第90話 別れと出会い
結局、俺たち『魔導ガンナーズ』は探索者ギルドの救援要請を断り、ダンジョン探索を続けていくことに決まった。
「すまんな、ジャスミンはん。
俺たちに人同士の戦闘は、無理やと思うねん……」
「仕方ないわ、あなたたちにはあなたたちの意思があるのだから。
何か譲れないものがあるのでしょう?」
高橋健太の謝罪に、ジャスミンさんは笑顔で理解を示してくれた。
譲れないもの、か。
確かに、俺たち日本人には何かあるんだろうな……。
平和ボケの日本人といわれようとも……。
その後、食事も終わると探索者ギルドへ行き『戦乙女の盾』とのパーティーを解消する旨をギルドに報告しておいた。
ギルドの受付嬢も、残念そうに手続きをしてくれたがこういうパーティー同士がくっついたり離れたりはよくあることなので何も言ってはこなかった。
そして、すぐ後にギルド要請を『戦乙女の盾』が受けるということで手続きを済ませると、俺たち全員はお互いに握手を交わし解散となった。
▽ ▽ ▽
次の日、俺たちはダンジョンに潜らず休養日とした。
なんか心にぽっかり穴が開いたようで、やる気が起きなかったからだ。
「……こんなところで、だらけていいんですか?」
宿屋のロビーにあるソファで、体を預けてぼーっとしていた高橋健太を見つける。何もやる気が起きないようで、天井をボケーッと眺めているようだ。
「ええんや、今日は何もやる気にならんからな。
長谷川君も他のみんなも、同じで心ここにあらずって感じやったからな……」
どうやら、『戦乙女の盾』のみんながいなくなったことが堪えているようだ。
「そういえば、伊藤さんはどうしたんですか?
昨日は帰ってきた形跡がありませんでしたが……」
「そら恋人と別れるんや、一緒に最後の夜を過ごしとんやないか?
本田はん、その歳で今まで付きおうたこと無いわけじゃないやろ?察してやらな~」
……なるほど、アンジェラさんとの最後の夜ね。
でも、死にに行くわけじゃ……いや、戦場に行くんだよな。
住民の避難誘導の手助けとはいえ、そこが戦場になっているのは間違いないわけだ。
「それなら、俺も買いものに出てきますね」
「おお、行ってらっしゃい~」
高橋健太は、力なく俺を送り出すと再びソファでぼーっと天井を眺めていた。
おそらく、寂しいってことなんだろうな……。
俺は宿を出て、魔導銃専門の武器屋へ向かうことにした。
時刻は、朝の時間帯を過ぎた十時ごろ。すでに、人々は働いている。
「いつもなら、何とも思わない町の光景も今はどことなく寂しげに見えてしまうな……」
……どうやら俺も、『戦乙女の盾』のみんながいなくなって寂しいと感じていたようだ。それでも今は、これからどうするかを考えないといけないんだよな。
『戦乙女の盾』のみんなが抜けて、戦力がガタ落ちなんだよな。
特に、ジャスミンさんの支援魔法やパメラやノエルの盾、後はクリスティーナさんの治癒魔法などなど、俺たち『魔導ガンナーズ』には無い力があったからな。
これから先、再び『戦乙女の盾』と合流できるかは分からない。
となれば、どこかで補うことを考えないとだめだ。
そう考えると、いきつくところは仲間を募るか奴隷を雇うかの二択しかなくなるんだよな……。
ま、そのあたりはリーダーの高橋健太と相談だ。
それに、仲間の意見も聞かずに勝手に決めていいことじゃないしな……。
そんなことを考えていると、目的地の魔導銃専門の武器屋に到着する。
俺が中に入ろうとすると、探索者ギルドの方角から中川明日香が肩を落として歩いてきた。
「中川さん」
「……本田さん」
俺の呼びかけに顔を上げて返事をした中川さんは、泣いているようだ。
何かあったのだろうか?
「どうしたんですか?何かありましたか?」
「……本田さん、私、日本に帰ろうと思うの」
「へ?」
いきなりの告白に驚いたが、よくよく訳を聞けば中川明日香の娘が寂しがって帰ってきてと涙ながらにお願いしたそうだ。
中川明日香の娘は、まだ二桁にいっていない歳の女の子で母親の借金返済が終わるまで父親と暮らすことを了承してくれたものの、とうとう限界が来たらしい。
定期的といってもほぼ毎日電話はしていたが、日に日に電話の受け答えが怪しくなりとうとう今日、泣き出してしまったと。
「……中川さんは、借金の返済も終わっていますし帰ることもできますが、一応みんなに知らせておいた方がいいですよ」
「そうよね、いきなり何も言わずに帰ったらだめよね……」
娘さんに泣かれてテンパってしまったようだ。
……それにしても、別れが続くな~……。
少し心配ではあったが、中川明日香を宿に帰るように促すと俺は武器屋へ入っていった。
「いらっしゃいませ~」
相変わらず、力の抜けた挨拶だ。
でも、今はそれが心地よく思えている……。
店内を目的もなくウロウロしていると、妹の楓と大塚詩織に出会った。
「あれ、お兄ちゃん。こんなところに何の用なの?」
「楓こそ、どうしてここに?
それに、大塚さんも……」
楓と大塚詩織がいた場所は、グレネードランチャー型の魔導銃が飾られている棚だった。ここに飾られている魔導銃は特殊なもので、すべてが『状態異常魔法』が付与された特殊弾を装填する。
また、この魔導銃には属性魔石を必要としていない。
そのため、状態異常を引き起こす魔法を広範囲に放つことが可能となっていた。
「……こんなものがあったんだな」
「私たちも、さっき見つけたの」
俺が、興味深く見ていると楓がさっき見つけたと教えてくれる。
状態異常を魔物に放てば、かなり多々会いやすくなるだろう。ただし、確実に状態異常にすることができるなら、だ。
この魔導銃の説明書きにもあるように、状態異常に魔物がかかる率はわずか十パーセント。十匹に一匹の割合か。
……悪くないかも。




