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21話:日が陰る街、夕影 5章:夕影騒動編

21話:日が陰る街、夕影

5章:夕影騒動編



『……て…………けて…僕はもう………失いた…くな……』

な…なんだ……? 誰の声だ…………?

『僕…は……ゆ……の力な…………ないの…に……』


リオ「はっ!? 俺いつの間にか寝て……」

勢いよく起き上がると既に部屋には日差しが入って来ていて思わず目を細める。

なんか変な夢を見た気が……気のせいか?

リオ「今の時間は…8時か……」

電気もつけっぱなしでなんで寝てたんだっけ……? 確か部屋に入ってきたら眠たくなかったのに急に眠気が襲って来てそのまま寝ちゃったんだっけ?

……というかなんか身体がちょっと重たい気が……ってまぁ布団にちゃんと入りもせずその辺で寝たんだし当然っちゃ当然か。

でもその割にはいつもと違って目覚めがあまりにもスッキリしすぎなような……気のせいかな?

リオ「起きるか……確か昼には夕影に着くって言ってたっけな?」

いつもならここで2度寝をする所だが目が冴えてしまったからな。

ゲン「おーいリオ、起きてるかー」

リオ「お、ゲンか。 今空けるよ」

着替えを始めようとすると扉がノックされゲンの声が聞こえたので扉を開ける。

ゲン「おぉ…本当に起きてるとは……珍しいな。 いつものお前ならまだ寝てるはずなのに」

リオ「おう、なんか今日は目が冴えちゃってさ」

ゲン「毎日それなら助かるんだがな。 まぁいい、どうやら予定よりも早い到着になるらしい。 準備をしてロビーに集合との事だ」

リオ「おっけー。 遂に夕影に到着か! 楽しみだな〜」

ゲン「楽しみなのはわかるがあまり羽目を外さないでくれよ。 とりあえず準備してこい、ロビーで待ってるからな」

リオ「はいはい、了解了解」

ゲンに言われた通り俺はささっと準備を済ませてロビーへ向かった。


カイ「あ、おはようリオ。 昼夜逆転気味なリオにしては珍しくお早いお目覚めだね」

リオ「まぁな。 今日はなんかスっと起きれてな」

アリス「姫乃曰くもうあと数分で着くらしいからここで待っててだってさ」

準備を済ませロビーに来ると紅莉を除く全員が揃っていた。

リオ「いやぁ〜楽しみだね夕影。 まず降りたら観光したいな」

カイ「だね! なんか観光スポットとかあるのかな? アリスはなんか観光スポットとか知ってる?」

アリス「う〜ん……私が最後に行ったのは5年前だし夕影は2年前から急激に技術が進歩したから私の知ってる知識は役に立たないかな」

カイ「そうなんだ。 ちなみに5年前はどんなんだったの?」

アリス「5年前は今と違って機械なんてなくて自然豊かで川が流れて見所と言ったらでっかいお城しかなかったよ」

カイ「へぇ〜。 そう考えると5年間でとてつもなく変わったんだね」

5年前までは俺らの住んでたイェワンタウンと大差なかったのにこの5年間で見たことも無い機械が沢山あるって何かあったのかな?

紅莉「皆様、夕影に到着しました。 こちらへどうぞ」

そんな事を考えていると紅莉が着いたことを知らせに来てくれたので、俺達は紅莉の後ろをついていく。

一体どんな景色が広がってるんだろうか。

部屋にあった機械を見るにメカメカしい外装なんだろうか?

それともアリスが言ってたみたいに自然を感じられるのか?

紅莉「ここからは真っ直ぐ進んで下さい。 そうすればもう外に出られます」

リオ「おう! じゃあ俺が1番な!」

ゲン「おいリオ! 走るんじゃない!」

ゲンの忠告を聞き流し真っ直ぐ走っていき外に出るとそこには……!

リオ「おぉ……! ここは…島?」

船を降りるとそこは島になっていて目の前には赤い鳥居があり、遠くにはアリスが言っていたであろう城がちっちゃく見える。

メカメカしい感じかと思っていたがそんなことは無く、適度に整備されてると思われる木々に花が咲いている。

アリス「結構変わってるなぁ……すごい綺麗になってる」

カイ「わぁ〜凄い! 私達の住んでたイェワンタウンとはまた違った感じだね!」

ゲン「そうだな。 この赤い門みたいなのは何なんだ?」

リオ「なんだゲン、知らないのか? これは鳥居って言って神様を司る神社とかにある建造物だよ」

ゲン「へぇそうなのか。 よく知ってるなそんなこと」

リオ「ふっ、まぁな……この程度当たり前の事よ」

久しぶりにゲンに尊敬の目を向けられ俺はカッコをつけてポーズをとる。

まぁ俺のやってるゲームでこの鳥居が出てきたから知ってるってだけなんだけど。

紅莉「それでは皆さん鳥居を抜けて真っ直ぐ進んで下さい。 入国手続きをしますよ」

アリス「あぁそうだったね。 よし、行こ!」

俺は詳しいことは分からないので紅莉の後ろへ大人しくついて行った。


「夕影守護隊所属、ダークウィザードのクウギ・ゲン様ですね。 ……はい、確認が取れましたのでカードはお返しします。 どうぞお進み下さい」

ゲン「ありがとうございます」

「次の方どうぞ」

カイ「はーい。 次は私だね」

紅莉の後ろを着いていくと動く階段をおり地下に来て、入国審査もフィーニス王から貰った紹介状を見せて無事進む事が出来て今現在はステータスカードを見せて身分をチェック中だ。

カイが今チェック中なので後は俺とアリスだけだ。

それにしても人の量凄いな。

てかなんでこんなチェックするんだとか思ってたけど、そういや夕影は今イェワンタウンやフィーニスタウンでもあった魔物や人間の凶暴化被害が凄い多いんだったな。

俺らが見たのはスライムしかいないけど他にも魔物が凶暴化してるのか? 人が凶暴化してる所は見た事ないし……

アリス「どうしたのリオ? 何か考え事?」

リオ「え? あぁいや、夕影は凶暴化事件が多いって聞いてたからさ。 人が凶暴化してるとこ見た事ないし入国してから凶暴化被害とかあったらどうすんのかな〜って」

アリス「その心配はないよ。 夕影は凶暴化の原因を夕影守護隊を使って調べてるからね。 それにここを抜けた後にある検査場で凶暴化に関する検査もあるしね。 昔はこんなのなかったんだけど」

リオ「へぇ〜。 結構厳重なんだな」

アリス「この凶暴化に関しては1番夕影が対策してるからね。 フィーニスもイェワンも入るには軽い身体チェック程度だけど夕影は身分の確認に凶暴化を発症しないかの身体チェック、滞在期間の確認と色々やってるからここ数年の間セキエイタウンで凶暴化事件があったってことは1度もないんだよ」

リオ「すげぇなそりゃ」

イェワンタウンは俺らが出る前くらいにも国民が凶暴化した魔物に襲われたり、フィーニスでは凶暴化した人が街で騒動を起こしてフィーニス国王がそれで負傷したりとあった訳だからな。 そう考えたらこういう検査は大事だな。

「次の方どうぞ」

「次お待ちの方もこちらへどうぞ」

アリス「呼ばれたから先行ってるね。 後で落ち合おう」

リオ「おう、俺も呼ばれたし行くか」

2人同時に呼ばれたので俺とアリスは別々に呼ばれた場所へ向かう。

「それではステータスカードか身分が分かる物のご提示をお願いします」ふ

リオ「えーっと、どこやったっけな……あった、はい」

俺は受付の人に言われた通りポケットにしまっていたステータスカードを渡す。

すると受付の人は何故か険しい顔をして他の受付の人となにやら話し始める。

何だ……? 何か問題でもあったか?

「すみません、こちらのステータスカードはどちらで作られましたか?」

リオ「え? フィーニスタウンにある夕影守護隊本部ですけど……なんかあったんすか?」

「リオ様のステータスカードには本来記載されているはずの情報がなく欠けていましてですね……このカードを作る時に担当していた受付は誰だったか覚えてますか?」

リオ「えっと、ルミって人にやってもらいましたね」

「ルミ先輩が…申し訳ございませんがリオ様のご身分を少し調べさせていただくのでカードは一時お預かりしますね。 なので先に進んでいただいて他の検査を完了させてきて下さい」

リオ「あ、はい。 分かりました……」

受付の人に言われた通り俺は先へと進む。

もしかしてあれか? ステータスが表記されてないからか?

こんな面倒な事になるんだったらやっぱ夕影来る前にヨルマに聞いとくべきだったな……

「こちらへどうぞ。 フィア・リオ様でお間違いないですか?」

リオ「間違いないです」

「それではそのまま前進してゲートをお通り下さい」

案内に従い俺は目の前にある赤いレーザーが出ているゲートをくぐる。

「……ん? これは…何だ? 今までに無い反応だぞ……」

すると、またしても問題があったのか険悪な顔をして複数人と話し始める。

全くさっきから何だってんだ……何で俺はこんなにトラブルに巻き込まれんだ?

「確認をとった所一応問題は無さそうなので進んでもらって大丈夫です。 お手数をお掛けして申し訳ございません」

リオ「あぁ、大丈夫ッスよ」

進んで大丈夫と言われたので俺はゲートを抜けた先にある出口へ向かう。

ゲン「お、来たか。 随分遅かったな」

アリス「ほら、早く行こ! ここ出たらセキエイタウンだよ!」

出口に来ると既に検査を終えた他全員が俺を待っていてくれていた。

リオ「いや〜なんか俺色々引っかかっちゃってさ。 ステータスカードとか俺まだ返してもらってないし」

カイ「えっ? なんで? 」

リオ「いや、なんか身分を確認するからカードを預かるって……」

「お話中すみません、フィア・リオ様でお間違いないでしょうか?」

みんなに説明をしようとした所、さっきの受付の人が話しかけてくる。

リオ「そうですけど…あ、俺のステータスカードってどうなりました?」

「その…えっとですね……リオ様のステータスカードには書かれてあるはずのものが記載されておらず身分を証明できなくてですね……フィーニスタウンの夕影守護隊本部に問い合わせてみたのですがルミさんが現在いらっしゃらなくてリオ様のご身分を証明できないんですよ」

やっぱりダメだったか。

アリス「名前と年齢と職業は書いてあったはずだけどそれじゃダメなんですか?」

「前はそれで大丈夫だったんですが今はダメでして……最近ではステータスカードを偽装したりして入国する無法者もいたりしまして正式なステータスカードや身分証明書じゃないと入国出来ないんですよ」

リオ「……ふむ、つまり俺は入国出来ないってこと?」

「そういう事になりますね……」

ゲン・カイ・紅莉「「「「……」」」」

リオ「俺の冒険、これにて閉幕……」


三馬鹿は選択を迫られる『The END……』




アリス「いやいやいや、諦めないでよリオ! 何もう終わろうとしてんの!」

手詰まりになったので帰ろうとするとアリスに止められる。

リオ「だってまず入国出来ないんだぜ? どうしようもなくない?」

アリス「き、きっと何か方法があるよ! 例えばここでステータスカードを作り直すとか」

「ステータスカードを作る夕影守護隊本部はセキエイタウンに入らないと無いので厳しいかと……」

アリス「……じゃ、じゃあルミさんが帰ってくるまで待ってれば証明でき……」

「たった今連絡があったのですがルミさんはどうやら仕事でしばらく出張中との事で暫くは戻ってこないかと」

アリス「…………」

先程まで何とかしようとしていたアリスが意気消沈してしまった。

う〜ん……でもルミもいないみたいだし身分証明しろって言われてもどうしようもねぇしな……

…………ん? そういや俺ルミからなんか機械みたいなの貰ってなかったっけ?

確か話の途中だったからそのままポッケに……

紅莉「……おや? リオ様それはなんですか?」

リオ「フィーニスタウンでステータスカード作った時に『私の証明です』とか言ってルミから貰ったやつなんだけど……」

アリス「なんかそれボタンになってない? 押したらなんかあるの?」

リオ「さぁ……」

今改めて考えると私の証明って……一体どういう意味なんだろうか……

リオ「……うーん、よく分からんしとりあえず押してみるか! ポチッと!」

悩んでいても始まらないので俺はルミから受け取っていたボタンを押してみる。

リオ「………………」

カイ「………………何も起きないね」

紅莉「何も起きませんね」

あっるぅぇ?

リオ「だいたいこういうのって押したら何か出てきたりするんじゃないのか?」

ゲン「んな漫画みたいな展開あるわけないだろ……」

「あの…リオ様。 通行の妨げになりますので入口まで戻って頂いてもよろしいですか?」

リオ「えっ、あぁ……」

後ろを見てみると検査を終えて入国しようとしている人たちが大勢来ている。

アリス「ちょ、ちょっと待って下さい! 何とかしないとリオだけ入れない…何とかしなきゃ」

ゲン「でもどうするってんだ? 何も策は無いぞ?」

ゲンの言う通りこんな事になるとは思っていなかったので策など当然ある訳もない。

まずいな…このままだと俺だけ帰ることに……

「何を騒いでいるのですか?」

「ッッッ!!! しょ、将軍様……! 何故ここに……!」

リオ「将軍……?」

受付の人達が見つめてる方を見てみると、首からペンダントをかけ、腰に剣をかけ武装をした女の人が佇んでいた。

アリス「ま、まさかあのペンダントにあの顔立ち……静羅将軍……!?」

リオ「せいらしょーぐん?」

誰だそれ?

ゲン「静羅将軍だと……!」

カイ「え? なになに? 知ってるのゲン?」

ゲン「あぁ、静羅将軍はあの夕影守護隊の最高責任者……更に夕影の執政官を任されている人だ」

リオ「執政官…ってどういうことだ?」

ゲン「つまり夕影の王女様みたいな人だ」

夕影の王女だって!?

リオ「一体なんでそんな人がここに?」

ゲン「俺も分からねぇよ……いいか? 間違えても失礼な事するなよ……! もし無礼を働けば……」

リオ「働けば……?」

紅莉「処刑ですね」

しょ、処刑!?!?

静羅「たまたまここの前を通りかかったのですが……何やら揉めていたようですから見に来たのですが……」

「揉めてたなんてとんでもない! 少し問題があっただけでして……」

静羅「問題…といいますと?」

「そ、そちらにいらっしゃるフィア・リオとおっしゃるお客様のステータスカードに何故か記載されているはずの情報が無く身分の確認が取れなくてですね……」

静羅「……少し貸していただけますか?」

リオ「は、はい」

俺は静羅将軍にステータスカードを手渡すと、静羅将軍は俺のステータスカードをジロジロと見て、俺の後ろにいるアリスの顔を見る。

静羅「……貴方、もしかしてフィーニスのアリス王女ではありませんか?」

アリス「は、はい。 お久しぶりです静羅将軍。 実に5年ぶりですね」

静羅「貴方のことはよく覚えています。 成長しましたね……あの頃の小さいアリス王女も可愛らしくて好きでしたが、今となっては顔つきが大人びましたね」

アリス「もう16歳ですから……そ、それはさておき静羅将軍、そちらにいるリオの処置にしましてはいかがなさるおつもりで?」

静羅「…………」

アリスがそう聞くと静羅将軍は何故か黙り込み俺のステータスカードをまたまじまじと見る。

そして俺の影を何故かジロジロと見つめる。

この時間怖すぎる……お、俺一体どうなっちゃうんだよ……!

静羅「………はぁ、分かっていますよ。 約束ですからね。 アリス王女、夕影にいらしたのはどういう理由で?」

アリス「はい。 私達は魔王を討伐すべく魔王城にかけられた結界を解くべく残り1つとなった神器が夕影にあるという噂を聞き、神器を追い求めて夕影に参りました」

静羅「そうですか……分かりました。 リオ…と言いましたね?」

リオ「は、はい! リオです!」

静羅「貴方のステータスカードは本来書かれているはずのことが書かれていません。 この場合夕影には入国出来ない決まりとなっています」

リオ「はい、さっき受付の人からも聞きました」

静羅「ですが、私が特別に貴方の入国を許可します」

「「「えぇぇっ!?」」」

リオ「……えっ?」

完全にダメな流れかと思って諦めかけていると静羅将軍が俺の入国を許可してくれた。

「よ、よろしいのですか静羅将軍! もしこの人に凶暴化が起こったりまたは魔王軍の手先だったら……」

静羅「構いません。 私が直接この目で見て彼は問題ないと判断しました。 それとも何かそれ以外に問題でも?」

「い、いえ……ですがもしトラブルが起こりでもしたら私達ではどうしようも……」

静羅「私の判断ですから貴方達が責任を負う必要はありません。 それにもし彼が……リオが夕影に仇なす存在であれば……」

「存在であれば……?」

静羅「私が直々に裁きます」

リオ「ヒェッ」

怖っ。 目がガチだ。

多分本当になにか騒ぎを起こせば首が飛ぶ。

リオ「え、えっと、俺の為にわざわざありがとうございました。 助かりました」

静羅「礼は不要です。 ですがくれぐれも問題事は起こさないように」

リオ「はっ、はい!」

紅莉「リオ様、静羅将軍の覇気に押し潰されちゃってますね」

カイ「アレは仕方がないよ……あんな目できつく言われたら私もあぁなっちゃう自信あるし」

静羅「それでは私がセキエイタウンまで案内しましょう。 着いてきてください」

静羅将軍はそう言うと目の前にある出口を出て歩いていってしまう。

アリス「何ボーッとしてるのリオ。 静羅将軍が行っちゃうよ。 追いかけるよ!」

リオ「え? あぁ……」

そう言うアリスに続いて他のみんなも静羅将軍の歩いていった方へ歩いていく。

すごい貫禄のある人だったな……

今まで会ってきたどんな偉い人よりも威圧感があった。

対面しただけで身体がすくんで動かない……身体が本能的に静羅将軍を恐れている。

静羅将軍……とてつもなく強い人だ。 俺達が戦ったあの魔王軍特別執権官のソルベよりも多分強い。

カイ「おーいリオ? 何ボーッとしてるの? 静羅将軍行っちゃうから早く行くよ」

リオ「……世界って広いんだな。 カイ」

カイ「え? う、うん。 そうだね……?」


カイ「……ねぇリオ」

リオ「ん?」

カイ「もう随分歩いたけど……これっていつまでついて行けばいいんだろうね?」

リオ「さぁ……? 俺に聞かれても……」

静羅将軍に入国許可を貰った後、セキエイタウンまで案内してくれると言ったので後ろをずっとついて行ってるのだが……

リオ「ここ一体どこなんだ? 全然街っぽくないんだけど……」

かれこれ数分は歩いているがあたりはまるで路地裏だ。

ここを抜ければセキエイタウンにつくのか?

アリス「……あの、静羅将軍? こっちはセキエイタウンじゃないのでは?」

静羅「……そうですね。 アリス王女の言う通りここはセキエイタウンとはかけ離れた路地裏です」

静羅将軍はそう言うと何故か突然立ち止まる。

ゲン「……セキエイタウンに案内をしてくれてるのではなかったのですか? 静羅将軍」

静羅「えぇ、ですがその前にやるべき事があります」

……ん? 何だ? なんか急に空気が重くなったぞ?

紅莉「やるべき事…とは……?」

紅莉がそう問いかけると同時に俺を除く全員が戦闘態勢へと入る。

え? なになに? 戦うの? えっ? え?

静羅「あぁ、失礼。 言い方が悪く警戒させてしまいましたね。 やるべき事と言うのはそういう意味ではありません」

ゲン「そ、そうだったのか……し、失礼を働き申し訳ない静羅将軍」

どうやらみんなの勘違いだったらしく、戦闘態勢を取っていたみんなが頭を下げて謝罪をする。

リオ「……あっ、俺も頭下げた方がいいのか」

静羅「下げなくていいですよ。 皆さん顔をあげてください」

アリス「は、はい……えっと、ではやるべき事って一体何なのですか? 検査も終わりましたしこれ以上やる事なんて……」

静羅「……はぁ、どうやら本当に何も知らされていないようですね……」

リオ「知らされてない? どういう事です? もう少し分かりやすく教えてくれません?」

ゲン「おいリオ! 口の利き方に気をつけろ!」

リオ「あっ! え、えと、どういう事なのか俺にも分かるように教えて下さい!」

静羅「いいですよ、そこまで敬語にならなくても。 何でしたら貴方達全員は巻き込まれてる被害者な訳ですし」

アリス「私たちが被害者……?」

静羅将軍はそう言うとゆっくりと俺の前まで歩み寄ってくる。

静羅「……」

優雅「……えっと、何ですか?」

な、なんだ……? 無言で俺の目の前に立たれると生きた心地がしないからやめて欲しいんだが……

静羅「……ちょっと、いい加減出てきたらどうですか? 私に全部説明を押し付けないで下さい」

リオ「え?」

静羅将軍は俺を見ながらそんな意味不明なことを……

………いや、俺を見て言ってるんじゃない。 静羅将軍が見てるのは……

リオ「俺の…影…………?」

「あ〜あ。 もうちょっと楽したかったんだけどな」

「「「「!?!?!?」」」」

聞き覚えのある声がすると同時に俺の影から誰かが飛び出してくる。

アリス「あっ! 貴方は……!」

影「久しぶりだね皆。 久しぶりって言っても一日ぶりのだけどね」

ゲン「く、烏羽影!?」

リオ「何でこんな所に……!?」

俺の影から飛び出してきたのはなんと昨日フィーニスタウンの夕影守護隊で案内をしてくれた影だった。

静羅「全くビックリしましたよ。 なんて所に隠れてるんですか」

影「だって1番効率的だし効果的かな〜って」

静羅「貴方って人は……他は一緒じゃないんですか?」

影「今は私だけ。 他はみんな仕事中」

平然と会話している様子を見るにどうやら静羅将軍と影は知り合いのようだ。

アリス「え、えーっと……状況が飲み込めないんだけど……」

静羅「あぁ、失礼しました。 ほら影、皆に説明を」

影「分かってるよ。 改めてちゃんと自己紹介させてもらうね。 私は烏羽影、セキエイタウンにある新月影探偵事務所って所で働く探偵だよ」

紅莉「新…月影……探偵事務所? 私がいた時にはなかった建物ですね……」

影「うちの事務職が出来たのは最近だしね。 知らないのも無理はないよ」

ゲン「いや、その探偵ってのは分かってるんだ。 俺達が知りたいのはなんでリオの影から出てきたのかって所なんだが……」

影「まぁそんなに慌てないで。 ちゃんと説明するから」

影はそう言うと右手を広げて地面へと向ける。

リオ「……? 何してんだ影?」

静羅「離れてた方がいいですよ、リオ」

リオ「え? ってうぉぁっ!?」

ゲン「これは一体……!?」

アリス「なんでこんな暗くなってんの!? 今昼だよね!?」

静羅将軍に離れていた方がいいと言われて数歩下がった途端、影の右手から黒い何かが出てきて明るかった周り一体が暗くなる。

紅莉「何なんですかこれは……!」

影「これが私のオリジナルスキル、『影支配シャドウコントロール』だよ。 このスキルは影を操作して攻撃したり防御したり出来る他に、リオの影に潜んでいたみたいに影の中に潜伏することも出来るんだ」

リオ「それで俺の影から出てきたって訳か……」

影「そーゆー事」

影が右手を振り払うと辺りを包んでいた暗闇は消えて、元通りになる。

カイ「でもなんでわざわざリオの影の中に潜んでたの?」

ゲン「同意見だ。 一体なんの目的で?」

カイとゲンがそう聞くと影はやれやれと呆れた様子で、

影「はぁ……今だから言わせてもらうけど…君達、危機感が余りにも無さすぎると思うよ」

アリス・紅莉「「危機感……?」」

影「そう、危機感。 一応聞いてみるけどフィーニスタウンからここまで来るまでに皆2回敵から奇襲を受けてたの……気がついた?」

ゲン「敵から奇襲だと……! 気がついたかリオ?」

リオ「いやぁもう全然。 敵サーチスキルにも引っかかってないし……それ本当?」

影「勿論本当だよ。 1回目はリオが1人で夕影守護隊本部に走っていってた時、あの時ソルベの手下と思わしき輩がリオを奇襲しようとしてたんだよ」

リオ「う、嘘だろ……!?」

敵サーチスキルは常に起動してあるから俺に敵意を持っているやつが入ればわかるはずなのに……

アリス「ソルベの残党がまだいたなんて……でもなんで私達を集中して狙ってきてるんだろう?」

影「そんなの理由は1つしかないでしょ? リオとアリスが持ってる『神器』だよ」

ゲン「た、確かにあのソルベとか言うやつもリオの神器を狙ってたんだったな……確かに危機感が足りなかったな」

なるほど……確かに神器を大っぴらに持ち歩いといて今までなんの問題もなく来れた方がおかしかったのか。

影「そして2回目は船。 あーんな豪華客船乗ってたら目をつけられて当然だよ? 夜みんなが寝静まった頃位に再び大量のソルベの手下と思わしき人達が船を沈ませようとしてたんだよ」

紅莉「そ、そんな事が……」

ゲン「じゃあそいつらは一体どうしたんだ?」

影「勿論私が片付けたよ。 君達がセキエイタウンに入国するのが遅れたらこっちも困るからね」

アリス「私達が入国するのが遅れたら困る……? どういう事?」

影「……君達はあのディストピア・クインテット『腐剣』である5(フィフス)、ソルベを倒した。 これがどういう意味を持つか分かる?」

リオ「さぁ……? 平和になる?」

影「不死身と言われたソルベが討たれたとなればディストピア・クインテットは黙っちゃいない。 現にフォースが動き出したという話も聞いた。 全く動きを見せなかった魔王軍特別執権官がソルベ討伐を機に動き始めたという訳だ」

俺達がソルベを倒したせいで残りのディストピア・クインテットが警戒度を増して行動を始めたって訳か……

……うん、俺ら結構ヤバいことしちゃった?

ゲン「だがソルベはどっちにしろフィーニスタウンを滅ぼすつもりだった。 あそこで倒さなければもっと被害が出ていたかもしれない」

アリス「ゲンの言う通りだよ! アイツは私のお父様に呪いをかけた……痛い目見て当然な奴だよ!」

影「別にソルベを倒した事を責めてるわけじゃないよ。 なんなら感謝してる迄だからね」

感謝してる……? もうさっきから何なんだ。

一体影は何が目的で……

紅莉「詳しい説明はとりあえずここまでにしましょう。 わざわざこんなひとけの無い所に連れてきたんですから……周りには聞かれては困ることでもあるのでしょう?」

カイ・アリス・ゲン「「「!!!」」」

静羅「……そうですね。 詳しい事はこの辺にしておきましょう、影」

影「そうだね。 それじゃあ……」

リオ「……っ! 消えた!?」

影が何かを喋りかけたと思いきや辺りが再び暗くなり目の前から突如として姿を消す。

一体どこ……

影「取引といこうか、リオ?」

アリス・ゲン・カイ「「「!?!?」」」

リオ「!? いつの間に後ろに……!」




To Be Continued→5章:22話

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