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文化祭準備③

 日曜日の朝。 

 晴れた空から、気持ちの良い朝日が差し込む。

 これから優雅にコーヒーとパンでも食べながら、テレビを見て、静かな休日を過ごす。

 はずだった。

 こいつらがいなければ。

 

 朝9時。

 俺は平日は6時には起きて、その日の仕事を確認するのだが、オフの日は11時ごろまで寝ている。

 日々の激務による疲れを癒やすためにも、休日の過ごし方はとても重要だ。

 しかし、今日は九時に起きた。

 いや、起こされた。

 うちの家は一階と二階があり、二階には部屋が2つあるので、景と千代が使っている。

 一階はリビング、ダイニング、キッチンが一部屋にあり、結構な広さだ。

 そして、片方の壁がすべてガラス張りな為、街を見下ろせるようになっている。

 俺には部屋がないから、部屋の隅にベッドを置いて、そこで寝ている。

 朝早くからインターホンが何度もなっていたが、無視して寝ていると、千代が出てくれた。

「あ!先輩たち、どうぞ上がってください」

「ありがとー」

 朝からよこななの声が聞こえるのは寝ぼけているからだと思っていた。

 ドンドンと何人もの足音が聞こえる。

「お兄ちゃん、先輩たちきたよ」

「うーーん、」

「何寝ぼけてんの? 早く起きて!」

 千代に無理やり布団を剥がされ丸まっていると、誰かが俺の横にいる気配がした。

「京介、起きろ」

 唐突の低音ボイスに驚き振り向くと、そこには木村と尾浅がベットに肘をついて、俺の方を向いていた。

「お前ら、来るのはえーよ」

「お前、起きるのおせーよ」

 奥で千代が皆のお茶を出しているのを見て、起きる決心をした。

「てか、何人来てんだよ」

「6人だけど?」

 皮肉のつもりで言ったんだが。

 俺はよっこいしょと腰を上げ、洗面所に向かった。

「千代ちゃんごめんねー、休みの日にお邪魔しちゃって」

「いえいえ、特に予定もありませんでしたし、先輩たち最後の文化祭に協力しない手はありません!」

「かわいい」

「うちの妹に手出したら容赦しないぞ」

 俺は顔を拭きながら、来ていた男子達に釘を刺しといた。

「じゃあ、準備始めよっか!」

 よこななはそう言うと、自分の身長くらいある紙袋の中から、衣装の材料や装飾を取り出した。

 俺もコーヒーを片手に、みんなの輪に入って作業を始めた。

 起きてきた景も巻き込まれて、作業を手伝うことになった。

 困った表情で俺の方を見つめてくるが、愛想笑いを返しておいた。


 しばらく経って、俺のスマホに着信が入った。

「悪い、ちょっと抜ける」

「はいはーい」

 俺は廊下に出た。

「ねえ、景ちゃん。私聞きたいことあったんだけど」

 白い布に黒い布を縫い付けながら、板谷が聞いた。

「なんですか?」

 景と板谷は割と仲が良く、何度かうちに来たこともある。

「このマンションもそうだけど、食費とか生活費って、景ちゃんと千代ちゃんが稼いでるんでしょ?」

「はい」

「なのにお兄ちゃんの態度とか腹立ったりしないの? 私だったら、こっちが稼いでるんだから黙ってろ!って言っちゃいそうだけど」

 景は少しの間沈黙し、再び手を動かしながら答えた。

「確かに、うざいしうるさい時もあります。でも、私たちが働けているのって、ほとんど兄のおかげなんです」

「え? そうなの?」

 板谷は縫っている布を見ながら、声だけ驚いた。

「はい。私たちはもともと、ほかの事務所に入っていたんですけど、そこで結構いやな仕事とか頼まれて、兄さんに相談したら怒り出しちゃって殴り込みに行ったんです」

「相変わらずのシスコンぶりやな~」

 なぜか関西弁でこたえる板谷。

 景は動かしていた手を止めて窓の外を見つめながら続けた。

「それから自分で事務所立ち上げて、私たちのスケジュール管理をしたり、アポ取りに行ったり、会計仕事したり、全部一人でやってるんです」

「へ~、意外といろいろやってるんだね、お兄さん」

「そうなんですよ」

 景と板谷は笑いあいながら再び縫い始めた。

 

 

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