作って槍の雨を降らせたり、大量の爆発ポーションを作って辺り一帯を吹き飛ばしたりとなんでもありな能力らしいよ」
アリス「そんな戦い方を……! 確かにとてつもない実力の持ち主そうだし一筋縄にはいかなさそうだね……」
皆もアリスと同じことを思ったのか顔つきが険しくなる。
特に紅莉はいつになく深く悩みこんでいるように見える。
どうやって倒せばいいんだろう……倒せるビジョンが全然湧かないんだけど。
影「みんなフォースについてどう倒すか悩んでる所申し訳ないけど最後の1人を言っていいかな?」
紅莉「あぁ、そういえば知ってるのは3人でしたね。 ぜひ教えてください」
影「3人目は……」
静羅「では3人目は私から……」
影が喋ろうとした所を静羅将軍が被せて話し始める。
影「随分根に持ってるみたいだね。 ……って、そりゃ当然か」
静羅「えぇ。 それに私負けず嫌いですから」
リオ「? 何の話?」
静羅「あぁ、こっちの話ですよ。 それよりも3人目でしたね」
静羅将軍はそういうと咳払いをし、ポケットから写真を取り出して真剣な表情で話し始める。
静羅「3人目は魔王軍特別執権官セカンド、『時雨悠桜』。 先月私が出会ったディストピア・クインテットです」
写真を見てみると、黒いフードを被った女性と思わしき後ろ姿があった。
リオ「……ん? 今回の時雨悠桜ってやつはフォースやフィフスみたいに通り名は無いのか? 『幻想の……』とか『腐剣の……』みたいな」
静羅「多分あるんでしょうけど名前しか名乗らなかったので分かりませんね」
アリス「だとすると結構痛手だね。 大体その通り名で能力の予想がつくわけだから分からないとなると対策のしようがないね」
カイ「だね。 戦いはしなかったんですか?」
静羅「……」
カイが静羅将軍に質問すると、静羅将軍は俯き拳を強く握る。
影「話してあげなよ。 悠桜と戦った事あって生きてるのは静羅だけなんだから」
静羅「……えぇ。 分かってますよ影。 少し、長くなりますが良いですか?」
カイ「全然大丈夫です!」
アリス「いずれ戦うかもしれない相手ですしね。 私達も知っておくべきだと思いますし、お願いします」
ゲン「アリスと同意見だ。 是非お願いします」
みんながそう静羅将軍に頼むと、俯いていた静羅将軍は顔を上げてどこか遠い目をしながら話し始める。
静羅「……あれは今から丁度1ヶ月前、いつもと同じく街の見回りをしていた時の事でした……」
To Be Continued→5章:23話




