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拷問

美緒の匂いがする。





そんなことを思いながら俺は目を覚ました。


そうだ、美緒の家に来て、ご両親と話をしようと思ったら、お母さんがびっくりするぐらい怒りだして離婚をお父さんに叩きつけて…。


すごい光景だった…。




それでその後、美緒が目に涙をためたまま上目遣いで一緒にいたいって言うもんだから、それに悩殺されて、お言葉に甘えて美緒の家でお風呂を借りて、美緒に言われるがまま、美緒の布団で…。





美緒の布団で!!!!!!!!!!!!





そう思って俺はガバッと起きた。


美緒の部屋。美緒の布団。




美緒に押されて布団に入ったら、ふわーっと美緒の匂いがして、幸せな気分になっちゃってすぐ寝ちゃったんだ俺…。






も、もう少し匂い嗅いでもいいかな…




も、もう少しだけぐらいならいいよね……。






俺がそう思って枕に顔をうずめようとしたところで、ガチャっと部屋のドアが開いた。






「あ、律君起きた? って何してるの?」




俺は美緒の枕を持って、今まさに、顔をうずめようとしているところだった。


勢いよく枕を下に置き、




「み、美緒おはよう!!」




と言った。




「あ、うん、おはよ。大丈夫? 枕なんか持って…も、もしかして臭かった?!」




と美緒がアワワみたいな感じになっちゃったので、




「ち、違う! めちゃくちゃいい匂い!!! 美緒の匂いがするから、もう少し嗅いでもいいかなって!!!!」




美緒はそれを聞いて、沈黙した。


そして顔が真っ赤になった…。



俺は何を言ってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


ド変態じゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!




と頭を抱えた。




「べ、別に、こ、これからはいつでも嗅げるよ…」




と美緒が小さい声で言うので、俺の思考は変な方向にドライブし、一気に体中が暑くなった。




「もうすぐ、夜ごはんだから! リビングで待ってるね!」




そういうと美緒はバタバタとリビングの方に戻っていった。





俺は美緒の匂いでいっぱいの頭をなんとか振り払って、ベットから出てリビングに向かった。




「律君、おはよう、良く寝てたわね!」


「あ、ありがとうございました」




と俺は頭を下げる。




「いいのよ、それに美緒といっぱいお話しできたし!」




とお母さんが美緒を見ながら言うと、美緒もこくって頷いた。




「もうすぐ夜ごはんだから、そこで待ってて。食べてってね?? 律君ほど美味しくないかもしれないけど!」


「いやいや、俺なんて…」


「ま、とりあえず、ダイニングに座っててねー」




と言われたので、俺はダイニングに向かい美緒の横に座った。




「美緒、眠くないの? 大丈夫?」


「少し、ソファーでお昼寝したから大丈夫」


「あ、ベット、ごめん…」


「うんん、すごい良く寝てたから。疲れてたんでしょ?」


「そうなのかもしれない…」





するとお母さんが大皿に盛られた料理を持ってきた。


生姜焼きか。




「美緒、あっちにご飯とかもあるから手伝って」


「うん」




そう言うと美緒は席を立ったので、俺も手伝おうかと席を立とうとすると、




「律君はお客さんだから座って待っててね!」




とお母さんに言われ、半分浮かした腰をもう一度椅子につけた。




「「「いただきます」」」


「律君のお口に合うかしら…」




お母さんがそう言うので、俺は生姜焼きを取り皿にとって、一口食べる。




なんでもない。


特になんでもない。


本当に普通の生姜焼き。


でも、俺、物心ついてからコンビニや総菜や外食ばかりだから、こういうお母さんの味的なのないんだよ…。




なんでもない生姜焼きだけど、旨い。




「お、美味しいです!」




俺はそう言うとがつがつ食べだした。




「まぁよかった! いっぱい食べてね! あ、マヨネーズはお好みで!」




お母さんは嬉しそうにそう言って、美緒もニコニコしながら食べ始めた。





ご飯が終わり、後片付けは流石に手伝って、ダイニングで3人で話していたら、玄関の方からガチャって音がした。




「帰ってきたみたいね」




お母さんはキリっとそう言うと、続けて、




「この後夫婦で話し合うから、あなた達は美緒の部屋に行ってなさい。終わったら呼ぶから」


「わかった」




美緒がそう言い席を立ったので、俺も席立って美緒の後についていく。


玄関前で靴を脱ぐお父さんとすれ違うと、




「み、みお…」


「離婚するんでしょ? 他人になるんだから下の名前で気安く呼ばないで」




とだけ言って、そのまま部屋に向かっていくので俺はその後を着いていった。




そして美緒の部屋で、この本の主人公が律君みたいなのとか、モデルとして載ったwiwiを見たりして、過ごした。



いやー、谷川さん見る目あるな。


wiwiに載ってる誰よりも可愛い。そして美しい。


美緒にそのページをコピーしたいと言ったら、なんかストーカーみたいで怖いと言われ、アワアワして、2人で笑ったりもした。




そして2時間ほど経って、部屋のドアがノックされ「いい?」とお母さんが聞いたので、美緒が返事すると、ドアが開いた。




「色々決まったからこっちに来て」




と言うお母さんは、少し晴れやかな感じだった。


美緒と2人でリビングに向かうと、ダイニングテーブルにそれはもう悲壮感漂う感じでお父さんが座っていた。




「2人ともそこに座って」




お母さんに促されて、俺達は座ると、




「まず、離婚はしないことになりました。ただし、既に捺印済みの離婚届を回収しています」




そういうと離婚届をお母さんはテーブルに出した。


確かにお父さんの名前も記載されて捺印されている。





「もし次今回の様なことが起こったら問答無用で提出します! 美緒が成人したら、美緒と律君に証人として書いてもらいます! 律君お願いしてもいい?」


「あ、はい、大丈夫です」


「それで、もう提出したら受理される状態になるので、これはお母さんが保管します。だからこれがもう最後のチャンスです。本当はこんな年で最後のチャンスなんて嫌だったんだけど…」


「まぁ、でも一応夫婦ではあるので、これぐらいにしておくことにします。次に、庄司さんの家とは縁を切ります! これはお父さんがやります。やるのよね?」




とお母さんが言うと、お父さんは力なく頷いた。




「最後に、私達は美緒と律君のお付き合いを全面的に応援します!」




とお母さんは美緒を見ながらニコッとして言った。


すると美緒は、




「ありがとうお母さん。もしダメって言われたら私律君と家を出るつもりだったから」




と言った。




「だろうと思ってたよ。今日話聞いてたら、もう大好きがすごかったもん!」




とお母さんがいい、美緒は顔を赤くして下を向いた。




「あと細かいことは色々あるけど、大きなのはこれらです!」




とお母さんが言った。


美緒はそれを聞いて、




「わかった。私もそれでいい。お父さん、私はまだ許してないし、多分一生許さないと思う」


「み、美緒…」


「でも、お父さんはお父さんだからさ…」




と言いながら美緒は泣き出した。




「どうして私が嫌なことばっかりするのよ。私は娘なんじゃないの……」




お父さんはそれを聞いて、あぁ…となんだか悟ったような表情になり、




「美緒、本当にすまなかった。本当に申し訳ない。律君も本当に申し訳ない」




と言って頭を下げた。




「明日すぐにでも庄司には連絡する。あいつとやりかけのうちの仕事も別の担当に引き継ぐ。本当に申し訳なかった」




するとお母さんが何かを閃いたように、




「そうだ! あなた! 美緒と律君を題材にしたシナリオ書きなさい! 美緒から聞いたけど、すごいのよ? もう今の時代すごい珍しいぐらいの純愛だから!!」




と両手を合わせていった。




「え、いや、流石にそれは…」


「なに、出来ないの」


「一応昼は普通に仕事が…」


「夜が空いてるじゃない。律君が中卒で寝ずに働く可能性があるなら、あなたが売れないから寝ずに働く可能性だってあるでしょ、それが今よ」


「でも、そんな簡単に…」


「今までと同じことやってたってどうせ3流なんだから、ダメ元で違うことやってみるしかないでしょ。やりなさい、命令よ。わかった?」


「はい…」


「ちゃんと出すのよ?」


「はい…今度ドラマ向けのシナリオコンペがあるので、それに久しぶりに出します…」




そうして、西条家はお母さんが主導する形に大きく変わった。







その後お母さんがお父さんに、俺と美緒がどういう出会いだったのか等を説明した。


時折、この時律君はどう思っていたのかとか、美緒はどう思っていたのか、みたいなことを質問されて答えた。




お互い、「そんなこと思ってたの?!」だったり、「全く一緒じゃん!」みたいな感じだったり、より美緒のことが知れて楽しかった。



そして遅い時間になってしまったので、今日は泊っていきなさいとなって、お母さんが準備してくれた来客用の布団を美緒の部屋の床に引いて寝ることになった。




「律君、起きてる?」


「うん、起きてるよ」


「ねぇ、律君」


「なーに?」


「ちょっとこっち来て」


「え?」


「いいから」


「うん」




俺はそう言って美緒のベットに近づいた。




「今日は一緒に寝よ」


「え、そ、それは…」


「いや?」


「嫌じゃないけど…」


「お願い」




そう美緒に言われてしまうと俺に断ることなんてできない。


俺は美緒のベットの脇ギリギリに入ると、




「抱きしめて」




というので、俺は抱きしめた。


もう理性が今にも崩壊しそうだ。




「律君、ずっと一緒にいようね」


「うん、ずっと一緒だよ」




そう言うと抱きしめてる美緒が目をつぶって上を向いたので俺は、チュッとキスをした。




そして暫くすると、スースーという美緒の寝息が聞こえてきて、俺もそれを聞いて安心してしまい眠った。





と言うことはなく、美緒が動くとムニュっと胸が腕に当たったりで、もうそれどころじゃなかった。


美緒、俺のことを全て信じてくれてる感じがしてそれは嬉しいけど…これは拷問だよぉぉ…。



俺はその日明け方頃まで寝付けなかった…。

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