20話:豪華客船と夕影の技術 5章:夕影騒動編
20話:豪華客船と夕影の技術
5章:夕影騒動編
影に別れを告げ夕影守護隊本部からフィーニス城へと戻ってきた俺たちは、フィーニス王にステータスカードを作った事とソルベの懸賞金である1000万円を貰ったことを伝えた。
アリスとゲンとフィーニス王が話し合い、どうやら懸賞金である1000万円は俺達が夕影に行く為に必要な額だけ使い、残った金額はソルベのせいで怪我をした人達の医療費や被害が出た建物の復興金へと当てることになったらしい。
リオ「まぁアリスがいなかったら勝てなかったしな。 でもちょっとお小遣い欲しかったなぁ……」
ゲン「いつまで言ってるんだお前は。 フィーニス王には良くしてもらったんだから当たり前だろう?」
リオ「だってゲン全然お小遣いくれないんだもん。 懐が寂しくてしょうがないよ」
ゲン「うっ、それはそうだが……だがお前に小遣いあげたら訳の分からんもの買ってくるしな……」
ゲンがぶつぶつ何か言っているが俺は気にせず先へ進む。
フィーニス王へ説明を終えた後、夕方に夕影行きの船が出てる事をフィーニス王に伝えるとなんとわざわざ夕影行きの貸切船を用意してくれた。
俺達は今その船へと向かっていた。
アリス「そういえば資金はゲンが管理してるんだったね。 まぁリオにお金の管理を任せたらダメなのは私にもわかる」
カイ「リオにお金渡したらすぐ変なの買ってくるからね」
リオ「おいおい、流石に俺の事バカにしすぎじゃないか? 俺はあくまで必要と感じたものを本能のまま買ってるだけだぞ」
ゲン「ほう、じゃあフィーニスタウンの雑貨屋で俺が好きな物買っていいぞって言った時一体お前は何を買った?」
リオ「……えっと…おもちゃの指輪……」
カイ・アリス「「…………」」
リオ「お、おい! なんか言えよ! なんでそんな目で見つめるんだよ! せめてバカにしてくれよ!」
全員が可哀想なものを見る目で俺を見つめ、無言で俺の前を歩いていく。
アリス「くだらない話してたら着いたね。 これがお父様が用意してくれた貸切船だよ」
リオ「おぉ……! え、これ本当に貸切……?」
ちょっとしたボートみたいなのを想像してたら豪華客船レベルの船がそこにはあった。
カイ「えと……本当にこれ? あの隣にある船じゃなくて」
アリス「あんな船じゃ夕影行くまでに何日もかかっちゃうよ。 ソルベを倒した今、少なくともディストピア・クインテットとかいう集団は動き始めているはずだよ。 一刻も早く神器を集めなきゃね。 ほら、乗って乗って!」
アリスはそう言うと軽い足取りで船へと続くスロープを上がっていく。
ゲン「俺達も行くぞ。 にしても本当にデカイな……これを貸切って本当に良かったのか? 俺達全員でたった4人しかいないのに」
リオ「まぁまぁいいじゃん。 せっかくこんな立派なの用意してくれたんだし素直に楽しもうぜ!」
カイ「そうだね。 ほら、アリス行っちゃうから私達も行こ!」
ゲン「あ、あぁ……」
不安気なゲンを適当にあしらい、俺達はアリスを追った。
リオ「うぉぉぉぉ!!! すげぇぇぇぇぇ!!!」
船の中に入ると、今までに見た事のない光景がそこには広がっていた。
リオ「おいなんだあれ! ガラスのライト!?」
アリス「アレはシャンデリアっていう照明だよ」
ゲン「何だこれは……! 室内なのにカーペット……? 土足でいいのか?」
カイ「いやいや、こんな綺麗なカーペットに土足はないよ。 流石に靴は脱ぐでしょ」
アリス「あ、土足で大丈夫だよ」
ゲン・カイ「「いいの!?」」
俺達が船内の装飾に困惑しているとアリスが逐一説明してくれる。
それにしても高度な技術に驚かされる。
さっきのシャンデリアとか土足で乗ったのに汚れ1つ付かないカーペットとかそこにある無料ドリンクバーと書かれた謎の機械とか。
リオ「なぁ、さっきから見た事ないものばっかりだけどこれもヨルマが作ったものなのか?」
紅莉「いえ、これは夕影の製品です」
アリス「えっ!? ひ、姫乃!? 」
聞き覚えのある声が後ろからしたので振り返ると、そこには紅莉と更にその後ろにメイドが2人立っていた。
紅莉「お久しぶりですアリス様。 まぁお久しぶりと言っても一日ぶりですが」
リオ「やっほ〜紅莉! なんでここにいるんだ?」
紅莉「実はフィーニス国王にアリス様が夕影へと行くから夕影が地元である私が案内をして差し上げろと言われまして……」
そういえば紅莉は夕影が地元とか言ってたっけ。
アリス「お父様が……姫乃は本当にいいの? 別に無理にとはいわないよ?」
紅莉「大丈夫ですよ。 私はこれでもアリス様の専属メイド、アリス様の為なら頑張りますよ」
アリス「姫乃……」
紅莉「さて、それではそろそろ出発する頃ですね。 貴方たちは食事の準備を、私はアリス様方の案内をします」
「「はい」」
紅莉が後ろにいたメイドに指示をすると、2人は早足で去っていく。
紅莉「ここからは私が船内紹介を致します。 何か聞きたいことがあればなんでも聞いてください」
リオ「じゃあさっきの話詳しく教えてくれよ。 本当にこの船にあるすげーやつ全部夕影の製品なのか?」
紅莉「その事ですか。 えぇ、本当ですよ。 以前にも聞かれたかもしれませんがフィーニスタウンとセキエイタウンは昔から交易を続けています。 フィーニスタウンは技術が遅れてはいますが富があり比較的平和で、モンスターを討伐する強い冒険者が沢山います。 セキエイタウンは技術こそどこの国より進歩していますが、その技術を狙ってか分かりませんが、凶暴化した魔物や魔王軍と思わしき組織がセキエイタウンを攻撃する為年々財力は減り冒険者も減少傾向にあります」
ゲン「確かにイェワンタウンもフィーニスタウンも凶暴化した魔物やディストピア・クインテットとかいう魔王軍と思わしきやつが出たのも最近の事だしな。 セキエイタウンではもっと前からいたのか」
紅莉「はい。 そこでフィーニスタウンとセキエイタウンは互いの国を守る為にフィーニス国王と夕影の将軍様はこんな契約を結びました。 フィーニスからは魔王軍に対抗する為の兵士と富を、セキエイタウンでは制度の整った夕影守護隊の本部をフィーニスタウンに設営と今では必須になっているステータスカードの無償配布。 フィーニスと夕影はお互いが欠けている所を補い合う最高の国同士なんです」
カイ「そうだったんだ。 イェワンタウンも最近やっとセキエイタウンと交易を始めるとか言ってたし……やっぱり夕影の技術は凄いんだね」
紅莉「そうですね。 それで話は戻りますがリオ様が凄いと仰っていたあちらのシャンデリアやゲン様とカイ様が驚いていたこのカーペット。 これらの製品は数年前から突如現れた遊木智幸という者が開発されたと噂では言われています。 まぁ詳しい事はよく分からないのですが」
リオ「詳しい事は分からない……? 噂って事は嘘かもしれないってこと?」
俺が質問すると紅莉は少し困った表情で、
紅莉「いえ、作ったのは遊木智幸という人らしいのですが……以前から遊木智幸という人がセキエイタウンに住んでいたというデータは無く、数年前に突然現れてこのような製品を作っていたと思ったら突然姿を消したりと一体どこに住んでいるのかも分からないという神出鬼没な人なんですよ」
なんだそりゃ。 しかもセキエイタウンに住んでいた記録もないとかもう都市伝説やんけ。
アリス「遊木…智幸……どこかで聞いた事あるような……」
リオ「じゃあこの船にある物は大体がその遊木智幸って人が作った製品ってことなんだな?」
アリスが何か1人でブツブツ言っているが、俺はそんなのを気にせず質問を続ける。
紅莉「まぁ……そういう事になりますね。 私が思うに智幸という人は誰かしらと協力してこういう製品を作ってたのだと思うのですが……まぁこんな事を考えていても分からないものはわからないですし考えるのはやめにしましょう」
紅莉はそう言うと歩き始め、俺達についてこいと視線を送ってくる。
紅莉「話が長くなってしまいましたね。 皆さんのお部屋へ案内します」
リオ「なぁカイ、こんだけ内装豪華なんだし部屋とかやばそうじゃね? 」
カイ「確かに……私達ちょっとした宿にしか泊まったこと無いのにいいのかな……夕影行くだけなのにこんな豪華な船に乗っちゃって」
リオ「良いんだって! せっかくフィーニス王が好意で用意してくれたんだから楽しまなきゃ逆に失礼だろ!」
カイ「……それもそうだね! お部屋どんな感じなんだろうね」
紅莉「フィーニス王から皆様には最上級クラスのおもてなしをするよう言われてますので、楽しみにしててください」
リオ・カイ「「おぉぉ!!!」」
紅莉のセリフを聞きテンションの上がった俺とカイは、ワクワクしながら紅莉の後へと続いた。
「こちら『シャドウ』、無事標的と接触。 現在も標的を追跡中」
『了解。 こちら『ナイト』だが新たな情報は収穫なし。 だがディストピア・クインテットと思わしき人物は見つけた』
『……なぁ2人共、そのシャドウとかナイトとか中二病みたいなのやめようぜ? 通信魔法使ってる最中くらい普通に名前で会話すりゃいいじゃん』
「何を言ってるのさリーダー! こういうのがカッコイイんでしょ?」
『シャドウの言い分はどうでもいいが、暗躍する者としてコードネームは必須だと俺は思う。 本名がバレちゃおしまいだからな』
『そうか? まぁ……そうかもな…? 別に2人がそれでいいならいいんだけどさ……じゃあシャドウ、リオの情報は得られたのか?』
「接触はしたんだけど肝心なリオの情報は得られなかったね。 しかも今魔王軍特別執権官ソルベの手下と思わしき人物が複数人潜伏してる。 あぁでも心配しないで。 他の人達の情報は入手済みだから」
『リオのは無理だったか……まぁ想定内だ。 ともかくシャドウはそのまま追跡&潜伏を続けてくれ。 ナイトは予定通り明日の昼には現地に着いておくように、それまでは自由行動で』
『了解したリーダー』
「私達は大丈夫だけどリーダーの方はどうなの? あれは見つかった?」
『いや、それがそれらしきものは無くてだな……ヨルマとも連絡をとったんだが埒が明かないから本人が来てくれるそうだ。 だからそれまで俺はフリーかなぁ』
『そうなのか……だったら1度帰るといい。 アイツらが心配していたぞ』
『心配してた? マジか……う〜ん、まぁやることも大してないし一段落したら帰るよ』
『あぁ、そうするといい。 それじゃあ任務に戻る』
『おう、じゃあな2人とも。 頑張ってな』
「はい、リーダー」
プツッ
「……ふぅ、ソルベの残党を倒したらここであと一日待機か。 風が冷たいしバレないよう影にでも潜んでおこうかな」
リオ「うぉぉぉぉ! すっげぇぇえ!!!」
紅莉に案内された部屋に入ると、そこにはさっき見たドリンクバーと書かれた機械が置いてある台所に、海を見渡せる露天風呂、さらに窓の外には川の流れるとても綺麗な庭園が広がっている。
カイ「ここ船内だよね!? ど、どうなってるの!?」
紅莉「この部屋は夕影の職人達が協力し造った部屋なので詳しい事は企業秘密です」
ゲン「こ、この服は一体……これは紐か? なぜ服にこんな紐が……?」
紅莉「そちらは浴衣と言う着物です。 船内を歩き回る際等に着て頂ければ良いかと」
リオ「なぁなぁ! ずっと気になってたんだけどこのドリンクバーって何!? これ押したらなんか出てくんの?」
紅莉「そちらは飲み物を出す機械です。 そちらにコップがあるので指定された場所に置きボタンを押してみて下さい。 そうすれば飲み物が出てきます」
リオ「どれどれ……うぉぉ!? 本当だ! ボタンを押したらなんか変な色の飲み物が!」
見た事ない物ばかりで俺達が騒いでいると紅莉が逐一説明してくれるのでとても助かる。
本当に凄い技術だ。 このこーら?とかいう飲み物もめっちゃ美味しいし。
アリス「わざわざごめんね姫乃、神代の器回収も手伝ってもらったのに夕影行きの船のもてなしまでしてもらって……」
紅莉「いいのですよアリス様。 何度も言いますがそもそも私はアリス様の専属メイド、アリス様がいなかった間は何もせずダラダラしていましたからその分の仕事ですよ」
アリス「姫乃がそう言うなら良いのだけど……まぁ夕影に着いたらゆっくり休むといいよ。 私が戻ってきてからぶっ通し動き続けて疲れたでしょ? だから少しは羽を伸ばし……」
紅莉「アリス様は何を言ってるんですか? 私も夕影での神器探し手伝いますよ」
アリス「…………え?」
リオ「え! 紅莉も一緒に来てくれるのか?」
今神器探しを手伝うとか聞こえた気がしたから聞いてみると、紅莉は微笑みながら、
紅莉「えぇ、皆さんはセキエイタウンに行くのは初めてでしょうから私が案内をとフィーニス国王から言われまして。 またよろしくお願いします」
ゲン「姫乃さんも来てくれるのか。 それなら心強いな」
カイ「だね! 私達セキエイタウンがどんな所か全然知らないから」
アリス「ちょ、ちょっと待って。 姫乃もついてくるの?」
紅莉「はい。 何か問題でもございましたか?」
アリス「いや…問題は無いけど……でも……」
アリスは何かを言いかけていたが、不満そうな顔をして黙り込む。
紅莉がいると困ることでもあるのだろうか?
「失礼します。 姫乃さんに皆様、お食事の用意が出来ました」
そんな事をしていると食事の準備をしてくれていたメイドさんが部屋へやってきて用意が出来たこと伝えられる。
紅莉「ご苦労さま。 それじゃあ食事の準備が出来たそうなので食堂へ向かいましょうか」
リオ「おう! 俺もう腹ぺこぺこだよ! 早く行こうぜ!」
ゲン「あ、おいリオ! 勝手に突っ走るんじゃない! 」
紅莉「あっ、そっちは食堂じゃないですよ!」
何か聞こえた気がするが俺は気にすることなく食堂めがけ走り続けた。
リオ「ふぅ……いい湯だな。 にしても屋内なのに露天風呂ってどうなってんだこれ」
あの後俺は息を切らしたゲンに『そっちは食堂じゃないって言ってるだろ!』と叱られてとっ捕まえられ、食堂へと連れていかれた。
そして飯を食い終えた俺達は風呂に入ろうという話になり、今はゲンを除くみんなで紅莉に教えてもらった船内の温泉に入りに来ていた。
てゆうかまず船なのに温泉ってなんだよ。 どこから湧いてんだこの水。
これも魔法の力かなんかなのか……?
…………うん、考えてもわからんし考えないようにしよう。
カイ「うわぁぁ! 凄いよアリス! 船の中にこんなでっかい温泉あるなんて!」
アリス「私もこの船は何回か乗ったことあるけど温泉に入るのは初めてだよ。 こんなに広かったんだね」
紅莉「えぇ。 それぞれの浴槽で効能が違うんですよ」
カイ「そうなんだ。 じゃあ早速私はここはいるかな」
……壁越しにアリスとカイと紅莉の声が聞こえてくる。
3人とも女湯に入っているようだ。 ふむ……残念だ。
誰か一人でも来てくれないかと思いわざわざ混浴に入っていたがどうやら期待はずれだったようだ。
紅莉に関しては1度フィーニス城の温泉で鉢合わせしてるからな。 警戒されてしまってたか。
リオ「はぁ、男1人で混浴に入って何が楽しいってんだ。 上がるか……」
アリス「あれ? 姫乃また胸大きくなったんじゃない?」
紅莉「そ、そうですか? 正直剣を使って戦う身としては胸が邪魔で仕方がないんですけどね」
カイ「ふぅん……そっかぁ。 へぇ〜。 そういう悩み事私にはよく分からないなぁ」
…………うん、湯冷めしちゃ悪いだろうしもう少しだけ温まっていくとしよう。
そう、少しだけ……
アリス「ま、まぁまぁ……カイだってスタイルいいんだから自信持ちなよ!」
カイ「そう? そうかなぁ……アリスの方がいい気がするけど……」
アリス「そんな事ないよ。 それにカイは鍛えてるから腹筋が割れてて羨ましいよ」
カイ「女の子で腹筋割れてるのはどうかと自分でも思ってるからやめて欲しいな……でもまぁ鍛えてるのは事実だし褒められるのは嬉しいし……う〜ん複雑な感情」
へぇ……カイって腹筋割れてんのか。 なんか意外だな。 いや、俺がヒョロヒョロ過ぎるのか?
……というかなんだか暑くなってきたな……だが話は続きそうだしまだあと少し……
紅莉「カイ様は私やアリス様と違い魔力で身体を強化しなくても素のフィジカルで戦えるのが凄いですからね。 それでいて適正職業は回復魔法を使うセイクリッド・プリーストなんですから本当に凄いですよ」
アリス「そうだよ! それにカイは呪いを解く事も出来る。 よくこんなに高精度な回復魔法使えるよね」
カイ「まぁね。 私は回復魔法が得意だから後衛ポジションになることが多かったんだけど1回後衛にいた私が大ダメージ喰らっちゃった事があってさ。 それから後衛だからって甘えず狙われても大丈夫な様に格闘技を習得したんだ」
紅莉「それで習得できちゃうのが凄いですよ。 回復魔法が固有スキルの人は剣術や武術等のスキルを覚えるのが難しいですからね」
カイ「私やリオやゲンはその固有スキルとか適正職業とか知らなかったからね。 リオが色んなスキルホイホイ使ってたから疑問も浮かばなかったし」
アリス「リオは特殊スキルの持ち主だったからね。 私も『太陽の加護』っていう特殊スキルの持ち主らしいし……勇者の血を引く人はみんな持ってるのかな?」
紅莉「どうでしょうね……先代の夕影の勇者はそういうスキルを持っていたとは聞きませんし……」
アリス「……あーもうやめやめ! せっかく温泉に入ってるのにこんな事考えてたら余計疲れちゃうよ。 私あっち入ってくるね!」
カイ「あっ、私も行くよ! 」
随分と懐かしい話が出てきたな。
確か3年前くらいだろうか? それぐらいの時に小遣い稼ぎで街の周辺に出たモンスターを3人で狩りに行った時にカイが不意打ちを喰らってしまって大怪我しちゃったんだよな。
あん時は俺の隠密スキルとゲンの広範囲攻撃魔法のおかげでモンスターを討伐してすぐ退散出来たからカイは助かったけど……そうか、あの時以来からカイは鍛えていたのか。
俺なんか小遣い稼ぎして小金持ちになったら最近流行っているテレビゲームをやってたからな。
てゆうかそろそろ上がらないとな……盗み聞きしてたなんてバレたら後でカイにぶん殴られそうだし……
アリス「いい湯だねぇ〜……ここはどういう効能なの?」
紅莉「この湯は保湿に肌荒れ防止、後は傷を癒してくれますね」
アリス「へぇ〜。 本当に船の中なのここ」
カイ「浮いてる…4つも……浮いてる……私は沈没…いや、まず土俵にすら……」
アリス「沈没……? 何言ってるのカイ?」
カイ「いや…別に……」
4つ…浮いてる…なるほどなるほど……俺の妄想力にかかれば見ずとも光景が浮かぶ……
う、浮か……あれ……? なんか…目の前が暗く……
ゴスッ
カイ「……? なんか今頭を打ったような鈍い音しなかった?」
アリス「え? 本当? 私は何も聞こえなかったけど……」
リオ「はっ!? …………ここは…俺の部屋……? 俺さっきまで温泉にいたはずじゃ……」
目が覚め辺りを見渡すとどうやらここは自分の部屋のようだ。
さっきまで温泉にいたはずなんだが……何で俺は部屋に……?
〜♪
リオ「……? これは…ピアノの音……?」
何故温泉にいたはずの俺が自分の部屋にいるのかを考えていると、僅かに空いた扉の隙間から小さいが聴き入ってしまう程に綺麗なピアノのメロディが聞こえてくる。
どこから聞こえてきているのか気になった俺は部屋を出て音が聞こえてくる方へ歩いていく。
歩みを進める程心地よいピアノの音が大きくなっていく。
ピアノなんか人生で2回くらいしか聞いたことが無いがこんなにいい曲があったのか。
そんなことを考えているとピアノの音が聞こえてきてるであろう部屋に辿り着く。
俺はなんの躊躇いもなく扉を開けると、
アリス「……あれ? リオ?」
そこにはアリスがおり、部屋にはピアノ一つだけがポツンと置いてある。
リオ「アリス……? 今ピアノを弾いてたのってアリスなのか?」
アリス「うん、そうだよ。 寝ようと思ったんだけどこの部屋を見つけてピアノを見たら引きたくなっちゃって。 それよりリオ大丈夫なの? ゲンに運ばれてたけど」
リオ「運ばれてた……? あ、そうだ! 俺温泉にいたはずなのに目が覚めたら部屋にいてさ、何が起こったのかよくわかってないんだよ俺」
アリス「リオはのぼせちゃってたんだよ。 なかなか上がってこなかったからゲンにリオが戻ってこないって伝えたら『あいつまたか……』とか言って温泉に行ったと思ったらのぼせたリオを抱えて戻ってきたんだよ」
あー……カイとアリスと紅莉の話を盗み聞きしてたら俺のぼせちゃったのか。
リオ「ゲンに礼言わなきゃな……てか他の皆は?」
アリス「他のみんなはもう寝てるよ。 もう夜中だしね」
アリスに言われ時間を確認してみると、もう夜中の1時を過ぎていた。
アリス「そろそろ私も寝るかな。 リオも部屋に戻るよね?」
リオ「え? あぁ、俺も戻るよ」
アリス「それじゃあ途中まで一緒に戻ろうよ」
そう言われ俺はアリスと共に自分の部屋まで戻る。
リオ「……なぁアリス、さっきピアノで引いてた曲って何なんだ? 初めて聞いたんだけど」
アリス「ん? あの曲? アレは5年前に夕影で開催されたピアノコンサートでお父様と一緒に聴いた曲なんだ」
リオ「へぇ、夕影でピアノコンサートなんてやってたんだな」
アリス「うん。 弾いてたのは男の人で名前は分からないんだけどすごい綺麗な音色でね、アレを聴いた後私はお父様にピアノを買ってもらって練習し始めたんだ」
リオ「へぇ〜」
ピアノコンサートなんてものがある時点で夕影はきっと俺たちの住んでいたイェワンタウンよりもずっと技術が進歩しているのだろう。
ピアノなんてイェワン城にしか置いてないしな
リオ「てか曲名はなんて言うの?」
アリス「確か…『テレーゼのために』だったかな? リオも気に入った?」
リオ「まぁ…ピアノなんて聞いた事2回しかないけどさっきの曲は頭に残る曲だったよ」
アリス「それはどうも。 まぁ私もまだまだ下手っぴなんだけどね、私が見た人は本当に凄かったから」
アリスとピアノの話をしているといつの間にか俺の部屋の前へと辿り着く。
アリス「じゃあおやすみリオ。 中途半端な時間に起きて眠れないかもしれないけどゆっくり休んどきなよ」
リオ「おう、じゃあまた明日」
手を振り返して俺は部屋に入る。
リオ「テレーゼのために……か。 いい曲だったな……」
アリスの前では言わなかったがテレーゼのためにを弾いていたアリスは本当に絵になる美しさだった。
流石は王女様と言った所か。
リオ「ピアノかぁ……全く興味なかったけど弾いてみようかな。 今度アリスに教えてもらうか」
ちっちゃい頃にハーモニカはやった事があるがピアノやギターは触ったことないからな。
リオ「それにしても変な時間に目覚めちゃったな……全然眠たくないや。 目が冴えて……目が…冴えて……」
な、何だ……?
全然眠たくなかったはずなのに急に眠気が……
鍵も閉めてないし電気も消してないし寝る訳には……でも意識が……遠のいて…………
リオ「ぐー……ぐー……」
「……ふぅ、やれやれ、やっと寝たか。 まさかのぼせてるなんて……おかげで潜入するのがこんな時間になっちゃったな。 急いで終わらせなきゃ」
To Be Continued→5章:21話




