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【西条美緒視点】お母さんの想い

最寄り駅について、律君と2人で手を繋いで私に家に向かう。


未だに信じられないほど幸せだ。


あんなに想い続けていた律君が隣にいる。



律君も同じことを想っていてくれたみたいだけど、なんだかお互い大好きなのに二人で身を引いて。


今度からは何かあったらちゃんと相談しようねと約束した。


もうこんなに辛い思いはこりごりだ。



そして私は家の玄関を開けた。



すると、リビングからバタバタとお母さんが出てきた。




「み、美緒!!! よかったー!!!!」


「うん、ただいま」




そして横から律君が出てくると、




「り、律君…」


「おはようございます」


「と、とりあえずあがって」




私と律君は靴を脱ぎ、そのままリビングに向かった。


リビングに入ると、お父さんがダイニングテーブル座っていて、律君を見て驚いた表情をしていた。




「お父さん、私お父さんのこと一切これっぽちも許してないから」




そう言いながらお父さんが座る斜め前に私は座った。


お母さんがお父さんの横に座り、律君は私の横に座った。




「あなた、美緒と律くんに言うことあるでしょ」




とお母さんが言うと、お父さんが、




「す、すまなかった…」




とボソッと言った。


その言い方に誠意を感じずイラっとした私は、




「そんな言葉だけ謝って済むと思ってるの? どうしてこんなことしたの? なんで? 未だに意味が分からない」


「そ、それは…美緒が今後生きて行くうえで…」


「そういうのはもういらない。私のことを考えてるなら、まず庄司君の家をどうにかすべきじゃない?」


「そ、それは…」




すると律君が、




「お父さん、俺約束しましたよね? 美緒の意思を確認することと、嫌がった場合無理強いしないこと」


「む、無理強いはしていない…」


「いや、そもそも嫌がってるんで。でしたら、普通に美緒に関わりたいというそれを断るべきでは? お父さんが先に約束を破ったんですからね? 俺も守りませんよ? 俺は美緒と一緒にいます。もう距離なんて一切置きません」


「そ、それは…」


「なんなのよさっきから。ちゃんと喋ってよ! どうせ律君が中卒なことが嫌なんでしょ?! 小さい頃から大学にはいけって言ってたもんね!」




と私が少し怒り気味に言うと、




「今の時代、中卒なんて本当大変だぞ…」


「中卒じゃなかったら大変じゃないの?」


「そうとは言わないが…」




すると、






バンッ!!!!!!!!!!






とお母さんがテーブルを思い切り叩いて立ち上がり、キッチンに向かい紙を1枚持って戻ってきた。


そして私の方を見て、




「美緒、今までごめんね。お母さんも前に進むから…」




ニコッと笑ってお母さんはそう言うと、再び、





バンッ!!!!!!!!!!





とテーブルに紙を叩きつけた。




「あなた、離婚よ」


「え?」





叩きつけられた紙には離婚届と書かれており、お母さんの氏名が記載され捺印もされている。



そしてお母さんは、これまで堪えてきたものを吐き出すかのように、まくし立てるように話し出した。





「もう我慢できない!!! 美緒をあんな風にしてしまった原因は私だから、ずっと悩んで、ずっと悔やんで、あなたにも何も言わずに来たけどもう我慢の限界」


「大体あなた、庄司君の家に多少の恩があるのかもしれないけど、そんなもの10年も20年も引きずるなんておかしいわよ! あなたも、あっちの家も! それでもあなたがあそこの家はっていうから、これまで対応してきたけど!!!」


「美緒のため? 違うでしょ? 自分が問題に向き合いたくないだけでしょ?」


「しかもなにあの息子! チャラチャラと軽薄そうで、慶都大に入ったか何だか知らないけど、あんなクズよりよっぽど律君の方が誠実で人間が出来てるわよ!!」


「それなのに何が美緒に人を知って欲しいだ? なに? 悪い人間を知って欲しかったの? それなら適任じゃない??? 美緒が可愛くなったとたんに、また言い寄ってくるようなやつですもんね!!!」


「私だって美緒をなんとかしたかったわよ! どれだけ悔やんだと思ってるのよ!! それを全部私のせいにして!!!」




そういうお母さんの目には涙が浮かんでる。



あぁ、お母さんもあの時から止まってたんだ…。




「もう我慢できない!!! 律君は中卒かもしれないけど、美緒を前に向けてくれた人よ?! しかも、これまで必死に自分1人で頑張ってきたのよ?!」


「その人によくあんなこと言えたわね!!!」


「確かに私も美緒には大学に行って欲しいと思ってたから、そう言ってきたけど、それが全てじゃないでしょ! 人間なんだから一番大事なのはその人自身でしょ! もうすぐ50にもなるのにそんなこともわからないの?!」


「しかもあなたシナリオライターなんでしょ?! それなのに、なに、娘に了承もとらずに娘の彼氏に会って、別れ話するですって? 一体どこのドラマのクズ親なの?! そんなんだからいつまで経っても見習いの3流なのよ!!!」




お母さんは、ハァハァと息を切らせながら言い切った。




「離婚よ。私は美緒と律君と3人で暮らす」


「え、あ、ちょ…」


「美緒、ちょっと大変になるかもしれないけどごめんね…。でもお母さんも前に進むから。もっと早くこうしてればよかった…本当にごめんね…」




お母さんはそう言いながら目から涙がボロボロとこぼれた。



私だけじゃなかったんだ。


お母さんもあの時に止まってしまって、前に進めず、苦しんでたんだ。







そう思うと私も涙が出てきた。


そして私はコクコク頷いた。








「律君もごめんなさいね、こんな親で。でも私は大歓迎だから!」




とお母さんは大泣きしながらも、ニコッとして言った。




「あ、はい」




律君はちょっとお母さんに気圧されてる感じだ。


確かに私も、お母さんのこんな姿初めて見たから、結構びっくりしてるけど…。




「ほら、あなた邪魔だからちょっとどっか行ってくれない? 私は美緒と律君と話したいんだから」


「むしろ未だに3流で見習いのシナリオライターなんだから、寝ずに働きなさいよ」




そう言ってお母さんは無理やりお父さんを立たせると、リビングから追い出した。



そしてお母さんは戻ってきて、




「律君、本当にごめんなさい。そして本当にありがとう。」


「あ、いえ、俺は、あ、僕は、美緒を悲しませちゃいましたから…」


「そんなのぜーーーんぶあの人が悪いのよ。律君は少しも悪くない!」


「あ、はい…」


「それでそれで? お母さん二人のこと本当はもっと聞きたかったの! 出会いはなんだったの??」


「お、お母さん! 律君今徹夜なの! す、少し寝かせてあげないと!」


「あら! 美緒も?」


「私は少し寝かせてもらった…」


「あ、じゃあ2人ともお風呂も入ってないんじゃない? お風呂入りなさい!」


「あ、確かに…。律君どうする?」


「いやいや流石に!」


「でも、そしたらどこに行くの?」


「それは、マスターの店かな…」


「お風呂ないよ?」


「まぁそうだね…」


「私は一緒にいたいよ…」




と私が言うと、




「あ、ぐ、う、わ、わかった…甘えさせてもらおうかな」




と律君が言ったところで、ガチャっと玄関が開く音がした。


お父さんが出ていったのだろう。


仕事でもどこへでも行けばいいあんな人。




「ちょうど邪魔者も出ていったみたいだし、お風呂入っちゃいなさい!」


「あ、ありがとうございます」


「あ、でも、流石に一緒には入らないでね?? お母さんまだそれを両手を広げて受け入れるほどの心は持ち合わせてないから…」




とお母さんが言うので、私は想像してしまい、一気に顔が暑くなった。




「は、入らないから! り、律君こっち! シャワーでいいよね?」


「あ、うん」




そういう律君の顔も真っ赤だ。


きっと同じことを想像したのだろう…。


そして律君を浴室に案内して、着替えに私の高校時代の体操服を渡して、リビング待っていると伝えた。




そしてシャワーを浴び終わった律君がリビングに来たので、




「あ、律君おかえり」


「ありがとうございました」


「いえいえ~」


「律君少し寝て?」




そう言いながら、私は律君を今度は自分の部屋に連れて行く。




「私のベット使っていいから」


「いやいや、流石にそれは!」


「私全然眠くないし、お母さんと話したいから」


「そ、そっか…」


「ね?」




そう言って私は律君の背中を押してベットにいれた。


布団をかけて手を握ってあげると、律君は直ぐに眠ってしまった。


その後、私もシャワーを浴びて、お母さんと話して、少しだけソファーでお昼寝して、起きてまた律君が起きるまで話していた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 何十年経っても未だに見習いの三流ライターって 稼ぎうんこみたいなもんなんじゃないかな? よく知りませんが 陰で悪どいことでもしてんじゃね? [一言] 父ちゃんが敵に回るのか? それとも…
[一言] 無駄にプライドは高そうだからまた何かやってきそうだなぁ。 言い方はあれだけど猿もそうやすやすと上玉を逃すはずないし…。
[一言] 幸せをありがとうございます...
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