雪那と白水
「隊長」
「もうあなたの隊長ではない」
「あなたって。隊長じゃないって」
「熒様の了承も得た。私は『癸』部隊に直属となった」
「私はっ。私たちは隊長に勝てていません。まだ。私が。間宮が。斗志が。三人の誰かが勝つまでは隊長は『山組』の隊長で居てもらわないと困ります。勝った者が隊長になると決めたんです。『山組』の総意です」
「悪いが、隊長を決める方法を変えてもらいたい」
「もう。私たちと闘うつもりはないという事ですか?もう、私たちとは会わないつもりですか!?」
「いや。何時でも挑んできて良い。変更を願ったのは、何時でも負けないからだ」
「なんですか。まったくその自信はどこから………家は変わらないままですか?」
「ああ」
「家に帰ってきますか?」
「ああ」
「隊長」
「せめて元を付けてほしい」
「たいちょう」
「『癸』でも下っ端も下っ端だ。その呼び名は相応しくない」
「隊長が隊長と呼ばれるのを嫌がっているのは知っていますが、私たちの中では隊長は永久的に隊長のままなのであしからず」
「負け宣言か?」
「まさか。勝った暁には呼び捨てにしますよ。ただ、持久戦になると覚悟しましたので。隊長を決める方法は変えます。間宮と斗志が了承すれば。ですが」
「分かった。話を付けてくる」
「………どうして、闘った時、負けなかったんですか?隊長呼びから解放されるのに」
「負けたくなかった。それだけだ」
「隊長」
「………何だ?」
「『癸』に入るくらい、犯罪者が憎いですか?」