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友達とテスト

第4章

 この世界に来て、初めて車に乗る。


 やはり、車って便利に思える。特に今日の様な雨の日は、きっと両親は安心して送り出すことが出来る。


 心の中では、イヤイヤだと自分に言い、この快適空間を楽しんでいる。


 サンのそんな様子をバカにしたように鼻で笑っているダクリック!! しかし、今日は学校での話題はフード無しのダクリックだと思うと、その嫌味っぽい笑いも、可愛く思える。


 学校に着いた時には雨が止んでいて、残念ながら傘は要らなかった。


 傘があれば、ダクリックとサンの顔を、隠すことが出来ただろうに、ダクリックはフードが無いのに、堂々と校門をくぐり、その後ろを小さな召使がお供している登校風景。


 誰もが知っている、ダル家の車、その車から降りればダクリックとわかる。周りが騒めき立つ。

 「素敵~~~本当にあのダクリックなの?」

 「スッゴイ! イケメン!なんなの反則過ぎる」

 「あのフード、誰かに取られたらしいよ・・」

 「何?本当?でも、初めて顔を見た気がする。頭が最高に良くて、イケメン。ないわ~~~」

 「ねぇ、後ろの小っちゃいの何?」


 「何?」って、人間ですけど・・前世では本当に学校に行けていなかった事を痛感する。


 登校の時って、どうしたらいいの?いつもは保健室に向かえばOKだったけど、こんなに大騒ぎの中、どうしたらいいのだろう・・・?体が震えて来た。


 「オイ! 授業に遅れるなよ!」

 「はい、」と、言って、走って自分の低学年棟の授業教室に向かった。ドキドキが止まらない。


 教室に入って、目立たない席を選び、教師が来るのを待った。(平常心、平常心)

 「隣、いい?」


 驚いて、顔を見ると、可愛らしい女の子が隣の席に座ってくれた。(有難い。)


 「私、サブスネって、言います。昨日から学校に通っています。よろしくね」

 「私もです。こちらこそよろしくお願いします。サンです」


 「サン、すっごい走ってたね。私も授業が始まるのかと思ってサンを追って来たから・・」

 「ちょっと、急いだだけで・・・クタクタだけど、サンは平気そうだね」

 「ええ、走れる時は、思いっきり走りたい」

 「??????」


 それから、サブスネとは同じ授業を取っている事が多く、お昼も一緒に食べた。唯一、違うのは放課後、中学年棟にサンが向う事だけだった。


 きっと、本来なら、放課後はお菓子でも食べて、おしゃべりして、互いの両親を紹介したりして、手を振り別れるのだろうけど、サンはため息をつきながら、中学年等にトボトボと移動して行った。


 その教室に入ると空気は一変する。周りの人達は他人を気にしていない。全員が何が起こっても前を向いているような、張り詰めた空気が漂っていた。


 (これが特Aの授業なんだ・・)


 サンは音を立てないようにダクリックの席の隣にちょこんと座った。


 ダクリックを中心に空席が広がっていて、少し笑ったが、声に出したりはしていない。


 授業は、高校の数Aか数Bの様な感じの授業で、なんとなくわかった。その後は生物?科学?その辺は不明だが、きっと、ダクリックの年になればわかるのだろうと考えていた。


 暇にしているのも何なので、ノートを取って、一応、参加していますアピールをしていた。


 ダクリックが立ち上がると、サンも立ち上がり、そして、やっとすべての授業を終えて、ガルモの待つ車に向かった。乗車1分で眠りにつき、車からはお父さんが引き取ってくれて、そのまま夕食まで眠った。


 そんな毎日を送って、1ケ月が過ぎた頃に驚愕の事実が発表された。選択授業を取った者は当然の様にテストがあった。


 低学年のテストはどうにかなると思うが、特Aのテストは0点で良いのだろうか?


 「お前、テストが悪いと、次からは教室には入れないシステムになっているからな、俺の授業が終わるまで図書館で待つことになる。いいな! 」


 「・・・・・はい、」

 (それなら、それで、いいんじゃないか?イヤイヤ、そっちの方が好都合だった。)


 「---マリ達は心配するのでは?いいのか?」


 (こいつ!! 一番、痛い所を突いて来る。そうだ・・・きっと、心配して、迎えに来てくれる。どうしよう・・早く、両親の元に戻りたいのも事実、お仕事の邪魔をしたくないのも本心。)


 「お前、将来、成りたい職業とかあるのか?」

 「はい、薬師になりたいです」


 フッと、笑って、ダクリックはサンを見ている。

 「理系の2教科はきっと役に立つ」

 「・・・・・・」


 それでも、やはり、数学以外は全滅だった。1教科だけでも残った事は、この学校の奇跡らしいが、いつもダクリックの隣に座っていたので、不思議がられなかった。しかし、それも、また、不思議だ。


 数学は前世の記憶が役だった。文系のすべて、生物、化学系は1からの勉強だとわかった事は、大きな収穫になった。


 当然の事ながら、低学年の成績は抜群に良かった。


 両親は喜び、何故かダクリックにお礼を言っていた。そこは納得できなかったが、サンの学校生活は順調に始まった。


 教室から出て、サブスネと一緒に食堂に向かうと、珍しくダクリックが、友達らしき人と一緒にいた。

 (友達がいたんだ・・・珍しい。)その友達はサンとサブスネに手を振り招く。

 「こっち、こっち!」


 上級生を無視するのはどの世界でも御法度で、仕方がないからトボトボと近くに向かう。

 「こんにちは」

 「こんにちは、サンです。友達のサブスネです」


 「僕は、ダクリックの友達で、キャンベラルです。よろしくね。噂には聞いていたけど本当に小さいね」


 ダクリックは紹介したくなさそうに、紹介した。

 「ウウン(咳)没落貴族だから、学校に知り合いが欲しいんだ」

 「??????」


 (え?もしかして・・新聞に載っていたベル家のご子息・・?)その時、サブスネが、

 「ベル家の?」


 「おっ!流石、こんな小さなお嬢さんにまで、知れ渡っているとは、王都は今、ベル家の話題で持ち切りだからな・・・」


 「そうです。父親が国王の前で断罪されて、領地没収にあったベル家です」


 話の内容が濃そうなので、4人はテラス風の学食でお昼を食べる事になった。


 「お前の家、良く出来の悪い息子をこんな私立の学校に通わせるお金が残っていたな?」


 「ああ、母親のブティック商会が残った、今ではその店の上に、家族4人だけで暮らしている」


 「どうして?王都に残って、この学校を選んだんだ?公立の学校ならもっと楽に生活できるだろう?」


 「ああ、そうだが、今後の話し合いが持たれた時、自分がこの学校に通うのが一番いいと言う結論になったんだ」


 「??????」一同、本当に理解できなかった。


 ベル家伯爵は国王主催の夜会で、突然の断罪、意味がわからないまま帰宅。


 その後の話し合いで、多額の預金が、母親にあることが発覚して、領地は素直に手放すことになった。


 ベル家の柱は母親だ。


 伯爵は爵位を継いだだけで、生きて行けるボンボン領主。しかし、好きななった女性は準男爵の娘のエリザ。


 彼女を娶る時だけは意志を貫き、自分の爵位を弟に譲る程に彼女を愛している。


 その後、結婚して、王都から離れた領地の別荘で、伯爵とエリザは新婚生活を始め、キャンベラルと妹を授かった。使用人も数人しかいない質素な生活だったが、ベル伯爵たちはきっと幸福だったのだろう。


 しかし、伯爵家を継いだ弟が病で亡くなり、子供は女の子だけだったので、また、王都に戻り、面倒な貴族生活が始まった。そして、再びの没落。


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