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炎で暁を満たす者-2

稲妻(Net made)(of)(lightning) 小鳥の(caged)(bird) ここ(Fill)(this)罠の(place with)(a trap)


 ルーカが再び呪文を唱えるも、フィールが前脚で地面を叩くと床を走っている稲妻たちはたちまち消えてしまう。


「調子に乗るなよ出来損ないの赤頭(ranga)


 顔を怒りで歪ませたルーカが一角獣ユニコーンの背に跨ってこちらへ突進してくる。


雷光(Lightning)(thunder)……」


 しかし、一角獣ユニコーンとルーカによる渾身の一撃は不発に終わった。

 片手を伸ばして撫でるような動作をしたフィールの手によってルーカも一角獣ユニコーンも広間の壁に勢いよく叩きつけられたからだ。

 一角獣ユニコーンが、その場で小指の先ほどの大きさの蒼い宝石になって沈黙したのを確認して俺はルーカに近付いていく。


「生きて……るよな」


 目の下に濃い隈を作っているルーカは険しい顔をしたまま意識を失っていた。

 命の無事を確認してホッとしてる俺を、後ろから抱きしめるように腕を絡めてきたフィールがのぞき込んでくる。


「止めを刺しておくか?」


「いや、やめとく」


 何も言わないまま、俺の身体はフィールから出る赤い光の粒に包まれた。

 さっきまであった身体の怠さや吐き気はいつの間にか消えている。

 手先がじんわりと熱くなる感覚になりながらゆっくりと目を閉じると、身体が浮遊感に包まれる。


 風に頬を撫でられて目を開くと、どこかの高い塔の上のようで足元に街が広がっていた。

 隣に立って風に髪をなびかせて心地よさそうに目を細めているフィールと共に、夕焼けに染められた街を見下ろす。


「さて、人間クフェア。お前は私に何を願う?」


 獰猛なヤマネコを思わせる大きな金色のツリ目でフィールは俺の顔をしっかりと見つめてくる。

 初めて出会ったときのように、彼女は俺の頬を両手で触れると、薄く形の良い唇の両端を持ち上げて笑った。


「……世界の終わり」


 そんなことを願ったなと少し遠いことのように思う。

 退屈で、つまらなくて、生きているだけでイライラするこんな世界ならぶっ壊してしまおう。そう思った。

 でも、今は少し違う。


「わかった。特等席で世界の破滅を見せてやろう。さぁ、残りの魔力を探しに行くぞ」


 両手を俺の頬から離して、手を取って歩こうとするフィールを慌てて呼び止める。

 フィールの行動力では、このままトントン拍子で分割して封じられたという魔力を回収して本当に世界を壊しかねない。


「ああ、ちがうちがう。世界をぶっ壊して終わらせようってわけじゃない」


 言葉足らずだったことを告げると、フィールは獅子の身体の部分で数回足踏みをしてからこちらへ向き直った。


「なんだ?言ってみろ」


「この世界の終わりが来るまで、お前と一緒にいたい」


 思い切り首を傾げて頭に?マークが浮かんできそうな表情を浮かべているフィールを見て、俺は言葉を付け加える。


「退屈が嫌いなんだ。お前といたら、退屈とは疎遠になれそうだろ?」


「あ、ああ!なるほどな。そういうことか。任せておけ。世界が例え終わろうと、私はお前と共に有ろう。盟友としてな」


 キョトンとしていたフィールは、納得がいったと言わんばかりにポンと手を打つと俺の身体を引き寄せてそのまま抱擁をしてきた。

 人間の姿のときは少し背が低かったのでなんとも思わなかった抱擁も、獅子の身体分体高が上がってちょうど胸が顔の位置に来る。

 彼女の片手で持ち上げてもあふれてしまうであろう豊かな胸のやわらさかがダイレクトに伝わってきて顔が赤くなってしまう。


「神代の頃より在る私の盟友なんだ。胸を張れ」


 夕焼けに辺りが照らされているお陰で、顔の赤さに気が付かれなかったのかパッといきなり手を話したフィールは俺のことを抱き上げて背中に乗せると四枚の翼を大きく広げて空へ駆け出した。

 フィールの腰に手を回し、振り落とされないようにしっかりと掴まる。


「クフェアの髪色をした良い空だ」


「……ああ。あんたがあまりにもこの色を褒めるから、この髪も悪くない気がしてきたよ」


 俺の髪色みたいだと言った空は本当に綺麗で、大嫌いだったこの髪も少しだけ好きになれそうな気がした。

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