〜4章: 勇者一行は不思議な運命へと誘われる〜 14話:自由自在(オールラウンダー)
14話:自由自在
姫乃について行くこと早5分。
俺は地下牢獄へと来ていた。
リオ「薄気味悪くて陰気臭い所だなぁ……もっと明るく出来なかったの?」
姫乃「悪人捕えるところを明るくした所で何になるって言うんですか。 ここはそういう場所なんです」
リオ「まぁ今は姫乃がいるから大丈夫さ。 なんなら怖くなったら俺に抱きついてきても良いんだぜ?」
姫乃「貴方もここの中にぶち込まれたいですか?」
リオ「すみませんでした」
軽い冗談を言ったつもりが、ガチトーンで牢屋を指さし脅してくる姫乃に俺は謝罪する。
姫乃「ん、着きましたよ」
リオ「お?」
姫乃に言われ前方を見るとそこには見覚えのある姿が……
ゲン「ん? 姫乃さんとリオじゃないか」
カイ「え? あ、ホントだ! どうしたの2人共?」
姫乃「いえ、ソルベの拘束を全部ゲン様とカイ様にお任せするのはどうかなと思ったもので手伝いに来たのですが」
ゲン「そうだったのか。 だが見ての通りもう終わったぞ」
ゲンが指さす方を見てみるとそこには手、足、上半身が壁に貼り付けられたソルベが牢屋に入っていた。
リオ「随分とまぁ厳重に拘束されてるな……」
カイ「アンデットらしいから軽く縛っとくだけだと体を切断して逃げ出しそうだからね。 これくらいはしないと」
姫乃「色々とありがとうございます御二方。 御二方が来ていなかったら少なくとも私は命の危険にさらされていました」
カイ「そんなに気にしないで! 困ったらお互い様でしょ?」
ゲン「カイの言う通りだ。 俺達も無理言ってここに泊まらせて貰っているからな。 それよりも……リオ」
リオ「ん? どした?」
ゲン「どした? じゃなくて、色々と説明してもらうぞ。 俺がいない間何があったのか」
リオ「あ、あぁ……えぇっと……」
そりゃそうだよな。 ゲンとカイにしてみれば俺達が何をやってたか意味不明な訳だし。
でもアリスと姫乃には他言無用って言われてたし……どうしようか……
姫乃「それについては明日改めてアリスさま交え御二方に説明するつもりです。 なので今日はお休みになられてください」
リオ「えっ」
俺が悩んでいると姫乃がそう返答する。
ゲン「そうですか…じゃあそうしますね」
カイ「じゃあまた明日ね姫乃さん!」
姫乃「えぇ。 本日はありがとうございました。 一応と言っては何ですがお部屋の前までは同行します」
姫乃はそう言うとゲンとカイを連れて歩いていく
リオ「お、おい姫乃! 良かったのか? 2人にも話しちゃって」
俺が駆け寄ってそう聞くと姫乃は、
姫乃「今更他人という訳にもいかないでしょう。 それに私達も色々と聞きたい事がありますし」
リオ「ふぅん……?」
そうして姫乃の案内の元、俺達は部屋まで戻ってきた。
姫乃「それでは明日になったら改めて皆さんをご案内しますので今日はゆっくり休んでください。 それでは失礼します。 本日はありがとうございました」
カイ「わざわざ送ってくれてありがとね姫乃さん! じゃあまた明日!」
カイが手を振りながら笑顔で姫乃にそう言うと姫乃も笑ってお辞儀をしながら戻っていく。
ゲン「今日は色々とあったが……まぁ明日話し合いをすると姫乃さんも言ってたし今日はもう休むとしよう。 俺も疲れたしな」
カイ「そうだね。 私も眠たくなってきたからもう寝るよ」
2人はそう言うとローブや装備をはずし布団に入る。
リオ「よし、俺も寝るか。 俺も部屋に戻ってきたら疲れが急に……」
俺はそう言いながら布団にダイブすると抗いきれない睡魔が襲って……
リオ「……ん?」
不思議な感覚を覚え目を開けるとさっきまでいた和室ではなく何も無い真っ白な空間が広がっていた。
リオ「真っ白な所だな……ってえぇ!? ちょ、何だここ! え!? ゲン! カイ! みんなぁ〜!?」
真っ白だなと思いながら再び目を閉じようとしたが意味不明な出来事に俺は驚き目を覚まし仲間の名前を叫ぶ。
しかし戻ってくるのは静寂だけ
リオ「こ、ここは一体……?」
「ここはお前の意識の中だ」
リオ「うぉぁぁぁぁぁッッッ!」
真っ白な空間で立ち尽くしていると突如後ろから声をかけられ、振り返ってみるとそこには…
ヨルマ「ふはははは! へっぽこ勇者よ流石に驚き過ぎだぞ! ふははははは!!!」
リオ「……俺、お前の事が嫌いになりそうだよ……」
ヨルマ「安心しろ。 我はお前の事は結構気に入っているのだからな」
ヨルマは不敵な笑みを浮かべながらそんな事を…
リオ「というか…なんでここにヨルマが? それにここは……?」
ヨルマ「先程も言っただろう? ここはお前の意識の中だ」
リオ「いや意識の中と言われましても……俺布団で寝てたはずなんだけど」
俺がそんな疑問をぶつけるとヨルマは顎に手を当て少し悩み、
ヨルマ「うぅむ…理解力の乏しい貴様に分かりやすく言うのであれば……そうだな。 ココは夢の中だ」
リオ「夢の中? って事はここにいるヨルマは本物じゃないってことか?」
ヨルマ「うむ、そうだな。 本体は今も店で働いておるぞ。 言ってしまえば幻覚みたいなものだ」
リオ「なるほど……?」
ヨルマ「まぁ理解力の乏しい貴様に全てを理解して欲しいとは思ってはおらん。 夢の一環だと思っていただければ結構」
ヨルマはそう言うと真っ白の何も無い空間から突如椅子を出しそこに腰かける
ヨルマ「さて、無駄話はここまでだ。 早速話に移るとしよう」
リオ「……あの、俺の椅子は……」
ヨルマ「まず何故我がお前の意識の中にいるのかだが……」
どうやら俺の椅子は無いらしい。
リオ「あれだろ? なんか丑三つ時に行くからな〜ってやつだろ? で、話ってなんだ?」
俺がそう言うとヨルマは驚いた顔をして俺を見つめ、
ヨルマ「まさか我の話した事をこの記憶力の乏しいへっぽこ勇者が覚えているとは……」
リオ「つくづく思うけどみんな俺の事バカにしすぎじゃないか?」
ヨルマ「まぁ覚えてるなら今更説明は要らんな。 では早速本題へ移るとしよう」
俺の問いかけを無視しヨルマが喋り始める。
ヨルマ「まずは貴様の固有スキルについて説明するとしよう。 こう思った事はないか? 『なんで俺は何でもかんでもスキルが使えるんだ』と」
リオ「!? な、なんでその事を……!」
アリスと姫乃に固有スキルについて話してもらった時から疑問だった事だ。 あの魔王軍のソルベって奴も氷系統のスキルが固有スキルで炎系統のスキルは使えない感じだった。
だが俺は何故か使いたいと思ったスキルは教えて貰ったり見たりすれば使える様になる……明らかな他の人達との違いだ。
ヨルマ「貴様の思う通り見たりすれば使える様になるのは明らかにおかしい事だ。 だがそれが貴様の固有スキルと言うやつなのだ。 こういう稀な固有スキルの事を『特殊スキル』とも言う」
リオ「スキルをなんでも使えるのが俺の固有スキル……?」
ヨルマ「うむ。 その名も『オールラウンダー(自由自在)』だ」
リオ「オール……ラウンダー? 初めて聞いたな」
ヨルマ「それもそのはずだ。 このスキルは100年前の先代勇者の持っていた固有スキルだからな」
リオ「な、なんだって!?」
ヨルマ「まぁ流石はあいつの子孫と言ったところか。 だがそのスキルにはデメリットがあってな」
リオ「デメリット……? 全部のスキルが使えるのにデメリットなんてあるのか?」
俺がそう言うとヨルマは当たり前だろうと言わんばかりに俺を睨めつけ、
ヨルマ「当たり前だろう? 良いスキルには大体1つはデメリットが付いてるのが当たり前だ。 というかこのデメリットのせいで貴様のスキル『自由自在』はハズレスキルとも言われておる」
リオ「そ…そのデメリットとは……」
俺が恐る恐る聞くとヨルマは俺の不安を見透かしたかのようにニヤリと笑みを浮かべ、
ヨルマ「教えてやろう。 そのデメリットとは、『スキルの威力や効果の低下』だ!」
リオ「スキルの威力や効果の……低下……?」
どういう事か理解出来ずにいるとヨルマはため息をつきながらも少し考え、
ヨルマ「……貴様に分かりやすく例えるなら…魔法の階級と同じだ」
リオ「俺魔法使えないし使った事ないからわかんない」
ヨルマ「嘘だろ貴様。 魔法を使ったことがないだと?」
余程想定外だったのかヨルマは驚きの声を上げ少し困惑した様子で考え込む
ヨルマ「う〜む……なら貴様に魔法の基礎について最初から説明してやろう。 ちゃんと聞いておけよ」
リオ「おう!」
ヨルマ「まず魔法は基本的には炎、氷、風、雷、土の5つで構成されておる。 魔法以外では物理、武器系、呪詛等色々あるがここは割愛させて頂くぞ。 固有スキルのルールを先程の魔法で説明するのなら炎が固有スキルの人は氷は覚えられなかったり覚えても威力が低いという感じだ。 どうだ?ここまで理解出来たか?」
俺がコクリと頷くとヨルマは再び話に戻る
ヨルマ「次に魔法の階級についてだ。 魔法の威力は下から順に通常、バースト(炸裂)、リミテッド(特別)、セイクリッド(神聖)とまだまだ色々あってな。 これで威力の低下具合を例えるなら……リミテッドの魔法を使っても威力は通常通りと言った所か」
リオ「えぇっ! そ、そんなに威力下がるのぉ!?」
俺は下がっても1段階くらいだと思ってたのに2段階も下がるとは……
ヨルマ「先代勇者は1段階程度で済んだのだがな……お前の力不足なのかよく分からんがお前は2段階程威力が低下するようだから使い道は考えた方が良いぞ」
リオ「ち、力不足……」
力不足と言われ俺が軽くショックを受けていると、
ヨルマ「まぁそこまで落ち込むでない。 隠密スキルや索敵スキル等の戦闘スキル以外はデメリットという程のデメリットもなく使えるのだからな」
確かに言われてみれば隠密スキルや敵サーチスキルは特に何も問題なかったっけ
ヨルマ「とまぁ貴様の固有スキルの説明についてはこんなものだ。 何か質問はあるか?」
リオ「そうだなぁ……なんでもスキルを使えるってのは分かったけど具体的な使い方みたいなのってあるか?」
ヨルマ「ふむ……例えば氷魔法と炎魔法を組み合わせて普通の人には使えない水魔法を使えたり、剣術スキルと氷スキルを合わせて氷結剣にしたりと色々応用のしがいがあるぞ」
なるほど……威力は下がるけど色んなスキルを使えるから他の人にはできない芸当が俺には出来るって事か……
リオ「めっちゃ面白そうじゃんか!」
ヨルマ「気に入ったようで結構。 このスキルは使用者にとても影響するスキルだから使い方をせいぜい考えるのだぞ」
言いたい事をあらかた言い終えた様子のヨルマが、これまたどこからともなく紅茶を取りだし一息つく。
リオ「……というか単純な疑問なんだけどヨルマはなんで俺のスキルや先代勇者についてそんなに詳しく知ってるんだ?」
ヨルマ「なんでと言われてもな…100年前の勇者パーティの一員なのだから当たり前であろう」
リオ「へぇ〜。 だから詳しかったの…か……え?」
ヨルマ「む?どうした小僧。 いつものアホ面に磨きがかかっているぞ?」
リオ「うるせぇよ! てかそんなことよりあんた今100年前の勇者パーティの一員とか何とか……」
ヨルマ「おや? 言ってなかったかな? 我は100年前魔王を討伐し封印した勇者パーティの1人でな。 色々あって悪魔へとなって生きているのだよ」
リオ「待て待て待て待て……ちょっと色々情報が多すぎて頭が……てかなんだよその色々って……」
(ゴ〜ン……ゴ〜ン……)
リオ「???」
俺がヨルマに質問しようとすると突如どこからともなく鐘の音が聞こえてくる。
ヨルマ「おっと、どうやら時間のようだ。 まぁこの事についてはまた今度にするとしよう。 と、その前に勇者よ。 手を出せ」
ヨルマは先程まで腰かけていた椅子から立ち上がり、俺に突き出しながらそう言う
リオ「手? 一体何を……!?」
俺は言われた通り右手をヨルマに突き出すと、ヨルマの手から俺の右手へと黒いオーラの様なものが包み込む。
ヨルマ「よし、もういいぞ」
リオ「な、なんだったんだ今のは? おいヨルマ! 今一体何をしたん…だ……?」
なんだ……? 急に視界が…暗く……
ヨルマ「どうやら時間切れのようだ。現実へと戻るが良い」
そんなヨルマの声を最後に俺の意識が遠ざかり目が重く……
???「……様………勇者様……勇者様!」
リオ「ッッッ!!!」
???「やっと起きましたか……随分とうなされていましたが大丈夫ですか?」
リオ「えっと、大丈夫……です」
目を覚ますとカイとゲンの姿はなく、目の前には腰に剣をぶら下げたポニーテールの女の子がいた。
……? この人、なんか面影が……?
???「フィーニス国王様とアリス様がお呼びです。 カイ様とゲン様は先に向かわれました。 準備が出来次第部屋から出てきてください。 私は部屋の外で待機していますので」
リオ「え、あのちょっと!」
名前も知らない女の子はそう言い残すと部屋の外へと行ってしまった。
リオ「……夢だったのか? いや、でも記憶は鮮明に残ってる……」
黒いオーラに包まれた右手を見つめるが目立った変化や異常は見られない。
リオ「オール…ラウンダー……先代勇者と同じ固有スキル……」
正直情報量が多すぎて何が何だかよく分かっていないけど……
リオ「っていうかヨルマが100年前の勇者パーティの1人だって……? あいつ気になる事だけ言ってどっか行きやがって…後で直接店に行って詳しいこと聞いてやるか」
ってかみんな俺の事待ってる感じかこれ。 早く行くか。
???「準備できたようですね。 それでは早速行きましょう。 ついてきてください」
部屋から出ると待っていてくれたさっきの女の子が俺をみんなのいる場所へと案内してくれた
リオ「ってかさっき聞きそびれちゃったんだけど、名前は?」
???「私ですか? 私はフィーニス親衛隊隊長の姫乃真碧と申します」
リオ「ひめの…まお……ひめの……姫乃?」
真碧「はい。 私の事は気兼ねなく真碧とお呼びください」
リオ「えっと…真碧?上の名前は姫乃で間違いない?」
真碧「間違いありませんよ。 何かございましたか?」
リオ「い、いやぁ…なんでも……」
姫乃って…あの姫乃だよな? でもこの姫乃真碧って人はメイドの姫乃とは明らかに別人だし……って事はメイドの姫乃とこの姫乃真碧って人は姉妹……!?
真碧「もしかして妹とごちゃごちゃになってますか? 勇者様がよく知っている姫乃は私の妹なんです。 本名は姫乃紅莉って言うんですよ」
リオ「やっぱり思った通りだった…なんで下の名前教えてくれ無かったんだろう?」
真碧「まぁそもそもこのフィーニスタウンには苗字と名前という文化はありませんから。 苗字か名前だけを言った方が違和感を持たれませんし」
リオ「苗字…?」
真碧「あ、失礼しました。 苗字とは私の故郷夕影の言葉でして上の名前って意味です」
夕影って……紅莉の言ってたセキエイタウンの事か。
リオ「ずっと気になってたんだけどセキエイタウンってどんな所なんだ? 俺全然知らなくってさ」
そう質問すると真碧は少し困ったような顔をして、
真碧「どんな所…ですか。 そうですね……正直に言うと今のセキエイタウンは良い所では無いですね」
リオ「え? そうなの?」
真碧「はい。 魔物の凶暴化や人間の凶暴化等が流行り始めてからは警備体制が厳しくなりまして、入国するにも身体チェックから持ち物検査、身元確認等諸々必要でして中へ入っても外国の者は快く受け入れられず色々な被害に遭ったりと治安が悪くてですね……」
リオ「なるほど…確かに今はどこも入国警備が厳しくなってるもんな。 大体凶暴化してるのもよそ者のパターンが多いらしいし」
真碧「その通りですね。 ……昔は良かったのにな……」
真碧はポツリとため息混じりに呟くと歩く足を早める。
セキエイタウンか……俺はイェワンタウンで外の世界をよく知らずに育ったから他の国の事とかよく分からないんだよな。 ゲンはしょっちゅう王様に任務とか受けてたから知ってるのかな?
真碧「着きましたよ勇者様。 こちらの部屋になります。 どうぞお入り下さい」
考え事をしていたらいつの間にか扉の前へと辿り着く。
一日で色んなことが起きすぎて整理が追いつかないけど…ひとまず入るか。
俺はそう楽観的に考え、扉を開けた。
To Be Continued→4章15話




