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【西条美緒視点】遅めの大学デビュー

マンション前で律君とマスターとお別れして、大荷物を両手に私は家に向かった。


そしてエレベーターに乗り、家の前まで来ると一旦両手の荷物を地面に置いて、私は家の鍵を開けてドアを開けた。




「た、ただいま…」




という小さく言うと、ドアを開けた音で分かったのかお母さんが、




「美緒おかえりー!!! どうだったー!!!!」




と早足で玄関に向かってきた。


そして玄関にたっている私を見て、






ペタッと玄関の床に座ってしまった。







「お、お母さん?」




と、私がお母さんの方に少し手を伸ばしながら言うと、




「み、美緒なの?」


「そ、そうだよ?」


「み、美緒ってモデルなの?」


「え? 私はいつも本を読んできただけだよ?」


「み、美緒だわ…。プロの人たちって本当凄いのね…」


「う、うん…。髪型も洋服も全部新しくしたけど、皆似合ってるって言ってくれた」


「うん、信じられない程似合ってるわ。むしろ、お母さんが言うのもあれだけど、自分の娘がこんなに美人だなんて知らなかった…」


「そ、そうかな…」




私が少し恥ずかしそうに言うと、お母さんは思いついたように、




「お父さんにも見せましょう! あなたーーーー、ちょっと玄関きてーーーーー」




とお母さんが言ってしばらくすると、リビングの方からお父さんがやってきた。





そして私を見て、驚いた顔をしてよろめいて、壁に手を着いた。




「み、美緒なのか?」


「そ、そうだよ」


「え、ど、どうしたんだこれは…。いや、いいことだぞ!」


「えっと…」




と私がなんて説明したものかと思っているとお母さんが、




「美緒半年前ぐらいから彼氏がいるの! その彼氏くん律君って言うんだけど、その子が美緒の気持ちを前に向けてくれて、イメチェンするって美緒が決めて、今日がその日!!!!!!!!」




とお母さんが言いきった。


お父さんは、いきなり飛んできた色んな情報に茫然としていると、お母さんがこそっと、




「今の勢いに任せて、言っちゃいましょう」




と言うので、なるほどと納得した。




お父さんは暫くすると、




「あ、えっと、うん、わかった。でも、美緒、本当にきれいになったね」


「ありがと」


「とりあえず玄関はあれだから家に入りなさい」


「うん。あ、外に荷物があるからちょっと待って…」


「あなた、美緒の荷物中に入れてください! 大至急!」


「え?」


「娘の荷物は父親が持つのが世の常よ! 早く!」


「は、はい…」


「美緒は手とか洗ってきちゃいなさーい」


「あ、うん、お父さんごめんね…」


「う、うむ、大丈夫だ」




そう言ってお父さんはサンダルを履くと玄関外に向かった。


私は靴を脱いで、手を洗い、再び鏡で自分の顔を見た。


何度見ても自分じゃないみたいだ…。




そしてその日は、お父さんとお母さんに、今日どんなことをやったのか聞かれ、お父さんは「お祝いだ!」と泥酔するまでお酒を飲んで、お母さんは泣いたり笑ったりをまた繰り返した。


なんだか喜んでくれたみたいでよかった。





そしてそれからは、赤井さんに教えてもらったメイク道具をそろえて、練習がてら毎日メイクした。


やっぱり赤井さんがやってくれたのと同じ状態にはならないが、結構薄めと言っていたのは本当なようで、ちょっと練習した私でもそれなりの完成度になっている気がする。



律君ともその状態で会っているので、毎回「死にそうになるほどかわいい」的なことを言われる。


でも私の中身が変わっているわけではないので、他は今まで通り小説の話や最近の律君の仕事の話なんかを聞いている。


あ、あと、最近律君は、料理を結構やっているらしく、その話もよく聞く。


私も何度かご馳走になりに律君の家にお邪魔した。


もうあんな変な思考になることもなく、家の中でも二人で楽しく過ごせている。




そして大学が始まり、私はこの状態で初めて大学に行った。


服装は、自分に気合を入れるべく、髪の毛を切った時に谷川さんに選んでもらったコーディネートに、上から大きめのシャツを着た。


谷川さんとはあれ以降、ちょくちょくLimeでやり取りをしていて、上に着るのはどうしたらいいか聞いたら、一緒に買ったこのシャツが合うと教えてくれた。



もう超遅めの大学デビューと言ってもいい。




そして大学に向かうと、チラチラとみられる。


これまでもずっとチラチラ見られてきたのだが、Newバージョンになってからもチラチラとみられる。


それこそ髪の毛を切った帰りの電車から、こういう状態だった。


ただ、旧バージョンと違い、引いた視線と言う感じではなく、興味や好意に似たような目線なのだ。


とりあえず、中身は私のままなので、どうにか目立たないようにスーッと最初の授業の教室に向かった。


そして教室に入ると、中の人が「え?」みたいな感じで見てくる。


私は空いている席に座ると、なんだか「誰?」みたいな感じで話しているのが聞こえた。


それから教室に入ってくる人皆私をみると、「え?」みたいな顔をして席に座る。


そして先生が入ってきて、点呼で出席を取り出した。




「次、西条さーん」


「はい」




と私が言うと、クラスの全員が「ええええ????????????????」みたいな感じで、驚愕した顔でこっちを見て、先生すらびっくりしてる。




「さ、西条さん、1年の時に見た時と大分雰囲気が変わったね…」


「そ、そうですね。変えてみました」


「そ、そうですか…。えーでは次…」




そして授業を終えると、2人の女の子が私に話しかけてきた。


ちなみに私は名前も知らない…。




「さ、西条さんだよね?」


「そ、そうだよ…」


「い、イメチェンしたの…?」


「うん」


「ちょっとびっくりしちゃった」


「そ、そうだよね…」


「でも、すっごい可愛くなったね! これ髪の毛何色?」


「なんかピンクベージュをベースにって言ってたけど、やってもらったから詳しくはわからない…」


「あ、染めてもらったんだ! どこの美容室?」




そう聞かれたので私はスマホで検索して見せた。




「ちょっと読み方がわからないんだけど…ここの時任さんって人にやってもらったの」




二人は私のスマホを見て、




「え、この人テレビとかも出てる人じゃん?!」


「あ、あのおかまのカリスマ美容師でしょ?!」


「そうそう! ザニーズの涼くんとかもやってもらってるんじゃなかったっけ?」


「やばっ! てか、テレビで半年だか1年だか予約取れないって言ってなかった?」


「言ってた言ってた! よく予約取れたね?」


「あ、うん。知り合いが、無理言ってとってくれたみたい…」


「えーー! めっちゃいいなー! 私もとって欲しいー! てか西条さん連絡先交換しようよ!」


「あたしもあたしもー!」




そう言われて私はLimeのQRコードを表示して連絡先を交換した。




それから大学生活は一変した。


これまで私を見ると、遠巻きにヒソヒソしていた人達がいなくなり、色んな人に話しかけられるようになった。


ちょっとすると、色んな男の人からも連絡先を聞かれるようになったが、毎回困ってその場から逃げ出している。


そんな周りの変化はあるものの、中身の私がイメチェンしたわけではないので、基本的に本の虫であることは変わらない。


私はそんなことを思いつつ小説を読みながら家に帰った。




お父さんはまだ仕事から帰ってきていないので、お母さんと2人で夜ご飯を食べていると、




「ねー美緒?」


「なに?」


「お父さんとも話したんだけど、律君一度お父さんとお母さんに紹介してくれないかな? お礼もいいたいの」


「う…うん…聞いてみるね」


「よろしくね! 律君も呼んでどこかでご飯食べましょう!」


「わ、わかった…」


「イケメンくんだって聞いたし楽しみだわ!」


「うん…」




そうして私は律君を両親に紹介することになった。

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