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幽霊女に惚れ続ける

「しかし律、このパスタまじでうまいな」




会長さんはそう言いながら、今日は俺のお手製のペスカトーレを食べている。




「あざっす。ただ、まだマスターには認めてもらえてないんす…」


「ガハハ、そんな一朝一夕で超えられるほど、あの人の腕は低くねーよ」


「精進します。なんで会社の方へはもう少し先になってしまいます」


「問題ねーよ! 期待して待っとくわ!」


「うっす!」




今日はプレオープン2日目。


会長さんと、夜に倉庫長の横山さんと御園さんを呼んでいる、その二組だけ。



そして今日だけは俺がシェフ。


会長さんに俺の成長を見てもらう為だ。





「マスターよ、んで律はどんなもんなん」


「いや実際、結構そろそろ危ないんじゃわ」


「まじか」


「やっぱり味覚のレベルが違うから、隠し味とかがものすごいんじゃよ。もう完全に常識にとらわれておらんのじゃ」


「そりゃマスターも厄介な敵だなぁ」


「まぁまぁまだまだ引退はせんがの! ワハハ!」







そうしてLSMキッチンはオープンを迎え、細々と営業を開始する予定だった。





しかし、マスターの味が毎日開いているお店で食べられるとあって、初日からマスターのお客さんで大盛況。並びが出てしまった。


谷川さんは来るたびに、美緒にモデルをまたやらないかと勧誘し、それを見るのも今週で3回目だ。




そして暫くすると、美食系の動画配信者の方に取材を依頼され、マスターと俺の力作の、1000円で食べれるとっておきのコロッケ定食で度肝を抜いた。


そして、美食の英知が詰まった家庭の味の大革命と言う動画をその人は公開し、大反響を呼び、視聴者さんが大殺到。


それに合わせて、他の動画配信者の方やメディア、しいてはテレビなんかの話も来た。


そしてメディアに出だすと、今度は店員が美人過ぎるとネットが大盛り上がり。


そして最終的に美緒はwiwiのモデルだったMioだということが判明してしまい、wiwiに問い合わせが結構いってしまい、正式にその発表があった。


そして美緒のお父さんからは、シナリオの原作のモデルとしても公表してお店を宣伝する代わりに、お父さんが所属する部門とは別の雑誌に月1で料理の連載を出してほしいとお願いされた。


正直お客さんはもう入りきれないぐらい来ているのだが、美緒とも相談した結果、まぁお父さんだししょうがないかとなり了承した。



その結果、今度は女子中高生がいっぱい来るようになり、急遽学生向けメニューも作った。


美緒が元モデルだってことも公表されている上に、あの純愛のヒロインだということで、もう美緒は接客どころじゃなくなった。


急遽美緒を厨房内の足回りに変更して、ホールはアルバイトを雇った。


結局会いたい気持ちもあって来たのに会えないのもかわいそうだと美緒がいい、写真だけは撮ってあげてるのだが…。


俺の美緒なのに…。





そして俺はそれから5年後ついにマスターに認められた。


マスターに認められた後まず最初に行ったのは、会長さんの会社の人全員へのご馳走だ。



会長さんの会社は店舗ビジネスなんかをやっている会社も多く、従業員が全国に散らばっているので、俺がシェフとしてマスターがサポートして、特製のローストビーフ弁当を作った。


4,000食…。



会長さんは、「1万はまだ無理だったわー、ガハハ」と言っていたが、正直4,000食でも死ぬかと思った。


俺は仕込みも入れると完全に2日徹夜した。






それからは、三ツ星レストランの総料理長引退後の最初で最後の弟子の店と言うことで既に知られていたこともあり、美食好きの人から一般家庭まで、本当に多くのお客様に愛された。


一番高いメニューでも1,500円。


学生さん向けに500円メニューすらある。






俺が目指したのはそんなお店だ。








俺は25歳の時に美緒と結婚した。


そして子宝にも恵まれ息子と娘が産まれた。





息子と娘は、料理ではなくうちの店を拡大するビジネスセンスに優れており、うちの店を起点に、2人で会社を立ち上げ、コンビニ弁当のプロデュースやらなんやら、死ぬほどこき使われた。


そして飲食系の一大企業としてまで成長させた。


俺は料理作ってただけだけど…。















「あなた。あなたを置いて先に行ってしまうことが、私の心残りだわ」


「そんなこと言うでない。わしももうすぐ行く」


「きっと私あなたが恋しくて、幽霊になっちゃうわ。だって幽霊女だもの」


「幽霊でもなんでもわしはあっちでも美緒をみつけられるぞ」


「本当かしら?」


「なんたって、わしは美緒しか見えぬからの。今も昔もこれからも」


「ふふふ、ありがとう律。じゃあ安心して幽霊になれるわね」


「心配するな」


「幸せだったわ」


「これからもじゃ」


「私は幸せ者ね」


「わしの方がじゃ。なんて言ったって、未だに毎日わしは幽霊女に惚れ続けておるからの」


「ふふふ、愛してるわ律」


「わしもじゃ美緒」





そうしてわしは美緒にキスをした。




最後までご覧いただきありがとうございました!!


11/18 20:41 活動報告を記載しました。

ご興味ある方はそちらもご覧頂けますと幸いです

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― 新着の感想 ―
[良い点] 凄い良かった。 徹夜で一気読みしちゃいましたわ… 寝よ…
[良い点] よかったです! [気になる点] 強いて言うと最後の駆け足感が週刊連載で打ち切りが決まって怒涛のエンディング感が少しありましたが面白かったです! [一言] 次回作にも超絶期待します!
[良い点] いい!サイコー! [気になる点] 律のカーチャン 地獄に落ちたかなあ…… 落ちてるといいなあ…… [一言] 完結お疲れ様でした! すてきな楽しい作品をありがとうございました!
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