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朝8時、正門

第3章

 その部屋は本当に怪しい雰囲気の部屋だったが、お母さんの部屋に育児室があって少しだけ和やかな雰囲気が漂っているようにも思えた。


 お母さんの仕事は、何と!! 相談に来た人の聞き取りだった。お母さんは人当たりが良い感じの人で、相談者はきっと話しやすいのだろう・・・次から次へとなんでもお母さんに話す。


 サンはこれは高給を貰ってもいい職業だと思った。お母さんも読み書きだ出来る。だから、きっと、ダクリックはお母さんを指名したのだ。


 優しいお母さんは相談者にお茶を出したりして、たまには自分が作って来たお菓子や軽食も出して、相談者の本音を聞き出す。側で観察していると、かなりのやり手に見えて仕方がない。


 そして、この育児室に通い始めてからは、いい事ばかりだ。

 ①暇ではない。

 ②お菓子や玩具に事欠かない。

 ③興味深々の相談内容が多い。

 ④プレゼントやチップを貰える。

 ⑤お母さんと一緒。

 (この順位もどうかと思うが、とにかく、部屋で過ごすよりも格段といい)


 たまに、ダクリックが来て、自分をゴミを見る様な目で見るが、最近は気にならなくなった。なんと、毎日、サンの為に新聞を手渡してくれるからだった。(ナイス!ダクリック!)


 ダクリックは、お母さんの聞き取りしたカルテから選んで(相談内容?高額料金?)自分の都合がいい時に相手に連絡を入れて、占っている。


 午前中に、この仕事は終わることが多く、お昼休みが終わると、通常通り、掃除や厨房の仕事に戻り、夕方には家族の部屋に戻れる。


 他の使用人からは、妬まれる事も無い。他の使用人たちは、ダクリックには余り近づきたくないのが本音だ。


 その気持ちは理解できた。


 そんな毎日を過ごし、のんびりと時間は過ぎて、サンも6歳になった。育児室も卒業だ。


 「サン、明日からは学校に通うのよ。わかる?その学校はとってもいい学校で、お父さんとお母さんはどうしてもサンをその学校に通わせたくて、頑張って来たの。通う事が出来て本当に良かった」


 「有難う。お父さん、お母さん、これから一生懸命に勉強して、必ず、二人に楽させるからね。待っててね」


 「何、言っているの! そんな事いいの、毎日、楽しく学校に行ってくれればいいのよ」

「坊ちゃんも同じ学校にいらっしゃるから、何かあった場合は坊ちゃんを頼ってね」

(え~~~~~!!! あんなに怪しい風貌なのに学生だったんだ・・・。ダクリックはいつも長髪バサバサで、黒いマントに、フードが特徴だった。それが占い師の正装?と思えた。)


サン6歳、ダクリック12歳、同じ一貫校に通う。


本来なら、ダクリックは貴族専用の学校に通っているはずだったが、勿論、貴族の称号は取り消され、この実力主義の一貫校トップに君臨していた。


実力主義ならどうにかなるかも知れない。前世では学校には余り通えなかったが、この世界に来て、情報量だけは同世代の子供よりも多いと自負している。


一生懸命に勉強して、薬師になることが目標だ。それは前世で成りたい職業1位だった。


病院にいる時間が長く、医者と看護婦はないな~~と、いつも思っていた。しかし、薬剤師さんはいつも優しく説明してくて、真面目で丁寧、憧れの職業だった。今度こそ、薬師の仕事を得る為に、一生懸命に勉強しようと鼻を膨らませていた。


でも、まだ、6歳、先ずは友達を作ろうと考えて、校舎の周りを少し歩いてみた。基本、クラスとかは存在していない。


すべてに於いて、選択授業・・・(大学か?)最初はわからないので、お母さんとお父さんが授業を選んでくれていた。


そして、校舎の裏でよくある光景・・・。


「ダクリック!! お前! いつになったら、そのフード取るんだよ!! 早く、自慢の黒髪をお披露目しろよ! 全国1位の秀才さん! 」


 ダクリックが、他の男子に揶揄われている。いつも、すべての人を見下しているようなダクリックが・・どうして?黒髪はダクリックの弱点なの?


 その中の一人が本当にダクリックのフードを取ろうとして、手を伸ばした。その瞬間、合気道のような身のこなしでダクリックは応戦して、その生徒は投げ出された。

(お見事! 1本! )


 その後はお決まりで、揶揄していた人たちは急いで逃げて行った。やっかみだろう・・・

 その場を立ち去ろうとしていると、「おい!」と言って呼び止められた。


 仕方がないので、トボトボ歩き、近づいた。


 「お前・・・」とダクリックが話し始める前に、サンは、

 「そのフードのせいだと思います。せっかく、イケメンなのにもったい無い。黒髪のどこがいけないの?綺麗な髪色です。私は黒髪が好きだけど・・・隠す程、嫌いですか?」


 「それに、きっと、やっかみです。あの人達、家で、きっといい成績を望まれているのに、いつも1番のあなたが憎くいに違いない。実力主義の学校に入った宿命でしょう。では、さようなら! 」


 事の重大だに途中で気づき、お辞儀をして逃げて行った。その後、ダクリックは久しぶりに心から笑った。


 (あいつ・・おかしな奴だ。)


 サンは逃げる場所はどこにあるかと考えながら走っていた。なんて、バカな事をしたのだろう・・・両親はこの学校に自分を入れる為に一生懸命に働いてくれているのに、


 「バカ、バカ、バカ!! 衣食住の元を怒らせて、どうしよう・・・・入学1日目で退学だ!! 」


 次の朝、家令のガルモがノックする。

 (終わった。終わったナ・・・お父さん、お母さん、ごめんなさい。)


 サンはもうすぐ泣き出す。


 「ダクリック様がサンも一緒に登校することを許可されましたので、今日からは車での送り迎えになります。よろしいでしょうか?その方があなた達の仕事もはかどると思います」


 「本当によろしいのでしょうか?主人は雨でも自転車で送って行くつもりでしたが、本当に助かります。ありがとうございます。後で坊ちゃんにも、お礼を申し上げます」


 「では、朝8時に正門での出発です」


 マリは家令がドアを閉めても頭を下げて、お礼を言っていた。


 「サン、これから毎日、坊ちゃんがご一緒して下さる。キチンとお礼を言いましょうね。今日は雨だったから、どうしようって、お父さんと相談していた所だった、有難いわ~~」


 (イヤ、お母さん、ここは断りたい。断ろうよ。5kmくらい歩きたかった。歩いたこと無いけど・・・)

 「でも・・帰りの時間は違うし・・遠慮した方がいいのでは?」


 「その事だけど、家令が言うにはサンの授業が終わったら、坊ちゃんの授業も受けられるように、選択授業を増やして下さったらしいわ。眠っていてもいいから、ぼっちゃんと一緒に屋敷に戻ってくれたら助かる。また、使用人が減って、給金は増えたけど、時間の余裕がなくなったから、でも、これで当分の授業料の心配がなくなる。良かったわね、サン」


 「・・・・・・」


 お母さんの輝いた顔を見て、一緒に登校したくないとは言えなかった。


 朝、8時、黒塗りの高級車で2日目からは登校することになった。庶民の学校なのに・・・


 昨日と違う所は、ダクリックは前髪を整え、長い髪を結い、・・・・フードを被っていなかった。


 (ダクリック!! 怪しい坊ちゃん!どうした??)



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