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【西条美緒視点】爆発したように暑い

樫木君の家で、手作り料理をふるまってもらった。


フライドチキンなんて絶品だった!


あんまりいっぱいは食べられないんだけど…。


美味しいとか関係なく私は昔から小食なのだ。


だからか、体はほっそりしてる。


なんで胸だけこんなに大きくなったんだろう…。


多分お母さんの遺伝だな…。




そして、2人で後片付けをした。


なんだか、樫木君が言うみたいに、新婚みたいで、なんだかなんでもない、ただ2人で後片付けをしているこんな時間が幸せだ…。


本当に幽霊な私がこんな気持ちになっていいのだろうか…。




片付けもある程度終わったので、先にコタツで待っててと言われたので、コタツに入っていようとリビングに向かった。


すると、リビングのから続くもう一つの部屋の襖が少し空いていて、畳の部屋に敷かれている布団が見えた。


さっき樫木君が中学時代のアルバムを取りに行った時に、しっかり閉めきれてなかったんだ。



そして私はコタツに入ると、さっき見えた布団で、思考が一気に変な方に進んだ。



この後、いよいよなのか…?


ちゃんと見られても大丈夫なような下着をつけてきた。


え、大丈夫だっけ?


と思って、トレーナーの首元を少し引っ張ってブラジャーを見たがちゃんと買ったやつだ。


よ、良かった。



い、いやいや! 良かったって!!!


いやでも、そんな雰囲気じゃないような気もするし…。


でもでも! 樫木君も男の子だし…。


でもでもでも、私なんかにそもそもそんなこと思わない……。


いや、でも!




という堂々巡りをしていると、片づけを終えた樫木君がコタツに入ってきた。




「じゃあそろそろ…」




と樫木君が言うので、私は思考が勢い余って、




「ま、待って! まだ、こ、心の準備が……」




と言ってしまった。



それを聞いた樫木君は、「え?」みたいな、ポカンとした表情になったが、見る見るニコニコしだした。




「美緒またすぐ会えるよ?」




とニコッとしながら優しく話しかけてくれる樫木君。



私はハッと気づいて、下を向いて両手で顔を覆った。


恥ずかしすぎる…。


私のバカ…。


そんなわけないじゃない…。


これよ? 幽霊女よ?


なに浮かれちゃってるんだか…。


私はそう思いつつ話した。




「そ、そうだよね…」


「う、うん?」


「ご、ごめん…」


「もう21時だしさ! もっと一緒にいたいと思ってくれるのは凄い嬉しいけど、遅くなるとご家族が心配するでしょ?」


「そ、そうなんだけど…違うの……」




樫木君の優しさになんか嘘をついているような感じになるのは嫌なので、ちゃんと謝らなきゃ。




「違う?」


「わ、私、今日彼氏の家に行くってことは…そういうことされるのかもなって…思ってて……」


「そういう…」




そこまで言うと樫木君は、後ろをバッと向いた。


そうだよね…。


恥ずかしいよね…。


なんか樫木君は誠実で優しいのに、私は本当ダメで幽霊なうえにこんなことまで考えちゃって…。




「だ、だから、勘違いしちゃって…ごめん……」


「え、あ、いや、ほら、俺等まだ付き合って2カ月ほどだしさ?」


「う、うん…ご、ごめんね、私みたいなのにそんなこと思うわけないもんね…」


「そ、そんなことないよ!」




と、こっちを見た樫木君の顔は凄い赤い。


でも必死な感じで、




「俺だって美緒ともっとくっつきたいし、そ、そういうことだってしたい! ものすごくしたい!!」




と、大きめの声で言った。


一瞬私は茫然としてしまった。


しかしすぐに言われた言葉が、何度も頭を流れて、爆発したように顔が暑くなった。



すると樫木君が目の前頭を抱えだしたので、ちゃんと話さなきゃと思い、




「えっと、あ、ありがとね? だ、大丈夫だから」


「え、あ、うん…」


「そう思ってくれて嬉しいよ。でも私つい最近まで友達すらいなかったから…」


「うん、でも俺も、誘っちゃった後に同じことすごい考えちゃって…何なら今日の朝とかも…」


「そうだったんだ…」


「一緒だね…」


「そ、そうだね」




2人とも同じ事を意図せず考えていて、悩んでたと思うとなんだか可笑しくなった。




「お、俺等は俺等のペースでゆっくりね!」




私は1つだけ今日言おうと決めていたことがある。


それを言うタイミングは今しかない!


そう思って、ちゃんと顔が見えるようにして、




「ふふふ、そうだね…ありがとう、律君」




と言うと、樫木君はハッとした感じで固まった。


暫く固まってるので不安になって、




「だ、だめかな…?」




と聞くと、




「い、いいに決まってる! 美緒ありがとう! 最高のクリスマスプレゼントだよ!!」




と言い、なんだかジーンとドラマとかで感動しているお父さんのような感じで腕を組んで目つぶった。




「じゃ、じゃあ、今日は失礼しようかな…」


「あ、うん! 送ってくよ!」


「お願いしようかな…」


「うん、もちろん!」




そうして立ち上がってコートを着て、同じくコートを着た律君が前を歩いた。



ま、まだ、私はそうことを積極的にはできないけど…今日のご飯のお礼ぐらいわかる形で伝えたい。



私はそう思い、意を決して、後ろから律君に抱き着いた。




「ご飯美味しかったよ。ありがとね。これはお礼じゃないけど…律君、本当にありがとう」




そう言って、律君の背中に頭をポンッとつけた。






そうして歩いて家まで送ってもらい、家の近くで律君とはバイバイした。




家に帰り部屋に戻り、コートを脱いでかけていると、部屋がノックされた。


すると外から「お母さんだけどいいー?」と声がかけられたので、ドアを開けた。




「少し入ってもいい?」


「うん、どうしたの?」


「え、そりゃ今日どうだったか聞きたくて!」




と言いながらお母さんは机の椅子に座った。


私はベットに腰かけて、




「すごく美味しかった」


「なに作ってくれたの?」


「フライドチキンとシチューかな。後はサラダとかパンとか」


「あら! フライドチキンも手作り?」


「うん、家に着いてすぐ揚げてた」


「えー本格的! どうだった?」


「本当に美味しかったよ? お店で出せるぐらい」


「いいなぁ! お母さんも食べたいわー!」


「き、機会があったらね……」


「それでそれで?」


「中学の時のアルバム見せてもらったりってだけだよ?」


「あらー! 誠実な感じじゃない!」


「うん、21時だからご両親が心配するだろうからって送ってくれた」


「なーんていい人なの!」


「うん、私にはもったいないぐらい…」


「でもなんだか美緒が楽しかったみたいでよかったわ! お風呂入っちゃいなさいね!」




そう言うとお母さんは部屋から出ていった。


この部屋で、こんなに長い時間お母さんと喋ったのは初めてかもしれない…。



そして、まだなんだかふわふわした感じがする。


まるで私が小説のヒロインのような恋をしている事に実感がわかない。


あの場所で本を読んでいてよかった…。


律君に見つけてもらえて本当によかった。



私はそんなことを思いながら眠った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 次回も楽しみです!
[一言] もう、なんか、めっちゃいいですね… このまま幸せ街道突っ走って欲しい…
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