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景と千代

 俺の名前は日向京介、現在18歳の高校三年生だ。

「お兄ちゃん、私が買っておいたメロンパン知らない?」

 こいつは俺の妹の日向千代。16歳で俺と同じ高校に通っている。

 そして、今人気急上昇中のモデルでもある。

 ふわふわの金髪ショートカットに、白くきれいな肌をしている。

 兄の俺でも惚れてしまいそうなほどかわいい。

「は~、やっぱり私、朝は苦手だわ」

 あくびをしながら半目で食パンを食べているのはもう一人の妹、日向景である。

 千代とは反対に、長い黒髪をしていて、高校1年生には見えないほど大人びている。

 小さくシュっとした輪郭に、小さな口がパクパクと動いている。

「あれ~、どこに行ったの?私のメロンパン」

「もうメロンパンはあきらめて準備しろー。お前は今日撮影なんだから」

「わかってるよ、でも朝はメロンパン食べないと調子悪いの!」

 メロンパンにそんな効果があるのか?

「現場に行く途中に買えばいだろ。いいから急げ」

「うーん、わかったよ」

 不満そうな顔をしながら隣の部屋に移る。

「兄さんは今日学校に行くの?」

 景が食パンを食べ終え、バナナの皮をむきながら聞いてくる。

「ああ、俺は今日は千代についていくよ」

「そう、私だけ学校に行かせるのね。ふーん」

「景は前回の撮影で二週間も休んだろ?卒業できなくなるぞ」

「・・・・。」

 あれ、反抗するの短過ぎじゃないですか。

「いいわよ、一人で学校いくもの」

 こういうところを見ると、まだまだ子供だなと思う。

「お兄ちゃん、こっちかこっち、どっちがかわいく見える?」

 千代が二着服をもってきて両手で掲げている。

「今日は衣装があるからどっちでも関係ないんじゃないのか?」

「わかってないな~。現場には監督さんとかほかのモデルさんとかもいるでしょ?可愛いほうが媚び売りやすいでしょ」

「お前は相変わらず・・」

 千代は自分の可愛さを知っている。

 自分の価値、役割、観客をすべて知っている。

 しかし周りにはそれを全く気付かせない。

 だからこそ、自分の魅力を最大限引き出し、ここまで人気を勝ち取っている。

「まあこっちかな、うん!」

 自己解決した千代は再び隣の部屋に戻っていった。

「じゃあ私、学校行ってくるわ」

 景はいつの間にか制服を着ている。

「おう、気を付けて行けよ。マスクとメガネは絶対していけよ」

「わかってるわ。じゃあね千代ちゃん、撮影頑張って」

「うーん!お姉ちゃんも授業中寝ないようにね!」

 そんな会話を交わしながら、景は家を出ていった。

「俺らもそろそろ行くぞ~」

「はーい!」

 エレベーターに乗って降りていく。

 

 俺たちは、駅から徒歩数分のタワーマンションに3人で住んでいる。

 親は俺が高校に入学したころに事故で亡くなった。

 当時はあまりにもショックが大きすぎて、無気力になり不登校になったこともあった。

「お兄ちゃん、置いていくよ!」

 今はこんなに可愛い妹が二人もいて、それなりに楽しい暮らしができている。

 もう寂しくないと言ったら嘘になるが、今は幸せだ。

「今行くよ」

 俺はこれからも二人の妹のマネージャーでありながら、親の代わりもできるように頑張ろうと思う。


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