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修羅場の平日

「おはよ~」

「おはようございます」

「あれ、京介は?」

「兄さんは今修羅場だそうです」

「?」

 火曜日の朝。

 今日は平日だが、学校の創立記念日で休みだ。

 しかし、社会にとってそんなものは関係ない。

 俺にとって平日の休みは、日々降りかかる仕事をまとめて終わらせることができる、貴重な時間なのだ。

 だからみんなが休んでいる中、俺は朝からテーブルいっぱいに書類を広げて、パソコンを開き、カフェインで無理やり目を覚まし、鳴り止まない電話に対応しているのだ。

「よー京介、やってんな~」

 にもかかわらず、尾朝、よこなな、板谷、木部はお構いなしにやってくる。

 リビングに入ってくる4人の声を聞き流しながら、パソコン画面に入り込むように作業を続ける。

 はっきり言って、今は結構ピンチだ。

 明日までにホームページの更新をして、イベントの企画書を製作し、会計の月末処理をし、取材依頼のスケジュール調整をして、景の次の仕事を決めて、千代のファンサイトの確認をしなければならない。

「お兄ちゃん、今日は相当忙しいみたい」

 千代が上の部屋から降りてきてみんなに言った。

「へ~、日向君ってほんとに働いてたんだ」

 よこななはコートを脱ぎながら言った。

 テーブルを書類で散らかしている俺を見て、みんなは椅子に荷物を置いて床に座った。

「それで先輩たち、今日は何をしに?」

 千代がみんなにお茶を配りながら言った。

「もちろん、千代ちゃんに会いに!」

 木部がお茶を配る千代を決め顔で見ながら言った。

「あはは、でも私昼から仕事なんです」

 あからさまな愛想笑いをする千代だが、木部はおそらく気づいていない。

「まあ暇だから、京介の家広いし」

 尾朝が言った本音は、忙しい俺の耳にも届いた。

「そうですか、ゆっくりしていってください」

 お茶を配り終えた千代は、テーブルの上に置かれた書類を眺めている。

 しばらく作業を続けていると、再び電話が鳴った。

「もしもし、日向です」

 どうせくだらない仕事の依頼だろう。

「日向君って、ほんとにすごいよね~」

 電話をする俺をみて、よこななが言った。

「すごいってなんだよ」

 尾朝がお茶を飲みながらよこななにツッコんだ。

「だってさ、私たちと同い年であんなに仕事して、こんな立派なマンションに住んでるんだよ?」

「確かにな~」

 みんなはいまさら感心したように頷いた。

「勉強もできるし、正直顔も悪くない。なんで彼女がいないのか不思議だよな」

 木村が床に広げたスナック菓子に手を伸ばす。

「シスコンだからでしょ」

「シスコンだからな」

「確かにな~」

「はい、承知しました。では近々伺います。はい、よろしくお願いします」

 俺は電話を切って、4人を睨んだ。

「お前ら、聞こえてんぞ」

 4人はギクッとし、そろって視線を逸らす。

「全く、お前らうちをなんだと思ってんだ?」

 俺はみんなが座っている輪に入り込み、スナック菓子を口に放り込む。

「日向んちは部室みたいなもんだ。部室は学校内だが自分の部屋みたいに落ち着くし、行けばみんながいる」

「人の家を部室にするな!」

 よこななが隣であははと笑っている。

 俺は木村のお茶をグイっと飲み干した。

「それで、何しに来たんだよ」

 来て早々、自宅のようなくつろぎを見せる皆に俺は質問した。

「部室は、特に用事がなくてもいくだろ!」

 木部が親指を立てて言った。

「うるせえ、それはお前んとこの卓球部だけだ。なんで卓球部の部室にはボードゲームとかカードがいっぱいあるんだよ」

「あれも部活の一環だ。うん、部員との信頼関係を築くための」

 もっともらしいことを言う木部だが、実際卓球部はほとんど部室でゲームをしてる。

「お兄ちゃん、今の電話なんだったの?」

 千代が俺の背中にのしかかりながら聞いてきた。

「ああ、それがさ」

 俺はテーブルに広げた資料の一つをとって、千代に渡す。

「これは、テレビ番組?」

「ああ、夜にやってるバラエティ番組あるだろ。あれに千代と景で出ませんかって」

「ええ!テレビ!?」

 木部が急に大声をあげた。

「なんだようるせえな」

「おれ、千代ちゃんが出るなら絶対見るよ!」

「いやまだ決まったわけじゃ」

「録画もする!」

「いやだから」

「やったな!」

 木部はなぜか興奮している。

「千代、熱狂的なファンができて良かったな」

「そうだね」

 また千代が心のこもっていない愛想笑いをした。



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