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【西条美緒視点】こけし

私は西条美緒さいじょうみお18歳。


この春、高校を卒業して地元の4年制の国立大学に通う大学1年生だ。


特に何かやりたいことがあるわけじゃないが、親が大学は出ないと苦労するから必ず行きなさいと言うことで、無難に自宅から通える大学に進学した。


1人暮らしも一瞬考えたが、私の現在の状況を考えると家族にいてもらった方が生活しやすい。


私は近所で幽霊娘と呼ばれているらしい。



真っ黒な髪の毛を長く伸ばしており、前髪もかなり長い。


普段前が不便なく見える程度には分けているが、真っすぐおろすと顎ぐらいまである。


私の髪型は性格をそのまま物語っており、社交性なんて一切ない。


特に暴力を振るわれたり、酷いいじめにあったりはしなかったが、それこそ「それはいじめだ!」と言われてもしょうがないぐらいには、男子にも女子にも馬鹿にされ気持ち悪いと言われ、笑われてきた。


そうして、小学校の時はお化け女子と言われ、中学校では貞子と言われ、高校では幽霊女と言われてきた。


仲のいい友達なんて一人もいない。




でも、小さい頃はこんな感じじゃなかった。


ただ私にはどうしても拭えないトラウマがある。




小さい頃私には幼馴染がいた。


名前は庄司涼介しょうじりょうすけくんと言い、確か4歳ころまでは「りょうくん」「みおちゃん」と呼び合いよく遊んでた。


私のお父さんは会社勤めのシナリオライターで、これと言って有名なわけでもなく、大体はメインの方のサポートをしている。


お母さんは私が小さい頃は専業主婦だたが、今は近くのスーパーでパートをしている。


そしてりょうくんのお父さんは小説家。


うちのお父さんとりょうくんのお父さんは大学のころからの友人で、大学時代にりょうくんのお父さんが書いた小説を、お父さんがシナリオとして編集して持ち込んだものがたまたま、とある編集さんの目に留まったらしい。


そしてその小説は、多少の変更はあったものの出版されることとなり、りょうくんのお父さんは小説家としての道を歩き出した。


お父さんはその時のシナリオ編集を目にとめてもらった編集さんに紹介してもらい、今の会社に見習いライターとして入社できた。


現在でも見習い状態ではあるけど…。



そういう状況があったからか、うちのお父さんはりょうくんのお父さんを格上の存在だと認識しており、りょうくんのお父さんもうちのお父さんを格下のような雰囲気で扱う。




私とりょうくんの遊びにはそんなのは関係なかったのだが、ある日お母さんが少し髪の毛を切るのを失敗してしまい、前髪がそれこそほとんどないんじゃないのかってぐらい、ぱっつんで短くなってしまった。



私もまだ小さかったからそこまで気になっていなかったのだが、前髪が短くなった状態で初めてりょうくんと公園で遊んだ時に、




「みおちゃんなんか髪の毛変だよ」


「ママが失敗しちゃったって」


「なんか、おうちにあるあの変な人形みたい!」


「お人形?」


「なんだっけー! ママーー!!! 玄関にある人形なんだっけ!!」



とりょうくんはりょうくんのお母さんのところに走っていき、しばらくすると、




「こけし!!!!!!!!」




と、大声で指をさして言いながら戻ってきた。


すると、後ろから、りょうくんのお母さんが「こら! りょう! 女の子にそんなこと言っちゃダメ!」と走ってきて言った。



その日は、りょうくんはりょうくんのお母さんに促されるがまま「ごめん」と謝ってくれたが、髪の毛はそんなにすぐ伸びない。


そして家も近いことから、結構な頻度で遊んでいたこともあり、りょうくんとは前髪が短い状態で何度も遊んだ。


でも、公園の時みたいに大声では言わないものの、2人で遊んでいると何かにつけて、




「みおちゃん、こけし好きなの?」


「こけしみたいだから直した方がいいよ」


「前の方が可愛かったよ。こけしはやめた方がいいよ」




と、私が望んでこんな髪型になったわけじゃないのに、お節介のように言ってくる。




そして、私はついに、




「今日はりょうくんのお家に遊びに行こうねー」




と、お母さんが話しかけてきた。




「……行きたくない……」


「なーんでー?」




とお母さんは無邪気に聞いてくる。




「……こけしって、言われるから、お外出たくない………」




と私がボソボソっと言うと、お母さんはなんとも言えない表情になり、




「そ、そっか……んじゃ今日は体調がよくないからってお断りして、おうちでママと遊ぼうかー」



そうして、私はその日でりょうくんとの幼馴染関係は終わった。


それ以降も、りょうくんは家が近いのでたまに見かけることはあるが、お互い何も話さない。挨拶すらしない。



そして私はと言うと、そんな大したことじゃなかったのかもしれないが、前髪を切ることが怖くなり、それ以降お母さんが髪を切ろうって言うと断固拒否。


そうして今の私が出来上がるわけである。


そうやって一度ふさぎ込んでしまったせいか、性格も内向的になり、それまでは外で走り回って遊んでいたのだが、一気に本やテレビ等家で遊べる遊びに変化した。

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