こいつが例の
次の日起きると、美緒はもうベットにはいなかった。
ベットから出て、リビングに向かうと、美緒とお母さんがごはんを食べていた。
「あ、おはようございます」
「おはよー律君。昨日寝れなかったんでしょ?(ニヤニヤ)」
「え、あ、いや…」
「だって朝、まだ寝てるかな? って見に行ったら一緒の布団で寝てるんだもん! 二人が裸だったらどうしようかと思っちゃったよ!」
とお母さんに言われ、美緒が赤くなって下を向いた。
「お、お母さん、もうそれは聞いたから!!」
「えーだってー、どうせ美緒がお願いしたんでしょ?」
「そ、そうだけど…」
「律君絶対寝れなかったわよ? あんたスタイルいいから。そこら辺もうちょっと自覚しなさいー」
と言いながら食べ終わった皿を持ってダイニングを立った。
俺は美緒の隣に座ると、
「お、お昼ご飯食べる?」
「あ、うん、ってかもうお昼なんだ…」
「うん…ごめんね…律君寝れなかった…?」
と聞かれ俺は昨日の夜を思い出し、顔が盛大に暑くなった。
「じ、実はいやだった?」
「いや…すごい嬉しいんだけど、少し無防備すぎるというかなんというか…」
「り、律君だけだよ…」
「そ、それならいいんだけどね…」
するとお母さんが俺の分の昼ご飯を持ってきてくれた。
「はい、イチャイチャしないで、美緒も明日からは学校行きなさいよ?」
「うん」
「律君はどうするの?」
「俺料理修業しようと思って、知り合いの紹介で三ツ星レストランで修行させてもらうんです」
「えー! 本当に料理を目指すんだね!」
「はい、美緒が持ってきてれたタッパー見たら、俺は料理しかないなって改めて強く思って…」
「昨日話聞いて思ったけど、あのタッパー本当捨てなくてよかった…」
「あれは家宝にしようと! 美緒ともそう話して!」
「あら、家宝というにはまだちょっと早いんじゃない?(ニヤニヤ)」
と言われ、家宝の意味を考えた俺は、再び顔が暑くなった…。
横を見ると美緒も同じ状態になってる。
お母さんは俺達をニコニコしながら見て、
「まぁ節度を持ってね♪」
とだけ言ってキッチンに戻っていった。
俺はお昼ご飯をもらった後、マスターに電話して今後の話するために店を開けてもらった。
美緒は大学の課題をほとんどやっていないということで家にいるということで、俺だけでマスターの店に向かい今後の話をした。
そしてそのままそのお店に行き、紹介されると、二つ返事でオッケーされて、寮も貸してくれることになった。
そして最寄り駅に戻ってくる頃には20時を過ぎていた。
マスターと別れて、今日も泊っていってと美緒に言われていたので、美緒の家に向かい、インターホンで美緒の家の部屋番号を押して、暫くするとオートロックの自動ドアが開いた。
そして俺は何も気にすることなく家に向かい、玄関のドアを開けると、玄関に男の人が1人いた。
その前には美緒と美緒のお母さんが立っており、お父さんがリビングの方からチラッと見てる。
何事?
と思っていると、
「だれこいつ?」
とその男の人が言った。
すると美緒が、
「私の彼氏」
と言い、お母さんが、
「あ、律君お帰り。中入っていいわよー」
というので、なんだなんだ? と思いつつ、俺はその男の人の脇を通り過ぎて、普通に家に入った。
「どういうことだよ、なんでこいつ普通に家入ってんだよ」
「どうもこうも彼氏だから普通でしょ」
「はぁ? みおちゃんこんなやついいから、俺とちょっと話そうよ! 連絡無視しないでよ!」
「え? 私は話すことなんてないけど? 連絡先はもちろん交換した瞬間にブロックしたから届いてないよ」
「はぁ? てか俺も幼馴染なんだし別に中に入ってもいいでしょ! 昔は入ってたし!」
あぁ、こいつが例の…。
まぁ俺は知らない人だし、とりあえず美緒の部屋に向かうか…。
と思って、中に入っていくと、
「え? 幼馴染? 誰ですかあなた」
とお母さんが言った。
お、お母さん。なんか吹っ切れて急激に強くなったな…。
「はい? 俺ですよ?」
「え? 美緒に幼馴染なんていませんけど?」
「は? 忘れたんですか?」
「え? 美緒にいる小さい頃の知り合いは、小さい美緒にトラウマを植え付けたのに、謝りもせず、美緒が綺麗になったら話しかけてきた、薄情で軽薄なもう友達でもなんでもない人しかいませんが?」
「いや、それは悪気があったわけじゃ!」
「悪気がなかったら、なにしてもいいの? 慶都大ってよほど馬鹿でも入れるのね」
とお母さんが言った。
めっちゃ言うねお母さん。
俺は通り過ぎる足を止めて廊下でそれを聞いていた。
すると美緒が、
「庄司君、私はあなたが嫌いです。顔も声も、吐く息すら全て。だからもう私には一切かかわらないで」
「これ以上美緒にちょっかいかけるようなら警察呼びますから」
「なんなんだよ一体!」
するとお父さんが、
「庄司にも昼頃連絡したが、俺はもう庄司の小説の脚本の仕事を降りた。なんの関係もないからうちに関わらないでくれ」
「くそが!」
そう言うとバンッと玄関を閉めて出ていった。
美緒が俺の方に来て、
「なんか私に連絡してもなんも反応がないから、どうしたのーみたいな感じで呑気に来たみたいで、いい機会だからガツンって言ってやろうってことにお母さんとなって」
「そ、そうだったんだね…」
「でもこれで関わって来なくなるといいんだけど…」
「大丈夫じゃない? 警察呼ばれたりしたらあっちも大変でしょ」
「まぁそうだよね」
そしてそのまま美緒のお母さんの晩御飯を頂いて、またお父さんから足りない部分を聞かれた。
そして、今日も美緒の部屋で寝る。
「美緒、俺明日からレストランの寮に入るから」
「そっか、頑張ってね」
「うん、超がんばるから」
「でも、無理はしないでね」
「うん、わかってる。でも、期待はしてて! めっちゃうまいもん作れるようになるから!」
「期待してるね! 私も行けるときは寮に行くね」
「いいの? 俺下積みだからほとんど会えないかもしれないけど」
「それでもいいの。私、律君を感じれるだけで嬉しいから」
「そっか」
「なんか通い妻みたい(笑)」
あぁ、もうなんて可愛いんだ…。
「美緒」
「なーに」
「ずっとは無理だけど、少しだけギュってしていい…?」
美緒はしばらく沈黙して、
「いいよ」
と言ったので、俺は美緒のベットに入り、美緒を前からギュッと抱きしめて、キスをした。
その日は暫くその状態でいた後に、俺は自分の布団に戻りその日は眠った。




