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1皇子

第7章

 白銀の世界が広がる中、思いっきり、サンは犬と一緒に雪で遊んでいる。


 夢が叶った瞬間でもある。この世界に生まれて来て、初めての大雪だった。


 「お父さん、こっち、こっちに大きいの作って! 丸い大きな雪だるま」


 サンは、初めての大雪に大はしゃぎで、外で遊んでいた。その時、サブスネとキャンベラルの一家全員がこのバサン領のダル家の屋敷に集まってきた。


 この屋敷には塀が無く、すべてのオープンスペースで、近くと言えば近くで、距離があると言えばあるような所に2家族の屋敷が用意されていた。


 (なんて周到なんだ。ダクリック! )


 「おはよう、サン」

 「おはよう、サブスネ」


 二人はこんな所で会う事になるとは昨日の朝の挨拶の時には想像もしていなかった。


 『ね! 』と、互いの顔を見合わせ微笑んだ。

 「お!! サンはやっぱり子供なんだな・・ほっぺが真っ赤で、鼻水が出ているぞ! 」と、意地悪そうにキャンベラルが話す。


 「両親と、妹のシルベラルで、10歳になる。君たちよりお姉さん・・・だが、よろしく頼むね」

 「初めまして、サンです」

 「初めまして、サブスネです」


 サンのお父さんのキアルが、急いで屋敷内に案内する。


 「皆さん、こちらです。朝食の用意も出来ていますので、よろしかったら、お食事をなさって下さい」とマリが日差しがたっぷり入る大きなサロンに案内する。


 サンはこの屋敷のいい所は、この大きなサロンと犬がいる所だと思っていた。


 サンは、お母さんに、

 「私、グスグスと散歩に出かけてくる」と話すと、ダクリックが、


 「お前にも関係する事だから、ここに居ていい。王都の屋敷とバサン領の屋敷では違う。人数も限られているので、サンにも勉強以外に仕事をしてもらう」


 「犬の散歩とか?」

 「それは、お前がしたいことだろう! 」


 「皆さん、私を信じて下さって、ありがとうございます。これからの予定をお話しいたします」


 「王都はこれから3ケ月の間、雪に閉ざされるでしょう。もともと、大雪の降らない都市でしたので、王都での生活は大変なものになると予想されます。当然の事ながら、学校も閉鎖になりますので、半年後に戻っても学習面での遅れは心配ないと推測されます」


 「王都は大丈夫でしょうか・・・?」

 「エリザさんは御父上に半年程、王都を離れる事は伝えましたか?」

 「・・・はい、伝えました」


 「ええ、それで良かったです。国王もきっと悟でしょう。私が半年も離れる事を、BM男爵にお聞きなされば、きっと、事の重大さを把握して、国民を助けるはずです」


 「3ケ月後は温かくなって、王都も回復するのではないでしょうか?」と賢いエリザは質問する。

 「ええ、しかし、病が蔓延します。その回復にもう3ケ月がかかります」

 「そんな・・・・」


 「だから、お父様が・・・・」とサブスネが言いかける。


 「ええ、その為に、クリスタル博士のお力が必要でした。あのまま王都で雪の中に埋もれてしまうには、惜しいと思いました。それと、もう一人博士にお力をお借りしたい人物もすでに、この領土にいらしています」


 ベル伯爵は質問する。

 「私にも何かできる事はないでしょうか?このまま半年も王都の心配をするだけで終わるのは心苦しいです」


 「勿論、頼みたい事は山のようにあります。この領土には沢山の木材、石炭、油、食糧、布等を1年ほど前から蓄えてあります。国王は私がここに居る事は、しばらくは気づかないと思いますが、全国の領土に王都への支援を要請するはずです。それを見極めて、必要に応じて王都に運び、売って行きます」


 「売るのですか?領主として?」


 「はい、売ります。売れる品物は売って、お金に換えます」


 「こんな非常事態に・・・・お金を取るなんて・・・」


 その時、エリザはベル伯爵の頬を思いっきり叩く、そのあまりの力に伯爵はよろめき、キャンベラルが支える。


 「母上、なにも父上を叩かなくても・・・話をして下さい」

 「ここまで、ダクリックさんが話して、どうしてあなた達はわからないの?バカなの?」


 「---わからない・・。ねぇ、父上」

 「儂に振るな! 」

 「キーーーーー!! 」


 「きっと、王都が雪で覆われて、国王は支援を要求する。でも、他の領土でも、色々な物が必要になるのは目に見えている。王都の貴族だけが助かればいいの?領地の領民は?あなたの領地は、今、どうなっているか気にならないの?誰があの地を治めているの?」


 サンは思う、エリザはきっと、心が温かい人で、本当に頭が良くて、腕っぷしも一流だ。


 「わたしは、王都に帰ってからずっと考えていた。どうして、貴族は働かないで暮らせるのだろう?父上は戦場での活躍を認められて、準男爵という称号を賜り、その後も、軍部の仕事を率先して行っていた。災害の時には、兵士を引き連れて救援活動にも参加して、それでまた男爵の位を賜った。でも、領主である貴族たちは毎日、お茶やお酒、ダンスに噂話で贅沢して働かない。誰も、おかしいって思わないの?どうして、どうしてって・・・」


 「・・・だから、すでに、用意万端なこの領地は、支援をする代わりに、商品を売る。そうすれば、他の領土もだんだん売る事を学んでいく。雪の状態が長く続けば、領土に戻る貴族も増えるはずで、疑心暗鬼になっている貴族たちはきっと、ダクリックさんを見習って、領土にお金を運んでくる。そのお金は領土を潤い、隣の領土と協力するかも知れいない。もしかしたら領民たちと知恵を出し合い、お金儲けを考えるかも・・、それで、経済がまわり、結局は王都を助ける。そうですよね。ダクリックさん?」


 「ええ、大体はその通りです。王都には、有り余るお金があります。それをすべて貴族が抱えていて、国民には反映されていません。そうでしょう?クロムコン皇太子」


 その場のすべての人達は口を開けて、クロムコン皇太子の方を一斉に見た。


 1皇子は、昔も今も王位継承順位1位のまま存在していた。それは、現国王が未婚で、皇子が生まれていないので、当然と言えば当然だった。


 しかし・・・この小さい領土で暮らしているとは誰も思っていなかった。


 「この領地を手に入れる為に、皇太子に力添えを頂き、ベル領の方でも皇太子によって、沢山の物資が蓄えられています。だから、ベル家の皆さんも安心して下さい」


 ベル伯爵とエリザは床に座り込み、涙をながして、皇太子に感謝した。


 「こんにちは、ダクリックがお友達を連れて来ると聞いて意外でしたが、今のエリザさんの話を聞いて、納得できました。私の事は昔のまま1皇子と読んで下さい。今回のこの作戦が成功する為には、皆さんの協力が必要です」


 「それから・・国王に、ベル伯爵が王室ご用達のワインを横流ししていると、密告したのは私です。すいません、国王も、ちっとも国王の意志をくみ取らないベル伯爵に、業を煮やしていたことを知っていましたので、濡れ衣を着せてもらいました。本当の犯人は国王もご存じですので、爵位は戻ると思います。その時にまだ爵位が存在していればですが・・・」


 「あわ、あわ、あわ、あわ・・・・」と言いながら、ベル侯爵は気絶して行った。

 「あなた! 」

 「父上!! 」

 「お父様! 」


 その場のクリスタル医師が駆け付け、少し、休めば大丈夫と言ったので、キアルとマリは急いで屋敷内の客間に案内した。


 その場に残ったクリスタル医師に、ダクリックは別室で1皇子と話すことを進めた。


 クリスタル医師は震えながら、1皇子と一緒に部屋を出た。


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