第2話
パホラは町に行き、冒険者になることにした。
自分のハーフオーガの能力があれば、カンタンに冒険者になることができる。
そう思った彼女だったが、事実は違った。
まずハーフオーガの彼女とパートナー組んでくれる相手が見つからない。
魔物のハーフは、冒険者ギルドでも敬遠された。
初心者は既存のパーティに入るパターンがほとんどだ。
そこで経験を積んで独立する。
しかし彼女はパーティに入れなかった。
初心者だけでパーティを始めるものもいる。
しかし、初心者向けのクエストである薬草摘みや、コミュニケーションが必要な常連依頼主との関係づくりほど頭を使うのだが、パホラは書を読むことや人付き合いがまったくできなかった。
そもそも、人との会話すらロクにできなかったのである。
腕力さえあれば冒険者になれると考えていた彼女は、途方に暮れることになった。
そんな彼女を見ていた、あるパーティが彼女を魔物退治に連れて行った。
彼女の腕力を見て、利用できると感じたからだ。
「腕っぷしなら、誰にも負けない!」
パホラはパーティですべての力仕事を引き受け、クエストは成功した。
しかし、報酬の山分けで彼女がゴネた。
「一番働いたのだから、一番金を貰わなければおかしい!」
彼女の中で、それは正論だが、パーティがそんな話を受け入れるワケがなかった。
ゴネた彼女は、ギルドの事務所で、乱闘騒ぎを起こした。
パーティの知り合いたちは当然仲間の味方になった。
ギルドにいた全員を1人で相手にしたが、誰もパホラを止めることはできなかった。
「やめろっ!!」
叫び声が響いた。
ギルド支配人レンニ・ヴァロだった。
双方が支配人室に呼び出され、事情を聞いた彼は、パホラを叱責した。
彼女は納得がいかなかった。
「アタシは間違ってない!」
「それならギルドを除名する」
ギルドに所属していなければ、クエストはできない。
しぶしぶ、パホラはレンニに従うことにした。
だがそれは彼女にとって大きな転機だった。
パホラの腕っぷしと存在を覚えたレンニは、その後、彼女を気にかけ、ギルドで会うと声を掛けた。
なかなかクエストが思うようになっていないと知った彼は、彼女にギルドの仕事を与えた。
この町でレンニは冒険者ギルドのヴァロ・ギルドを経営していたが、ギルドのパーティの中には、ちゃんとギルドのルールを守らない連中や、裏でギルドを通さずにクエストの契約をする連中がいる。
そうした違反者にペナルティを課さなければいけないが、今まで腕っぷしの強いものはパーティに所属していて、ギルドの警備人の役目を果たすものがいなかった。
しかし、パホラはその役目にうってつけだった。
パーティにそもそも所属していないし、知り合いもいないので、パーティ仲間同士の気まずさもない。
彼女はレンニの依頼を受けて、違反者を次々に締め上げていった。
そんな彼女を『ギルドの犬』と揶揄するものもいたが、彼女は平気だった。
パホラは、ようやくこの世界に居場所を見つけたのだ。
彼女にとって、レンニは恩人だった。