第3話
パホラはギルドの裏仕事をこなしたが、課題の難度が上がっていくと、彼女と腕っぷしの同じくらい強いものや、仲間で連携して彼女を苦しめるものも出てきて、苦戦を強いられることもあった。
レンニは、彼女に治癒師のソフィアをつけることにした。
ソフィアは不良魔導師で、ギャンブルに手を染め、魔術でイカサマを行ない、詐欺の罪で、ギルドを出入り禁止になっていた。
ギルドに奉仕活動をすることで、なんとか罪を許してもらえることになったのだ。
最初に会ったとき、パホラとソフィアは反発した。
あまりにパホラが腕力にモノをいわせすぎると思ったからだ。
「まず話し合ってからのほうが、いいんじゃないですか?」
それに対してパホラはいった。
「だまれ! アタシのやり方に口を出すな!」
口下手な彼女は、話し合いで劣勢になり、先手を取られるのをイヤがった。
腕力でまず相手を威圧してからの方が、話はカンタンに進む。
正しさなどどうでもいい。
こういうことは、相手を従わせた方が勝ちなのだ。
しばらくするうちに、ソフィアもそのやり方が正しいと認めるようになった。
そもそもソフィアも、考えるのは面倒くさい方だ。
相手が従えば、それでいい。
パホラが殴り、彼女がケガをすれば、ソフィアが治癒する。
2人はレンニにとって最高の『ギルドの犬』だった。
仲が良くなると、ソフィアは、パホラを酒場に誘った。
酒など飲んだことのないパホラだったが、その効能にすぐにトリコになった。
ギルドの犬になることで、金は手に入り、酒も飲めて、気分は上々。
そんなすばらしい生活に、口元はゆるみっぱなしだった。
「治癒師はすごいな。いくらケガしたって、ソフィアがいれば安心だ。これからもアタシを守ってくれ」
酒場でパホラは、ソフィアにすべてを打ち明けるようになった。
「アタシは本当はアイノっていうんだ。でもみんなはアタシのことをパホラって呼ぶ」
「アタシはハーフオーガで頭が悪いから、ずっとダマされてきたんだ」
ソフィアは、自分のことは話さないタイプだ。
パホラは、今日のこと、今までのこと、どう思ったか、すべてソフィアに話す。
そして飲み終わった後は、必ずこういうのだ。
「ソフィア! アタシのそばに、ずっといてくれ!」
パホラにとって、彼女は真っ暗な人生に、初めてあらわれた光だった。