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開幕!文化祭

 学校のあちこちで、人を呼び込む掛け声や音楽、笑い声、時折悲鳴も聞こえてくる。

 廊下はカラフルな看板や風船、色の塗られた段ボールで装飾されていて、人がぎっしり詰まっている。

 仮装をした生徒やカップル、男子グループ、親子、様々な人がクラスの出し物を楽しんでいる。

 そんな中、俺は一人、自分の教室の前で受付係として座らされていた。

 よこなな曰く、

「日向君はお化け役っていうより、受付って感じがする!」

だそうだ。

 文化祭が始まって、かれこれ3時間は過ぎているが、うちのクラスはいまだに人が並んでいる。

「お化け屋敷って、回転率悪いんだよな~」

 板谷から差し入れでもらったパックのお茶をチューチューと吸いながら、パンフレットを眺めていた。

 受付といっても、前の組が出てくるのを確認し、次の組を入れるだけだから、ほとんどすることはない。

「まあ、特に見たいものもないし、座れるだけ楽か」

 教室の中からたまに悲鳴が聞こえてくる。

 窓やドアの隙間はきっちり暗幕でふさがれていて、中は真っ暗だ。

「こんだけ暗かったら、衣装つくんなくても、なんか布をかぶっとけばよかったんじゃねーのか?」

 ブツブツと独り言を言っていると、誰かが俺の肩をパンチした。

「何言ってんだ一人で」

 ぷっ、と笑いながら木部がやってきた。

「そろそろ交代だぞ」

「ああ、でも俺特にやることないし、回ってきていいぞ」

「何さびしいこといってんだよ、少しくらい見て来いよ」

「いいよ別に、一人で回るのもなんかはずいし」

 これが俺の本心かもしれない。

 校内中で友達や彼氏彼女と回っている中、男一人で文化祭を回るとか地獄過ぎる。

「ふーん、後悔しても知らねーぞ」

「いまさら後悔なんてしねーよ」

 木部が俺の隣にいすを置いて座り、机の上にあるパンフレットに目をやる。

「あ! そういえばお前の妹んとこ、どっちもかわ・・、 よかったぞ!」

 一瞬可愛いといいかけて、言い直したのは俺が怒り出すと思ったからだろう。

「やばい! 今日千代の仕事入ってたから完全に忘れてた!」

「おいおい、兄が妹の出し物忘れてどうすんだよ」

「たしかコスプレするとか何とか言ってたな・・やばい・・・行きたい」

「だから俺が変わるって」

「ああ!助かる!」

 俺はすぐに飛び出して、景のクラスに行こうとした。が、

「まてよ、一人でコスプレを見に行くのってどうなんだ・・・いやでも俺の妹だし・・・さすがにきもいか?・・・俺が一人で行くことで景がクラスの人にからかわれたらどうしよう・・・」

 一人で廊下を行ったり来たりする俺を、木部は引きつった表情で見ている。

「じゃあ、私と行く?」

 混乱する俺にそんな天使のような声をかけてくれたのは、板谷だった。

「え!いいのか?!」

「うん! 私も景ちゃんのコス見たいし」

 ありがとう板谷さん。この恩は一生忘れません。

 うれしくて板谷をずっと見つめていると、

「ほら、早くいくよ!」

 と、恥ずかしそうに言い、俺たちは景のクラスに向かった。


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