間宮と雪那
「雪那さん。何の用ですか?」
「もう用は済んだ」
「回れ右をしないで。用を済ませてくださいよ」
「私を倒す以外の方法で『山組』の隊長を決めてくれ」
「白水と斗志の了解を得ましたか?」
「斗志はこれからだ」
「そうですか。俺は二人の意向に従いますから」
「そうか。任せた」
「任されましたけど。まだ俺に言う事があるんじゃないですか?」
「………『山組』隊長解任を事前に報告しなかった事は、隊長として不適格だった」
「まあ、あんたに限れば、事後報告しただけでも隊長として合格でしたよ」
「私は隊長の器ではなかった」
「そうですね。誰も育てませんでしたし。優秀な部下たちに感謝してください。あんたの背中を見て、一つくらいは各々勝手に学んでましたから」
「そうか」
「でもまあ。あんたにとって俺たちはどーでも良い存在だと思ってたんですけど、『癸』に入ると教えてくれるくらいには目に入ってたって分かって少々感激です。で。俺を引き抜きますか?」
「いや、白水と斗志を支えてほしい」
「あいつらを何歳児だと思ってんですか?」
「何歳だろうが支えは必要だろう」
「否定はしませんが。俺を引き抜かないで誰を傍に置くつもりですか?まさか、武兵君と紗綾ちゃんじゃないでしょうに」
「あの二人を入れるつもりはない。断じて」
「ではお独りで対処するつもりですか?」
「いや。一人。おまえも知っている人間に入ってもらう。先達には了解ももらっている」
「そーですか。一人。俺の優秀な脳裏を過ったやつなら、面倒この上ないですけどね」
「恐らくそいつだろうな」
「………念押ししておきたいですが、止めときます」
「ああ」
「斗志は自宅に居るはずです」
「ああ」
「雪那さん。言ったんですけど。もう一度だけ。本気で闘ってくれてありがとうございました。本当に嬉しかったし、楽しかった。俺は一度だけで十分ですけど。白水と斗志は何度も挑みますよ」
「ああ。私も。感謝する。随分と苦労をかけた」
「苦労はこれからも。でしょう」
「ああ。間宮。これからもよろしく頼む」
「はいはい。お任せあれ」