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才能もレベルもスキルも祝福も書かれていないステータスの所為で無能と思われていた俺だがなんとか生きています

掲載日:2020/05/29

ステータスに、何も書かれていない?!

そんな主人公のお話です。@短編その11


@誤字報告39!父母の兄の『おじ』は『伯父』。勉強になりました。

ぼく、すてられました・・・・


ぼくはこうしゃ・・ああ・・かめいはいってはいけないっていわれた・・・


ただの、レオです・・・7さいです・・

きぞくならだれでももっているはずのまりょくがないのです。

すきるというのもないんです・・

れべるも1どころか『くうらん』なんです・・・

というか、ぜんぶ『くうらん』、まっしろなんです・・・


「生きてる価値ないな!!お前みたいな者が我が子だなんて知られたら!!」


そしておとうさ・・・は・・いってしまいました。

きょうからぼくはこのきょうかいでくらすのです・・

でもここも12さいになったらでていかなければいけません・・・

ぼく・・がんばります・・・




と、10年前の俺は可愛いだろう?

そう、俺が10年後のレオだ。

可愛げを全部捨てた、お堅い男だ。あそこも・・これは見た娘のお楽しみという事で。童貞だけど!


まあ調べれば俺の元の家なんぞ、簡単に分かる。

10年放っておかれた恨みを果たすのも一興。まだしないけど。


俺を引き取ってくれたシスターエレンは、何もスキル等を持たない俺を厳しくも優しく育ててくれた。

シスターは頭も良くて、魔法も使えて、凄い人だった。


10歳の誕生日、シスターが俺にくれたのが『パチン』。

薄い鉄板で出来ていて、指で押し付けると『パチン』と音が鳴るおもちゃだ。

俺はそれが嬉しくて、いつでもそれで遊んでいた。


ある日、みんなと遊んでいる時、パチンと鳴らしながら叫んだんだ。


「稲光!!」


そしたら本当にバリバリバリ・・『稲光』の魔術が現れたんだ!

周りにいたみんなもびっくり!!

だって『稲光』は高等魔術。そんなもんいきなり出したら・・ね?


そして改めてシスターは俺のステータスを見てくれたんだ。

なんとシスターはステータスも見れちゃうんだぜ!


レオ Lv

職業

スキル

祝福

才能


「うーーーん・・・書かれてないっておかしいわね・・そうだ。私老眼だったわ」


ハズキグラースをちゃっと掛け、もう一度見る・・・


レオ Lv ∞ 魔力4000/4000

体力 4711/5000

職業 どれでもやれるなんでもできるすきなのをやれがんばれけんとうをいのる

スキル なんでもすきなことをやればいいんじゃないかなどりょくすればいいよ

祝福 きみにさちあれなにかにむかってがんばるきみがすきだよおうえんしている

才能 ありまくりすきこそもののじょうずなりさいのうにおぼれるべからずまけないで


こんな文字がすっごくすっごく小さな字で書かれてたんだって・・・


∞ってなんだよ!!!意味わかんねえなっ!!!


ってことは、7歳のステータスを見た神官・・・老眼だったんかい!!



まあ、なんだ?俺ってば、なんでも出来るらしい。

確かに俺は、ビョンビョン屋根に飛び乗り、隣の屋根に、次の屋根に、さらに・・・飛び移って行くとか。

ドラゴンやガーゴイルやグリフォン・・

とにかくでかいモンスターの背に乗って、爆走することも出来る。

剣も結構出来るし、体術も大人よりも強かった。ついでに家事スキル?も主婦も真っ青!

なので、たまに家政婦の仕事も引き受けていた。結構儲かるのだ!!そういえばアイロンがけも天才的と言われている。クリーニングもたまにバイトしたり、あ!家具を作るのも・・・


「お前、魔法いらなくね?」

「生きるスキルは誰よりあるよ」

「この欲張りさん!」


教会の仲間が呆れて言うが、魔法が出来なかったばかりに、公爵家の嫡男から引き摺り下ろされ、教会に置いて行かれたんだぞ。たかが魔法、魔術と言うなかれ。


「このパチンの音が、トリガーになるのね。このパチンだって、何度も使っていれば壊れる時もくるわ。そうね・・・頭の中で、このパチンの音を思いながら術を使うようにしたらどうかしら」


シスターのアドバイスに倣い、俺は術の稽古をした。

11歳にこの愛すべきパチンは壊れてしまったが、その頃にはすでに、脳内で再生しながらでも術が出せるようになっていた。



そして、ついに12歳。ここを旅立つ日が来た。

シスターやみんなに別れを告げ、俺が旅立った・・・のが5年前。


シスターが頼んでくれて採用されたのが、魔法学校の雑用。

同い年位の生徒が通っているが、殆どが貴族や大金持ちの子供達。

俺を馬鹿にする奴もいるが、貴族のいじめは上品だ。下町のガキに比べれば可愛いもんだ。

ここに勤務するアンドレ先生は、俺に魔術の本を貸してくれた。

本の魔術が出来たと言ったら、物凄く驚いて、次の本を貸してくれた。

そんな風に術を磨いて3年・・・

俺は15歳に退職、冒険者になるべくギルドに加入し、今に至るわけだ。




「ちょっと」


なんだ?俺を呼んだのか?振り返ると貴族の令嬢が立っていた。誰?


「貴方よ。久しぶりね、レオ」

「どちらさんかな?貴族に知り合いはいないが」

「レーブル魔法学校のシュスラン、忘れたとは言わせないわよっ!!」

「シュスラン?・・・金髪で・・・胸ペチャで・・・吊り目の・・・パープルアイ・・・胸がでかいから別人です」

「育ったのよっ!!」

「本当に〜〜?作り物じゃなくてぇ〜〜?」

「な、何よ!その手は!!きゃあああ!!」

「揉まないと本物かどうか分かりませんからなぁ」


本物でした。ついでに思い切り引っ叩かれました。でも良い触り心地だったので・・・

このシュスラン、俺と同い年。レーブル魔法学校の生徒。17だから後1年通うんだっけ。

シュスラン・ポルト・ミュードラ伯爵令嬢。確かこんな名前だったような・・

雑用の仕事をしていたから顔見知りと言うか、なんかすぐ絡んで来るとか、厄介な子だ。

魔法はともかく、この平手・・・世界が狙えるかもしれない。いたた。


「我が人生に一片の悔いなし」

「バカは相変わらずね!!」

「で。何の用だ、シュスラン」

「貴方、ギルドのランクどれくらい?」

「A」

「じゃあ受けて貰える?ギルドに依頼しているんだけど」

「もう誰か受けたかもよ」

「その時は仕方がないけど、もう2週間経つけど、誰も受けてくれないのよ」

「そんな依頼を勧めるのか?みんなが嫌がるなら、俺もやだよ」

「良いから!さあギルドに行くわよ!!」

「受けるとは言ってねぇ〜〜!!やめろシュスーーー!!」 

「あら、シュスって久しぶり呼んでくれたわね、レオ」


シュスランは俺の腕をぎゅうぎゅう握りしめ、ぐいぐい引っ張る。

お前、強化魔法掛けてるだろう!!女がそんな豪腕はよくないぞ!



もう抵抗しても無駄と割り切り、シュスランとギルドに入ると掲示板を指差した。


「これ!!22番の!!」


どれどれ・・・『オパールスライム料理・オパールスライムを捕獲して料理を作る』


「おまっ・・・!!!!オパールスライムなんて、ここ100年は目撃すらされてないぞ!」

「だって、お爺様がもう余命僅かなんですもの・・・せめて食べさせてあげたくて」


どひいい・・!報酬が破格の竜貨3枚!!金貨3000枚分・・・!!でもこんな超レアモンスターなんか見つからないぞ?爺さんには申し訳ないが、俺もお断りだな・・・


「レオは料理も凄く上手だし。いけるいける!!」

「アホか!乗せられてたまるかんなもん!!」

「お願い〜〜!!レオーーー!!」


俺達がぎゃあぎゃあ騒いでいたからなのか、受付から職員が出て来た。あ。こいつは・・


「どうされましたか?あら、レオ様」

「!!」


俺はシュバババと足をバタつかせ、声を掛けてきた女を小脇に抱え、隣の依頼用接待部屋に駆け込んだ。


「様はよせっつーただろうが!!キャヴィ!!」

「でも、レオフレイム様・・」

「正式名はもっとダメ!!俺はもうあそこの子じゃないんだから」

「でももうレオフレイム様は魔法」

「いいの。俺を捨てた人に義理はないから。もうこれ以上言うなら口きかないからな」

「レオ、様」

「それもダメっつったろが!!もう知らん!!」

「コラー!レオーー!!」


あ。シュスランが来た。


「ああ!ちょい待ち!・・もう声を掛けるなよ!」


俺はシュスランのもとに戻ると、こいつじろっと睨んでやがる。


「なんだよ」

「彼女?」


まさか。あいつ30手前だぞ。俺はまだ17。いくらなんでもそれは。


「お節介な知り合い。お前よりも厄介」

「なんですって?・・・ねえー、受けてよぇ〜〜。チューしてあげるから〜」

「貴族の令嬢にあるまじき言葉!!」

「ね?」

「じゃあ・・俺の方からチューしてもいいか?」

「うん!」

「よぉ〜し。確約したからな!」


俺まだ童貞、しかもチュー無し。この機会に、シュスランでいいや、初チュー体験しとこ。

こんな欲塗れの依頼だが、引き受ける事にした。チュー無しは恋人のするディープなやつな。

挨拶程度ならあるから!あるからな!

・・え?さっきの女は誰だ、って?昔のうちの使用人の娘だよ。

俺のこと、覚えてやんの。面倒ったらありゃしない。

あのうちに関わっているってだけで、もう排除だね。

ギルド職員だから話はするが、もうあいつのカウンターには並ばない。



仕方なくギルドで依頼手続きをし、シュスランが待たせている馬車に乗って、ミュードラ領へ向かう。

街を抜け、緑豊かな道を小1時間走らせると、大きな館が見えた。


「ほーー。結構街に近いんだな、お前ん地」

「宮中伯だもん」

「ん?何気に高位?」

「建国以来我が家はお仕えしているもの」

「ほーー」


それなのに、お前は雑用なんかやってる平民とくっちゃべってる訳か。

庶民派なのか?まあ気さくで話しやすいから良いんだけどな。


「で、オパールスライムがどこに潜んでいるのか知ってるのかよ」

「うちの領地」

「ほーー」

「だからうちを拠点にしてくれれば良いわ」

「そりゃ有難い」

「そのまま住み着いちゃっても良いのよ。レオは家事とか出来るし執事とかになれそうだし」

「それは勘弁」


雑用してた頃、料理作っている時に来て、食べさせろと言うから食べさせたら『美味しい!』って言うのがなんか嬉しくて、それからちょいちょい食いに来てたんだよな。

考えれば考えるほど、こいつ貴族然としてないよな。

まあ、俺もこいつは友達枠に入れているけど。



館の側に平屋の小さな家があって、そこを使わせてもらう事になった。

おお、4つも部屋がある!小振りだがキッチンもあるじゃないか。良い家だなー。


「食材はうちの家から貰えば良いからね。それとも我が家の厨で作ったものを食べる?」

「いつ帰るかわからんから自炊で」

「じゃあうちの厨の使用人を紹介するわ。ここ、厨の裏口と近いのよ」

「あ。本当だ」

「こっから出入りしてね。・・みんな、今日から山葡萄荘に滞在する冒険者、レオよ」


中に入ると数人の使用人が食事の用意をしている。


「どうも、レオです」

「食材を分けてあげてね」

「了解しました、お嬢様。レオさん、どうも。サルバドールです」


この人がここの責任者だな。ここで一番話をする事になるだろうから、良い印象を得たいですな。

その後はエントランスに行き、執事さんと侍女さんと顔合わせをして、館の主、マリオン様にご挨拶。

なかなか威厳のあるご老体だ。ちなみにシュスランのお父上は、城に出向しているそうだ。


さて、俺も晩飯を作るかな。さっき厨から食材を少し分けて貰ったので・・・


「で、シュス。なんでお前がいるんだよ」


シュスランがテーブルにいるんだよ。


「そりゃご相伴に預かりに」

「お前、貴族のお嬢様だよね?もう外は暗いぞ?館に戻れや」

「レオのご飯、久々食べたいんだもん」

「俺の庶民飯をか!」


まあ俺はステータスにあるように、なんでも出来るんだけどな?

こんな飯で喜んでたら、厨の人達に顔が合わせられなくなるだろーが・・


「ったく・・今回だけだぞ」

「やった!」


嬉しそうにすんなよ、こっちまでなんか嬉しくなるだろーが・・


出来立てを二人で食べて、『もっと野菜を入れるべき』とか言ってくるから、


「もう食わさねえ」

「次は昔作ってくれたプリン!」

「聞いてやがるのか、お前は」


俺もお貴族様に大概な口の聞き方だよな。まあ、今は誰も気にする奴はいないし。


明日からオパールスライムを捜す。

早々に寝て、鋭気を養っとこう・・・



スライムは雑食だが、好みの食材もある。

昔の文献を調べた(館の図書室の資料)ところ、オパールスライムは甘いものが好きらしい。

なので、蜂蜜の塊を用意。鼠取りの親戚のような罠に蜂蜜を入れ、あちこちに罠を仕掛ける。

大きめなので、2つ運ぶのが限界。


こうして仕掛けを済ませて、一旦荘に戻って昼食。軽めの物を食べる。

館の図書室で他の文献を読ませて貰っているうちに、罠の回収。


「うーーん・・今日はダメだったか」


中には蜂蜜も残ったままだ。このまま夜も置いておく事にするかな。

明日の朝見て空だったら、仕掛けを別の位置に設置しよう。


こんな感じで早10日。

100年も目撃さえ無いのだ、すぐには見つからないだろうとは思ったが、暇すぎ。

でも何も結果が出ないのに、ただ飯を喰らうのってすごく申し訳ない。


なので、家事を手伝う事にした。

3階建てのお屋敷だから、屋根に乗るのも使用人のみんなには一苦労なんだ。

俺だったら、ほれ、ヒョ〜イってなもんですよ。

雨漏りしているところを修繕したり、窓を拭いたり、塗装が剥げているところを塗ったり・・

館の修繕も粗方終わった。

ああ、まだ手が空いてるよ・・・なんかさせて欲しい・・・お菓子でも作るかな・・

カップケーキを作り、館のみんなに振舞ったら、喜んでもらえました!!

で、学校から帰って来たシュスランが、お菓子を食べながらじろりと睨む。解せぬ。


「あんた何を家のことまでしてくれてんのよ」

「だって退屈なんですモン〜」

「ふーーん・・じゃ、今から学校行くから送って」

「ほいほい」


俺は馬の扱いも、上手だよ!流石なんでもスキルのおかげだね!


「ついでに街で買い物してくれば良いわ」


ああ・・気を使ってくれたのか。意外とこういう細かいとこ、気が利くんだよな。シュスは。


「お前、可愛いとこあるなぁ」

「ほほ!私ほど可愛いのはいないでしょ」

「言うーーーー!」



次の日・・

一頭立ての馬車に乗り、俺達は街に向かう。

これは二人乗り、まあ二人乗りとはいうものの、実質1人用なコンパクトサイズの馬車だ。

足が頑丈で、荷物を運ぶ時に使う馬を使う。


魔法学校に到着、彼女に手を貸して下ろしていると、向こうから声がした。


「あー!!レオだー!」


振り返ると見知った奴がいた。確か・・・


「ホエール、だっけ」

「ホバールだ、残念!良いセンいってたぞ。覚えていたか」


そうそう。こいつもシュスランと同じ様に俺んとこによく来てたな。

こんなに気さくなのに、ホバールは公爵様の嫡男だ。今から親しくなっておこう。


「なんだ、こいつんとこで働いてるのか?」

「こいつって何よ」


シュスは置いといて、俺達は久しぶりの再会で肩をバシバシ叩き合う。


「いや、今ギルドの依頼で滞在してるだけ。今日は街に行くついでに送ったの」

「そっかー。俺授業は今日は午前までだ。飯でも食おうぜ」

「奢っていただけるのしょうか、公爵様」

「ちゃっかりしてるなー!良いぞ」


やったーー!!さすが公爵様!!

シュスランは4時まで掛かるから、時間はたっぷりだな。


「じゃ、ちゃんと迎えに来なさいよね」

「ほい」


ホバールと約束までの待ち時間、商店をぶらぶら見て回っていると、初めての店を見つけた。


「あれ?こんな店あったっけ?」


この街に暮らして早5年。見知った場所だった筈だが・・試しに入店してみる。

どうやら家庭雑貨屋の様だ。料理や部屋の消臭などに使うハーブの枝、生活用洗剤、洒落た空き瓶・・


「へーー。良いじゃん、結構。俺こういうの好きなんだよなぁ」


家事スキルのせいだろうか。超強力!!シミもスッキリ落ちます!!なんてPOPを見ると、心が躍ります。そうだ、シュスラン家の流しの汚れ落とすクレンザーないかなー。きっとピカピカになるぞ・・

店の商品をじっくり見ていると、店員が声を掛けてきたので製品について質問したり、お勧めを聞いたりしているうちに、もう約束の時間に迫っていた。


「うわ。この店だけで2時間以上いたわー。俺本当ハウスクリーニング屋始めた方がいいかも」


待ち合わせの定食屋に行くと、丁度ホバールが歩いてこちらにやって来るところだった。

久しぶりで話も弾み、楽しい時間となった。


「そうかー。Aランクか。うちの領地に魔物が出たって情報があってさ。そのうちギルドに依頼すると思う」

「魔物?本当か?」

「うん。何人も領民が目撃してるんだ。多分ワイバーンだと思う。うちの領地には大きな渓谷があるからね」

「渓谷って・・領地広いなー」


このまま店で喋って、途中でお茶とケーキを頼んで、シュスランの授業が終わるまで長居。


「また会おうなー」

「おー」


ホバールと別れ、シュスランを迎えに行き、ミュードラ領に戻る頃には夜になっていた。


「明日見に行くかな」


こんな真っ暗では危ない。夕食を済ませ、仕掛けた罠は朝早く見に行く事にして俺は寝た。



「おおおおお!!!!」


5つ仕掛けた内の一つに、いた!!

ツルンツルンのまん丸、ぷるんとした形、でもオパールの様に、真珠色に七色の光がほんのり入っている。

このオパールスライム、食用で、甘味・・デザートにするのがお勧めなのだそうだ。

甘くて食感もゼリーの様。でもゼリーよりもトロンとして、口の中でスッと溶けて消えるそうだ。

だって100年見つかっていないんだから、俺だって初めて食べる。

まず依頼完了を報告するため、領主であるマリオン様に確認、そしてサインを頂く。


「おお!!これが幻のオパールスライムか!!」

「はい。甘味に向いているそうですよ」

「甘味か・・ワシは甘いものは苦手なのだ・・」


あらまあ・・・これは俺の腕の見せ所ですかな?シュスランもふう、と溜息。


「お爺様は何でも辛党なのよ。出来ない?」

「オパールスライムをわざわざ辛い料理に?うーーん・・・」


それ、勿体無いよ?このオパール色を生かさないでどうするのさ!!


「とにかく、甘味でも甘さ控えめに作ってみるかな」




そして出来たのが!!ジャジャジャーーン!!


「フルーツパンチです〜」


色々なフルーツに炭酸水、そしてオパールスライムをコロコロまん丸にくり抜きました!

見た目も華やかな一品です!甘さも控えめフルーツでデコレーション!

王侯貴族なら手に入るデラックスフルーツもぎっしり!弾ける炭酸が、また綺麗です!


「これならどうですか?あと・・」


もう一皿用意しています!


「オパールスライムの水キムチ〜」


色はそのままオパール色!水キムチは色は透明の液!お酒のおつまみにもぴったり!

水キムチ液は唐辛子を漬け込んで、かなり辛めの味付けに!

さあ!あなたなら、どっち!!


マキシム様、どちらもお気に召していただけました!


「いやあ、実に美味かった!このままここに留まってくれぬか?」


いやいや!もうこんな仕事という仕事をしない任務は結構です!

こうして次の日、俺はミュードラ領を旅立ったのだ・・




ギルドで依頼達成の報奨金をギルド銀行に入金、使う分だけ引き落として次の依頼を探す。

掲示板には多くの依頼票が貼り付けられていて、その中の一枚に目が行く。


「お。ホバールの依頼、あるじゃないか」


『ワイバーンの退治・トハレッセ公爵領』


ホバールってトハレッセ公爵の子だったか。

元親父と対抗してる勢力、だったっけ。

俺は友情を取って、トハレッセ側につくぜ!


・・最近元俺のうちは、羽振りが悪いらしい。それは宜しい事ですな!

あれだけ無能呼ばわりされたんだ、本当はこんなに出来る息子だったのよ!

・・・なんて教えるかよ。あのギルドの女、殺した方が漏れないな?なんてね。

俺が出来ないからって、普通は12くらいまでは育ててから、放逐・・してくれれば怨みも少なかった・・・いや。嫌味を毎日言われて育つよりは良かったか?


「ま。どうだっていいさ」


先触れにホバールの家に『鳩メール便』で知らせておく。

この『鳩メール便』がなかなか優秀なんだ。賢い鳩に魔石をつけ、目的地を魔力で教えるのだ。

間違いはほぼゼロで、鷹などの敵も魔石のおかげで寄ってこないそうだ。すげえ。

さあ、俺はゆっくり、ホバールの領地まで行くとするか・・・





ゆっくりとは言ったが、そこまでゆっくりではなかったのに、5日かかった!!

遠いな!国内とは思えない遠さだぞ。ホバールのうちの領地は、もうそりゃ広いったら!!


「やあ!!きてくれたね!!」

「うーす。お邪魔しまーす」


今夏休みだから、ホバールも領地にいる。ま、それを狙ってきたんだけどね!

丁度昼食時間だから、食べながら話を聞くことにした。


「たま〜〜〜に飛んでるのは見てたんだけど」

「見てたんかい」

「こっちを狙う素振りさえしなきゃ良かったんだけどね。ついにうちの牧場の牛を取って行ったから、こりゃ討伐かな〜って」

「退治どころか討伐かよ」

「退治は1頭で金貨100枚。討伐はその数で出すよ!」

「おお。有難い」

「でもシングルで来るとは思わなかったなぁ〜。大丈夫?」

「お前手伝えよ。金、半々で分けるから」

「実地訓練にはいいかな〜。じゃ、それで行こう。あ。教師として教えるなら、半々は無くていいよ」


決定!!次の日、俺たちは二人でワイバーンの討伐へと向かうのだった。

二人って・・・人に言ったら『嘘やろ』『馬鹿だな』と言われちゃう!キャ!



平民と高位貴族、しかも公爵様の嫡男・・あ。俺もそういや元公爵嫡男だった!だからなのかな?ホバールとは話が結構合う。あいつも俺を平民扱いしない。俺の過去は全く知らないから、平民の友人と思ってくれているんだろうな。なんかそれはそれで嬉しいぞ。

だからだな。こいつの頼み事は、なんかしてやろうって気になるのは。



俺達はホバールの夏休み期間を使ってワイバーンの討伐!!


パチン  俺は心の中でパチンを弾くと同時、ドガーーーン!!

特大の電磁玉がワイバーンに当たり、物凄い音を立てて羽部分に大穴を開ける。

飛べなくなったワイバーンは30メートル下の崖に転落して行く・・・微かにどすんと音がした。

高い位置にいるので、死んだか生きてるかもわからんが。


「おーい、ホバールー、落ちたやつ、どーすんだーー」

「明後日くらいに確認にいこうーーー。今行っても生きてるかもしれないしーーー」

「そだなーーー。じゃ、そろそろ終わるかーーー」

「うちまで2時間はかかるからねーこっからだとーー夜になるとヤバいしーー」


俺は50メートル位、向こう側にいるホバールに大声で話す。向こうも大声なんだろうな。

ちょっと笑える。

30分後にやっと合流、二人で麓まで歩いて進む。険しいし、滑りやすいし、岩盤脆いし。


「ホバール様っ!お貴族様とは思えない体力です事!」

「こんな山の中、ガキの頃から歩かされてたからなー、そりゃ剛脚にもなりますって」

「領地を守る次期当主!偉いねっ!」

「偉いなんて言ってくれるのは、レオだけだよーん。うわーーん、ありがとーー!」


ふざけて話してはいるが、本当ホバールはいい領主様になると思う。

俺はどうだったかな?もしもあのまま元うちで育っていたとして、ホバールのような領主になれたかな?

実家の噂を聞くが、あまり良いうちではなさそうだ。

・・・だからどうした。

領主様教育など受けていない、平民育ちだ。領民の人間など、あのギルドの女しか知らん。



夏休みも終わりが近付き、俺は先に街に戻った。

ワイバーンは100頭位、ほぼ討伐なみに狩った。でもホバールさん、多過ぎですよ。

飼ってるレベルですよ?まあさておき・・

これで俺はSランク入りとなった訳だ。シングルでSランクはやりすぎかも知れん。

だが出来るんだから、仕方がないじゃん?スキルすげー。

それに、捨てた俺がSランク冒険者になったと、あいつらが聞いたらどんな反応をするか!

これだよ、俺はこれだけの為に頑張ったんだよ。



ギルド依頼で、昔俺の鑑定をした神殿の近くに来たので、行ってみた。

俺を鑑定した頃の担当だった神官は、もう亡くなっていた。やはり高齢の神官だった・・・

本当だ、老眼の所為だったわ、これ。もう文句は言えないけど。死人に口無し。


「お前んとこのせいで、えらい目にあったわ。俺はもう神殿なんかお布施しねえ。教会側を信仰するわ。育ててくれたし、あそこは本当良いとこだわ。神殿マジクソ」


こんなことを脳内でつらつら文句を垂れ流し、賽銭も入れずに俺は外に出ようとしたら・・・

ピカアーーーーーーー!!

神殿奥に鎮座する女神像が、光ったーーー!!

そして、声が聞こえた・・・


『それは死んだ神官が悪いだけで、わたくしちっとも悪くなくありません?まあ恨みたい気持ちもわかります。お詫びにステータスを新装しましょう。もっと見やすく、わかり安く』


ブチーーン!!俺の堪忍袋の袋の底が弾け飛んだ!!


「おい・・それを最初からやってれば、じーさん神官も読み間違わなかったんだよ!!結局教会の!!シスターに!!読んでもらったけどな!!!シスター、老眼だったけど老眼鏡で読めたからな!支給してやれよ!と言う訳で、神殿側が悪いの一択だ!!」

『・・・・新装しました・・・神殿に来てください・・・』

「やだ。もう二度と来ねえ。反省もない、逆ギレする、当然のステータスもちゃんとやらない、そのくせステータス鑑定に金貨3枚も分捕る。どこの悪徳商売だ?」

『御免なさい、御免なさい・・』

「ごめんで済むなら警察はいらねーんだ!!俺の人生10年分・・・まあ、これで良いや。反省しろ」


まあ、教会に行くルートで俺は良かったのかも知れない。

貧しかったけど、教会のシスターも、仲間もいい奴だったし。

就職先の魔法学校で魔法も覚えたし。

今の冒険者は俺に合うようだし。

この人生で、まあ良かったかな?

俺はUターンして、賽銭箱に金貨3枚を入れた。鑑定料だ、貸しは作らねえ。




宿屋に戻ってステータスを見直すと・・

ドデデン!!

前のは縦15センチ、横8センチくらいのサイズだったのに、新装版、多分俺専用?

縦1メートル、横70センチ!でかっ!!

で、書かれてあったのは・・


レオ Lv ∞  魔力 10000/10000←使ってないから満タンのまま

体力 9022/10000←女神と話して精神的に疲れた

職業 Sランク冒険者シングルプレイヤー

スキル 万能

祝福 全ての加護持ち

才能 全ての才能持ち


・・・・この文字数なら、前のステータス画面でいいよーー。女神ーー!!

俺は心で念じてみた。

パッ!

ステータスが元の大きさに戻った。やれやれ・・・

でも全てって。万能はまあ分かるが、全てって言われても、加護って何があるんだ?才能もだよ!

書いておけよ!!誰のなんの加護だ?スキルは!!手抜きも大概にしやがれ・・・


「書くの面倒だった、もしくは本当にさっきのステータス画面がいるくらい書き込むほどあるのか?」


脳内で、女神の返事があった。


『ピンポンピンポンピンポーーーーーン・・』

「ふざけんじゃねえ!!お前んとこの神殿、俺の力ならぶっ壊せるよな!!今から殴りに行こうか!!」

『やーめーてぇー』



風呂に入って、心頭滅却。落ちつけ、俺。


どうやら何でもあり状態だそうだ。魚を追う魚船乗りになるも良し、魔法の世界に没頭するも良し、剣を極めるも良しと、どれも程々の加護もあるようだ。この年でSランクになるんだから、当然か。

魔法が何故か使えなかったのは、これだけの物を持っていたからなんだろうな。

それも『パチン』があれば、使えるようになってしまった。


俺、これから何をして生きていけばいいんだろう・・・

自分を鍛えてとか、努力してという道が歩めないのだ。なんでも出来るのだ。自力では無いのだ。

羨ましいと言う奴もいるだろう。

元の家には『こんなに色々あったのに、放出して残念だったねーー!惜しいことしたねー!』と言えたけど、これからの人生、俺はこのいっぱいもらってしまったものを抱えて、生きなくてはいけないのだ。

だからって、ボランティア精神で世界を救うなんて。考えただけでもゾッとする。


「何か目標を見つけるべきだ」


生きがいってヤツだな。とりあえず・・・


「魚食いたいな・・・」


ポツリ溢れた言葉に、俺は眼から鱗が落ちた。


そうだ!俺は料理も上手だ!いろんな場所で料理を食べて、作って!

自分が楽しい生き方をしよう。

俺みたいなボランティア精神がない奴に、こんなすごい力を持たせた神界?のあんたたちが悪い。

俺は世界を救わない。

己の思うままに、生きる。


「よし!レードットの港に行くぞ!!」


そして名産の珍味を食べるのだ。大好物のサシミもだ!


俺の食いしん坊な旅はここから始まったのだ。





俺の元うち、ヘルデーテ公爵領は、港に向かう途中にある。

捨てられてから一度も立ち寄ったことはないが、少しの好奇心から寄ってみる事にした。




「まさか!ぼっちゃま?」


げ・・もうバレた。

そういや俺って髪色が特殊だったわ。

街では割と多いけど、ここでは少ない。公爵家の人間以外でこの色はいなかったわ。

スッゲーバカだったわー。変装って観念なかったわーー。

変装って結構俺得意・・まあ色々才能の宝石箱あるし。抜かったわーー。

使わなければ、宝の持ち腐れだっちゅーの!

で、このおっさん誰。


「忘れてしまいましたでしょうね、もう10年になりますから。フォスターです」


あ!執事のスター!俺はフォスターをスターと呼んでいたんだ。

なんでも出来て、すごくキラキラしてて。今はおっさんになってるけど、10年でこんなに変わるのかな?確か、まだフォスターは30くらいの筈だ、どうしてここまで老けた?


「スター、まだ執事してるの?」

「いいえ、4年前にお暇を頂きました」


つまり、クビ?こんな有能執事なんて、そうそう手に入らないぞ?何考えてんだ、あいつら!


話を聞くと、主を思って進言したら、怒りを買ってクビだそうだ。

スターのことだ、見るに見かねての発言だったんだろうな。


「ねえ、スター。俺が紹介する所に行かないか?執事絶賛募集中だから」


俺は紹介状を書いて、先触れを送った。『鳩メール便』有能。届け先はシュスランのうちだ。

俺に執事になれって言うんだ、それに執事長さんそろそろ引退したいって言ってたからな。

スターに交通費と諸費用込みのお金を手渡し、俺は領を出た。

あーあ。やっぱり元実家はロクでもなかったぜ。




3日かけてレードットの港に到着。

うまい!!うまい!!!刺身、美味い!!焼き魚、煮魚、スモークも堪らない!!

この国は、酒は16から良いんだよな。やったぜ!

一瞬魚を追う人生も良いか、と思うほど旨かった。

漁師・・人生が終盤になったときの選択肢とする事にした。


宿へ帰る途中、漁港そばの道を歩いていると、何やら港が騒がしい。

なんと海獣が沖で暴れていて、こちらに近寄ってきていると言う。

魚のピンチだ!!!俺の飯のピンチだ!!


俺は浮遊、そこから勢いを付け、滑走!!海面を滑るように進み、猛追で海獣に接近。


パチン!  業火!!

海獣の海面から出た部分を高温度で焼き上げると、これは堪らんと言わんばかりに海獣が水中に沈む。

パチン!  氷塔!!

そうはさせじ!逃すかと、円錐状の氷を何本も怪獣に刺す。氷だから体を浮かせる事になった。

パチン!  電渦!!

超電磁で頭部分を焼き痺れさせると、動きが止まった。どうやら倒せたようだ。


周りに退避していた漁船のおっちゃん達が、汚い絶叫!!うおーーー!!って。魚なだけに!

この怪獣はキレイン・クロインとか言うでっかい化け物。でも魚系だから美味しいらしい。

で!!みんなで食べたよ!バター焼きが一番旨かった!!

俺が調理して振る舞った!おっさん達は俺にお礼として、マグロ解体用の刀をくれた。やった!

今度からこれを帯刀する!名前はそうだなー・・『第1一振丸』!これだ!!



ここで1月ほど滞在し、俺は次の街に向かった。


何度も思っちゃったんだよなー。ここでもう良いんじゃね?って。漁師。良いなあって。

でもおっちゃん達がここに残ってもらおうと、自分の娘や孫を斡旋し始めたから、逃げた!

俺の好みじゃなかったと言うか・・すまん!


「・・そうだ。シュスランとこに行ったスター、うまくやってるかなー」


そのうち見に行ってやろう、俺は次の街に入ったところで『鳩メール便』をシュスランちに送った。


ここはミトロレア公国の、ムッターマイスターと言う加工肉の町。

ハムやソーセージで有名なんだ。

特に美味いのは生ハム!よく腐らないなーと感心する製法。

この門外不出の製法、こっそり知りたいのだった。

ワインもよし!ビールもよし!美味い!!

ここ、酒も美味いんだ。

もう、酔っ払いの街ですよ!ちゃんと人通りの多い道路には、ベンチが置いてあるんだ。

そして給水もできる噴水も、等間隔に並んでいる。とても綺麗な所だ。

名所にマイスター湖があって、遊覧船廻りもあるんだ!ここミトロリアは観光大国だからね。


で。ここのギルドにはやはりありました!!『ゴールドオーク狩猟』!

肉質も柔らかで、ゴールドオークの皮付き熟成肉は、この皮部分が絶品!


「よし。俺に食われるがいい」


依頼を受け、俺は山の中に入る。


パチン!  電磁網!

直径10メートルくらいの電磁製投網!捕まると体が痺れ、半死状態になる。

しかも身体が焼けるほどの熱はないので綺麗な状態で捕獲できるのだ。

本当、俺便利だわー。

ギルド銀行、どんだけ金が入っているか、全然チェックしてないわー。

そのうち気にいた土地を見つけたら、土地と家でも買うかな。


ギャッ!


「ん?」


どうやら泣き声の主を踏ん付けてしまったようだ。

なんかちっこい・・・蜥蜴?いや、これは・・


「ドラゴン?」


ギャ!ギャ!

泣きながら俺の体をさささーと登ってきて、肩に乗った。

背中にまだ開ききっていない羽が、くしゃくしゃになって張り付いている。

これ、ドラゴンパピーじゃね?なんか、可愛いなぁ。

なんか・・・シュスランみたいだ。ふふ。


「お前、今日からシュー、だ。」


ギャ!

返事をした。どうやら嫌とは言ってないようだ。

旅は徒然ってね。良い相棒が出来た。



俺はギルドに行くと、依頼のゴールドオークをどさっと荷出し。収納『中』、持ってるからな。

傷無しだが、血抜きせずそのまんま持ってきたので、結構喜ばれた。

血も混ぜたボイルソーセージが作れるとか。あれは美味いんだよな!ビールに合う!

シューにもソーセージを食わすと、ギョ!ギョ!と変な声を出しながら食べている。


「美味いか?」


ギャギャ!

美味いらしい。



次は先触れで連絡しておいた、シュスランのうちに向かった。





「そろそろ街だな・・」


活動拠点にしていた街は相変わらずだ。

賑やかで、雑多で。なんか落ち着く。

魔法学校の近くを歩いていると、シュスランの姿を見つけた。

声をかけようとしたら、隣には男が一緒だった。ちょっとドキンとした。


「おおー。デートかな?」


もう18だからな、シュスランも。婚約しててもおかしくない。

邪魔したらいかんいかん。

そっと離れようとして、隣の男がホバールなのを見て。


ズキン、とした。


なんだ?心臓がなんかバクバクしすぎ。

同じ学校、同じ貴族。付き合ってもおかしくない。身分も差が無い。


やばい。なんか、俺ヤバい。

なんか落ち着かない。なんでだ?何をそんなに落ち着かないんだ?


ああ、俺は今は平民だ。シュスランがいくら気さくだからって・・


え?

何を言っているんだ?俺は。

平民がなんだって?それって関係あるのか?俺たちは友達で・・


・・・・・・・・・。

ああ。分かった。分かっていた。そんなもん、分かっていたって。

貴族は大体政略結婚するんだって。平民とは結婚しないんだって。

俺も元貴族だ、分かっていますから。

シュスランとは無理だって。


「でも・・よりによってホバールかよ」


親友だ。いい奴だ。結婚相手としては、またと無い相手だ。

いや、まだ友人同士で出掛けただけかもしれない・・・いいや。


貴族の娘は、誰か必ず護衛をつけて外出をする。

学校は門で送り迎えをするから護衛がいないだけだ。

恋人や婚約者の腕が立つときは、彼が護衛の役も果たすので、二人で外出もいいのだ。

だから、二人は、そういうことだ。


「もう直ぐ卒業だ、婚約は遅いくらいだ。卒業して直ぐ結婚する奴もいるからな」


俺も学校に勤務していたから知っている。

卒業式で、もう直ぐ結婚する二人に、後輩が花束を渡す習慣があった。

嬉しそうに微笑み合うカップルが、学校の門で花吹雪の術でお祝いされている光景・・


「ははは・・・いろんなモノついてたって、こればかりは無理だろうよ」


なんてこった。

いまの今まで、自分の気持ちに気付かなかった。というか、無視してた。

今も動揺して落ち着かない。しっかりしろ、俺!


二人は俺の友人だ。せいぜいお祝いしてやるさ。

だけど、今は会いたくない。


俺はシュスランの屋敷には向かわず、街で一泊した。



翌日、俺はシュスランのうちでもあるミュードラ伯爵領に行き、フォスターと再会。

ここの侍女と良い仲になって、もう少し稼いでから結婚をするそうだ。

疲れた表情が無くなり、以前より男の魅力が増している。なんたってスターだからな!


「ぼっちゃまのおかげです。本当にありがとうございます」

「ばっ・・!!ぼっちゃまやめぃ!!」

「あ。申し訳ありません!」


すっかり元気な元執事の様子に、俺も安心した。


「じゃ、俺は行くわ。頑張れよ!」

「ぼ・・レオ様、シュスランお嬢様がまだ戻っていませんよ?お会いにならないのですか?」

「俺、馬車も待たせているし、ちょっと急いでるんだわ。またゆっくりくるわ」


そして待たせていた馬車に乗って、街に戻った。

この時間なら、シュスランは学校に行っている。わざとだ。


・・・・・・・。

俺、ヘタレだな。

ま、もうちょっとね。

もう少ししたら、気持ちも落ち着く。

そうしたらお祝いくらい出来るさ。




ギルドに行くと、あの女が声を掛けてきた。

ギルドマスターが呼んでいるとか。

なんとなく嫌な予感はしたが、聞いてやるか、そう思ってついて行く。


奥の部屋に通され、中に入るとギルドマスターと、男がいた。

ああ、やっぱり親子なんだな。俺、ちょっと似てるわ、あいつに。

男は・・・・名前など覚えてやるものか。俺はそいつをありったけの憎悪を纏って睨んだ。

威圧で体が一歩下がった。ザマアミロ。


話はこうだ。予想はついたが、もっと言い方があるだろう?

家に戻れ、と。戻れ・・戻れ。命令か?帰ってきてください、お願いしますと言うべきだろ?

戻って欲しいと頼む事すら出来ないのか・・なんだよもう、あんたには本当、がっかりだよ。


「お前の言うことを、なぜ聞かなくちゃならんのかな?お前は7歳の俺を教会に捨てたよな?」


何?と言う顔をして、ギルドマスターは男に視線を向けた。

こいつ、適当な事をギルドマスターに言ったんだな。女はどう言ったんだ。

全くこいつらは、自分のことしか考えねえな!


「ギルドマスター、ご迷惑をお掛けしました。俺は帰りません・・と言うか、そこは俺の帰る場所ですらありませんから。7年だけ住んだ、それだけの場所ですよ」


外に出た俺を追っかけてきた女は、事情を説明する。随分必死だな。


あの7歳の日・・

俺のステータスに怒ったあいつは、帰り道見つけた教会に俺を置き去りにした。

家に帰ったら、妻・・俺の母に『息子はどこだ』と詰め寄られた。

『スキルなしの役立たず、魔法も使えないから捨ててきた』こう言ったんだと。

母は俺を探そうとするも、男に妨害され、監禁されて・・俺の名をずっと呼んで・・

衰弱して2年後に亡くなったそうだ。

そんな死に方をしたら後妻も来ない。

家には後継がいないまま。

で。

後継ぎがいないなら、その家を返せと妻の実家が言ってきたのだ。

なぜならその領地は妻の実家のもの、男は婿養子だったのだ。


「こいつ・・・妻殺しでもあったのか。あの優しい母様を・・殺したのか」

「いいえ!旦那様は殺してはいません!奥様は体調が良くなくて、衰弱して」

「じゃあ病院に連れて行けよ!医師は!どうせ何もしなかったんだろう!調べればわかるんだぞ・・ちゃんと医師を呼んでいたか、病院に入れたかなんて!どうなんだ!!・・そうだ。遺体を調べれば・・毒も出るかもな・・」


すると女は悲鳴を上げ、どこから取り出したんかナイフを持っていて、俺に飛びかかってきた。

ぺん!

横っ面を叩いて吹っ飛ばした。


「キャヴィ・・お前・・あの男と通じたな?そして、母上を殺したな?」

「ヒィ・・」


俺の手加減無しの張り手だ、口から血を流している。頬ももう浮腫んで赤くなっていた。


「あの男に結婚してやるとか言われたか?ははは!するもんか!アレには昔っから女がいてな!俺の代わりにそこの子を跡取りと思っていたらしいが、女ばかりしか産まないんだとよ!二人とも残念だったなぁ!」


俺だって実家が気になって、少しは調べたさ。でも母上の死因が・・・こんな・・・

貴族の結婚なんてそんなもん・・・だけどこれは無いだろう?母上をなんだと思ってるんだ!

結婚前から愛人がいて、産んだ子供を養子どこか捨ててきたと、捜そうにも監禁状態で、気が狂っても仕方がない状態にされて・・・体も弱くなって・・・


「母上・・・!俺が仇を打ちますよ・・・」




その後は母上の実家であるスーレイー公爵、母上の兄上が継いだ本家と協力して、あの男と女を死刑にした。同じ貴族、しかも公爵家、婿取りの家の方が格が上。あの男は侯爵家だがそれほど名が知れていない家だった。両親の婚約を決めた祖父はもう存命していないが、最後まで亡き娘に謝っていたそうだ。

こんな経緯で、俺は公爵を継ぐ事になったが・・・



「俺はこういった教育をしてきませんでした。ここは母の兄上である伯父上にお返しします」

「いや、ここはお前の母の財産で、成人したお前に残すと遺言に書かれてある。だからお前の父はお前に帰ってくるように言ったのだろう。そのうち暗殺でもと思っていただろうが、Sランク冒険者に!無理だっただろうよ!」

この世界の成人は18歳。かなり焦っていたようだな、あの男達は。

受取拒否をしようにも、遺言で正式に渡されてしまったので如何とも・・・母の遺産でもあるし。


しょうがない。俺のお掃除スキルで、館を綺麗にしてしまおう!!

洗剤とか、あの街の雑貨屋で揃えるとするか!




それからはお掃除に明け暮れる日々。


ゴミは全部出し、新しい家具をいくつか運び入れて、人が住めるようになった屋敷だが、まだエントランスの石が剥がれた所があるのでセメントを練って、石を貼り付けて・・

ゴソゴソと作業をしていると、ドラゴンパピーのシューがバケツの水で遊んでいる。


「こらー、シュー!その水はダメだぞーー!コンクリ味だぞー」


慌てて立ち上がると、ポーチに誰かが立っていているのが見えた。


「レオ」

「え」


シュスランがそこにいた。

なんでだ?ここ、彼女は知らないはずだぞ!


「レオフレイム様、って呼んだほうが良い?」

「誰から聞いた」

「お父様」


ああ、シュスランのお父上は、王城で勤務してたな。噂も入り易いか。

今話題騒然だもんな、俺ん家。


「あんた、忘れ物をしてたわよ」

「忘れ物?」


お嬢様ー、あんたって!・・シュスランの家に?忘れもんって・・・

たたた、と彼女が駆け寄って来て、俺の真ん前に立った。


「レオからチュー、するんでしょ?」


あ。そういえば。

オパールスライム捕獲の時、言ってたよなぁ・・でもな。


「お前さぁ。婚約ってしてた?」

「どうして?」

「婚約者がいたら、悪いだろ?そういうの、相手にさ」

「あら!レオは真面目なのね」

「俺はいつだって真面目さ」

「婚約しているわよ」


ほらな。

いろんなスキルを持っていようと、好きな女を手に入れることなんて出来ないんだぜ。


「だから、結婚する前に、好きな人にしてもらいたいの。ダメ?」


どう返事する?俺ならこれ一択。


「ダメ。俺は最低になりたくない」

「ちぇー。レオはそう言う奴だったわよ」

「でも、好きだって言うのは嬉しいぜ。俺もお前、好きだぜ」


友達として。そう言う事にしよう。


友達なら、これからも楽しくいられるじゃないか。


「貴族でいた時の記憶はもう全然だからな。マナーとか・・まあ宜しく頼むよ」

「宜しくね、レオフレイム様」

「様やめろや」

「じゃあ・・レオ」

「それで頼むよ。で、婚約者は誰なんだ?」

「今の所ホバールくん」


やっぱり。ん?


「今の所?」

「婚約解消の手続き中なの」

「え?どうして?っつーか、どっちから?」

「お互いかな?と言うか、同時に」

「なんか喧嘩したのか?お前だな、原因は。早よ謝れ」


こいつはおてんばだからなぁ・・ホバールも困ってないか?


「レオが悪いのよ」

「俺か?なんでさ」

「私がレオを好きで、ホバールくんもレオを好きだからよ」

「なっ!ホバール!俺は男色家では無いぞ!」

「ホバールくんも知ってるのよ。レオが私にゾッコンだって事」

「・・ほーー」


言うに事欠いてそう言うか!!くそっ!・・・そうだよ!こん畜生。


「だから私をレオに返すんだって」


返品だとさ、シュスラン・・ありがとう、ホバール。返品をありがたく頂くよ。


「ホバール・・全く・・借りが出来たな」


そういえば母方の兄、伯父上には可愛い娘がいたな。紹介しとくか!なんて思っていると、


「ねえ、だから」


シュスランが俺の首に両腕を絡め、顔が急接近。あ。唇が、艶々・・


「仕方ないなぁ」


俺は彼女の背中に両腕を回し、もっと引き寄せて。


「お礼のチュー、いただきます」





この屋敷は街とホバールの領地のちょうど中間にある。

ホバールは第2週と第4週の土日に、泊まりがけでここに来る。

俺と、シュスランと、ホバールと、最近出来た婚約者で集まって、バーベキューをしたりしてる。



公爵の領地運営は、伯父上が教えてくれるので、ただいま猛勉強中。でも色々スキルのおかげでスラスラ覚えている所。時々シュスランの父上や、お爺様も教えてくれるのがなんか嬉しい毎日だ。

長らく世話になった教会だが、たっぷりと献金をしたので、綺麗な建物の教会が近いうちにお目見えになるだろう。

神殿だが・・女神、貴様は知らん。




まあスキルが色々あっても、使う気が無いと無駄だし、恋愛にはからっきしだと分かった。


つまり、多けりゃ良いってもんじゃないって事。



そのうちきちんとスキルや加護を利用した何かができると良いな、そんな日常。

でもこのまま利用しないで一生が終わったら、俺に付与した事を反省しろ。あと老眼鏡は配布だ!




ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。

どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。


pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。

https://www.pixiv.net/users/476191

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