2話: 勇者は絶体絶命を乗り切る
三馬鹿は選択を迫られる
〜2章: 勇者一行は忍びの森を駆け抜ける〜
2話: 勇者は絶体絶命を乗り切る
勇者一行は着々と魔王の城へと歩みを進めていきます。ですが、まだまだ道のりは長いようです。
忍びの森入ってから少し時間が経っただろうか。ゲンの言っていた通り妙に静かでどこから襲われてもおかしくないような薄暗さ、遮蔽物の多さ。早くこんな所抜けたいぜ…
別に怖い訳じゃない。俺はコレでも力には自信があるんだ。襲われたって多少は…
ゲン「もう忍びの森内部に入ったから気を抜くなよ。凶暴な魔物や盗賊がどこから襲ってきてもおかしくないんだからな」
盗賊…盗賊ねぇ…
リオ「なぁ、魔物は分かるけど盗賊ってのはそんな危険なのか?正直2人がいればやられる所なんて想像できないんだけど」
ゲン「お前は本当なんも知らないんだな…いいか?盗賊自体はそこまで強くなく、俺でも魔法を使わずに倒せるくらいだ」
リオ「なぁんだ。 じゃあ楽勝じゃん」
ゲン「だから話は最後まで聞け。 問題はここからだ。盗賊の真の恐ろしさはスキルにある。」
カイ「そうそう。 盗賊はスキルが優秀だからね。なんだったらリオの使ってる敵サーチスキルも盗賊職スキルだしね」
リオ「え?そうなの?俺いつも使ってるけど知らなかったんだけど」
ゲン「嘘だろお前…」
カイ「そして1番恐ろしいのが『アサシン』っていうスキル。 このスキルは対象に気づかれず背後から攻撃すると即死しちゃうんだよ」
リオ「そ、即死…?!」
ゲン「あぁ。 条件が難しいように思うかもしれないが盗賊職は隠密系スキルや拘束スキルとこんな遮蔽物だらけの森の中だと強いスキルを持ち合わせているからな。 だから迂闊に森に入ると拘束されたり殺されたりして金品を巻き上げられるんだよ」
何それ怖い!
リオ「な、なぁ。 俺って一応勇者じゃん? 自分で言うのもなんだけどまぁまぁ強いじゃん? そんな俺がそのアサシンってやつで攻撃されたら…?」
ゲン・カイ「「死ぬ」」
リオ「なんで言うの?!ねぇ、お世辞でもいいから「あぁ、お前なら大丈夫かもな」とか言ってよ!ただでさえ怖かったのにもっと怖くなるじゃん!」
ゲン「し、知らねぇよそんなの!お前から聞いたんだろ!俺達のせいにするな!」
リオ「そうだけどさ!やっぱり言っていい事と悪い事があるだろ…ちょっとまてほんと待てまた敵サーチスキルに反応がしたんだがマジ勘弁して欲しいんだがちょっと近づいてきてるっておい!おい!」
ゲン「おい落ち着けリオ!怖いのはわかるがそんな早口で喋られちゃ何を言ってんのか全くわからん」
カイ「落ち着いてリオ!敵サーチスキルを使えるのはリオだけなんだから!」
リオ「はっ!そ、そうだったな。え〜っと…コレは魔物じゃないな。コレは…人の反応だ!」
カイ「オッケー!そうなると恐らく盗賊だね。身構えておこうか」
リオ「き!来てる!めっちゃ高速で近づいてきてる!」
ゲン「何?!どっちの方向だリオ!」
リオ「後ろだ!すぐそこの草むらまでもう近づいて…きて…る……」
カイ「……?リオ?どうしたの?」
リオ「いや、それが今の今までそこに反応があったんだけど…その…反応が急に消えて…」
ゲン「反応が急にだと?それに状況が忍びの森に入る前と合致している…恐らく先程俺達に接近してきていた奴と同一人物だろう。それにしても急に反応が消えるというのは分からんな…」
カイ「敵サーチスキルは例え盗賊が隠密系スキルを使っていたとしても敵意を察知するから反応するはずなんだけど…ん〜もう消えちゃったものは仕方が無いし先に進も!ここに留まる方が危険だと思うよ。」
リオ「た、確かに…」
もうカイがリーダーでいいんじゃないかな。
ゲン「そうだな。先に進むとしようか。」
そうして勇者一行は謎の反応による襲撃に違和感を覚えながらも先へと進む事にしました。
どれほど走ってるだろう。かれこれ俺の体感時間ではもう15分は走ってる感覚だ。
リオ「はぁ…はぁ…ちょ、マジで。もう。無理…はぁ…」
ゲン「お前ら急ぐぞ。さっきのような事があってはそうモタモタはしてられない。早く忍びの森を抜けなければ…」
カイ「敵がついてきてるかもしれないって分かった以上モタモタしてられないもんね。このまま急いで抜けちゃおっか」
リオ「はぁ…ほんっ…とうに……待って…」
息が上がりすぎて声が出ねぇ…クソっ!こんな事ならあの2人と一緒に普段からトレーニングしておけば良かった!
ゲン「というかさっきからリオが静かだな。おいリオ、話聞いてる…か…」
カイ「……あれ?え、待って。確かリオって普段から私達のやってたトレーニングに「いや、俺はコレでも勇者だからトレーニングなんてしなくても全然大丈夫だぜ!」…とか言ってサボってたから基礎体力が平均以下じゃなかったっけ…?」
ゲン「そうだな。更にあいつ方向音痴で今日イェワン城に行くはずなのに街の外れの教会で「あれ?こっちじゃなかったっけ?」とか言って迷ってたな。」
ゲン「……」
カイ「……」
ゲン・カイ「「もしかしてリオのこと置いてきた?」」
……迷った。超迷った。普段の俺ならまぁどうにかなるだろ!平気平気!と笑い飛ばす所だがゲンが変な事を言うもんだからさっきから気が気じゃない。
リオ「コレ…さすがにヤバイよな。俺ゲンの後ろついて行ってるだけだから道とかわかんねぇぞ…どうしよっかな…」
残念な事に勇者は方向音痴でした。ですがこのままでは森の中1人取り残されたまま夜になってしまうと危機を感じた勇者リオは無い頭を必死にひねります。
あぁクソッッッ!俺魔力がないから魔法は使えないし、サバイバル知識がある訳でもないし一体どうしたら…
パキッッッ
リオ「ッッッ!?なんだ、誰かいるのか!?……いや、付近に敵はいないな…人の気配も…無い…か。」
このままじっと悩んでるなんて、俺らしくねぇ!うっし!ここはいっちょ走り回ってアイツらを見つけ…
???「動くな」
リオ「えっ?!?!」
???「動くなと言っているんだ。勇者リオ。」
リオ「俺の名前…!それに俺には敵サーチスキル敵意を持った人が近づけば反応があるはずなのに…」
???「そんなスキルでうちを欺けると思ってたのか?勇者さん。」
完全に油断した。コイツがさっきから現れては消えてを繰り返した野郎か。だが、すぐに殺してこなかったってことは何か俺に目的があるって事なはずだ…一体なんなんだ?俺、ポッケに入ってバッグクロージャー位しか持ってねぇぞ。
???「いいか?少しでも抵抗したりするようであればうちのスキル『アサシン』で殺す。死にたくなければお前の胸ポケットに隠してある『星のペンダント』を渡しな。そうすれば危害は加えないと約束するよ。」
リオ「星のペンダント…?あ、あぁこれの事か。コレかっこいいから家から持ってきただけなんだけど…こんなのが欲しいのか?」
???「おま、嘘だろ!?このペンダントの事かっこいいからって理由だけで持ち歩いてきたの!?コレは歴代勇者の神器の1つなんだよ!?」
この声に喋り方…男では無い。女か。それに体型も小柄、俺と歳も近いと見た。ここは話を合わせて隙をつけば…
リオ「神器ってなんだ?初めて聞いたんだけど。」
???「誰でも知ってる話なのに…まぁ状況は有利だし…いいか。よし。この私が教えてあげようじゃないか。」
リオ「あざます!先輩!」
???「せ、先輩…!こ、コホン。いい?君の持ってるそのペンダントは星のペンダントって言って昔魔王を打ち倒した勇者のつけていた代物なんだよ。その効果は全ての状態異常無効化、呪い無効、更に天使の加護っていう効果で運が上昇するんだ」
何それ。え?コレそんなにすごいものだったの…?旅出るまでタンスの奥にしまってた物なんですが
???「うちはそのペンダントを探してもうかれこれ2週間は旅してたんだ!そしてようやく見つけたんだ!ここで引く訳にはいかない!さぁ!そのペンダントを渡してくれ!もう本当に、色々あって…疲れててさ…はぁ…」
……コイツ。もしかして…
リオ「へぇ。2週間もか…なぁ積もる話もあるんだろ?俺に聞かせてくれないか?神器とやらの話も詳しく聞きたいし」
???「あんた状況分かってるのか?もうアサシンを使えばすぐにでも……話…聞いてくれるの…?」
コイツ想像以上にチョロい。
そうして命の危機を何とか回避することの出来た勇者リオは謎の女盗賊の話を聞く事になりました。
リオ「えっと…名前は…?」
???「あ、あぁまだ名乗ってなかったね。」
シノブ「私はア…し…シノブだ。私はシノブというものだ。」
綺麗な金髪碧眼…整った綺麗な顔立ち…見た事のない顔だ。よその国から来た人だろうか?
リオ「シノブね。じゃあ早速だけどなんで星のペンダントを探してたの?きっと何か理由があるんだろ?」
さっきの言いようだと何としてでも手に入れたい感じだったからな
リオがそう聞くとシノブは少し考え込んだ後、言葉を詰まらせながら
シノブ「その…使用用途については詳しくは話せないんだけど…メインはその星のペンダントとあとついでに『天聖の盾』っていう神器を探しててね」
リオ「天聖の……盾?」
シノブ「神器の1つさ。この世界には勇者達の残した神器が3つあると言われててね『星のペンダント』『天聖の盾』そして闇を払うとされる伝説の剣『陽光の剣』この3つが3神器として言い伝えられているんだ。」
リオ「そうなんだ…なんで俺はそういう噂や伝説を知らないんだ…?」
シノブ「さぁ?結構有名な話だよ?君が世間に無頓着なだけじゃないかな。」
3神器…なんでその1つの星のペンダントが俺の家にあったんだ…?
リオ「う〜ん…分からねぇ…」
シノブ「……ねぇ君。」
リオ「君じゃなくてリオです。」
シノブ「ねぇリオ。私を仲間に入れる気はない?」
リオ「あぁ仲間ね……は?」
シノブ「うちこう見えて結構役に立つと思うよ?索敵、サポート、戦闘、なんでも出来ちゃうからね。」
リオ「いや、普通に考えて俺を殺そうとしてきた奴を仲間に入れるって…意味がわからないんだけど?」
シノブ「だ、だからアレは仕方がなかったんだって!なんだったら殺す気もなかったし!人殺した事ないから!そんな物騒なことしない!」
あれだけナイフを突き立てて「動いたらアサシンで殺す」とか言っておきながらどの口が言っているんだろうか。
それに…
リオ「なぁシノブ。一応聞くけど森入る前から俺の敵サーチスキルに写っては消えてを繰り返してた犯人もシノブか?」
シノブ「そうだね。うちのスキル『索敵スキル無効』のせいだね。本当なら写りもせずに近づけるはずだったんだけどね。星のペンダントの効果でうちのスキルがちょくちょく消されちゃっていてね。そのせいだと思うよ」
リオ「このペンダント…そんな事もしてたのかよ…」
シノブ「で?どうなんだ?仲間に入れる気はある?」
リオ「正直パーティメンバーはもう間に合ってるんだよな…」
それに今頃ゲンとカイも心配して俺の事を探してくれている事だろう。そろそろアイツらを探さないと…!
シノブ「それにリオも困ってるそうじゃないか。うちの助けが必要だろ?」
リオ「困ってること…?」
シノブ「そ。助けてあげるからその代わりにうちを仲間に入れて欲しいんだ。」
リオ「困ってることなんて特に…!あぁ!そういう事ね」
シノブ「そうそう。そういうこ…」
リオ「俺がシノブに勇者様じゃなくてお兄様って呼んで欲しいって思ってたことか!」
シノブ「違うよ!!!!!いや、そうだったの!?意味のわからないこと言わないでよ!」
リオ「え?じゃあ特に困ってる事なんてないんだけど…」
シノブ「う、嘘でしょ…あんた、仲間とはぐれたんじゃないの?体力なくて置いてかれていたじゃん。」
リオ「!?!?そうだった!!!!!お前がストーカー気質なことするから忘れてたじゃねぇか!2人のいる場所がいるなら連れてってくれ!」
シノブ「えぇ!うちのせいなの?!それにストーカー気質とか言わないでよ!」
リオ「悪い悪い。じゃ連れてってくれ」
シノブ「はぁ、全く君は…じゃ、行こうか。コッチだよ。」
リオ「おっけい!」
シノブ「……君が世間に無頓着で助かったよ。」
リオ「え?なんて?なんか言ったか?」
シノブ「んーん。別に〜」
いざこざはありながらも勇者リオは謎の盗賊シノブに仲間のところまで連れていってもらう事にしました。
To Be Continued→2章 3話:勇者は新メンバーを加入する