餃子パーティー
今日は久しぶりに、世の中の休日に俺の仕事が休みで、美緒の大学も休み。
美緒とは、いつもタイミングが合うときに、例えそれが少しの時間だったとしてもいつもの公園で会っている。
たまに時間があるときは、俺の家に美緒が来て、俺の料理を食べてもらってもいる。
最初みたいに、2人で変な発想をすることはないが、美味しいとニコッと笑ってくれる美緒に、俺は毎回殺されそうになっている…。
美緒は練習がてら毎日化粧をしているようで、会うときも化粧しているもんだから、なにもしなくても心臓に悪い。
しかも、流石谷川さんと言うべきか、どの服装も非常に似合ってる。
もうね、なんか儚くて、優しくて、可愛くて、なんかもうなんて言っていいかわからない!
とりあえず言えることは、大好きだ!!
美緒は、大学での生活が大幅に変わったようで、色んな人に連絡先を聞かれるようになったと言っていた。
男の人は律君以外興味がないと言っていて、全部逃げてるらしい。
なんて可愛いんだ…。
そして今日は、2人とも休みなので、餃子パーティーをやろうということになっている。
俺はスーパーで材料を買ってきて、美緒が来る前に餡の準備を始めた。
まず白菜をみじん切りにしてボールにいれて塩を適当にもみこんで少し置いておく。
その間に筍の水煮と椎茸もみじん切りにする。
美緒は一応年頃の女の子だし、ニラとニンニクは嫌かもしれないと思っていれない。
白菜から思ったより水分が出たので、水気を少し切って、みじん切りにした筍と椎茸と合いびき肉を混ぜ合わせる。
牛脂、オイスターソース、酒、醤油、生姜、顆粒のコンソメ、粉ゼラチン等を適量加えて一緒にもみこむ。
ニンニクやニラを入れていないので、味にパンチが足りないかもしれないと思いコンソメが隠し味だ。
牛脂と粉ゼラチンを入れておくことで、肉汁を増加させとろみがつき、餃子の皮の中にとどまってくれるはずだ。
そうして餡を作っていると、家のチャイムが鳴った。
手を洗って玄関を開けると、美緒がいた。
「ちょっと早かったかな?」
「ぜーんぜん! 入って入って!」
「お邪魔します」
そういう美緒を俺は家に招き入れた。
美緒ももう慣れたもので、家に入るとリビングの方に行き荷物を置いてキッチンに戻ってくる。
「餃子作るの初めて」
「おーそうなんだね! 俺も初めてだけど!」
「そうなんだ」
「一人分って難しいんだよねこういうの」
「確かにそうかも」
「今日は、この基本の餡にお好みで、大葉やチーズやキムチを混ぜてみて食べ比べてみようと思ってるんだ!」
「美味しそうだね。私大葉好きなんだ」
「そうだったんだ! 準備してよかった!」
そうして二人でダイニングテーブルに座って、出来上がった餡にトッピングを混ぜたりしながら餃子を包んでいく。
「結構すぐ慣れるもんだね」
「うん! でも餡の量が難しいね。見てこれ。はみ出ちゃった(笑)」
「あはは、本当だね」
そんなことを話しながら2人で餃子を作った。
「餡が余っちゃったね…」
「うーん…このまま焼いちゃおう!」
「ハンバーグ…?」
「どっちかというとつくね?」
「それはそれで美味しそうだね(笑)」
「そっちの方が美味しかったりして(笑)」
そして、俺がフライパンで餃子を焼き、焼けたものをお皿に取り、美緒はそれをリビングに持って行く。
他にも箸や取り皿なんかも持って行ってもらう。
俺の家には、美緒の箸やコップがある。
俺とペアの…。
やり過ぎか?! と思ったが、どうせ美緒の物を準備するならとペアの物にした。
美緒もすごく喜んでくれたみたいで、いつもそれを使ってくれる。
よ、よかった…。今時ペアなんて気持ち悪いとか言われたらどうしようかと、内心ちょっとヒヤヒヤしていたのだ。
ほら俺、谷川さんに「今の時代の子?」って驚かれたぐらいだし、今時の若者感覚があんまりないみたいだからさ…。
そうして餃子を焼き終え、最後に焼きあがった餃子を持ってリビングに向かい、コタツ布団を外したコタツテーブルに座る美緒の対面に俺は座った。
「ちょっと作りすぎたかな…」
「そ、そうだね…。食べきれる気がしないね…」
「まぁ明日も食べれるでしょ!」
「う、うん、律君のご飯になるね」
「さ、熱いうちに食べよう!」
「うん」
「「いただきます」」
そして二人とも、プレーンな餃子を取り、醤油とお酢とラー油を混ぜたたれにつけて、一口食べてみる。
ドバッ
もうすごい、一口噛んだら、ドバっと肉汁が中から出てきて、鬼のように熱い!
俺は一口で食べたからその熱さがダイレクトに飛んできて、美緒は口が小さいから嚙み切ったようで、取り皿の上にぼたぼた肉汁がしたたっている。
これはすごい。
俺の想定通りゼラチンでとどまってくれていたということだろう。
というかちょっと多すぎる?
俺もびっくりだ。
「り、律君、これすごいね…」
「肉汁多い方が美味しいかなと思って、牛脂とかいれたんだよね」
「それで…。しかも一口で大丈夫だった? これすっごい熱くない?」
「いや、やばかった。ちょっと舌火傷したかも」
「私は噛んだから熱さは大丈夫だけど、お皿がとんでもないことに…」
「あはは、美味しいけど、ちょっと待ちたいところだねこれ(笑)」
「で、でもアツアツの方が美味しいよ…?」
「そ、それはそうだけど…」
「ご飯とも合うんじゃない?」
「そ、そうだね…よしもう1個!」
と言って俺はもう一つ取り、一口で口に入れる。
あっちーーーーーーーー!
旨いけどあっちーーーーーーーー!!!!
と俺がハフハフしていると、美緒はクククっと笑った。
「あー美緒ーー!」
「私は何もしてないよ?」
と美緒はニコニコしていて、2人で笑った。
そうして餃子を食べ終え、2人で後片付けをして、お茶を持ってコタツテーブルにいる美緒のところへ俺は向かった。
「美緒、お茶どうぞ」
「ありがと」
「どうだった?」
「すっごい美味しかった。特に大葉かな私は」
「俺はチーズかなぁ」
「チーズも美味しかったよね」
「まぁ結局全部美味しかったんだけど(笑)」
「そうだね(笑) つくねも美味しかったし」
「確かに(笑)」
そして二人でお茶を一口飲むと美緒が、
「り、律君」
「なにー?」
「あのね、うちの両親が律君を紹介してほしいって…」
「!!!!!!!!!!」
「私の気持ちを前に向けてくれたから、お礼も言いたいって…」
「あ、お、うん」
「それで今度都合の合うときに、一緒にご飯でもどうかな?」
と美緒が少し下を向きながら上目遣いで聞いてきた。
美緒は気づいてないんだろうが、もうそんな風にみられると、惚れちゃうよ?!
既にこれ以上無理なぐらい惚れてるけど!
「あ、うん! もちろん!」
「よ、よかった」
「あ、でも、ご両親に会うとなると、スーツ?! え、タキシード?!」
と俺がやばいやばいみたいな感じでアワアワすると、美緒が、
「い、いや、ただ紹介してご飯食べるだけだから、いつも通りで大丈夫だよ…!」
と言ってくれたので、
「よ、よかった…。俺スーツとか持ってないし、それっぽいものと言ったら、中学の制服しかない」
「もうコスプレだね(笑)」
「すんごい丈短くなってそう」
「そうだね(笑)」
美緒を家に送った後、スケジュール調整をして、美緒の両親に会う日は4日後の俺の休みの日の夜ということになった。




