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【西条美緒視点】別人みたい

「みおちゃん、髪の毛はこれで終わりよー! 後ろの毛はこれぐらいの長さになってるからー」




時任さんはそう言うと、私の座っている椅子を回して横向きにした。


人生で初めて美容室で髪を切って、人生で初めて髪の毛の色を染めて、人生で初めてパーマみたいなのをかけた。


初めて尽くしだ。




鏡に映る私は、これまでとはまるで違いセミショートぐらいの長さになっている。


前髪も綺麗に切られていて、もうまるで別人である。




「じゃあ、この後杏ちゃんに洋服選んでもらって、最後に赤井さんにメイクやってもらうからねー」


「よ、よろしくお願いします」


「はーい! 杏ちゃんー! 出番よー!」




しばらくすると谷川さんが席の隣まで来て、




「これは素晴らしいわね…。元の素材も素晴らしくて技術も最高なんだから当たり前なんだけど…」


「本当よねー。なにか理由があったんだろうけど、正直普通に生活してたら、男に狙われまくって大変だっただろうねぇ」


「そ、そうですかね…」


「さ、じゃあ洋服だけどー…んー、どうせならイメージをガラッと変えたいからー…」




そう言って谷川さんは今日買った洋服の袋の1つを開けだした。




「この薄いライトグリーンの巻きスカートに、この白いブラウスでいいかな!」




と言って私に手渡してきた。


一回試着はしているので知っているのだが、このスカート人生で初めてのミニスカートなのだ…。


正直私なんかが履いていいのだろうかと思う。




「あら、杏ちゃん、結構今時女子感あるセレクトね」


「まぁ、編集目線のものもいれてあるけど、やっぱり普段使いできないとねー」


「まぁそうよね、それには流行りが一番だものね」


「その流行りを作っているのは私と言っても過言ではないけどね! さ、みおちゃん、奥にちょっとした着替えスペースがあるから着替えてきて」


「は、はい」




私はそう言うと椅子から立って、時任さんが「こっちよー」と案内してくれている方に向かい、カーテンのついた試着室のような部屋で渡された洋服に着替えた。


そして、着替えてカーテンを開けると、




「え、みおちゃん、めちゃくちゃスタイルよくない?」




と、時任さんが驚いた。




「私も服買ってるときに気が付いたんだけど、正直グラビアレベル。胸もEぐらいよねそれ?」


「は、はい…」


「この細さでEカップなんて、もうね、本当今まで隠され続けてきた原石なのよ」


「そ、そうね…これ化粧したらもう撮影いけるんじゃない?」




そういうと赤井さんが近づいてきて、




「どれどれ、西条さんこちらに座ってくださいな」




と、ドレッサーの前の椅子を引いた。


私は言われた通りにそこに座ると、赤井さんが色々化粧品を出してメイクしだした。




「今日は俺がやるけど、いつもは自分でやることになるから、少し見ながら覚えてねー」


「あ、は、はい…。わ、わたし、今まで化粧とか一度もしたことなくて、何もないんですが…」


「おお! だからこんなに綺麗な肌してるんだねー! それじゃあ、いいやつ後で教えてあげるよ!」


「あ、ありがとうございます」




その後赤井さんは、これはアイシャドーだよ。これはチークだよ。と言って使い方を教えてくれながらメイクしてくれた。




「さて、そろそろマスター達も来るだろうし、私はあっちで待ってようかな!」




と谷川さんが出ていった。



そして暫くすると、




「はい、これで完成! お疲れ様!」




そう言って、赤井さんが私の両肩をポンッとたたいた。


そして目の前に映る自分は…





誰これ?





いつも長い前髪で、あんまり自分の顔を見るようなことはなかったのだけれど、間違いなく言えるのはこんな顔じゃない。


と思う…。




「別人みたい…」




と私がボソッというと、赤井さんが、





「そんなことないよー。基本的に元々の素材を活かすようにしか今回のメイクはやってないから、かなり薄めだよ!」


「そ、そうなんですね…」




そういうと時任さんも、




「自信もって大丈夫だよ! 芸能人やモデルだって何人も見てきている私達が言うんだから間違いないよ~!」




とニコッと笑いながら言った。




「さて、じゃあ皆にお披露目ね! 美緒ちゃんここでちょっと待ってて、呼んだら出てきて!」


「わ、わかりました」




そして時任さんが出ていき、しばらくすると、「正直私も赤井さんも、びびっちゃうほどの完成度だから! じゃあ美緒ちゃんおいでー」と時任さんに呼ばれたので、表に向かった。




は、恥ずかしい!


髪の毛も短いし、スカートも短いし、だ、大丈夫かな!



そう思いつつ、そっと進んで私は顔をあげた。





すると、少し離れたところにいる、律君とマスターは固まった。




え、どっち?


ダメってこと??


やっぱり幽霊は髪の毛切ったって幽霊??




と思って、律君に近づき、




「ど、どうかな…」




と聞くと、律君はなんだかもう息を切らすような勢いで、




「めちゃくちゃ可愛い!!!! てかめちゃくちゃ可愛い!! なんだろ、めちゃくちゃ可愛い!!!!」




と言ってくれた。


よかった…。


でも全部同じ意味だね…(笑)


と思っていると谷川さんが、




「ちょっとさ、右側の髪の毛こんな感じで持ってもらって…そうそう! それで少しだけ右側に首をかしげてもらって、少しだけニコッて笑ってみて?」




と言うので、私は言われた通りに谷川さんを見ながら動き、正直笑顔ってあんまり経験がないから苦手なのだけど…と思いつつも、ニコッと笑ってみた。



すると今度は、谷川さんや時任さんも含めて全員止まってしまった。





え?


ど、どういうこと??


なんかミステリー小説であるようななんかのスイッチ???




と私がどうしようと思っていると、時任さんがようやく話しだしてくれた。




「あ、杏ちゃん、あなた流石ね…。こんなにこの子の魅力を引き出すポーズないわ」


「あ、いや、私もそうだろうなとは思ってたけど、まさかここまでとは思わなかった…」


「いやぁ、わしも好きになっちゃいそうじゃ」


「ま、マスター、それだけはいくらマスターでも許せない!」




ふふ、律君可愛いな。


心配しないでも私は全て律君の物なのに…。



そして谷川さんにモデルのバイトをしないかと誘われて、流石に務まる気がしないのと、今日は色々あり過ぎてちゃんと考えられなそうなので、私は困った。


チラッと律君を見ると、律君がすぐさま助け舟を出してくれた。



さすが律君!




そして、律君に続き二人目のLimeの交換を谷川さんと行った。


今度は最初からQRコードをだした。


そして、律君とマスターと3人で電車に乗って帰り、私の家のマンションの入り口まで荷物を運んでくれた。

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